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【企画】ろっどの物語を書こう! ろっど 17/3/26(日) 3:20

最終話 光る道 スマッシュ 17/8/29(火) 11:25

最終話 光る道
 スマッシュ  - 17/8/29(火) 11:25 -
  
 最後の戦いで手に入れた三つのカオスエメラルド。
 その一つは僕が勝手に地上に落としてきた。
 だから二つしか手に入らなかった。
 と思ったら、なぜかモーニングスターの手に握られているカオスエメラルドは一つだけになっていた。
「なんで減ってるの!?」
「言ったでしょ。カオスエメラルドがなくなったら、命が生まれなくなっちゃうって」
 ミツルが呆れたように言った。
「それは倫理的な問題があるから、私たちは絶対に二つ、カオスエメラルドを残すようにしてるの」
「はい?」
「要するに、君がわざと落とすまでもなく、カオスエメラルドは二個あの星に残す予定だったの」
「はああああ!?」
 徒労だった。

「祭りじゃあああああああ!!」
 ひげ爺さんが叫ぶ。
 また祭りになった。
「君たち、もしかしなくても祭り好きだろ」
「祝うことは大事なことだよ」
 ミツルはにこにこしている。
 マキナがミツルの肩をぽんぽんと叩いた。
「なあなあ、今度は俺も歌っていいか?」
「うん。歌っちゃいなよ」
「よっしゃあ。レイがアイドルみたいになってるんだ。俺だってアーティストになってやるぜ」
 こいつは一体なにを目指しているのか。
「タスクは歌わないのか?」
「いや、僕はいいよ……」
 そして祭りが始まる。
 マキナはモーニングスターの頭の上で何曲も続けて歌いまくっている。
 人々はマキナの歌に興奮していた。
 モーニングスターを取り囲んで、飛んだり跳ねたりしながら聞いている。
 たまにミツルも混ざって歌い、さらに盛り上がる。
 その楽しそうな様子を遠目に見ていると、僕も歌えばよかったかな、という気分になってくる。
 僕はうまく歌えないけど。
 そういえばひげ爺さんが踊っていない。
 お立ち台にはミツルが立っている。
 あの人はいつも踊るわけじゃないのか、と思っていたら、
「一対の翼さえあれば、空を飛ぶことができる」
 と話しかけられた。
 ひげ爺さんだった。
「え?」
「惑星マドカマユカに残ったカオスエメラルドは二つだけだった。我々はそこから宇宙船城宝を作り上げ、ここまで再興することができた。ゆえに我々は信じているのじゃ。たった二つだけでも、カオスエメラルドがそこにあれば、人類の可能性は潰えない」
「それが、一対の翼?」
 ひげ爺さんはうなずいた。
「我々はこの新しい伝説を信じている。モーニングスターの勝利もその伝説の象徴の一つとなるだろう」
 二体のアーティカが合体することで、二つのカオスエメラルドを持つことになるモーニングスター。
 それもまた一対の翼なのだ。
「君たちの星が生み出した、アーティカという兵器。人間とチャオがペアとなり、共に動かすという点は美しい」
「それもまるで翼みたいだ、と?」
「そのとおり。人とチャオ。チャオとチャオ。そして、人と人。そこに翼ができれば、可能性は生まれる」
 地球にもまだ可能性は残っている。
 ひげ爺さんはそう僕を励ましているのだろう。
「君もまた、この城宝で誰かと翼になるだろう。その日が来ることをわしは祈っているよ」
 マキナが歌い終わり、しかしすぐ次の歌を歌い始めた。
 ミツルはサビから歌に加わって、好き放題に高音を出している。
 観客たちはリズムに合わせて手を振っている。
 今の僕たちには、未来がある。


 城宝は僕たち以外にも何名か、ジーンとして地球人を迎え入れていた。
 その中に、レイがとても懐いている子がいた。
 イチロウという名前の、八歳の少年だった。
「お母さんを亡くしてしまって、それで行く当てがないみたいだったから、父親と一緒に保護したの」
 とミツルは僕に説明した。
 少年には母親の面影があった。
 イチロウはレイと息が合い、アーティカもうまく操縦してみせる。
 それでミツルは、レイをイチロウに譲った。
 イチロウとレイ。
 新しいコンビの誕生だった。


「シドヤ亡き今、残った俺たちが平和を守らないとな」
「ハバナイさん、俺、悔しいですよ。こんなふうに生き残るなんて。いつかあいつを追いかけて、復讐したいです」
「そう言うなよスケヤ。まずはGUNの再興、そして治安の向上が先だ。今回の混乱で、世の中は乱れてしまったからな」
 一対の翼という伝説がある。
 地球の人々の知らない、しかし宇宙を旅するある船で信じられている伝説だ。
 たった二つだけでもカオスエメラルドがあれば、人類は繁栄できる。
 そう彼らは信じている。


「ビルティさぁん、タスク君を追いかけられる宇宙船、作ってくださいよぅ」
「無茶言うなよメッキィ。そんなの作れるわけないだろ」
「そもそも女であることより、母であることを優先するべきでは。ただでさえ片親しかいないのだから」
「そうだ。ナンティの言うとおりだぞ」
「ええ〜。お母さんであることも大事ですけどぉ、女であることも捨てたくないです」
「とにかく宇宙船は無理だ。だから子ども三人を立派に育てることだけをまずは考えろ」
「もしかしたらこの子たちが宇宙船を作ってくれるかもしれませんよ?」
「あ、それいいね! じゃあ英才教育しなきゃね!」
 たった二つだけでも。
 そこにカオスエメラルドがあれば、可能性は潰えない。
 一対の翼という伝説が、地球からカオスエメラルドを奪い去ったあの宇宙船にはある。


  覚醒の星物語 〜完〜
引用なし
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