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第一印象としては、悪くない、スマッシュさんらしい作品、と言った感じでした。ですが、スマッシュさんの作品が投稿される度にスカイプで毎回指摘される、前提となる設定を最初に羅列するという癖もいつも通りでしたね。もっとストーリーの長い作品であればその色も薄れたと思うのですが、今回の作品ではあまり良い作用をしていない、というよりこれまでの作品よりも悪い作用をしていたのかなと思います。
チャオの羽が背中についている、というパーツ自体は悪くないと思うのですが、そのパーツが作品全体を広げたり、動かしたりするような力を持っていたかというとそうでもないように思えます。それは何よりも鳥井さんが自分の羽や境遇について受け入れている面が大きいからでしょう。人に見せたくない、という描写もありましたが、言ってみればそれは鳥井さんという人物像のダイジェストに過ぎませんし、その気持ちは夏也さんに羽を見せるときにもあっさり打ち消されました。それはそれでいいのですが、もうそうなるのであればストーリーの中に鳥井さんの背景描写を何気なく散らした方が良いでしょう。この広がりそうな設定をこのサイズの小説の中に使うのは贅沢だと思いますが、もっとクールに使えたと思います。そういう意味で、書き出しと全体図の差に少し調子抜けしました。
キャラクターについては、夏也さんの余裕のある素直さが良かったと思います。こういう素直さは作品における典型的な人物からかけ離れて、より人間らしく感じることのできるいいキャラクターだと思います。「わかったよ、君は可哀想じゃない」から鳥井さんの羽を見続けるシーンとか「君はいい子じゃないよ」というところとか、意地悪な魅力があります。嫌な過去をしている目、というフレーズだけは全体と比べるとわざとらしいかなと思いました。
鳥井さんは、スマッシュさんの作品にしては珍しく感情だけで動くような人でしたが、基本的には堂々としていたのでありきたりな人物で終わらず良かったです。羽を見せるシーンで、最初はためらってもあっさりと見せるところまで行き着ける度胸もありますしね。あとは朝、自分をチャオの立場に置いて夏也さんとじゃれるシーンも良かったと思います。気になったのは、なんで彼女は夏也さんの電話番号をわざわざ記憶したんでしょう。そこらの描写があってもいいかなと思いました。
チャオは神様じゃないですよ、はヘルメタの対抗ですかね。こういう遊びがあったのも良かったです。
あとはなんでしょう。チャオがここまで日常の中のペットとして徹底して描かれたのってあんまりなかったんじゃないでしょうか。今まではほとんどが、死や転生が絡んだり、別れが絡んだりしていたように思います。ラストでナナコがピアノを弾いているところで終わるところなんかはそのことが顕著に表れていますね。
全体的に、二人の触れ合いやチャオの描写は良かったと思うのですが、芯が弱いなと思いました。短い割には日常的過ぎますし、鳥井さんが変化していく様を描いた訳でもない。個人的には、チャオの羽に絡むイベントがもう一個あってもいいかなと思いました。だーくさんもチャオの羽ほしいなあ。
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