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翔斗「お姉さん、あれからたくさんキャラを考えたよ。おかげでストーリーもけっこう思い付いたよ」
詩織「キャラのアイデアが出揃ってきたなと感じたら、ストーリーを考えるのに戻ってみようか」
翔斗「っていうことは、とうとう起承転結だね! それと、プロット!」
詩織「よく知ってるね」
翔斗「勉強してきました!」
詩織「じゃあ、それぞれ説明していくね」
翔斗「お願いします!」
詩織「起承転結は、ストーリーの構成のコツとして紹介されることが多いね」
翔斗「ちゃんと覚えてないけど、転で終わりに向かって話が大きく変化するんだよね」
詩織「この情報、忘れてオッケーです」
翔斗「え?」
詩織「起承転結、忘れていいよ」
翔斗「まじっすか」
詩織「うん。まじです。だって、意識しても必ず効果が出るってわけじゃないんだもの」
翔斗「え、そうなんだ」
詩織「むしろ下手に意識しちゃうと、起承の部分が平坦で退屈なストーリーになってしまうこともあって危険なの。だから、今は忘れて」
翔斗「下手に手を出すと失敗するってことか。オッケー、わかった」
詩織「お次は、プロットだね。簡単に言えば、ストーリーの設計図のようなものかな」
翔斗「設計図ということはすごく大事なことなんだろうな、きっと」
詩織「大事なのは確かだね」
翔斗「あ、まじで大事なんだ」
詩織「うん。だから役立ててね」
翔斗「はーい」
詩織「じゃあ、プロットのことを解説していくね」
翔斗「お願いします!」
詩織「さてプロットですが、さっき設計図と言いましたね」
翔斗「言ってた」
詩織「でも、本物の設計図と違って、結構いい加減で大丈夫です」
翔斗「あ、そうなんだ?」
詩織「前に出てきた、翔斗君のファンタジー小説で考えてみよう」
翔斗「はーい」
詩織「まず翔斗君がこれまで考えたアイデアを見せてくれる?」
翔斗「はい、どうぞ」
詩織「キャラもたくさん考えたね」
翔斗「そんなことないよ。まだ二十人だし」
詩織「十分多いよ。今回はこの三人だけ使います」
食いシン
漫才コンビのツッコミ
食いしん坊だけど痩せている
食べ物の匂いと悲しい話に弱く、心を揺さぶられまくる
ピンシン
漫才コンビのボケ
ピンクのネクタイをいつも着けている
愛想はないが、他人のために行動することをためらわない、お人好し
ヒロシン
漫才コンビが異世界に来て初めて会話をした人で、ヒロイン
飯屋の娘で、料理の才能に溢れすぎている
そのせいで客の舌が付いていけないこともたまにあるという噂
オリジナルの料理に必要な果物が森のドラゴンのせいで手に入らなくて困っている
詩織「これだけあれば、漫才コンビがドラゴンを退治して果物をヒロインに届けるって話ができそうだね。これを物語の始まりのエピソードにします」
翔斗「待って待って。ドラゴンはまだ使わないで。それ最後の方で使う話だから」
詩織「聞く耳持ちません。最初の方に持ってきても問題ないネタはさっさと使いなさい」
翔斗「なんでさ」
詩織「出し惜しみは、話をつまらなくする原因になるからです。使えるネタはどんどん出すべき」
翔斗「でもドラゴンなんてただの芸人には倒せないから、後の方にしようと考えたんだけど」
詩織「確かにそうなんだけど、現実を見過ぎないようにね。お笑いでどうにかしてもいいんだし。おかしなことが起きてこそのフィクションなんだから、遠慮しないでね」
翔斗「わかったよ。出し惜しみはなしにする」
詩織「ありがとう。それじゃあ始まりのエピソードのプロットを作るよ」
漫才で観客を爆笑させたコンビが、異世界に飛ばされてしまう
飯屋を見つけて喜ぶツッコミ、飯屋でヒロシンと出会う
ドラゴンから果物を取り戻す
詩織「これプラス、ドラゴンをどう攻略するかが決まれば、プロットは完成です」
翔斗「それだけで大丈夫なの?」
詩織「最低限これだけあればなんとかなるよ。思い付いたこと、入れたい話があれば、どんどん書き加えていってね」
翔斗「本当に大丈夫なのか不安だよこれ」
詩織「その気持ち、わかるよ。だけど小説を書きたい時に、あれこれ用意しなきゃいけないなんてじれったいって気持ちになることもあるでしょう?」
翔斗「ああ、ある。キャラ設定を考えてる時、ちょっとそう思った」
詩織「だから、書きたい時はあまり準備に気を取られないで、書き始めちゃおうって今回は言いたいわけ」
翔斗「本当にプロットがこんだけでも大丈夫なら、すぐにでも書き始められるけど、本当に大丈夫なのかな」
詩織「綿密な計算が必要な話でなければ大丈夫」
翔斗「計算が必要な話って?」
詩織「終盤のどんでん返しが一番の見せ場になる話とか、ミステリーとかだね。話のオチから逆算して全部書かなきゃいけないから、まさに設計図みたいなプロットが必要なんだ」
翔斗「俺のはそんなに計算必要じゃないな」
詩織「うん。だから設定もプロットも書きながら考えればいいよ。詳しくは次回以降説明していきます」
翔斗「書きながら考えるって、行き当たりばったりってことなんじゃなかろうか……」
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