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【Galactic Romantica】 ホップスター 20/12/23(水) 0:06

プロローグ:交差する運命 ホップスター 20/12/23(水) 0:06

プロローグ:交差する運命
 ホップスター  - 20/12/23(水) 0:06 -
  
遥か未来、人々は、そしてチャオは銀河を自在に駆け巡る。
だが、そんな時代でも、いや、そんな時代だからこそ、彼らは争うことを止めなかった。


        【プロローグ 交差する運命】


…どんなに時代が変わっても、変わらないものがある。
人々の争いが終わらないこともそうだが、例えば色恋沙汰の微妙な距離感だとか、あるいは未知の領域へと足を踏み入れる時の表現し難い緊張感とかもきっとそうだろう。
そして、ここに立っている、この物語の主役になる1匹のチャオも、そんな緊張感に襲われていた。

【チャオ】「こ、ここが…」

彼の名前は、オリト。
オリトが立っているのは、惑星同盟軍の士官学校の正門前。そして今日は、その入学式の日。
そう、彼は士官学校の新入生である。

周囲には、彼と同じ新入生の少年少女とその両親と思しき姿が多い。
だが、彼は1匹。彼は、両親を知らない。
物心ついた時はスラム街のようなところで、似たような境遇の人間やチャオと共にいた。

幸いなことに、彼は多少勉強ができた。
この時代、いや、いつの時代もそうかも知れないが、勉強ができるが貧乏な子供が目指すべき数少ない進路、それは軍に入ること。
士官学校の学費は格安で、しかも軍に入れば実力社会。才能さえあればいくらでものし上がることができるのだ。もちろん、1つ間違えれば即あの世行きというリスクはあるが、失うものが少ない者の場合、それは大きなリスクにはならないことが多い。

かくして、オリトも猛勉強の末、かなりの倍率を潜り抜け、士官学校に合格。そして、今この場に立っているという訳である。


【司会】「それでは、校長であるゲオルグ=ソラント大佐からの訓示です」
【ゲオルグ】「…コホン。皆さん、入学おめでとうございます。これから皆さんは将来立派な士官になるべく今ここに…」
緊張の中、入学式は進行していく。ここは士官学校なので、校長先生の講話は訓示という形で示される。最も、いわゆる「校長の話」が長くてかったるいのもまた、古今東西変わらない話である。

だが、緊張もあるのだろうが、オリトは真面目にゲオルグ校長の話を聞き続けていた。
【ゲオルグ】「…宇宙開拓時代が終わりを告げ、銀河全体の覇権を争う銀河戦国時代へと突入してからおよそ50年。皆さんもご存知の通り、現在我々の銀河は、我らが惑星同盟と、銀河連合、宇宙共和国の3大勢力による三つ巴の戦争状態にあります。既に戦争は泥沼化し、無駄に命を落とすだけとの批判も多く、争う意味を問う論調も数多く聞かれます。だからこそ皆さんには、この状況に終止符を打つ者になってもらいたい。つきましては…」

とはいえ、この時代を生きる者たちにとっては、この内容は常識中の常識。猛勉強の末難しい試験に合格した彼ら新入生には尚のことである。こっそりと手で隠しながらあくびをする新入生が後を絶たない。
【オリト】(いくらスラム育ちの俺でも、さすがにこれぐらいは知ってるけど…)
当然、オリトも然りである。あくびしそうなのを抑えつつそんな事を考えていたら―――記憶が飛んだ。


【オリト】(………あ…あれ…?)
気がつくと、視界は真っ白。どうやら天井のようだ。
【オリト】(俺……確か……校長訓示を聞いてて……)
どうやら、訓示の途中で倒れてしまったようである。すると、女性の声が聞こえた。
【女性】「あら、気がついたー?」
【オリト】「あ、はい。なんかすみません」
起き上がってみると、保健室のような場所にいた。隣には先ほどの声の主である人間の女性。
そして彼女は、恐らくはいわゆる保健の先生といったところか。
【先生】「軽いめまいみたいだから気にしないで。立てるかしらー?」
【オリト】「あ、はい…」
ゆっくりとベッドから降りる。多少ふらついたが、どうやら大丈夫なようだ。
【先生】「まだ入学式やってるから、第一講堂に戻れば大丈夫。無理はするんじゃないわよー」
【オリト】「分かりました、ありがとうございます」
最初はゆっくりと、やがてしっかりと歩けるようになり、彼は一礼をして保健室から出て行った。

それを見送った彼女だったが、少ししてあることに気がついた。
【先生】「って、あの子新入生よねー?第一講堂までの行き方、分かるかしら?ただでさえこの学校広いしー…」
彼女は一瞬彼を追いかけて道案内しようかと思ったが、止めた。ある外せない用事があったからだ。


オリトは案の定、迷ってしまっていた。
【オリト】「え、えっと、どっちだろう…誰かに聞こうにも入学式で誰もいないし、保健室に戻る道も分かんなくなってきた…」
キョロキョロと周囲を見回すが、さっぱり判らない


…そのオリトが道に迷っていた、そのちょうど真上にある部屋でのことである。
何やら司令室のような雰囲気の部屋に、10人前後の学生が集まっていた。
【女生徒A】「…ゴーサイン、出ました!」
座ってモニターを見つめていた女生徒がモニターに浮かんだ表示を見て合図を送る。すると、全員が一斉に動き出し、それぞれが用意されていた座席につくと、一気に慌しくなる。
【女生徒B】「もう一度確認するわ。各システム、問題ない?」
リーダーらしき女生徒がそう発すると、他の生徒が口々に「問題ありません!」と返す。全員の返答を確認したら、さらに指示を出した。
【女生徒B】「オッケー、それじゃあ浮上シークエンス、準備開始!」
【男生徒A】「了解!浮上シークエンス、A−1からB−3まで発動!」
【男生徒B】「エンジン起動っ!…カストル、ポルックス共に出力30%まで上昇、ここまでは安定してる!」
【女生徒B】「そのまま80%まで上げて!くれぐれも慎重にね!」
【女生徒C】「…こっちも、準備、できました、いつでも、いけます」
【女生徒D】「それじゃあ、あとは指示が出たらB−4から最後まで、ってことね」

その頃第一講堂では、ゲオルグ校長の訓示がまだ続いていた。さすがに飽きてきた様子の新入生が目に見えて増えてくる中、職員らしき人が静かに壇上に上がり、ゲオルグ校長に小声で耳打ちをする。それを聞いたゲオルグ校長は、コホン、と軽く咳払いをし、こう話題を変えた。
【ゲオルグ】「…さて、ここで新入生の皆さんに、先輩の皆さんからのプレゼントがあります。皆さん、回れ右をして後ろのスクリーンに注目して下さい」
新入生が軽くざわつきながら、後ろにある巨大スクリーンに目を向ける。するとそこには、校内のある建物が映し出されていた。
【ゲオルグ】「ご存知かも知れませんが、我が校にはエリートのための『X組』と称される特別クラスが存在します。彼らは3年になると、練習艦『クロスバード』で練習航海に向かうことになります」
ゲオルグ校長がそう説明している間に、講堂にゴゴゴゴゴ、という大きな地響きが響き出す。すると、スクリーンに映し出されていた建物が土煙を巻き上げながら浮上しだした。そう、この建物、通称『X棟』と呼ばれるX組専用の建物こそがクロスバードなのである。新入生たちの軽いざわつきが、大きなどよめきに変わる。
【ゲオルグ】「確かに彼らは学校内では特別な扱いになります。また卒業すれば皆さんよりは高い階級で軍に入ることになります。しかし軍は完全な実力社会。入隊後はもちろん、在学中からしっかり努力すれば彼らより昇進することも夢ではありません。現に現在の同盟軍高官にはX組出身でない者も多数います」
そしてクロスバードがある程度の高さまで浮上すると、下部の窓が空き、「入学おめでとう」と書かれた巨大な垂れ幕が現れた。さしずめ巨大なアドバルーンといったところか。
クロスバードはしばらくの間その場で高度を保ちつつ垂れ幕を出した後、垂れ幕を切り離して下部の窓を閉じる。

【女生徒A】「新入生歓迎、成功しました!」
【女生徒B】「まず最初の山場をクリアね。でもまだ気は緩めちゃダメよ!」
その時、彼女たちがいる部屋に、1人の女性が入ってきた。先ほどの保健の先生である。
【男生徒C】「あ、先生!遅かったじゃないですか、ギリギリですよ」
【先生】「ごめんごめん、入学式で倒れた新入生がいてねー」
そのまま彼女も空いてる席に座り、ベルトを締めた。
【女生徒B】「それじゃ、変形シークエンスに入るわよ!」
【女生徒A】「了解!クロスバード、変形します!」

その掛け声と共に、空中に浮かんでいた巨大な建物がガシャン、ガシャンと音を立てて、変形していく。まるでCGのような光景に、スクリーンを見ていた新入生は大きな歓声を上げる。そうしてクロスバードは『建物』から『戦艦』へと姿を変えた後、さらに高度を上げていき、やがて地上からは見えなくなった。

【ゲオルグ】「…それでは皆さん、よい学生生活を送ってください」
ゲオルグ校長は壇上からそれを見届けると、こう締めくくって一礼をし、校長訓示を終わらせる。拍手を送る新入生。…だがそこに、『彼』の姿はなかった。


【オリト】「痛っ…一体何がどうなってるんだ!?」
第一講堂に戻るために廊下を歩いていたオリトだったが、突然轟音と振動、そして衝撃に見舞われ、彼の小さいチャオの体は吹っ飛び、一度意識が飛んだ。ようやく気がついたところである。
彼はよく分からないまま辺りを見回す。一応さっきまで歩いていた廊下のようだったが、微妙に様子が異なっている。さらに状況を把握するために、窓を見つけて軽く飛び上がり外を覗いたが、そこから見える景色に彼は呆然とする。
【オリト】「えっ…空…!?」
そこから見えたのは、遥か遠くに小さく見える、学校の敷地とその周辺の街。その景色を見ただけで、自分が空にいるということは理解できたが、ではなぜ今自分が空にいるのか、それが皆目見当も付かなかった。

…そう、彼はX棟へ迷い込み、そのままクロスバードの発進に巻き込まれたのである。


そんな同乗者がいるとは露知らず、クロスバードのクルー達は次のシークエンスに入る。
【女生徒A】「変形シークエンス完了!ここまで全て順調です!」
【女生徒B】「オッケー!でもまだ気を抜いちゃダメよ!大気圏抜けなきゃいけないんだから!」
【男生徒B】「カストル、ポルックス共に出力90%!問題なしだ!」
【男生徒A】「それでは…大気圏脱出シークエンス、始動!」

するとクロスバードは垂直に向きを変え、しばらくするとブースターに火が点き、一気に加速。宇宙へと飛び立った。

【オリト】「…うわあああああっ!!」
その際の衝撃で、オリトは再び吹き飛ばされ、意識を失った。
引用なし
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