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【女性】「遥か昔、チャオはペットであったらしい。籠の中の鳥ってわけだ」
暗い宇宙の中、一機の人型兵器のモノアイが目前に浮かぶスペースコロニーを睨んでいる。
そのコクピットで女性が独り言をデータレコーダーに吹き込み暇を潰していた。
彼女が一つ言葉を重ねるごとに作戦の時刻が近付く。
狙いはコロニーの出入り口、宇宙船ドッグの警備が手薄になるタイミング。
これから彼女は惑星同盟の影響下にある惑星で争いを始める。
【女性】「そんな時代でも、いや、そんな時代だからこそチャオたちに争いはあったのかな?」
【第1章 この狭い籠の天井で】
スペースコロニーサーミュ。
惑星同盟の影響下にあるコロニーで、住民は百万人に満たない小さなコロニーだ。
そのコロニーに侵入したのは共和国の人型兵器だった。
サーミュの宇宙船ドッグを守る同盟の兵士たちは大きく動揺した。
確認された人型兵器がたった一機だったからだ。
そんな無謀なことがあるだろうか。
仮にこれが正気の沙汰であるのならこれは陽動で、別ルートから本隊が来ると予想された。
しかしいくら索敵をおこなってもその本隊の影形は見えない。
ゆえに動揺と焦りは大きくなるばかりだった。
来るであろう本隊にどう備えるべきなのか。
さりとて確認できているたった一機の人型兵器も無視はできない。
やむなく同盟の人型兵器が続々と出撃することと相成った。
そしてたった一機のその侵入者と交戦したことで同盟は狂気の輪郭を認識した。
この侵入者は決して陽動ではない。
陽動などはなく、すなわちこれはこのたった一機の人型兵器が仕掛けてきた戦だったのだ。
侵入者の人型兵器は右手にビームライフルを、そして左手にビームセイバーを持っていた。
手近な機体にセイバーで切りかかると同時にライフルで異なる標的を的確に撃ち落とし、瞬く間に二機を撃墜する。
その動きに驚愕する間にまた一機が撃ち抜かれる。
尋常ならざるパイロットの技能をうかがわせた。
【同盟兵】「量産機のEQCでこの戦いぶり……化け物だ!」
侵入者が乗っていた機体は共和国に古くからある量産型で、名称はEQCという。
単体のスペックだけで見れば高性能な機体とは言えない。
量産を意図された設計で、なおかつ旧型なのだから。
だが旧型となっても現役で戦場に投入されているEQCは累計で何億という敵兵を葬ってきたであろう点において、優秀な量産機と言えた。
ただ量産機としての有能性はこの場では関係ない。
そこにいるEQCはたった一機なのだから。
しかしながら侵入者のEQCはこのサーミュの宇宙ドッグでもその数億の撃墜数に数十ばかりの殺傷を加算させる働きぶりを見せていた。
ビームソードを振りかざし接近してきた同盟の人型兵器にEQCは密着する形を取り、ビームセイバーで腕を切断する。
そして返す刀で首も切ってしまう。
切り離した頭部を拳槌で叩いて落とすと、頭を失った機体の首元でビームライフルを保持して奥にいた別の機体を撃った。
首を落とされた機体のパイロットは盾にされた形で同盟の兵士たちは一時的に攻撃を中断してしまうがそれでは自分たちがやられるだけとわかると躊躇いを捨てて射撃が再開される。
その同盟の射撃によって首を落とされた機体は爆発する。
しかしEQCはその前に離れて無傷であった。
【女性】「ただの量産機と思うなかれ、なんたってパイロットが違うのさ!」
パイロットは先ほどまでデータレコーダーに声を吹き込んでいた女性だ。
大暴れのEQCだがもちろん目的は撃墜数を稼ぐことではない。
宇宙船ドッグを突破してコロニー内部に侵入することこそが主目的である。
派手な立ち回りで余分に同盟の機体を破壊しながらもEQCはその目的の達成に近付きつつあった。
だが同盟もやられっぱなしではない。
この宇宙船ドッグを守る人型兵器乗りの中で最も優秀なパイロット、タネック=ビヨであった。
彼の乗る機体が侵入者のEQCの背後に追いついた。
【タネック】「あのEQC、なにか妙だな。形状がどこか違う……カスタム機というやつか?」
戦闘経験豊富なパイロットの明察だった。
よく見ればコクピットの形状が通常のEQCとは違っている。
通常の人型兵器のコクピットには組み込まれていない脱出装置がこの機体のコクピットにはある。
ただ一つ訂正するならば彼女のその機体は戦闘の目的で改造されたものではなく、新しい機体を開発する途中で作られたテスト機だ。
新機体の開発が始まって間もない頃、脱出ポッドの動作のテストをするにあたり機体の大部分にEQCのパーツを流用して作られたのがこの機体であった。
脱出ポッドのテスト機、名称はEQCダローガ。
テストの役割が終わった後に倉庫の片隅に眠っていた機体は面妖な巡り合わせによってその息を吹き返し、この戦場に降り立った。
【タネック】「だがたとえカスタムが施されようとも、この新型機サパロコウなら旧型のEQCに遅れは取らない!」
タネックの乗る人型兵器サパロコウはビームライフルでEQCを追い立てる。
そこにタネックの部下の援護射撃も入り、EQCはたちまちに腕や足をもがれる。
いかにEQCのパイロットが有能でも数と性能の差は大きかった。
スペースコロニーの人工の自然を目前にEQCは爆散した。
だがその爆発の直前にEQCのコクピットが機体から分離し、コロニー内部に向かって射出された。
【タネック】「脱出ポッド!? しかしコロニーに入られては!」
さすがにビームライフルだけでコロニーに穴が開くことはなくても、コロニー内での射撃は民間人の被害も出かねない。
ビームセイバーを持って分離したコクピットを追うがタネックの機体が追い付いた時には既にコクピットはもぬけの殻だった。
侵入者は脱出ポッドすら捨て、コロニー内に降りていた。
【タネック】「わざわざ脱出ポッドの機体で単身突っ込んで奇襲をしかけてくるとは、一体どういうパイロットなんだ……?」
多くの人型兵器には採用されていない脱出装置がつけられる。
それが意味するところはその機体に乗るパイロットに価値があるということだ。
機体を失ってもパイロットだけでも撤退させて命を保護する必要がある。
そういう思想が脱出装置という形になる。
だがこのスペースコロニーサーミュで起きた戦闘においては、命を守って撤退するための脱出装置ではなかった。
脱出装置が、侵入して命を奪うために使われたのである。
同盟の軍勢から逃れた女性はコロニーの人工森林に降り立った。
そして彼女は端末で特殊な信号を発信する。
人工森林内に生息する小動物ドラゴンの個体識別信号だ。
数が少なく希少なドラゴンを保護しデータを取るために取りつけられているチップから発する信号と同種のものを端末は送っている。
すると程なくしてその信号を頼りに大型バイクに乗った男が彼女のもとに駆け付けた。
【バイクの男】「……『人を食うドラゴンならば、チャオにキャプチャもされないだろう』」
ドラゴンの信号と対になる合言葉を男は言った。
【女性】「まあね。回収ご苦労様」
女性はバイクのタンデムシートに腰掛け、信号をオフにした。
この場から速やかに離れるべく男はバイクを発進させる。
【バイクの男】「まさか人型兵器を爆発させながら侵入してくるとは随分派手な登場だな?」
【女性】「だって私、人型兵器乗りは得意じゃないし。コクピットは窮屈で嫌いなんだよね」
【バイクの男】「……頼まれていたマガジンバッテリーと予備のハンドガンは用意できている」
【女性】「ありがとう。それじゃあ、私の本当の仕事を始めましょう」
コロニーに降り立った女性の名はエスア=イト。
正規の手段で宇宙港を通ることのできない罪人。
彼女は共和国に雇われた殺し屋であった。
※スマッシュ…なかのひと。なにもしてないのに肩が痛いなー!
※けいりん…チャオ?なにもしていない人間の感想か、これが?
【スマッシュ】「ついに新型機が登場!ですね!!」
【けいりん】「ちょいちょいちょーい!!」
【スマッシュ】「ん?」
【けいりん】「その前に言うべきことがあるでしょう!?」
【スマッシュ】「ああ、そうだった。主人公オリトくんの新型じゃないんだ……?」
【けいりん】「それはそれで気になりますけど。今後オリトくんに乗り換えイベントあるのかは気になりますけど!」
【スマッシュ】「でしょ〜?」
【けいりん】「じゃなくて!上の奇怪な文章はなんですのよ……?」
【スマッシュ】「感想」
【けいりん】「これのどこが感想だ?」
【スマッシュ】「これがチャオBの感想の本来の姿なのです。みんな忘れているだけでチャオBではこういう感想のスタイルが普通だったんですよ」
【けいりん】「すっげえ流ちょうに嘘言うじゃん……」
【スマッシュ】「ところで気になったんですけど」
>【エルファ】「…話は戻って、ロボットモノ恒例の新型乗り換えイベントもありました」
>【ホップ】「シャーロットさんが先に乗り換えちゃったからねー」
>【エルファ】「そこなんですよ、普通順番逆ではないですか?」
>【ホップ】「反省しています…話の順番考えるべきでした…」
【スマッシュ】「これマジ? 新型乗り換えって主人公サイドが先にやるの?」
【けいりん】「わかんねっす。先にバロンズゥが登場したからそういうものだと思っていました」
【スマッシュ】「そう考えると乗り換えをしないロボットものばかり見てきた気がする。ヘボットとか」
【けいりん】「おもちゃの販促がある場合には、主人公側の乗り換えを終盤に置いちゃうのはまずいという理屈があるのかもしれませんが……」
【スマッシュ】「でもシャーロットさん、一度スイーツガールの面々にボコボコにされたのに機体スペック追い付かれちゃって可哀想ですね」
【けいりん】「あ〜あ、またシャーロットさん泣いちゃいますね〜〜」
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