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悪かったところから言います。
整形されている設定、チャオの羽をくっつける設定は不要だったのではないかと思います。
鳥井さんの人格が形成されるにあたって、そういう流れがあればより「らしく」はなりそうですが、夏也と出会った後の流れが自然であるのに対して前半部分の「親と不仲」「家出」「身売り」あたりの流れと設定が強引に見えました。
夏也に羽を見せる、という部分も、わざわざ羽を持ち出さない方が素敵でした。「今までの男」と「夏也」の違いは十分描写されていると思いますし、そういう意味で、羽がくっついているのが作中においては余計なもののような印象を受けました。
最低限チャオの羽は許容できるとしても、整形はやっぱり不要だったんじゃないかと思います。自然にしよう自然にしようという動きがかえって不自然に見えます。
次に良かったところです。
キャラクターの描写がとても良かったと思います。
前半部分では鳥井さんのことをあまり好きにはなれませんでした。
(いや、もちろん後半部分でも「なんて図々しい女なんだ」と思いましたが)
けれど、夏也の「いい人っぽい感じ」に影響されてかどうかは分かりませんが、「図々しい部分」と「可愛らしい部分」が同居していて、二面性のある良いキャラクターが出来上がっていたと思います。
「二人の夜にチャオが邪魔」「チャオを素直に可愛がる」の部分が特に良かったです。
「私だって、今も自分はいい子だと思ってます」の部分も良いですね。
小説となると、どうしても矛盾のない一貫したキャラクターになってしまいがちですが、何せとても女性らしく描けているので、やや揺らいだ感じの鳥井さんはスマッシュさんの小説の女性キャラクターの中では一番気に入っています(好きか嫌いかで言えば嫌いですけどね)。
あとは、Skypeでも言いましたけどやっぱり夏也のキャラクターが非常に良い。特に良いなと思ったのは「ふらりとどこかに行ってしまいそう」という部分です。それに対し本人が「行かないよ」と否定しているところが人間らしくて素敵でした。
でもいい人っぽい感じは出てないと思います。夏也は大分ひどい性格していると思います。いったい誰がモデルなんだ。
次に細かいところで気になった部分です。
ダークチャオを「コドモのときと同じって思えば可愛い」の部分ですが、とても共感できました。
ゴールデンレトリバーの子犬は他の小型犬を軽々と凌駕するほどの可愛さを誇るのですが、ゴールデンレトリバーは大型犬なので、成長するととても大きくなります。子犬の時に可愛いと思って購入した飼い主は大型犬になったレトリバーの飼育を放棄することがままあるのですが、犬にとってみれば大きくなったのは体だけで、本人にとっては子供のままなんですよね。ゴールデンレトリバーに愛着のないスマッシュさんから同じ意見が出てきたことにびっくりしています。
夏也が初恋の子に対して淡白なのもいいですね。なんだかんだで鳥井さんの評価基準が「綺麗かそうでないか」なところもグッドだと思います。
「チャオみたいに可愛がって」の部分は、「チャオみたいに」は要らなかったと思います。そういうのは言わなくても通じるし、吐息がチャオっぽいならなおさらです。
そのあたりも含めて全体的に余計なひと言が多いなあという印象は受けました。でも好みによると思うので、上記の部分以外はスルーで。
ああ、でも「嫌な過去を見ている目」はちょっといまいちかなあって思います。その次の「悲しい寄りの」っていうセリフが良いだけに。
最後に全体を通して。
ストーリーは微妙でした。でもチャオアパートよりは好きです。
テーマである「変身」も微妙でした。
キャラクターは満点をあげてもいいと思っています。今までのスマッシュさんのキャラクターよりも人間くさくて僕は好きです。
最近のスマッシュさんの作風がどれも「チャオアパート2」って感じなので、たまにはがらっと雰囲気の変わった作品も読んでみたいですね。
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