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〇小説に興味ない人が書いた小説だもの
週刊チャオに小説らしさの欠ける小説が投稿されまくった理由。
先ほど紹介したものを再掲しますと。
1.それまで小説に興味のなかった素人が書いたから
2.ゲームが好きな小学生・中学生が多かったから
3.周りの人もこんな感じの小説を書いていたから
という3つの理由がありました。
ご承知のとおり、ソニックアドベンチャーシリーズはゲームです。
公式BBSを訪れる人はもちろん、そのゲームが好きな人たち。
小説が好きなわけじゃないんですよ。
ましてや自分で小説を書くなんて、やったことのない人だって多かったことでしょう。
そう、週刊チャオは小説好きの集いではないのです。
週刊チャオは「小説を好きでもない人たちが小説を書く集い」という、ちぐはぐなコミュニティだったんです。
そんな人たちに小説を書かせてご覧なさいよ!
そりゃあ、大惨事になっても仕方ないですよね。
ぶっちゃけ、小説らしい小説を書こうだなんて考える人も全然いません。
掲示板に小説を投稿するのは、自分の投稿で場が盛り上がったら嬉しいからです。
場を盛り上げるためのネタとして、小説という遊びが選ばれただけなんです。
そういう目的で始まっているからこそ、
ガオチャ「ドラゴン・メテオ・ボンバーー!!!」
ドゴォォォォン!!
ってスタイルになったのだと思います。
この絵無し漫画スタイルは、週刊チャオが誕生してから半年の時点で既に確立されていました。
(確認できた過去の資料がそこまでだったので、もしかしたらもっと前から確立されていた可能性もあります)
週刊チャオは1年目にして黒歴史の種となる文章の型を手に入れてしまいました。
これが後の世代にも受け継がれていくことになります。
〇受け継がれる原作無視
週刊チャオ初期から広まっていたものは、他にもあります。
それは原作の設定を無視することです。
その一例が性別です。
原作のチャオには性別がありませんでした。
それなのに男や女といった性別を設定して、性別に合わせた口調で喋らせたり、男女で恋に落ちたりしたのです。
原作を無視する理由は単純です。
そうした方が書ける物語の幅が広がるからです。
原作のチャオは剣を持って殺し合いをしたりはしません。
だけど、剣を持たせれば激しいバトルの物語が書けるじゃないですか。
そういうことです。
書きたい物語の内容に合わせてチャオの設定を変えてしまうのが楽ちんだったのです。
だから原作のチャオには到底できないようなことも二次創作のチャオにはできました。
そうしてチャオができることを増やしていった結果、チャオは人間化します。
設定上はチャオだけど、実質的には人間と大して変わらないという状態です。
こういった原作無視も、週刊チャオが始まった初期からおこなわれていました。
そういうわけで週刊チャオが誕生してすぐに、
絵無し漫画スタイル
原作無視
の2つの文化が定着し、この文化がずっと続くことになっちゃったんですね。
〇ゲームキューブ版の発売で小学生や中学生が増加しちゃったぞ
週刊チャオが誕生してから約3年後、ゲームキューブ版「ソニックアドベンチャー2バトル」が発売されます。
それまでドリームキャスト版のユーザーが利用していた掲示板でしたが、そこにゲームキューブ組が参加してきます。
ゲームキューブ版が発売されたことで、公式BBSの利用者が増加したんです。
そこには、小学生・中学生といった年齢の低い人たちもたくさんいました。
さすがは任天堂ハードってところでしょうか?
その小学生や中学生のみんながゲームの攻略情報を目当てに公式掲示板にアクセスすると、あるわけですよ、週刊チャオが。
で、影響を受けて書いちゃうわけですよ、小説を。
突然ですがここでクイズです!
問題:
ゲームが大好きな小学生や中学生が小説を書こうと思いました。
さて、どんな小説を書くでしょう?
答えは明らかですね。
先ほどお見せしたような、剣とか魔法で戦う小説を書きますよね。
RPGとか大好きですもん。
大好きなものを題材にしたら、そうなっちゃうじゃないですか。
そして生まれるんですよ。
ガオチャ「ドラゴン・メテオ・ボンバーー!!!」
ドゴォォォォン!!
って感じの作品が。
もはや、あらゆる要素が黒歴史を作る方向へ作用しているように感じられますね。
ここまで読んでいるあなた、胃の調子は大丈夫ですか?
悲劇はまだまだ終わらないので、覚悟をしてくださいね。
誤解のないように付け足しますが、そういったのとは違う小説を書く人も当然いました。
全員が同じような小説を書いたわけじゃありません。
ですが、冒険ファンタジー小説がめちゃくちゃ増えたのは紛れもない事実なのです。
悲しいけど、事実なんですよ……。
しかも先人たちが築き上げた文化(絵無し漫画スタイルや原作無視)をしっかり受け継いだ上で、冒険ファンタジー小説を書き始めちゃいました。
ところで、週刊チャオの小説には「読み切り」と「連載」の2つのタイプがあります。
一方は、すぐに終わってしまう読み切りタイプの作品。
もう一方が、何ヶ月も続く連載タイプの小説。
どっちの方が目立つかと言えば、やっぱり連載タイプの作品です。
冒険ファンタジー小説はほとんどが連載タイプの作品だったので、数の多さも相まってめちゃくちゃ目立つこととなりました。
〇私たちは周りの人の真似をしただけなんです
繰り返しになりますが、私たちは小説を書きたかったわけじゃないんです。
小説を書くことが、コミュニケーション手段の1つになっていただけなんですよ。
ゲームの情報が欲しくて、公式掲示板に行ってみた。
そうしたらそこでは小説を書くのが流行っていて、みんな小説を書いていた。
その様子を見て、「自分も小説書いてみよう」って真似をした……。
それが全てです。
真似なんです。
以前から掲示板にいた人たちの真似をしただけなんですよ。
みんなが小説を書いていたから、それを真似して。
みんながやっている小説のスタイルを真似したから、絵無し漫画スタイルになって。
みんながチャオの設定を無視しているから、原作を無視することに抵抗が無くなって。
みんなが冒険ファンタジーを書いているから、自分も冒険ファンタジーを書いてみた。
週刊チャオで生まれた黒歴史の多くの正体が、これです。
「その時、その場所で、それが流行っていたから、真似をしてみた」
これが私たちの黒歴史の真の姿です。
だけどこれって、本当に恥ずかしいことなんでしょうか?
流行りものを真似してみた。
そのことを数年後に振り返ったら、なんだか恥ずかしいことに思えてきた。
こんなの、よくある話だと思いませんか?
これを読んでいるあなたの黒歴史も、このパターンだったりするのでは?
この記事の最初の言葉を思い出してください。
あなたに問いかけた質問がありますよね。
その問いを今一度投げかけます。
「あなたの黒歴史は、本当にあなたが作ったのでしょうか?」
あなたの黒歴史にも、その原因となるなにかがあったのではありませんか?
だったらあなたが恥ずかしがる必要なんて無いじゃないですか。
もう黒歴史に悩まなくていいんです。
私たちは目の前にあったものに影響を受けただけなんですから……。
……と、素敵な話っぽい雰囲気のまま終わることもできるんですけど。
週刊チャオの悲劇はまだまだ続いちゃいます。テヘッ☆
独特の文化を持ち、たくさんの人の黒歴史を作ったコミュニティ、週刊チャオ。
ここから独特の文化がその純度を上げていき、さらなる変貌を遂げます。
黒歴史の話はここまでで終わりです。
この先は、観客気分で楽しんでいってください。
小説に興味のない人たちが小説を書く、週刊チャオ。
その週刊チャオで、なんと文学運動が発生します。
彼らは一体どんな小説を志すようになるのでしょうか?
「引きこもり文学」が発展していく記録をどうぞご覧あれ。
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