●週刊チャオ サークル掲示板
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13:起床部
 問題式部  - 13/8/29(木) 8:48 -
  
 ――なんだか、とても永い夢を見ていた気がする。


―――――――――――――――――――――――――


 目が覚めた時に窓の外が明るいと、物凄くテンションが下がる。高校生にもなると夜型の生活になる人は多いと思うが、それでも午前の時間がまるまる無駄になるのは非常にもったいない。
 確認したくないが、一応時間を確認するためにケータイを探ろうとすると、部屋の様子が違うことに気付いた。なんだか知らないがゲームソフトだらけなのだ。ゲームキューブ。プレイステーション2。ニンテンドーDS。プレイステーションポータブル。今では一線から身を退いたハードのパッケージがわんさか。全部実家に置き去りにしてきたものだ。
「懐かしいなぁ」
 親の評価が上々だったので、もらえる小遣いはたくさんあった。その多くを、僕はゲームに注ぎ込んできた。普通はここまでどっぷりゲームに浸かると良い顔はされないものだが、ずっと好成績をキープし続けてきた僕に隙はなかった。これらはいわゆる、僕の黄金期を象徴する勲章と言ったところか。
「ま、勲章もここまで多いと価値がわかんないな」
 一応綺麗に積み重なっているが、それでもかなり床のスペースを占領している。正直言うと邪魔だ。ますます起きる気がなくなって、またベッドに寝転ぶ。もう眠気は全然ないが。せっかくだから久々に何か遊ぶかなと物色してみたが、肝心の携帯ゲーム機がどこにもなかった。
「あ、起きましたか?」
 がちゃりとドアが開き、私服姿の彼女が部屋を覗き込んできた。手元には一台のPSP。こいつ勝手に僕のゲームで遊んでやがる。
「こっちに持ってくるって話でしたから、私が代わりに持ってきてあげました。懐かしいですねぇ。あ、インフィニティやってますんで」
「お前自分の持ってたろうが! なんで僕のデータでやるんだよ!」
「いやあ、久々にマガシを転がしたくなったんですよ。PSO2と違ってこっちはネトゲじゃないですから、レベルアップもサクサクですもんね。武器強化も失敗しないですし」
 ちなみにこいつ、PSO2の話題になると結構な頻度で必滅アプデがどーのとか言い出すが、僕は一切プレイしていないので全然ついていけない。
「それにしても凄いですねぇ。デュマ子でここまでやりこんでるなんて。色白の眼帯っ娘とか好きなんですか?」
「素直に中二病ですかって聞いたらどうだ」
 ちなみにデュマ子ことデューマン女というのは、まあ平たく言うと不遇なパラメータの種族のことだ。新種族ということでゲームの看板的ポジションを与えられ、体験版の頃はそれこそわんさかいたらしいが、製品版が発売される頃には笑っちゃうくらい数が減ったそうな。
「まあいいや……DSは?」
「さあ? アドバンスならそこにありますけどね」
 そう言って彼女の指差した先には、確かにゲームボーイアドバンスがあった。
「……いや、何をしろってんだよ。なんかあったっけ?」
「GBAケーブルならありましたよ。FFCCします? それとも四つの剣+?」
「いいよどっちも。FFはめんどくさいしゼルダもやり込みすぎたし」
「ひとりで?」
 悪かったな友達がいなくて! ナビトラッカーズの隠し要素全部出したよ! ひとりでな!
「ひょっとしてスマブラのキャラやステージも全部出して、エアライドも紫パネル使わないで自力でコンプリートしたんですか? ひとりで」
「そりゃそういうことは普通ひとりでやるだろ……もういいよいくらでもやっていいよそれ」
「はーい。夏休み中にはステータスフル強化させますから」
 マジか。どんだけ暇なんだ。
「でさ。聞きたくないんだけど、いま何時?」
「もうそろそろ午後4時です」
 うわぁ。もう一度寝たい。それで明日午前4時とかに起きたい。なんでこんなに寝てんだ僕は。
「私も起こそうとしたんですよ、駅に着く前に。気が付きませんでした? 早く早くって背中ばしばし叩いてたんですけど」
「いや、気付かなかったけど。たぶん」
「仕方ないからお姫様抱っこして帰りました」
「お前なんてことしやがる!?」
「冗談ですよ。あなたが家で寝てるときにしかしてません」
「やってんじゃねえか!」
「食生活は私がコントロールしてるつもりなんですが、けっこー軽いですよね。羨ましいです」
 んなこた知るか。今度から部屋のドアに外付けの鍵の取り付けを検討しよう。
「それで、良い夢は見れました?」
「え、なんの話? 全然覚えてないんだけど」
「まあ……なんてこと」
 なぜか泣き真似をしだした。なんか悪いこと言ったのか僕?
「せっかく私の豊満なお胸で寝かせてあげたというのに」
「あなた公共の電車の中だってことわかってやってんすよね!?」
「まあ嘘ですけど」
「だろうと思ったよ!」
 しかし夢ねぇ……見ている最中はバッチリ覚えてるのに、どうして起きると十秒経たずに忘れてしまうんだろう。なんだかもったいないな。凄く良い夢を見ていた気がするのに。
「まあいいか」
 もう終わったことだ。ただでさえ貴重な一日が潰れてるのに、いちいち夢のことを考えるのも無粋だろう。差し当たっては、どうやって今日一日を過ごすかを考えた方が建設的だろう。
 しかし、アドバンスねぇ……見た限りだとソフトもないし、あるのはGBAケーブルだけだ。かといってGCやPS2を準備するのもめんどくさいなぁ……ううん。
「……ん?」
 割と真剣にうんうん唸っていると、ソフトの影に隠れるようにして何かが落ちていた。なんだろうと思ってつまみ上げた瞬間、驚きのあまり吹き出してしまう。
「こ、これっ……!?」
「ああ、それですか? 帰る途中に駅に落ちてたのを見つけたんで持って帰ってきました。要ります?」
「い、いや。要るわけないだろ。戻してきなさい。今すぐ」
「でも私としては必要なものだと思うんですよ。青少年を構成する大事なパーツなのに、この家そういうのがないんですもの」
「勝手に漁ってるんじゃありません!」
 よかった。本当によかった。この家にそういうの置いてなくて。しかしまさか、駅に隠しておいた分が見つかってしまうなんて。この二年間誰にもバレなかったのに。
 明日はこっそり出かけて、あちこちに隠した本をもう一度整理しなくては。


―――――――――――――――――――――――――


 結局その日はゲームキューブで遊ぶことにした。
 ソニックアドベンチャー2バトル。公式サイトの攻略記事がなかなか便利だったこともあって、頑張ってエンブレムをコンプリートした。ステージセレクトを埋め尽くすAの字を見たときは、ここで死んでも後悔はないかもなぁとバカげたことを考えたものだ。
 GCにディスクを食わせて電源を入れる。昔懐かしの起動画面が流れる。音量はあらかじめ小さくしておいた。ソニックのゲームはなぜか他より音量が大きめなのを覚えている。オープニングも久々に見た。いま見ると結構チャチに見えるCGだ。これも時代なのかな。
 やがて一分くらいでオープニングが終わり、タイトル画面に移る。「Live and Learn」のイントロが心を湧き立たせる。
 緑色の大きなAボタンを押して、情熱を注いだ過去を呼び起こした。僕が駆け抜けたフィールドをもう一度、つづきから。

引用なし
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つづきから 問題式部 13/8/29(木) 6:31
1:導入部 問題式部 13/8/29(木) 6:39
2:移動部 問題式部 13/8/29(木) 6:51
3:平日部 問題式部 13/8/29(木) 6:58
4:探索部 問題式部 13/8/29(木) 7:10
5:休日部 問題式部 13/8/29(木) 7:20
6:考察部 問題式部 13/8/29(木) 7:34
7:忌日部 問題式部 13/8/29(木) 7:38
8:帰宅部 問題式部 13/8/29(木) 7:50
9:変調部 問題式部 13/8/29(木) 8:06
10:結末部 問題式部 13/8/29(木) 8:23
11:再開部 問題式部 13/8/29(木) 8:28
12:再会部 問題式部 13/8/29(木) 8:40
13:起床部 問題式部 13/8/29(木) 8:48
おわり 問題式部 13/8/29(木) 9:36
感想です スマッシュ 13/8/30(金) 23:59
感想 ダーク 13/8/31(土) 23:23
乾燥です(爆) ろっど 13/9/4(水) 20:54

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