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【企画】ろっどの物語を書こう! ろっど 17/3/26(日) 3:20
投稿コーナー ろっど 17/3/26(日) 3:21
覚醒の星物語(スター・ストーリー) スマッシュ 17/4/7(金) 23:23
第一話 DAYS スマッシュ 17/4/7(金) 23:25
第二話 少年ハート スマッシュ 17/4/10(月) 22:53
第三話 ライオン スマッシュ 17/5/1(月) 23:58
覚醒するあらすじ スマッシュ 17/8/20(日) 22:45
第四話 Butter-Fly スマッシュ 17/8/21(月) 22:59
第五話 Escape from the City スマッシュ 17/8/22(火) 10:44
予告・新章覚醒 スマッシュ 17/8/22(火) 10:44
第六話 おどるポンポコリン スマッシュ 17/8/23(水) 16:48
第七話 BOY MEETS GIRL スマッシュ 17/8/24(木) 21:18
第八話 輪舞-revolution スマッシュ 17/8/26(土) 23:55
予告・物語はさらなるステージへ覚醒する スマッシュ 17/8/27(日) 0:24
第九話 ひゃくごじゅういち スマッシュ 17/8/27(日) 20:23
第十話 SONIC DRIVE スマッシュ 17/8/29(火) 10:34
最終話 光る道 スマッシュ 17/8/29(火) 11:25
ミツルとマキナのアフター真実の星物語 スマッシュ 17/8/29(火) 22:08
ろっどの塊 チャピル 17/4/8(土) 23:41
トランプの裏側 だーく 17/4/10(月) 1:14
感想コーナー ろっど 17/3/26(日) 3:21
チャピルさんに感想 ろっど 17/4/10(月) 5:06
感想ありがとうございます だーく 17/4/10(月) 22:02
返信ありがとうございます! スマッシュ 17/4/12(水) 21:12
感想ありーっす! スマッシュ 17/4/11(火) 23:10
Re(1):チャピルさんに感想 チャピル 17/4/16(日) 20:56
だーくさんに感想 ろっど 17/4/10(月) 5:17
感想ありがとうございます だーく 17/4/10(月) 21:54
感想ありがたく存じ上げる スマッシュ 17/4/11(火) 23:20
チャピルさん乾燥! スマッシュ 17/4/11(火) 23:47
乾燥蟻です(笑) スマッシュ 17/4/12(水) 1:03
乾燥アリガトーショコラ だーく 17/4/12(水) 21:08
Re(1):チャピルさん乾燥! チャピル 17/4/17(月) 6:54
だーくさんへの間奏です スマッシュ 17/4/12(水) 0:49
間奏聴き入ってしまいました だーく 17/4/12(水) 21:15
チャピルさんへ感想 だーく 17/4/12(水) 22:03
Re(1):チャピルさんへ感想 チャピル 17/4/17(月) 7:07

【企画】ろっどの物語を書こう!
 ろっど  - 17/3/26(日) 3:20 -
  
ご無沙汰しております、ろっどです。

今回の企画ではみなさんに「ろっどの物語」を書いていただきます。
みなさんなりの解釈やみなさんなりの表現でろっどの物語を「プロット」とし、5章の「ウィンはレースが好きだった」まで書き終えることを目標としていただきます。
でもぶっちゃけ1章から5章まで書くのは長くてめんどくさいので、ある程度要約してもよいとします。

この企画の目的は特にありませんが、強いて言うなら「よりよい自分の冒険」です。

そんなこと言っても、ろっどの物語を読みたくない!という方もいらっしゃると思います。
ろっどの物語はだいたい一言で表すと「思い込みの激しいろっどさんが極端な考え方で身を滅ぼす話」です。
この趣旨に則っていれさえすれば、どのように話を展開してもOKとします。

便宜的に投稿コーナーや感想コーナーも用意しますが、今回は週刊チャオ鍛錬室みたいに辛口な方針ではなく、プロットが決まっているというあえて揺るがぬ条件の元、作者の個性や違いというものを感じ取っていただければと思います。小説は「話を作る技術」や「表現の巧みさ」に注目されがちですが、その人にしか書けないものが書けるならそれでいいんじゃないかと思っています最近。

じゃあみんながんばって。書いた人には俺が感想書きます。
引用なし
パスワード
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投稿コーナー
 ろっど  - 17/3/26(日) 3:21 -
  
ろっどさんが企画スレを立てるとだいたい「投稿コーナー」に何もレスがつかないことがあってそれが結構ショックだったのでやめてください。誰か書いてください。
引用なし
パスワード
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感想コーナー
 ろっど  - 17/3/26(日) 3:21 -
  
最近みんな通話で話しちゃうけど感想は文章で残すのも面白いと思うから感想を書こう!
引用なし
パスワード
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覚醒の星物語(スター・ストーリー)
 スマッシュ  - 17/4/7(金) 23:23 -
  
覚醒の星物語(スター・ストーリー)
偽予告編

をやろうと思ったが、
特にネタはなかった!!
引用なし
パスワード
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第一話 DAYS
 スマッシュ  - 17/4/7(金) 23:25 -
  
 四人で正方形を描くように立つ。
 それぞれの足下には三十センチの水色のぬいぐるみが座っている。
 ぬいぐるみに見えるそれは、生き物だ。
 チャオという。
「それじゃあ始めるぞ」
 太った、背も僕たちの中では一番高い、スケヤ君がそう呼びかける。
 するとチャオの頭頂部にある球体が紫色に変わり、カウントダウンの数字が表示される。
 僕たちは意識を集中し、チャオとシンクロする。
 そして、ゼロ。
 チャオは一斉に飛び上がる。
 僕の目の前のチャオ以外。
 飛ばなかったチャオは、こてんと横に倒れ、飛んだ他のチャオをぼうっと見た。
 僕も顔を上げて、戦っているチャオを見る。
 スケヤ君のチャオが一番速く飛ぶ。
 ぐんぐんと上昇し、上からペイント弾を撃つ。
 その弾は綺麗に他のチャオに当たる。
 僕が操ろうとした、横になっているチャオにもペイント弾が当たった。

 チャオというのは、ペットであり、携帯用マルチデバイスでもある。
 ぬいぐるみのように丸みがあり、触れればゼリーのように弾力がある、可愛い二足歩行の生き物。
 それが元々のチャオだ。
 その可愛さから人気があったが、美しい自然の中か、それを再現したような、よく整えられた環境でしか生きられない虚弱な生物であった。
 そんなチャオたちをサイボーグ化し、体内に空気や水の清浄機を入れることで、ペットとして飼えるようになった。
 そのついでに、様々な機能が入れられている。
 その一つに、チャオと意識を融合して撃ち合いをする、チャオバトルという遊び方があった。
 でも僕はまだチャオを飼っていなかった。
 友達のチャオを借りた結果がこれだった。
 心が通じ合っていないチャオはうまく操縦できないのだ。
 飼い主である友達自身も、チャオを完璧に操作できているわけではないようだ。

 僕がチャオを飼えない理由は、父さんと兄にあった。
 僕の兄、テスクは、チャオバトルがうまかった。
 その才能をGUNに見いだされ、兄は「アーティカ」の操縦者になった。
 アーティカとは、GUNが宇宙からの脅威に備えて作り出したロボットだ。
 チャオと同じように、意識を融合させて操作するので、チャオの扱いのうまい者はアーティカの操縦者としても優秀なのだ。
 兄と、兄のチャオのロヴは、華麗に空を飛んだものだった。
 ロヴはヒコウチャオで、まるで指で曲線を描くように空中を飛び回ることができた。
 ペイント弾も全く当たらない。
 兄がGUNに連れていかれる直前、兄は僕に言った。
「タスク、お前がいつか俺のように飛べるようになったら、その時は一緒に飛ぼう」
 その約束を実現するために、僕はチャオが欲しかった。
 しかし父は、兄をGUNに奪われたことが気に入らなくて、僕にチャオを飼わせてくれない。
 家を継ぐ者をGUNなんかに盗まれてたまるか。
 そう日々怒っている。
 兄の代わりに僕に家を継がせる気で、僕はチャオを飼うことができない。
「タスク、お前はチャオなんか飼うんじゃない。あれはゴミの遊ぶくだらないガラクタ生物だ」
 最悪な毎日だ。
 僕はチャオを飼えないまま、十一歳になっていた。

 僕は毎日チャオショップに行く。
 父に見つからないようにチャオを飼う方法はないだろうかと考え、日々を過ごしている。
 それは、チャオバトルをしている周りのみんなから逃げる意味もあった。
 チャオバトルに夢中になっているスケヤ君たちがここに来ることは滅多にない。
 そして僕は、珍しい銀色のチャオと見つめ合っては、銀チャオを乗りこなす世紀の天才になった自分を妄想する。
 店員のお兄さんは、毎日そうされると銀チャオがなついちゃうからやめてくれ、と半分本気の冗談を僕に言う。
 本当に銀チャオが僕になついて、僕のものになったらいいのに。
 そう思った。

「銀チャオ、売れたよ」
 十一歳の夏休みの始まりの日、すっかり顔見知りになった店員のお兄さんは僕に言った。
 銀チャオは、珍しいチャオを収集しているという、都会のチャオ愛好家に買われてしまった。
 しかし店員のお兄さんは、こんなことも言った。
「わけありのチャオがいるんだけど、飼ってみないか?」
「どんなチャオなんですか」
 チャオバトルができないチャオならいらない。
 できるチャオなら、欲しい。
 どうやって父を誤魔化すか、考えなくてはいけないけれど、まずチャオを手に入れないことには僕はスタートラインに立てない。
「そのチャオには、心がないんだ」
 お兄さんは暗い顔をして言った。
 喜ぶことも悲しむこともない。
 きっと転生をすることもない。
 そんなチャオは売り物にならず、本来なら処分するしかないらしい。
「チャオバトルはできるんですか」
 僕にとって重要なのはそこだった。
「たぶんできるよ」
 とお兄さんは言った。
 僕はそのチャオを飼うことにした。
 名前はクリア。

 心がないチャオは、僕にとって都合がよかった、とても。
 まず声を出すことがなく、勝手にうろつくこともしないので、父に見つからないように飼うことができた。
 さらにチャオバトルでは操縦が簡単だった。
 操縦がうまくできない大きな原因は、人間とチャオの考えが一致しないことによる。
 常に一心同体とはいかない。
 どちらかが譲って、相方に身を任せなければならない。
 どちらも譲らずに我を通そうとすると、まず動きがぐちゃぐちゃになり、すぐに動きが止まり、的になる。
 しかし心のないチャオであれば、チャオが主張することはない。
 僕は僕の思い通りにクリアを動かすことができた。
 クリアには自分の意思というものがないので、日常の世話をする時にも操縦しなければならないことがあった。
 一日中チャオを操縦しているような日々を送ることになる。
 これが、チャオバトルに役立った。
 僕がスケヤ君以外にチャオバトルで負けることはなかった。
 そしてずるをしているとして、チャオバトルには参加させてもらえなくなった。

 アーティカが空を飛んでいる。
 丸っぽい形を集めたのがチャオのシルエットなら、アーティカのシルエットは長方形を集めたものだ。
 地球はずっと危機に晒されている。
 月の近くに異星人の宇宙船があり、そこから敵の兵器が地球に送られてくる。
 チャオのキャプチャする小動物に似た形の、巨大な機械の兵器が暴れる。
 それを撃退するのが、アーティカだ。
 兄の乗っているアーティカは「スターダム」という名前で、ロヴと同様、飛ぶことに重きを向いたアーティカだそうだ。
 飛んでいるアーティカを見ると、あれは兄のスターダムなんじゃないかと思う。

 僕とスケヤ君は、同級生に敵がいなくなったので、二人で上級生と戦うようになった。
 二対二のタッグマッチ。
 僕たちは負けなかった。
 飛ぶのがうまいスケヤ君と、低空すれすれを飛び続けることのできる僕が上下で挟み撃ちをする。
 その作戦で、中学生にさえ勝つことだってできた。
 僕たちは放課後、中学校に行くのにも退屈になってきて、そろそろ高校生と戦おうかと話していた。
 僕たちが負けたのは、そんな時だった。
 勝負を挑まれた。
 僕たちがチャオバトルをしに行っている中学校とは違う学校の制服を着た男女だった。
 その二人は、僕たちと戦うために、僕たちの通う小学校にやって来た。
 いつも通りの二対二、と思ったが、そうならなかった。
 相手の女の方が、一人で戦うと言い出した。
「だって私だけで充分じゃん」
 あくまで二人で戦おうとする男に、女はそう言った。
 すると男はすぐに引き下がって、
「いいけど、わかってるよな?」
 と念を押す。
 わかってるわかってる、と女は不敵な笑みを浮かべる。
 僕とスケヤ君は、絶対に勝ってやる、と思った。
 勝って、改めて二対二をさせてやる。
 僕たち三人は、二等辺三角形を描くように立った。
 女のヒコウチャオは、スケヤ君のチャオに負けない速度で上昇する。
 そのせいで挟み撃ちの鉄板作戦が使えなかった。
 スケヤ君は早く勝負を決するためにペイント弾を撃つ。
 しかし女は機敏に動いてそれを避ける。
 女のチャオの動きは、急停止と加速力が特徴的だった。
 空中で急に止まり、そして並外れた加速力によって別の方向へ飛ぶことで、ジグザグとした動きを可能にしている。
 女のチャオと、それを追うスケヤ君のチャオは徐々に高度を下げる。
 どちらもペイント弾を撃たない。
 確実に当てられる状況を作ろうとしている。
 そして、自分がそんな状況に追い込まれまいとしている。
 二匹は試合を動かすために、僕の方へ向かってくる。
 女が狙うのは、僕とスケヤ君のフレンドリーファイアだろう。
 そして僕たちにとっては、念願の挟撃のチャンスである。
 女のチャオはクリアを狙ってペイント弾を撃った。
 標的がこっちに変わった。
 そう思った。
 しかしそれが女の罠だった。
 女は僕との距離を詰めるような動きをして、僕を先に倒そうとしているように見せかけて、後ろから攻撃をしかけようとしたスケヤ君に狙いを切り替えて、ペイント弾を当ててしまった。
 これで一対一だ。
 チャンスは、女が僕に近づいてきていたこと、そしてスケヤ君の方を見ていたということだ。
 距離を詰めながらペイント弾を撃ち、今のうちに倒す。
 そう思ったが、女は上に移動して、ペイント弾を避けた。
 このままではまずい。
 僕は急停止する。
 案の定、僕の前にペイント弾が落ちる。
 後ろに行こう、と思った瞬間、後ろにペイント弾が落ちてくる。
 それに驚いて、前にも後ろにも動けなくなった。
 そこを女のチャオはペイント弾で撃つ。
 だけど僕はいちかばちかで、ペイント弾を女のチャオに向けて撃っていた。
 引き分けになれば。
 そう思って撃ったペイント弾は、女のチャオの撃ったペイント弾にぶつかった。
 相殺。
 試合はまだ続く。
 そうわかって動こうとしたが、クリアにペイント弾が当たった。
 女のチャオは、二発、撃っていた。
「二対一でよかったじゃん」
 女は得意げに、男に言った。
 男の方はなにもコメントせず、帰るぞ、とだけ言った。
 僕とスケヤ君が、アーティカの操縦者候補としてGUNに徴集されたのは、その二日後のことだった。
引用なし
パスワード
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ろっどの塊
 チャピル WEB  - 17/4/8(土) 23:41 -
  
 彼らはいびつな形をした青い塊で、お世辞にも美しいとは言えなかった。ごつごつとした胴体の上に、にきびのような赤い斑点がついている。その斑点が、波打つように明るくなったり、暗くなったりしている。ぼくは笑顔を取り繕った。
「はじめまして」
 斑点が黄色く点滅した。
 初めはヒトの姿をしていたぼくも、しばらくするうちに青い塊を身に纏うことを覚えた。そうしてぼくは、新しい星に受け入れられたのだった。

 ホームステイ先のナカセンさんは、はじめて会ったぼくに飛行訓練を勧めた。
 青い塊を纏ったまま、一箇所に力を込めるとイオンスラスターとなる。イオンスラスターは白い光とともに強い推力を産み出す。トゥンバ星の北極には、高い塔が建てられている。その塔の頂上に向かって飛ぶのが、僕にはじめて与えられた課題だった。
 ぼくはトゥンバ星に来る前にかなり飛行の練習をしていたので、この手の空中制動は得意だった。地面を蹴ると共に足元でイオンを発生させると、爆発したような勢いで体が宙へ飛び出した。そのまま少しずつ塔の頂上へ軌道を寄せていく。課題をクリアするのに2秒もかからなかった。
「こんなに慣れの速い地球人は他に見たことがない」
と、ナカセンさんはぼくを褒めた。
「君なら運び屋なんかが向いてるんじゃないか。あるいは、航空網のメンテナーか」
 トゥンバ星では、仕事という概念はないらしい。ただ自分で自分の肩書きを名乗れば、みなにその職業の人だと思われるらしい。
「個性というものはないのだ。みんな同じ青い塊で、役割の違いがあるだけなのだ」
と、ナカセンさんは言った。
 ぼくには十分なお金がなかったので、現地で働いて当面をしのごうと思っていた。なので、この仕組みはとてもありがたかった。

 ぼくはナカセンさんに言われたとおり、運び屋のバイトを始めた。基本的には倉庫で待機して、頼まれた荷物を目的地まで運べばよい。
 トゥンバ星はどこへ行っても青い住宅地ばかりだ。しかし、番地と緯経だけは合理的に設計されていて、それに慣れてしまえば仕事をこなすのは簡単だった。
 この街の運び屋は誰もまともに仕事をしているようには見えなかった。ただいつも通りにのそのそと歩いて、そのついでに荷物を運んでいるというのがぼくの印象だった。
 ぼくはイオンスラスターを思うがままに使えたし、暇さえあれば常にバイトをしていたから、あっという間にこの星でトップの運び屋になった。

 そんなぼくのことを面白く思わない連中もいた。
 ある日、ぼくは自分のことをシカクイ星のスパイじゃないかと噂する声を耳にした。シーマ星は、トゥンバ星の近くにあって、近年敵対している星である。
 ぼくはそんな他人の声にも、臆さず突っかかっていった。
「誰がそんなこと言ってたんだ」
「それは……」
 噂話をしていた青い塊たちはたじろいで、お互いに斑点をちかちかさせた。
「ぼくは断じてシーマ星人なんかじゃない。誰が言ったか知らないが、そう伝えておいてくれ」
 それだけ伝えてその場を去った。彼らにはきっとうっとうしいと思われたに違いなかったが、気にしなかった。ぼくは青い塊の中にいたし、それを使いこなしている自分にも満足していた。

 ある日、珍しく赤色のトゥンバ星人がぼくに仕事を依頼してきた。
「こいつを塔にくくりつけてきてくれや」
 彼は青色のトゥンバ星人をぼくの足元に蹴り飛ばした。
「噂は聞いている。この星トップの運び屋さんなんだろ?」
 ぼくは青色のトゥンパ星人を見下ろした。その頭部のまだら模様は、どす黒く濁って渦を巻いていた。
「こいつが何をしたって言うんだ」
「別になんだっていいじゃねーか。お前はお前の仕事をすればいいんだ」
 ぼくは少しためらったが、決意はすでに決まっていた。倉庫には運搬用の大きなかごがある。それを取りに行くと見せかけて、赤色のトゥンパ星人めがけて放り投げた。がしゃんと派手な音がした。
「そんな仕事は請け負えない」
 赤いトゥンパ星人の体の一部に、白いあぶくが沸きだし始めた。それは瞬間的に爆発した。ぼくは飛び退いたが、ぼくの纏っていた青い塊が燃え上がった。倉庫も燃えていた。目の前のあらゆるものが赤く染まった。
 ぼくは焼け爛れた青い塊を剥いだ。ヒトの薄い胸板と二の腕が露出した。その様子を見て、赤いトゥンバ星人はゲラゲラと笑った。ぼくは何もできなかった。赤いトゥンバ星人に刃向かったことを、後悔した。
 とっさに右腕を使って、青色のトゥンバ星人の体を掴んだ。
 下半身に残った青い塊を集中させる。イオンスラスターの出力を最大まで上げる。赤いトゥンパ星人の頭上を抜ける。そのまま脇目を振らず飛び出した。赤のやつが追ってくるかどうか、確認している余裕もない。いや、その心配はないだろう。ぼくより速いトゥンバ星人は、そう多くはないはずだから。
 住宅街をジグザグに飛び続け、数十分飛行したところで、ようやく安心して着陸した。
「助けてくれてありがとう」
 その言葉がとても心地よかった。しかし、自分の青い塊が、未だ本物ではないことをひしひしと感じさせられた。

 ぼくは何時の日か、子供の頃に見たアニメを思い出していた。星々を飛び回る宇宙警察が、悪の陰謀を次々に滅ぼしていく。どうせ肩書きを自由に名乗っていいのなら、悪を成敗したいと思った。
 だからぼくは宇宙警察を名乗ることにした。

 家に帰って、ナカセンさんにも報告した。ナカセンさんは、斑点の模様一つ変えずに、ぼくにこう言った。
「宇宙警察なんて、この星では不要なのだ」
 トゥンバ星人には、個体というものがない。個体がないということは、ひとりひとりを罪に問うてみたところで、なにも意味がない。そういう意味のことを、ナカセンさんは言った。
「でも、さっきぼくが見た赤いやつは、確かに悪意を持っていた」
「それはこの星の悪意であって、個人が悪いというわけではない。それは私の悪意かもしれないし、君の悪意かもしれない」
「誰の悪意だろうと、糾弾されるべきじゃないのか?」
「君がいくら頑張ったところで、嫌がらせをする個体は現れるだろう。それは君の中の悪意がなくならないのと同じだ」
 ぼくにはナカセンさんの言っていることがよく分からなかった。ただ、ナカセンさんはトゥンバ星人であって、必ずしもぼくの味方ではない。そのことを少し理解した。
引用なし
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トランプの裏側
 だーく  - 17/4/10(月) 1:14 -
  
 橋本が私の手札から引いたのはジョーカーだった。
「なんでこんなに俺のところばっかジョーカー来るの!?」
 そして橋本の手札からハートの3を引き、私は四位であがった。他の人はもうみんなあがっていて、橋本の手元にジョーカーだけが残る。
「なんでそんなにジョーカー好きなの?」
「別に好きで引いてるわけじゃねえよ!」
 月曜日から金曜日までの間、一日にババ抜きを10回ずつ行い、それを二週間続けるというこのふざけた戦いはとある土曜日に深夜のテンションの橋本によって提案され、深夜のテンションのみんなによって採用された。
 そして私が記録している表の、橋本の戦績の五位の隣に52本目の線が引かれた。景品のチャオ用ホバーシューズが橋本の手に入る可能性はとっくになくなっている。ちなみに景品を用意するということもチャオ用ホバーシューズにするということも橋本が提案した。橋本は私たちの中で唯一チャオを飼っていないのだが、橋本は勝負を楽しみたいからといい、他のみんなのモチベーションを上げるだけのために景品を用意したのだ。でも橋本曰く、超かっこいいから、という理由で景品はチャオ用ホバーシューズになったので、うっかり橋本が勝ったら、多分チャオを飼うつもりなんだろうと思う。
「次ラスか、長かったな」
 もりもんがピンク色のスポーツドリンクを飲み干す。「まりもん一位確定してるよね」
「正直もう順位は変わらないね」と私が答える。もりもんの言うとおり、私がダントツの一位だ。もりもんが二位で、みりもんが三位、僅差でむりもんが四位。そして五位の橋本だ。順位は確定していて、最後の一戦をやってもやらなくても同じだ。
「いや、とりあえずやろう」と言ったのは橋本だ。ここまでやったら意地みたいなものもあって、一応やる。
 橋本は五位だった。


「そうはいっても、足が速くなったわけじゃないよ」
「うーん、なんか速く見えるよね」
 チャオレース中盤、クイズコーナーを越えて坂を下るところで、ホバーシューズを履いたハニューとみりもんのガロンが並んで走っている。二匹とも元々同じくらいの足の速さで、いつもこの坂で並んで走っている。ホバーシューズを履いたハニューは序盤から速く走れているように見えたけど、よくよく思い出せばガロンとずっと並んでいたような気もする。
「でも、オシャレで私は好き」
「イワシは何やってるんだ」
 ハニューとガロンが坂を下り、池に飛び込もうとしているとき、むりもんのイワシは何を考えているのか、クイズコーナーで間違えてはまた適当なものを持って回答コーナーへ持ち込んで、をひたすら繰り返している。多分、正解しないと進んではいけないコーナーだと思っているんだろう。この間は普通に突破できていたのに。
「イワシ! ゴールしたらカツオブシあげるから早く突破して!」
「イワシってカツオブシ食べるんだ」と私。
「食べないよ」
「じゃあ何」
「ずっと削ってる」
「ああ、まあ、そうね」
 ハニューとガロンが池を泳ぎ切った頃、もりもんのピルピルがゴールした。もりもんのピルピルはマジで速い。
「頑張れ、イワシ」ともりもんはイワシを応援している。
 イワシは坂を下りきって、ようやく池への飛び込むところだけど、なぜかイワシはヒコウのスキルだけやたら高く、池を簡単に越えて、落とし穴コーナーの直前のところまで飛んでしまう。ずっと飛んでればいいのに、っていうくらい飛ぶのが上手だ。この一瞬だけハニューとガロンが映るカメラにイワシが入り込む。でも、すぐにハニューとガロンが先を行き、もたもたとイワシが後を追う光景に戻る。そうなった頃にはハニューとガロンもゴールをしていて、順位が確定する。もりもんのピルピルがいつも一位で、イワシはいつも四位。ハニューとガロンだけはいつも順位がコロコロ入れ替わる。今回はガロンが二位で、ハニューが三位だった。
 レースを終えたチャオをロビーで迎えて、受付のところでポップコーンを買った。その流れで、みんなはチャオガーデンへチャオを預けるためのカードをスキャナーにかざして、認証を済ませた。預けたら、とりあえず今日は解散だ。
 チャオガーデンにチャオを預けに行くと、小さなピュアチャオの両脇を持った橋本がガーデンのプールのところで水面を見て放心していた。橋本の姿としては異常はないのかもしれないけど、チャオガーデンの風景としては異常だった。
 私たちのチャオはガーデンに入ると思い思いの場所に歩いたり飛んだりして散り散りになっていたが、私たちは橋本のところへと集まった。
「誰のチャオ?」と私。
 橋本は放心した顔をそのまま私たちの方に向け、ああ、とサウンドエフェクトのような声を出した。
「俺のチャオ」
「ガーデンにいた適当なチャオを捕まえたんじゃなくて?」
「そんな訳なかろっど」
「そっか」
 また橋本は放心した顔をして、今度は自分が手にしているチャオのおでこの辺りを見た。
「なんかさあ」と意味ありげに切り出す橋本。
「飼ったのはいいんだけど、何すればいいんだろ」
「ええ」
 チャオを飼っている側からしたらわざわざそんなことは考えないのでそんな問いかけをされても困る。
「というか、何かするために飼うもんでもないでしょ」とむりもん。その通りだ、むりもん。なぜかこのタイミングでみりもんが橋本のチャオの後頭部を指でなぞって遊び始める。
「むしろ、何がきっかけで飼ったの」とむりもんが続ける。
 橋本は、うーん、と少しだけ考えたあと、
「飼っとけば何かできると思ったから」
 正直よくわからないし、他のみんなもあまり納得はしてないようだったので「名前は?」と聞いてみた。
「決めてない」
「じゃあとりあえず決めようよ」
「ししゃもとかどう?」とむりもん。
「何で魚シリーズなんだよ」と橋本。
 もりもんはじっと橋本のチャオを見ている。もりもんは黙っていることが多いので、何を考えてるのかよくわからない。
「もりもんは何か案ある?」
 もりもんは、いやあ、と零して、
「まだ特徴なさすぎてなんとも言えない」と笑った。
「うーん、まだ生まれたてっぽいもんね。橋本がどんな子にしたいかで決めればいいんじゃない?」
「どんな子か。とりあえず、勝てそうな名前がいいな」
 勝てそうな名前ってなんだろう。エンペラーとかだろうか。橋本が、あ、と言った。
「コミモンにする」
 決して強そうな響きではないが、何か見えない説得力があったので、納得してしまった。


 数ヶ月経った頃には、橋本とソニックチャオになったコミモンに誰も勝てなくなっていた。
 身内でチャオレースをしていただけだった私たちの中で一番強くなってからも、一人で様々な大会に出場してはいつもベスト4には入るコンビとなっていた。
「ベスト4は大したことじゃないよ」と橋本は言う。「出てるのもこの辺りの大会だけだし、ベスト4って要は決勝のレースに出場したってだけだから」
 橋本によるとこの辺りの大会では、1レース8匹のレースを、決勝までに二回勝ち進まなければいけないらしい。決勝だけは4匹になるそうだ。それを聞いたときは、二回だけなんだ、と思ったけど、トーナメント表を見せてもらって驚いた。参加しているチャオの数は256匹。でもよくよく考えたらそうだ。二回戦目は8匹のレースで勝ち抜いたチャオがまた8匹集まってレースをするのだから、それくらいの数にはなる。
「でもこの辺りの大会って弱いチャオばっかりだよ。強いのはいつもベスト4に入ってる残りの3人だけ」
 その強いと弱いの境目は、転生が視野に入ってるか否か、らしい。チャオは基本的にポテンシャルで全てが決まってしまうというくらいに、元々チャオが持っている能力というのが重要だという。そのポテンシャルを上げる手段は転生しかない。だから転生しなければ、レースの結果は大体同じになる。
「多分、コミモンが持ってる力って結構伸ばしたと思うんだけど、それでもあの3人には勝てない。でも、転生してないのにコミモンはこれだけ勝てるから、かなり優秀なチャオなんだと思う」
 そういって橋本はコミモンの頭をぽんぽんと叩いた。
「カオスドライブとかチャオの実とか愛情とかいっぱい注ぎ込んで転生したら、今出てる大会だけじゃなくて関東大会とかも制覇したいな」
「そ、そう。頑張ってね」と私。
「お前らも頑張れよ。強くならないと得られない喜びとか幸せとかってあるから」
「あー、あるんだろうね。でも俺は今割と満足してるからいいや」とむりもん。
「そうやって飼い主の怠惰でチャオの可能性潰すのってどうなの。チャオはそう思ってないかもしれないんだから、やって結果出してから決めればいいじゃん」
「そうかもしれないけど、責任は取るから大丈夫だよ」
「無責任だよ」
「人によって価値観違うから。まあ楽しくやれればいいじゃん」と私。橋本は何か言いたそうにしていたけど、引き下がってくれた。
 私たちの身内のレースにも、橋本は参加し続けた。レースのときは、いつも橋本は白熱した応援をコミモンに送っている。橋本が白熱しているのはいつものことなので、あまり気にも留めていなかったけど、今日は逆に橋本から、
「何で応援しないの?」
 と尋ねられた。私たち四人からしてみれば、応援する方が不思議なくらいなので、何でと聞かれても困る。
「応援すると、体力が残ってる限り応援に応えようとして瞬間的に速くなるんだよ」
 他のみんなは、へぇー、と感嘆の声を出した。
「ホバーシューズは足が速くなるわけじゃないけど、体力消費が少なくなるから応援しないと履いてる意味ないよ」
 と私に言った。私はローラースケートとか履くと逆に凄く疲れるので、そんな効果があるとは知らなかった。
「どっちにしても可哀想じゃん」と橋本は零した。


 私とみりもんはみんなでレースをしないときも、よく二人でチャオガーデンに来る。なんとなく女二人で動くときがあった方が気が楽だ。もしかしたら、むりもんともりもんも私たちが知らないときにチャオガーデンに来ているのかもしれない。
 私たちがガーデンに入ると、ハニューとガロンが相変わらず同じような速さで私たちのもとに寄ってくる。体をくねらせながら、可愛がってアピールをする。可愛くてしょうがないから、体中をくすぐり回すとチャアチャア笑いながら芝生の上に転げ回った。みりもんもガロンと一緒に芝生に転げ回りながらじゃれあっていた。
 もりもんのピルピルは走り回り、空を飛び回っているイワシと追いかけっこをしている。こうやって見ると、あれだけレースで差がついているのが不思議なくらい、まともな遊びになっているように見える。あの二匹は本当に仲が良い。多分、もりもんはイワシのことを気に入っているし、むりもんもピルピルのことを気に入ってるからだろうなと思う。
 ふと、コミモンが目に入った。岩場の上に座り、ガーデンを眺めているようだった。毎週休日は、橋本と色々な大会に出ていることが多いので、ガーデンでコミモンを見かけるのは珍しかった。
 転げていたハニューが突然上体を起こした。本当に突然だったので、私もみりもんも動きを止めてハニューを見た。
 ハニューは桃色の繭に包まれた。
「あっ!」
 と私は声を上げ、みりもんと一緒に繭に見入った。
 よくわからないくらい時間が経ち、繭が薄くなっていった。中のタマゴが見えてくる。
 話には聞いていたけど、生で見るのは初めてだった。小学生のときに見た、モンシロチョウの幼虫が蛹を作るのとは比べ物にならない衝撃だった。
 繭が完全に消えると、私はタマゴを抱っこしていた。
「すごい、転生だよね」とみりもん。
「うん」
 きょとんとガロンがみりもんの顔を見ていた。
 衝撃の余韻で、何も考えられないままタマゴを抱えていると、タマゴの内側から小さな衝撃を感じた。
 あ、と思って、芝生の上にタマゴを置くと、トントンという音とともにタマゴが少しずつ割れて、チャオの手が出てきた。そこまで来たらあとは早くて、割れたところから穴が広がっていって、遂にハニューが生まれた。
「生まれよった」と私。
 突然、上からイワシが降ってきたかと思うと、ハニューをキョロキョロと眺めた。気が付くともりもんのピルピルも傍にいた。
 この子たちの間にはどんな感情があるんだろうか、と思っていると、コミモンも近づいてきていた。コミモンが近づくと、他のチャオ達もコミモンの方を見たので、もしかしたらコミモンが近づいてくるのは珍しいことなのかもしれない。
 みんなが見守る中、コミモンはハニューの傍で足を止めて、ハニューの顔をじっと見ていた。ハニューもコミモンの顔を見上げる。
 何をするのかとドキドキしていると、コミモンはハニューの頭を撫でた。
 なんてことないことなのかもしれないけど、まるで奇跡を見たような気分だった。ハニューのポヨがハートマークになっている。
「この子もしかして」
 とみりもんが言った。次の言葉を待つのに、みりもんの顔を見ると、
「いや、やっぱやめとく」
 とみりもんは黙ってしまった。なんて言おうとしたのだろう。そもそも、この子ってハニューのことなのか、コミモンのことなのかわからなかった。
 みりもんがコミモンの頭を撫でた。コミモンを見ること自体が少ないからかもしれないけど、コミモンのポヨがハートマークになるのを初めて見た。
 それから、私はハニューに木の実をあげたり、寝かしつけたり、ハニューの傍にいながらガーデンを眺めていた。ガロン、ピルピル、イワシ、コミモンがガーデンを駆け回って遊んでいた。なぜかみりもんも混じって遊んでいた。なんか不思議な光景だったけど、嬉しくなるような光景だった。私がチャオを飼った理由はここにあるって、今なら言えた。


 それから一ヶ月の間に、チャオが転生するのを三回見た。もちろん、ガロン、ピルピル、イワシの三匹だった。
 ハニューと同時期に生まれた三匹だったので、もうすぐ転生するだろうなと思って、毎日放課後にもりもんとむりもんを連れてガーデンに通っていた。
 三匹が転生する姿は、無事飼い主に見届けられ、私の感じたあの感動を三人も感じていたようだった。その度に、みんなとチャオ達が戯れる平和な光景が見られた。残念なことに、コミモンは三匹が転生するどのタイミングにも居合わせなかった。
 コミモンだけは生まれた時期が違うのでまだ大人のままだったけど、他のチャオが転生したことでチャオレースはしばらく行わず、ガーデンでゆっくりとした時間を過ごしていた。


 コミモンが死んだのは、四匹が進化してしばらく経った頃だった。
 そのとき、私とみりもんはガーデンにいてレースの再開の話をしていた。珍しくガーデンにいたコミモンがみんなと遊んでいるときに、急に動きを止めて座り込むと、灰色の繭に包まれたのだった。
 ハニューが転生したときは明らかに種類の違う大きな衝撃を感じた。それと同時に、橋本になんて言えばいいのかわからないという不安が押し寄せていて、気持ちが悪かった。みりもんは声をあげずに涙を流して、顔を歪ませていた。
 そんな状況だったので、橋本に何と言うかは決まらず終いで、結局何も言わないまま日々を過ごした。放課後に集まるようなこともなくなった。
 もりもんとむりもんにも何も言えないでいたけど、二人は割とすぐに気づいたようだった。もしかしたら、橋本にコミモンがいないことを聞かされていたのかもしれない。
 ある日の放課後、むりもんが集まろうと言い出したので、いつものように机を適当に集めると、むりもんは机の上にトランプを置いた。
「一回限りの勝負ね。あと景品もあるんでよろしく」
「何やるの?」と私。
「ババ抜き」
「またか」
 そうして、ババ抜きを開始した。次々とトランプが捨てられて行き、すぐにみりもんがあがって、次にもりもんがあがった。
 私とむりもんと橋本の対決になったところで、違和感に気づいた。なんだかトランプの数がおかしい。
「トランプの数合ってる?」と橋本。
「ジョーカー入ってません」とむりもん。
「ババ抜きってそういう意味じゃねえよ」と橋本。
「まあまあ、とりあえずさっさとあがろう」
 ということで、なんだか腑に落ちないまま続けると、次に私があがり、むりもんがあがり、最後に橋本があがった。
「結局俺最後なのか」
 すると、むりもんがズボンのポケットから五枚のトランプを取り出して、表を見せないようにして、みりもんにそれを向けた。
「景品を選ぶ権利をみりもんにあげる」
「ええ」とみりもん。「景品はくれないの?」
「それは無理もん」とむりもん。
「しかもこれ選ぶって言うの」とみりもん。
「そんなのざっくりでいいんだよ」とむりもん。
 不満を言いながらもちょっと嬉しそうにカードを選ぶみりもん。むりもんもみりもんが楽しんでることをわかってるようで、おちょくったような笑顔を浮かべている。
「じゃあこれ」
「これね」
 むりもんはみりもんが選んだカードを机の上に置いた。そこにはトランプにセロハンテープで貼られた安っぽい紙の切れ端のようなものに『料理』と書かれていた。私とみりもんには意味がよくわからなかった。それを見たもりもんが口を開いた。
「要は、橋本が新しく飼い始めたチャオに何をあげるか、っていうゲーム」
 新情報が多くて少し戸惑った。橋本は新しいチャオを飼ったんだ。それで料理をあげるっていうのはなんかピンと来ない。
「そんなこと企画してたのか」
「俺ら二人でね」とむりもん。
「それで、料理を誰が作るかって話なんだけど、とりあえず適当にネットから拾ったチャオ向け料理のレシピを何個か印刷してきたから、見ても見なくてもいいからそれぞれ橋本のチャオが喜びそうなものを作ってきて。一応、人間にとって毒にならないものならチャオにも毒にならないみたいだから、そこは安心して」ともりもんが説明してくれた。「それで、橋本のチャオにどれが一番おいしかったか選んでもらうっていうところが本番」
「喜びそうなものって、橋本のチャオってどんなチャオなの」とみりもん。
「まだタマゴから孵ってない」と橋本。
「ええ、生まれてからにしようよ」
「どっちでも変わらなくね」と橋本。
「好みも分からずに好きな料理なんて作れないでしょ」
「ああ」
「そうしようか。とりあえず橋本、生まれたら教えて」とむりもん。
「わかった」


 橋本の新しいチャオが生まれて、名前はゴザエモンになった。橋本曰く、親しみやすい名前をつけたらしい。
 みんなはすぐにゴザエモンを観察したり、素材を味見させたりして、料理を決めていた。
「まりもん何作るの」とみりもんにちゃっかり聞き出されそうになったけど「ひみつ」といって凌いだ。
 それを見ていたむりもんも同じ質問を私にしてきたけど「ああん?」と言ったら謝られた。
 そんなこんなで一週間くらい経った頃、最後の最後まで考えていた橋本が何を作るか決定したというので、次の日に料理を作ってガーデンに持ち込むことにした。
 私が作るのはベタだけどアップルパイだった。私が見た限りだと、ゴザエモンに与えた食材の中で一番好感触だったのがりんごだった。でも、ベタっていうのもあって一番に選ばれる気はしない。他のみんなが何を作るのかは、まったくわからない。
 

 そして当日。
 みんな、タッパーに入れてきた料理をカバンから出して、なんとなくみんなが何を作ってきたのかわかった。
 ただ、一人だけ手に持っているものの様子がおかしい人がいて、それはもりもんだった。あれは、このガーデンのロビーに売ってるポップコーン?
 私は変わらずアップルパイ、みりもんはキュウリの味噌漬け、むりもんはキュウリのぬか漬け、もりもんはやっぱりどうみてもロビーで売ってるポップコーン、橋本はIHコンロと鍋と何やら色々と持っている。あれは間違いなくしゃぶしゃぶを作ろうとしてる。
 でも、キュウリの漬物が被ったのはちょっと怖い。ゴザエモンの好みをついているのかもしれない。もりもんはよくわからない。
「キュウリ被ってんじゃん」とむりもん。
「本当は安心するところなんだろうけど、むりもんかあ」とみりもん。
 もりもんは遂にポップコーンを自分でつまみ始めた。もう彼の動きは誰にも止められない。橋本はこんな光景を目の当たりにしてもなぜか自信満々だ。
 本番。
 私、むりもん、みりもん、橋本、もりもんの順番。
 アップルパイを食べたゴザエモンはポヨをハートにした。とりあえず安心だ。
「よしよーし、ゴザエモン」と、とりあえずめっちゃ撫でておく。
「待て待て、公平な戦いにしよう」とむりもんが私を引き剥がす。
 むりもんはゴザエモンがちゃんとアップルパイを飲み込み終わって、一息つくまで待ってからキュウリのぬか漬けをあげた。意外と丁寧だ。
 ゴザエモンはアップルパイをあげた時と同じようにポヨをハートにした。この反応だけだと、どっちが好きなのかわからない。みりもんがキュウリの味噌漬けをあげても同じような反応だった。
 橋本の番は長かった。コンセントを探すところから始まり(岩場の端の方にあった)熱をかけるのに相当な時間がかかり、しゃぶしゃぶできる頃にはゴザエモンも寝ようとしているくらいだった。豚肉をしゃぶしゃぶして、少し冷ましてゴザエモンは食べた。またポヨがハートになった。全部同じ反応だ。
 そしてダークホースのもりもん。嫌な予感はしていたけど、それは的中して、もりもんがポップコーンをあげる前からゴザエモンはもりもんに近寄っていき、ポップコーンを欲しがった。
「なんだそれ」とむりもん。
「なんか試しにあげたらめっちゃ喜ばれた」
 その後、五つの料理(一つは料理と呼べるのかわからないけど)はゴザエモンの前に並べられた。並んだと同時に、ポップコーンに一直線だった。一位はもりもんで確定だ。二番目はなんと私で、アップルパイを食べた。正直、すごく嬉しくてその後の順位のことはあんまり覚えていない。
 ただ、最後まで鍋がグツグツしていたのだけは覚えている。
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チャピルさんに感想
 ろっど  - 17/4/10(月) 5:06 -
  
とてもろっどの物語らしい仕上がりで、しかも最近のチャピルさんの小説のような味わいがあっておもしろかったです。
ろっどさんの異質さを表すにあたって生き物としてすでに違うものをチョイスするというアプローチはチャオラーの中ではチャピルさんくらいしか思い付かないんじゃないかと思いました。
あととても書きづらそうな印象を受けました。ろっどさんとチャピルさんはだいぶ違う人間なのでそのせいかな?
でも試みだけって感じなので、チャオガーデンみたいな心のこもった作品がまた読みたいです。
引用なし
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だーくさんに感想
 ろっど  - 17/4/10(月) 5:17 -
  
受けを狙っていないのに面白さが溢れているところがとても良かったかなと思います。
素材が良いのかな?
ぼくが書くときにありがちだけど、技能が低いのにシリアスなシーンを書こうとすると寒い印象を受けるんですよね。それってたぶん今のぼくの技能or技量では書きたいものを表現できないってことだと思うのね、でもだーくさんの小説にはそういう「書けないものを書こう」という感覚がなくて、そこが魅力の一つなんじゃないかなと気付きました。
系統的にはぺっくさんの小説に近いよね、でもそれとはちょっと違くて、上手い言葉が見当たりません。
名前はインパクトしかなくてたぶん1年後くらいには笑えないけど、橋本くんがしゃぶしゃぶ作ろうとしているところとか、もりもんが低コストで一番リターン大きいところ持って行くのとか、違う視点から見たろっどさんの印象が透けて見える感じとかがたまらなく笑えます。
だけどこれはろっどの物語じゃなくてやっぱりチャオラーの物語じゃないかなって思います。
つぎはだーくさんの心のこもった作品が読みたいです。
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感想ありがとうございます
 だーく  - 17/4/10(月) 21:54 -
  
>受けを狙っていないのに
>「書けないものを書こう」という感覚がなくて

今回の作品は読み手のこととかまったく考えていなくて、ただふざけたいようにふざけただけの作品です。なんか結果良かったみたいで、安心です。

>系統的にはぺっくさんの小説に近いよね、でもそれとはちょっと違くて、上手い言葉が見当たりません。

ぺっくさんのシュピールくんから勢いを削って、シュールさを薄めたらこんな感じかもしれません。
愛嬌があって、よくわからないんだけど憎めない作品になってくれました。

>だけどこれはろっどの物語じゃなくてやっぱりチャオラーの物語じゃないかなって思います。

これはろっどの物語です!

>つぎはだーくさんの心のこもった作品が読みたいです。

はい。
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感想ありがとうございます
 だーく  - 17/4/10(月) 22:02 -
  
>とてもろっどの物語らしい仕上がりで、しかも最近のチャピルさんの小説のような味わいがあっておもしろかったです。

ろっどの物語を俯瞰したときに、これはこういう話なんじゃないかという解釈をSFチックに、神林長平風に仕上げました。

>ろっどさんの異質さを表すにあたって生き物としてすでに違うものをチョイスするというアプローチはチャオラーの中ではチャピルさんくらいしか思い付かないんじゃないかと思いました。

その通りですね。きっと僕しかいません。
しかし、ろっどさんを表すのに人間の枠組みでは到底描ききれませんので、妥当だったと評価しています。

>あととても書きづらそうな印象を受けました。ろっどさんとチャピルさんはだいぶ違う人間なのでそのせいかな?

僕は人間ですからね。

>でも試みだけって感じなので、チャオガーデンみたいな心のこもった作品がまた読みたいです。

ありがとうございます。
チャオガーデン2みたいなものも書きたいと思っていますので、楽しみにしていてください。
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第二話 少年ハート
 スマッシュ  - 17/4/10(月) 22:53 -
  
「ふざけるんじゃない。お前たちは世界のためと言って、俺の家を壊す気か。跡継ぎがいなきゃ、子供なんて作る意味はないんだ」
 父は怒り狂ったが、僕はGUNの人に守られるように父の手から逃れた。
「お前もお前だ。親の言うことを聞かないで、チャオを隠し持っていたのか。お前のような、人の言うことを聞けないやつは、戦争に出たところで殺されるだけだ。今すぐこっちに戻ってこい。今なら許してやる」
 僕はなるべく父の声を聞き流すように努めた。

 徴集された操縦者候補の子供は僕たちを含めて二十人いた。
 半年に一度、こうして子供たちが徴集されるのだった。
 徴集され、GUNの基地に来た子供たちは、まず会議室に入れられた。
 僕とスケヤ君は、あの敗北があったために、この中で自分たちが強いとは思わず、身構えていた。
 だけど、たぶん集められたみんなが同じような経験をしていたのだと思う。
 みんながみんな、緊張していた。
 僕たちを連れてきた兵士が、僕たちに言った。
「君たちの司令官であらせられる、パパパパーン・マママン司令がもうすぐ来られる」
「パパパパーンって」
 とスケヤ君が笑った。
 つられて何人かが笑った。
 僕も笑いそうになった。
「パパパパーン司令を愚弄するな!」
 兵士が叫んだ。
「パパパパーン司令は、親元を離れて戦わなければならない君たちのことを思い、自らが君たちの父や母とならんとして改名なされたのだ!」
 それでそんな名前なのかよ。
 僕はどん引きした。
 そこに厳めしい顔の男が入ってきた。
 パパパパーン司令だった。
 司令は、話を始めた。
 顔と同じように怖い声だったが、なるべく優しく語りかけるようにしているようだった。
「僕は、パパパパーン・マママン! みんな、元気かな?」
 僕たちはがんばって笑わないようにした。
 司令は首をかしげた。
「君たち、真面目だね。いつもならこの名前を面白がって、笑いが起きるんだけど」
 僕は横目で、さっき怒っていた兵士を見た。
 兵士は目をつぶって、必死に知らない振りをしていた。
「君たちはこれから、親も兄弟もいない場所で、戦争のために生きていかなければならない。だけど心配することはない。ここにいるみんなが、仲間だ。僕が親だ。それだけじゃない。君たちより前にここに来た先輩たちがいる。彼らが兄や姉となって、君たちを支えてくれるだろう」
 司令の話は要するに、僕たちはまだ子供であり、子供から急に大人になる必要はないから、気を楽にしなさい、といった内容だった。
 それに僕たちはすぐに戦争に参加しなければならないというわけでもないらしかった。
 僕たちはあくまで操縦者候補。
 操縦者に値する実力を身につけるまでは、アーティカに乗ることはできない。
 それは確かに、安心できる話だった。
 なにもわからないまま戦場に行かされたら、たぶん死ぬだろう。
 そういう使い方をされないとわかったことはよかった。
 しかし僕が一番気になったのは、親も兄弟もいないと司令が言ったことだった。
 気にしすぎかもしれないと思いながらも、気になって、鼓動が早まる。
 そして僕たちは、先輩たちの集まっているアーティカの格納庫に案内された。
 そこには操縦者候補だけでなく、操縦者も全員集まって、僕たちを拍手で迎えてくれた。
 一瞬嬉しい気持ちになったけれど、そこにいる人たちの眼差しからは鋭さを感じる。
 見下すような目。
 推し量るような目。
 敵視する目。
 操縦者候補の中に、僕とスケヤ君を負かした、あの二人がいた。
 二人は無関心そうな顔で拍手をしている。
 そして比較的年齢層が上の、操縦者の中にも、兄は見つからない。
 司令は、アーティカの中でも、カオスエメラルドを搭載している七機の特別な機体について説明を始める。
 その七機の、エースアーティカに乗ることは名誉であり、僕たちの目標になるだろう、ということだった。
 しかしそのうちの一機は、つい先週撃墜されて、修理している最中だった。
 その機体は、頭しか残っていない。
 操縦者は死亡したそうだ。
 機体の名前はスターダムだと、司令は言った。

 一緒に飛ぼうという兄との約束は果たされなくなった。
 僕は悲しかった。
 だけど僕はその夜、兄のように飛べるようになろうと、改めて決意した。
 そうすれば、生き返ってくるわけではないが、一緒に飛ぶということができるのではないか。
 そんな感じがする。
 兄の華麗な飛行を取り戻す。
 それが僕の、ここでの目標となった。

 兄の死亡によりエースアーティカの操縦者、いわばエース操縦者の席は一つ空いた。
 操縦者の中から一人が昇格して、そして候補者の中から一人が操縦者になった。
 操縦者になったのは、僕たちを負かした女と一緒にいた、あの男だった。
 男の名前はシドヤ。
 そしてあの女の名前は、ルウ。
 ルウはシドヤの次に強いと噂だった。
 チャオバトルで最も強い者が、次の操縦者になれる。
 そう候補者の中で信じられていて、事実そのように操縦者は決まっていくので、候補者の中では頻繁にチャオバトルによる格付けが行われていた。
 僕たちはアーティカを操縦するための訓練、チャオを自在に操れるようになるために障害物競走などをするといったもの、をこなしながら、夜になるとチャオバトルに明け暮れた。
 僕は、いや、僕のクリアはこの世界でも有利だった。
 鍛えられて実力をつけると、人もチャオも調子に乗る。
 協調できずに動きが乱れる。
 だが僕とクリアにそういうことは起こらない。
 僕は、同期の中で一番になった。
 スケヤ君も協調性の乱れにはまっていた。
 僕はトップとして行けるところまで行こうと思い、僕たちより上の世代に挑むことにした。
 しかし誰に挑めばよいのかわからなかったので、チャオバトルをしている輪に近付いて、
「勉強したいんで、相手をしてもらえませんか?」
 と言ってみた。
 すると一人が快く引き受けてくれた。
 第一のカモ、ゲット。
 そう思った。
「僕はタスクです。よろしくお願いします」
「俺はケゲン。よろしくな」
 試合開始。
「先手必勝!」
 様子見をしようとした相手にやや強引な攻撃をしかけ、勝利。
 ケゲンのチャオの顔面にペイント弾が命中した。
「ちょっと待て、もう一度だ」
「先輩、負けは負けですよ。こんな負け方をする人とやっても、勉強にはなりませんね」
 嘲笑する。
 僕は勝ったことで気を大きくしていた。
 それにこれは作戦だった。
 挑発されて気が立っているやつと戦うことになる。
 相手は攻めっ気を出してしまうはずだ。
 そこをカウンターで勝つ。
「俺が相手する」
 そう言って立ち上がったのは、ハバナイという人だった。
 落ち着いているように見えたので、作戦が成立するか怪しいと感じる。
 なにはともあれ、試合開始。
 ハバナイは試合開始してすぐ、三発もペイント弾を撃ってきた。
 それは当然回避できる。
 さっきと同じように強引に攻めようとしていたら当たっていただろうが、僕はそんなに単純ではないぞ、とほくそ笑む。
 ペイント弾は十発しか撃てない。
 相手はいきなり三発も消費してしまったということで、これなら弾切れをさせて勝つことも視野に入れられそうだ。
 しかし基本の狙いはカウンター。
 距離を詰めようとしてくるハバナイのチャオ。
 近付けさせて、チャンスを狙う。
 僕は、真っ直ぐこちらに向かう軌道になった瞬間を逃さずに、ペイント弾を撃った。
 それは綺麗にヒットするはずだった。
 しかしチャオは引っ張られたように上昇し、弾を飛び越えた。
 そこからのハバナイのチャオの動きは奇妙だった。
 どんどん近付かれるので、僕は撃ち続けるしかない。
 軌道を予測して撃つのだが、チャオの動きに一貫性はなく、どこに向かってなにをしようとしているのか、不明だった。
 数秒ごとに方針を変えて戦っているような、非合理さがあった。
 弾を全部避けられてしまい、僕は負けた。
「君のチャオ、心がないんだって?」
 ハバナイにそう聞かれ、僕はそうだと答える。
「心のないチャオでは、ここでは勝ち上がれないぞ」
「どういうことですか」
「君は今、君の同期の中ではトップクラスだろう。協調性の壁にぶち当たらないからな。でも、その壁を越えた先にある領域に着いてからが、チャオバトルの本番だ。俺はね、さっきの戦いで、ほとんどチャオを操縦してないんだ。チャオに大体の動きは任せていた。そしてその間、俺はこの目で、君たちを観察していた」
 ハバナイは自分の目を指さした。
 彼は、チャオの操縦を放棄してシンクロを弱めることで、自分自身の目で僕たちを観察。そして、僕が攻撃をしかけようとするのを察知した時にシンクロを強めてチャオを動かし、弾を回避した。
 この技術を、スイッチングというらしい。
「そして後半は俺とこいつとで、操縦権を頻繁に変えながらやっていた。そうすることで、予測不能な動きが可能になる。俺たちはこの戦法をデュランダムと呼んでいる」
 デュアルとランダムを組み合わせた造語ということだった。
 一人で操縦していると、本人は気が付かない部分でどうしてもワンパターンになってしまう。
 それを相手に見つけられると、負けてしまう。
 だからこの方法で、自分たちのパターンを乱すのだという。
「アドリブ性に長ける、天才肌なやつはこれで勝ち上がっていく。戦略に長けるやつは、スイッチングをうまく使う。俺は正直、デュランダムはうまくできない」
 ハバナイによれば、シドヤもルウもデュランダムのセンスに長けているということだった。
 僕は戦略で戦うタイプだが、クリアとでは、スイッチングを使うことはできない。
 勝ち上がれない、とハバナイが言った意味がわかった。
 でもデュランダムならできると思った。
 別の戦闘パターンを持つもう一人の僕を作り、それと交代交代で戦えばいいのだ。
 僕のその試みは、選択肢を常に生成していくという形に落ち着いた。
 右に行くか左に行くか。上なのか下なのか。
 思い付く限り選択肢を作り、それを瞬時に、勘で選ぶ。
 僕だけの戦法、アナザータスクの実験台には、同期の連中がなってくれた。
 まだ壁を越えられていない彼らを踏み台にして僕は、アナザータスクを技術として確立した。
 しかし思わぬ変化もあった。
 強くなったのは僕だけでなく、スケヤ君もだった。
 彼は僕の戦い方の変化を見たことで、デュランダムに似た考え方を思いついたのだった。
 そこから少し洗練すると、もうそれはデュランダムそのまんまの戦法となった。
 そしてスケヤ君はデュランダムに気づいたことによって、同期の誰よりも早く、壁を越えた。
 その時には僕はもう、アナザータスクを駆使して、操縦者候補の中では上の方に行きつつあったけれども。

 二年が経ち、いよいよ僕は操縦者候補の中でトップに立った。
 勝てなかった人もいる。
 ルウと、ハバナイ。それとあと数名。
 僕が勝つ前に、操縦者に昇格してしまった。
 そして僕の次に強かったのは、スケヤ君だった。
 ある日、スケヤ君が僕に言った。
「決着をつけよう」
 その前の日に、操縦者のチャオが死んでいた。
 アーティカを動かすには、チャオも必要だ。
 扱い慣れたチャオを失えば操縦者ではいられなくなる。
 席が一つ空いたのだった。
 スケヤ君は強くなっていた。
 だけど彼にはデュランダムは合っておらず、スイッチング主体の戦い方になっていた。
 デュランダムとスイッチングとでは、スイッチングの方が不利だ。
 僕はそう見ている。
 戦いの状況をよく見て戦うスイッチングは、その戦略の性格上、守勢に回りやすい。
 攻めに出やすいデュランダムに押し切られて負けるというのが、スイッチングのよくある負けパターンだ。
 そのパターンを克服しないと、スイッチングでは勝てない。
 ハバナイは克服していた。
 スケヤ君も、いいところまで来ている。
 だけど僕の方が強い。
 僕のアナザータスクは、デュランダムの変形の戦法だ。
 だから僕から攻める。
 僕はこの頃には、最大五つの選択肢を瞬時に浮かべることができていた。
 五人の僕が協力して戦っているのだから、仮にデュランダム使いが相手でも、強気に立ち回ることができる。
 ハバナイができなかったことが、僕にはできる。
 ハバナイは弾を回避するためにしかデュランダムを使えていなかった。
 しかしそれでは不足である。
 デュランダムは、相手を翻弄して隙を生み出すために使うものだ。
 だから牽制のために、攻撃をしかけていかなければならない。
 そして隙が生まれたら、デュランダムを即座にやめ、隙をつくことに全力を注ぐ。
 それがデュランダム使いの必勝パターンであり、僕もこのパターンを極めた。
 僕はとにかく接近する。
 スケヤ君はなるべく高く飛んで、冷静に戦いを把握しようとする。
 僕は臆さず、追う。
 接近した上で予測しにくいように動き、相手が予想していないであろうタイミングで弾を撃つ。
 これは当てる必要がないから、狙いをあまり定めず、それよりも相手の不意をついて焦らせるために、予備動作を限りなくなくして撃つ。
 十発のうち九発は牽制のために使っていい、というのが僕の結論だった。
 だから僕は、狙いすまさない、しかし相手にとってみれば予測不能で油断できない牽制弾を連射する。
 狙っていないと言っても精度はなるべく高めているから、回避しなければ当たるのである。
 不意をついた攻撃を回避することによって、隙が生まれる。
 スケヤ君は、より高く飛ぼうとした。
 距離を取りたかったのだろう。
 しかし単調に逃げるだけの行動になってしまったことを僕は見逃さなかった。
 連射して、たとえ一発目を避けたとしても回避しきれないよう、スケヤ君の周囲を弾で塞ぐ。
 スケヤ君は引き分けや相殺を狙って、ペイント弾を撃つ。
 僕は難なく避けた。
 僕の勝ちだった。
 そして僕が、アーティカの操縦者に昇格した。
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感想ありーっす!
 スマッシュ  - 17/4/11(火) 23:10 -
  
>とてもろっどの物語らしい仕上がりで、しかも最近のチャピルさんの小説のような味わいがあっておもしろかったです。

ろっどの物語らしいっつうことなんですけど、あれでよかったんすかね?
ろっどさんって、もっとマジヤベエって感じがしないですか?
そのマジヤベエを表現しきれなかったかもしれねえマジヤベエって思うところもなくはないんですけど。


>ろっどさんの異質さを表すにあたって生き物としてすでに違うものをチョイスするというアプローチはチャオラーの中ではチャピルさんくらいしか思い付かないんじゃないかと思いました。

そうでもないんじゃないっすか?
だーくさんのだって、ある意味生物として違う感じじゃんすか。
でもまあ一応、別の生き物にしたのは今のところ俺だけっすね。
今のところは、すけど。


>あととても書きづらそうな印象を受けました。ろっどさんとチャピルさんはだいぶ違う人間なのでそのせいかな?

別の人間にはなれないもんっすねー。
相手が悪かった。
そういうのもあるんでしょうけどねえ。


>でも試みだけって感じなので、チャオガーデンみたいな心のこもった作品がまた読みたいです。

心、こめたに決まってるじゃないっすかー。いやだなー。
引用なし
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感想ありがたく存じ上げる
 スマッシュ  - 17/4/11(火) 23:20 -
  
>受けを狙っていないのに面白さが溢れているところがとても良かったかなと思います。
>素材が良いのかな?

それがしの小説を面白いと言ってもらえると、なんだかとっても嬉しいです!!
がんばってノリノリした甲斐があったなあ。
鼻高々。
ふふふ、素材がよかったことにしてやろうぞ。


>ぼくが書くときにありがちだけど、技能が低いのにシリアスなシーンを書こうとすると寒い印象を受けるんですよね。それってたぶん今のぼくの技能or技量では書きたいものを表現できないってことだと思うのね、でもだーくさんの小説にはそういう「書けないものを書こう」という感覚がなくて、そこが魅力の一つなんじゃないかなと気付きました。

無理して書くのは、つまらないし苦しいからね。
それがしは気楽にすらすらっと書く方がいいと思うのね。


>系統的にはぺっくさんの小説に近いよね、でもそれとはちょっと違くて、上手い言葉が見当たりません。

ぺっくさんはもっと、荒唐無稽、って感じでござるからなあ。
それは当然、それがしとはまた違うよね。


>名前はインパクトしかなくてたぶん1年後くらいには笑えないけど、橋本くんがしゃぶしゃぶ作ろうとしているところとか、もりもんが低コストで一番リターン大きいところ持って行くのとか、違う視点から見たろっどさんの印象が透けて見える感じとかがたまらなく笑えます。

ろっどさんとは違う視点から書くろっどの物語だからね。
それがしはそれがしの目から見たろっどさんとかを書いたつもりです。
ろっどさんって、こんなに面白いんだぜってね。


>だけどこれはろっどの物語じゃなくてやっぱりチャオラーの物語じゃないかなって思います。

つまりろっどの物語ってことでしょ? それがしの物語は。


>つぎはだーくさんの心のこもった作品が読みたいです。

それがしの心のこもった作品は、それがしも読みたいです。
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チャピルさん乾燥!
 スマッシュ  - 17/4/11(火) 23:47 -
  
乾燥じゃなくて感想でした(笑)

ろっどの物語でありながら、
ろっどの物語的な、特徴のあるストーリーの起伏が抑えめになっている、
読んでいて、不思議な感触がありました。
あれ、ろっどの物語なのに、なんか大人しいぞ、って。

チャピルさんの書いたろっどさんの取る行動は、どれもろっどさんの取りそうな行動で、そこはしっかりろっどの物語でした。
ろっどさんの価値観を直接的に表す、思考などがあまりなかったのが、大人しさの正体なのかな?


初めは物足りない感じもしたんですけれど、
だーくさんの書いたのを読んだ後で振り返ってみると、
「俺の知ってるろっどの物語と違う」という感触こそがこの企画の面白いところなんですね。

ろっどさんの取りそうな行動もそうなんですけれど、
『未だ本物ではない』とか、ろっどの物語のキーワードを物語に反映しているところに、くすりと来ました。
本物ではない、のところは、そこを拾うんだ! と感動しながらのくすりでした。


まだまだ続けられそうな終わり方ですね。
宇宙警察編は、ろっどさんの狂気を表しやすそうなので、続きがとっても楽しみです!

続きがないんなら、新作でも、いいです。
引用なし
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だーくさんへの間奏です
 スマッシュ  - 17/4/12(水) 0:49 -
  
間奏しかないんかい(笑)

遊んでばっかなのにちゃんと小説になっているのに感心しました。
ろっどの物語って、もっと大袈裟なストーリーになるイメージだったんですけれど、
こんな日常といった感じのものでも充分に面白く、そしてろっどの物語になるんですね。

しかもろっどの物語なのに、
救いのある、気持ちのいい終わり方をしているところ、
かなり好きです。
ハッピーエンドにしてもよかったんですね。

だーくさんの新作、楽しみだなあ。
引用なし
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乾燥蟻です(笑)
 スマッシュ  - 17/4/12(水) 1:03 -
  
>乾燥じゃなくて感想でした(笑)

よかった。
乾燥とか干からびるとか、乙女にはデンジャラスワードすぎますからね。
冗談で安心しましたよ。


>ろっどの物語でありながら、
>ろっどの物語的な、特徴のあるストーリーの起伏が抑えめになっている、
>読んでいて、不思議な感触がありました。
>あれ、ろっどの物語なのに、なんか大人しいぞ、って。

テンション上げるのって、大変ですよ。
私はそういうキャラじゃないんで。
かいろくんなら、できるんじゃないでしょうか?

かいろ「うおおおお!!俺がろっどだああ!!」

うーん。
なんか違いますね。

かいろ「そうなのガーーーン!」

まあ、かいろくんで駄目なら、私でも駄目ってことで。


>チャピルさんの書いたろっどさんの取る行動は、どれもろっどさんの取りそうな行動で、そこはしっかりろっどの物語でした。
>ろっどさんの価値観を直接的に表す、思考などがあまりなかったのが、大人しさの正体なのかな?

テンションのみならず、思考も真似することには難しさを感じました。
ここは……真似しきれなかったことは悔しいとは思いますね。

一応誤解のないように言っておきますが、ろっどさんの思考を身につけたいわけでは、決して、ないです。
失うものが多そうなので。

かいろ「そうだな! 自分らしくが一番だもんな! 俺はろっどじゃない!!」

そうそう。
かいろ君みたいのがいるから、ツッコミも必要ですし。


>初めは物足りない感じもしたんですけれど、
>だーくさんの書いたのを読んだ後で振り返ってみると、
>「俺の知ってるろっどの物語と違う」という感触こそがこの企画の面白いところなんですね。
>
>ろっどさんの取りそうな行動もそうなんですけれど、
>『未だ本物ではない』とか、ろっどの物語のキーワードを物語に反映しているところに、くすりと来ました。
>本物ではない、のところは、そこを拾うんだ! と感動しながらのくすりでした。

どこを抽出するか、それによって「ろっどさんをどのように見ているのか」ではなくて、
ろっどさんのどこに理解をしたり、憧れを持ったりしているか、というのが、見えてくるのかもしれませんね。
私は……本物になりたいんでしょうか?
偽物って気はしていないんですけれど……。
まだまだ自分のなにかに不満があるってことなんですかね。


>まだまだ続けられそうな終わり方ですね。
>宇宙警察編は、ろっどさんの狂気を表しやすそうなので、続きがとっても楽しみです!
>
>続きがないんなら、新作でも、いいです。

続きですか?
それはまた……気の向いた時に(笑)
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乾燥アリガトーショコラ
 だーく  - 17/4/12(水) 21:08 -
  
>乾燥じゃなくて感想でした(笑)

(笑)

>ろっどの物語でありながら、
>ろっどの物語的な、特徴のあるストーリーの起伏が抑えめになっている、
>読んでいて、不思議な感触がありました。
>あれ、ろっどの物語なのに、なんか大人しいぞ、って。

ろっどの物語に起伏があるのは、結局のところ周りの人が普通だからだと思うのですよ。
ろっどさんの真骨頂は自身のその選択ではないでしょうか?

>初めは物足りない感じもしたんですけれど、
>だーくさんの書いたのを読んだ後で振り返ってみると、
>「俺の知ってるろっどの物語と違う」という感触こそがこの企画の面白いところなんですね。

作中にろっどさんが出てくればそれはろっどの物語になっていくのではないでしょうか。
きっと設定だとか、舞台だとか、周りの人間だとかは、何だって良いのだと思います。

>ろっどさんの取りそうな行動もそうなんですけれど、
>『未だ本物ではない』とか、ろっどの物語のキーワードを物語に反映しているところに、くすりと来ました。
>本物ではない、のところは、そこを拾うんだ! と感動しながらのくすりでした。

印象というのは大事ですからね。
僕にとってのろっどさんは未だ本物ではないのです。

>まだまだ続けられそうな終わり方ですね。
>宇宙警察編は、ろっどさんの狂気を表しやすそうなので、続きがとっても楽しみです!
>
>続きがないんなら、新作でも、いいです。

(笑)
引用なし
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返信ありがとうございます!
 スマッシュ  - 17/4/12(水) 21:12 -
  
>>とてもろっどの物語らしい仕上がりで、しかも最近のチャピルさんの小説のような味わいがあっておもしろかったです。
>
>ろっどの物語を俯瞰したときに、これはこういう話なんじゃないかという解釈をSFチックに、神林長平風に仕上げました。

神林長平風だったんですね!
名前はしばしば聞くのですが、まだ読んだことないので、読んでみたいです!


>>ろっどさんの異質さを表すにあたって生き物としてすでに違うものをチョイスするというアプローチはチャオラーの中ではチャピルさんくらいしか思い付かないんじゃないかと思いました。
>
>その通りですね。きっと僕しかいません。
>しかし、ろっどさんを表すのに人間の枠組みでは到底描ききれませんので、妥当だったと評価しています。

さすがチャピルさんですね。
大胆しかし冷静というわけですね。


>>あととても書きづらそうな印象を受けました。ろっどさんとチャピルさんはだいぶ違う人間なのでそのせいかな?
>
>僕は人間ですからね。

ですね!


>>でも試みだけって感じなので、チャオガーデンみたいな心のこもった作品がまた読みたいです。
>
>ありがとうございます。
>チャオガーデン2みたいなものも書きたいと思っていますので、楽しみにしていてください。

まじですか!
未来よ早く来い!
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間奏聴き入ってしまいました
 だーく  - 17/4/12(水) 21:15 -
  
>間奏しかないんかい(笑)

すばらしいツインギターでした。

>遊んでばっかなのにちゃんと小説になっているのに感心しました。
>ろっどの物語って、もっと大袈裟なストーリーになるイメージだったんですけれど、
>こんな日常といった感じのものでも充分に面白く、そしてろっどの物語になるんですね。

大袈裟なストーリーと言っても、ノンフィクションでしたしね。
ろっどの物語だってろっどさんにとっては日常みたいなものですよ。

>しかもろっどの物語なのに、
>救いのある、気持ちのいい終わり方をしているところ、
>かなり好きです。
>ハッピーエンドにしてもよかったんですね。

多分何作か読み返すとわかると思うのですが、だーくの作品は大体誰か泣いて終わるんですよね。
でもろっどさんって結局オチつくので、こうなりました。

>だーくさんの新作、楽しみだなあ。

ねー。
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チャピルさんへ感想
 だーく  - 17/4/12(水) 22:03 -
  
なんかみんなろっどさんにSFのイメージあるんですかね。
ろっどさんの作品にSFチックなものが多かったからかもしれませんが、なんか意外でした。

ろっどの物語と比較すると、行動や外観といった視覚的な描写が多く、隠喩的な表現が多かったので、他の様々な方が言われているようにろっどの物語っぽさというのは薄かったように感じられます。
確かにろっどの物語も描写自体は淡々としていましたが、あの作品はなぜかその後ろで太鼓のような重い音が不気味な一定のリズムを刻んでいました。

ただ、この作品のすごいところは、主人公が飽くまでろっどさんというところですね。
あまり現実的な世界ではありませんので、ろっどさんの現実における選択感というのはあまり感じられないのですが、実際にこういった状況に置かれたらきっとろっどさんはこう選択するのかもしれないな、という現実感が逆にあるように感じられます。

あとシカクイ星が一回だけ出てきてますけど、この星シャド冒にもあった気がします。まさか世界観が繋がっている…!?

飛んで高速で滑空するのはろっどさんっぽいですよね。それはすげえわかります。
引用なし
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<Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko...@116-220-156-169.rev.home.ne.jp>

Re(1):チャピルさんに感想
 チャピル  - 17/4/16(日) 20:56 -
  
感想ありがとうございます。

>とてもろっどの物語らしい仕上がりで、しかも最近のチャピルさんの小説のような味わいがあっておもしろかったです。
そうですね。自分の中ではろっどの物語の正統派を書いたつもりでいましたが、ふたを開けてみたら他の人とは違うアプローチになってました。

>あととても書きづらそうな印象を受けました。ろっどさんとチャピルさんはだいぶ違う人間なのでそのせいかな?
すごく書きづらかったです。ろっどさんの一人称で進めることは、正統派としては外せないポイントでしたが、実際ものすごく苦労したのでもう二度とやらないと思います。

>でも試みだけって感じなので、チャオガーデンみたいな心のこもった作品がまた読みたいです。
話としてはもっと膨らませたかったのですが、前述のとおりろっどさんを書くのに力尽きたのでこの長さになりましたごめんなさい。

>チャオガーデン2みたいなものも書きたいと思っていますので、楽しみにしていてください。
なんでも2にすればいいってもんじゃないねんで。
引用なし
パスワード
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Re(1):チャピルさん乾燥!
 チャピル WEB  - 17/4/17(月) 6:54 -
  
>乾燥じゃなくて感想でした(笑)

なんか普通の返信を付けづらいツリーになってますけど、あんまり気にせず返信します。

>ろっどの物語でありながら、
>ろっどの物語的な、特徴のあるストーリーの起伏が抑えめになっている、
>読んでいて、不思議な感触がありました。

ろっどの物語の後半は起伏が激しいですけど、前半はそこまででもないですよ。
もちろん、とつぜん悪者扱いされて引っ越すことになったり、父親が無職になったりするのですが、原作の描写は結構淡泊ですね。思い出話をしている感じというか。
そういう部分を切り抜いて作ったので、同じ印象を引き継いでしまったかもしれません。

>まだまだ続けられそうな終わり方ですね。
>宇宙警察編は、ろっどさんの狂気を表しやすそうなので、続きがとっても楽しみです!

本当は宇宙警察ネタでもっと後半までカバーしたかったのですが、残念ながらここで力尽きてしまいました。
自分の中のろっどさんは「宇宙警察になりたい」って言いつづけているので、気が向いてすごいやる気が出たら書きます。
引用なし
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<Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10.11; rv:52.0) Gecko/20100101 Firefox/...@113x37x62x146.ap113.ftth.ucom.ne.jp>

Re(1):チャピルさんへ感想
 チャピル WEB  - 17/4/17(月) 7:07 -
  
>なんかみんなろっどさんにSFのイメージあるんですかね。
>ろっどさんの作品にSFチックなものが多かったからかもしれませんが、なんか意外でした。

見事に被りましたね。自分としては、登場人物が人外であればなんでもよかったのですが。
まあ、原作がチャオレースっていう超メジャーなところを抑えているので、何かしら別の軸があった方がやりやすいというのはあります。

>ただ、この作品のすごいところは、主人公が飽くまでろっどさんというところですね。
>あまり現実的な世界ではありませんので、ろっどさんの現実における選択感というのはあまり感じられないのですが、実際にこういった状況に置かれたらきっとろっどさんはこう選択するのかもしれないな、という現実感が逆にあるように感じられます。

ろっどさんの描写にはまったく自信が無かったので、そう言ってもらえるととてもありがたいです。
登場人物がみんな異星人なので、ろっどさんが普通のことをやっていても、一人だけ変なやつがいることになるんですよね。
この仕組みを思いついたときは勝ったなと思ったんですけど、実際書いてみると案の定ろっどさんに苦しめられました。
ダークさんの作品は正統派ろっどの物語としては認められないですが、やりかたとしては賢いですね。

>あとシカクイ星が一回だけ出てきてますけど、この星シャド冒にもあった気がします。まさか世界観が繋がっている…!?

書き始めたときは本当にマール星とシカクイ星だったんです!
その残骸がちょっとだけ残ってしまいました。
引用なし
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<Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10.11; rv:52.0) Gecko/20100101 Firefox/...@113x37x62x146.ap113.ftth.ucom.ne.jp>

第三話 ライオン
 スマッシュ  - 17/5/1(月) 23:58 -
  
 アーティカの操縦者は、全部で四十二人いる。
 その中でエースアーティカに乗れるのは七人。
 七機のエースアーティカには、それぞれ五機ずつアーティカがつく。
 六機で一つの部隊なのだ。
 エースアーティカのパイロットには、三人も知った顔がいた。
 シドヤとルウ。そしてハバナイだ。
 僕はシドヤの部隊に配属された。
 この部隊にチームワークはなかった。
「ここでの価値基準は、シドヤがエースになる前から、たったの一つしかない。それは撃墜数だ」
 部隊の先輩、デデストが言った。
「最も撃墜数を稼いだやつが、次のエースアーティカ操縦者。単純だろ?」
「そうですね」
「気を付けな。単純な競争だからな。誰もお前を助けたりしない」
 デデストは下品に笑った。
 だけど僕は競争に興味がなかった。
 僕はアーティカに乗ることができる。
 飛びたいと思った。
 操縦者はアーティカをカスタムできた。
 アーティカのパーツは、チャオのスキルと同じく、五種類ある。
 そして一種類ごとに、通常パーツと強化パーツの二種類があった。
 強化パーツは性能で勝るが、重かったりエネルギーの消費量が多かったりする。
 僕はヒコウパーツのみ強化パーツにして、他は通常パーツを採用した。
 武器もいくつか用意されていたが、飛ぶことばかり考えている僕はサブマシンガンのみを装備することにした。

 操縦者になって、三日目。
 敵が空から降りてきた。
 アーティカは次々と基地から飛び立つ。
 僕とクリアもアーティカに乗り込み、発進する。
 戦場は城下町だ。
 GUNの基地を城に見立てて、その周辺の町のことをそう呼んでいるのだった。
 僕以外の四機は、どれも似通っていた。
 まず武器は剣だった。
 パーツは強化パーツが多い。
 ハシリとオヨギの強化パーツは全員つけている。
 チカラの強化パーツを、デデストともう一人がつけている。
 そしてスタミナの強化パーツ、予備のカオスバッテリーを積んで、エネルギーの消費が速い欠点を補っている。
 敵は、機械の小動物だ。
 チーターやコンドルなど、チャオのキャプチャする小動物を模したような形をしている、単色の機械だ。
 黄色一色のチーター。真っ赤なコンドル。
 人と比べれば巨大だが、アーティカよりかは小さい。
 サイズは、丁度チャオと小動物の関係だった。
 その小動物が、何十機も降ってくる。
 僕は空を飛ぶ。
 まだ僕はアーティカを動かすための基礎訓練と、武器の扱いの訓練しか受けていない。
 模擬戦すらしていない、初めてのアーティカでの戦闘。
 チャオバトルでのチャオの動かし方とほとんど同じことに助けられる。
 始めにチャオがアーティカとシンクロし、そのチャオと人間がシンクロすることで、人間はアーティカを操縦できる。
 僕は問題なくアーティカを飛ばすことができた。
 だけど。
 僕のアーティカは遅かった。
 チャオバトルをしていた時と比べて、アーティカの飛行は遅く感じられる。
 アーティカを構成する機械やフレームの重さが邪魔をしているのだ。
 これでは、自由に空を飛べない。
 素早く敵を翻弄できないことに危機感を覚え、僕は敵から距離を取って、サブマシンガンを撃つことに終始した。
 そんな僕の頭上を、一機のアーティカが風のように通り過ぎる。
 下半身がなく、代わりに背中に大きなヒコウパーツがついていて、まるで蜘蛛のようだ。
 蜘蛛のアーティカ。
 それは僕の兄のスターダムを改造した、シューティングスターという機体だった。
 操縦しているのは、かつて僕とスケヤ君をチャオバトルで負かした、ルウだ。
 敵と敵の間を吹き抜けながら、二丁拳銃で空を飛ぶコンドルとクジャクを撃ち落とす。
 そのスピードこそ、僕の求めていたものだった。
 一方地上では、シドヤの乗るエースアーティカ、ダンシングビートが小動物を殴り、破壊していた。
 彼のアーティカは肉弾戦に特化した機体で、武器を持たず、手足で攻撃して戦うように作られている。
 小動物の動きは、これまでの僕たちのチャオバトルでの動きと比べるとだいぶお粗末だった。
 だからルウもシドヤも、次々に小動物を破壊する。
 そして僕のアーティカも無傷で戦闘を終えたが、距離を取っていたせいで撃墜数はコンドル一機だけだった。

 城下町から小動物がいなくなり、僕たちは基地に帰る。
 僕はシューティングスターから降りるルウを見ていた。
 あれは僕が乗るべき機体だと思った。
 一匹のチャオ、ルウの使っているのとは違うチャオが、ルウに向かって飛んでいき、
「よう、今日も絶好調だったな」
 と話しかけた。
 そのチャオは、ニュートラルのカオスチャオだった。
「気持ちいいよ。これは。これを知っちゃうと、もう他のアーティカには乗れない」
「だろうな」
 僕は遠くから、その会話を盗み聞きしようとする。
 チャオが、人間と同じように流ちょうに喋るのは珍しい。
「なに? もしかしてあんたも乗りたいの?」
「別に。それにお前とはシンクロできないしな」
「カオスチャオでも私は乗りこなすよ。それとも、振り回されるのが怖い?」
「乗りこなせるようになってから大口は叩けよ」
 軽口を叩いたカオスチャオは、今度は僕の方に飛んできた。
「よう」
 とカオスチャオは手を挙げた。
 僕も手を挙げて返す。
「あ、ああ」
「よう」
 カオスチャオはもう一度、言った。
 今度は僕ではなく、僕の抱いているクリアに言っているみたいだった。
 クリアは反応しない。
「噂どおり、心がないみたいだな」
「そうだけど」
「心のないチャオではこの先、戦っていけないぜ。エースアーティカに乗るのは絶望的だ」
「なんでそう思うのさ」
「事実さ。エースアーティカの操縦者に選ばれるには、人間だけでなくチャオにも才能が求められる。そういう点じゃ、お前のチャオは最悪だな」
 僕はむっとして、言い返す。
「これも才能だよ」
「それはただの戯れ言だ」
 カオスチャオは僕をにらむように見た。
 話に聞くとおり表情の変化が乏しくて、本当ににらんでいるのかはわからないが、そんな感じがした。
「そんなに言うんなら、マキナがパートナーになってあげれば?」
 ルウが来て、言った。
 カオスチャオ、マキナが嘲笑した。
「冗談はよっしーだ」
「僕だってお断りだ」
「ああ、そうだ。お前、タスクって、テスクの弟だろ?」
 そうだけど、と僕はうなずいた。
「誰?」
 とルウがマキナに聞いた。
「前にスターダム乗ってて、死んだやつだよ」
「ああ。あれの弟だったの。なるほどね」
 ルウも兄のことを知っているみたいだ。
「なるほど?」
「兄弟揃って、チャオバトルの才能はそこそこあったってことでしょ?」
 ルウの言い方には、なんとなく僕や兄を見下したところがあった。
「僕もエースアーティカに乗る。でも死なない」
「そうだね。そうできるといいね」
「さて、そろそろ次いくか」
 とマキナが見ている先には、ハバナイがいた。
「次は面白い戦いを見せてくれよ。それとな、お前のお兄ちゃんのチャオ、チャオガーデンにいるぞ」
「え?」
「チャオの方は生き残ったんだよ。エースアーティカに乗ったチャオだ。才能があるのは確かだろうぜ。それじゃあな」
 マキナは手を振り、飛んでいった。
「あいつは、なんなんですか」
 僕はルウに聞いた。
「あいつは誰のチャオでもないよ、始めから。強いて言うなら、アーティカの素材にするために、GUNに飼われていたってとこ。でも色々あって、今は基地の中限定だけど自由の身」
「アーティカの素材?」
「アーティカの中枢、人工カオス。それを作るのにカオスチャオを使うんだ」
「マキナはそれに選ばれなかった、ってことですか」
「逆だよ」
「逆?」
「アーティカになれば、心を失う。人と同じように話せるあいつをアーティカにするのはもったいない。他に使い道があるんじゃないか。そう判断されたんだ」
 現実には、マキナと話すうちに研究者や職員がマキナに愛着を持ったから、そんな理屈でアーティカにするのをやめたのだろうとルウは言った。
 確かに、これまであんなチャオは見たことがなかった。
 だけどクリアとではエースアーティカに乗れないというマキナの発言を、素直に認める気は僕の中に少しもなかった。
 マキナの予想を越えて、見返してやる。
 僕はそう決意し、だからチャオガーデンにも行かなかった。
 僕に、兄のチャオは必要ない。

 なぜ自由に飛べなかったのか。
 パーツの選択は間違っていなかった。
 足りないのは、カオスカメラルドだ。
 カオスエメラルドを装備するエースアーティカなら、もっと速く飛べる。
 それはルウのシューティングスターが証明していた。
 それにエースアーティカには、普通のアーティカとは全く異なる、オーダーメイドの強化パーツを装着できる。
 飛ぶなら、エースアーティカに乗るしかない。
 そして、この部隊でエースアーティカの座を目指す以上、デデストのような姿勢でいることが正しいのだった。
 僕は自分の撃墜数を稼ぐことだけを考えて、アーティカの装備を整えた。
 その結果、武器はナイフ一本になった。
 ランの強化パーツをつけ、他は通常パーツにする。
 敏捷性を最優先した装備だ。
 誰よりも速く敵を倒し、次の敵を求めて戦場を走る。
 そういうアーティカである。
 チカラの強化パーツがない分、的確に攻撃しなければ余計な時間がかかる。
 オヨギの強化パーツがないから、数度の攻撃を受けただけで死んでしまう危険性がある。
 そしてヒコウの強化パーツがないから、この機体はろくに飛べない。
 それでもうまくやれば撃墜数を最も稼げるし、僕はうまくやってやるつもりでいた。

 次の出撃で、僕は実際にうまく立ち回ることができた。
 アーティカは飛ぶよりも走る方が得意なようだ。
 走った方が飛ぶよりも断然速い。
 そして僕のアナザータスクは賢くない小動物たちを完全に欺き、一方的に切り刻むことができた。
 素早い動きが特徴のチーターとイノシシ。
 しかしどちらもその速さで真っ直ぐ向かってくることしか能がない。
 現実のイノシシの方がまだ賢い。
 飛びかかってくるチーターには、こちらも素早く前に出てその腹をナイフで裂き、突進してくるイノシシは、横に回避して側面からナイフを突き刺す。
 あとはそれぞれの前進する力が、勝手に小動物の体を裂いた。
 ゴリラのような、パワー自慢の小動物は、とにかくスピードで翻弄して攻撃を空振らせ、その隙にナイフを突き刺すだけ。
 大成功だった。
 僕は戦闘が始まって二十分もすると、前回のデデストたちのスコアを上回った。
 デデストたちが狩るはずだった分を僕が狩ったので、彼らのスコアは酷いことになっているだろう。
 舞い上がり、さらに他の小動物を求めて走る僕に、これ以上進むなというシドヤからの通信が入る。
「なんでですか」
「その先にいるやつと交戦中だがな、これは普通のアーティカで相手になるような敵じゃない。無駄死にするだけだ」
「そんなの、やってみなくちゃわからない」
「やってるからわかるんだよ」
 僕は構わず、シドヤの座標へ向かった。
 そこにはルウもいた。
 シドヤとルウの二機が戦闘しているのは、ライオンの小動物だった。
 しかしそれは他の小動物よりも大きい、アーティカと同じサイズの、二足歩行をする機械であった。
 小動物というよりも、ライオンを模したたてがみのあるアーティカといった方が近い。
 ライオンは大きな剣を持っていた。
 その剣をシドヤに向け、動きを牽制している。
 ルウにはあまり意識を向けていないようだった。
 ルウが近付いてくれば銃撃を回避するために動き回るが、そうでない場合は町の建物が盾になるように立つ場所をうまく調節している。
 僕はその戦闘をビルの上から見ていた。
 ここだという隙を見たら、僕があのライオンを撃破する。
 そう思っていた。
 しかしライオンは膠着状況を破った。
 ルウの機体が、ライオンに近付くために方向転換をした瞬間だった。
 ライオンはルウの機体に向かって走り、跳んだ。
 ルウは上昇して逃れようとするが、間に合わなかった。
 ライオンの剣がルウの機体を切断する。
 蜘蛛のようなルウのアーティカは、前と後ろに分かれて墜落する。
 するとライオンは目的を果たしたと言わんばかりに、他の小動物たちと共に素早くルウのアーティカを回収し、空へ帰っていってしまう。

 ルウのアーティカ、シューティングスターには、脱出ポッドがつけられていた。
 それは僕の兄が乗っていた、スターダムの時にはなかったものだ。
 戦闘後、城下町の外れにその脱出ポッドが落ちていたのが見つかったが、中にルウはいなかった。
 でも、僕たちはルウの生死の心配をしていなかった。
 カオスエメラルドが、アーティカごと敵に回収されてしまったことの方が重大だった。
 敵は強くなり、僕たちのエースアーティカの席は減った。
 希望が一気に奪われてしまったような気分にさせられる。
 僕は、兄の機体がもう一度破壊されたような気持ちになっていた。
 だからルウのことは少し悲しかった。
 兄の機体に乗るなら、それ相応の成果を見せてほしいと、僕は期待していたらしい。

 そしてもう一つ。
 僕のチャオ、クリアが死んだ。
 心のないチャオは転生できない。
 それどころか、生きる意思のないチャオは、普通のチャオよりもずっと早く寿命を迎えるのだった。
 パートナーのチャオを失った僕は、当然アーティカに乗る資格も同時に失った。
 そして僕の代わりにスケヤ君がアーティカの操縦者になった。
引用なし
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覚醒するあらすじ
 スマッシュ  - 17/8/20(日) 22:45 -
  
第一話 DAYS

【タスク】
この作品の主人公。
第一話は、タスクがGUNに入る前の物語。


【チャオ】
ペットとして愛玩されていた生物だが、
現在はサイボーグ化することにより、
携帯マルチデバイスとして利用されている。

飼い主はチャオと意識を融合させることができ、
チャオ目線で撃ち合いをするチャオバトルという遊びが流行している。


【チャオバトル】
チャオと意識を融合させ、チャオを操縦して撃ち合うゲーム。
弾数は互いに10で、
被弾するか、弾切れすると負け。


【テスク】
タスクの兄。
ヒコウチャオのロヴを飼っていた。
チャオバトルが非常に得意だったため、
アーティカのパイロットとしてGUNに入隊することになった。


【アーティカ】
GUNが宇宙からの脅威に備えて作り出したロボット。
パイロットとチャオのペアで操縦する。
その操縦法はチャオバトルとほとんど同じであるため、
チャオバトルが得意な子どもとチャオが操縦者候補として、
GUNに入隊させられている。


【クリア】
テスクに憧れて、チャオバトルをしたがっていたタスクが初めて飼ったチャオ。
このチャオは心を持っておらず、そのためタダで買うことができた。
心を持たないためにチャオバトルでは操縦者の言うことに寸分違わず従う長所があった。
この長所を活かして、タスクはチャオバトルで連勝を重ねた。


【スケヤ】
タスクの友人。
チャオバトルがとてもうまい。
タスクと共にGUNに入ることとなる。


【ルウ】
GUNに所属している女子。
タスクとスケヤがGUNに入隊するためのテストとして、
二人とチャオバトルをした。
その際、1vs2のハンデマッチで二人に完勝した大人げない実力者。


第二話 少年ハート

【タスク】
この作品の主人公。
第二話は、タスクがアーティカの操縦者候補としてGUNに入ってから、操縦者に昇格するまでの物語。


【パパパパーン・マママン】
アーティカ部隊の司令官。
なぜかこんな名前に改名したという男。


【エースアーティカ】
アーティカには七機だけ、特別なカスタムを施した機体がある。
その七機はエースアーティカと呼ばれており、
カオスエメラルドを原動力として採用している。

エースアーティカのパイロットとして選ばれた者は、
同時にエースアーティカの強化パーツをオーダーメイドできる権利を得る。


【スターダム】
エースアーティカのうちの一機。
テスクがカスタムした、飛行特化の機体。
しかし敵に撃墜され、搭乗していたパイロット、テスクは死亡した。


【操縦者候補】
GUNに入ったばかりの操縦者候補たちはチャオバトルによって格付けをする。
そしてその格付けの頂点に立ったものが、
アーティカのパイロットに欠員が出た際、次のパイロットとして採用される仕組みである。


【ハバナイ】
アーティカの操縦者候補の中でも高い実力を持っている。
心を持たないチャオ、クリアの強みを活かして勝利を重ね、増長していたタスクを打ち負かして頭を冷やさせた。
そして二つのテクニック、デュランダムとスイッチングを教える。


【デュランダム】
本来チャオバトルは、飼い主がチャオを操縦するものである。
しかしチャオと飼い主が交互に操縦権を握ることで、
予測の難しいランダム性のある動きを実現できる。
その技をデュランダムと呼ぶ。


【スイッチング】
飼い主はチャオとの融合を解くことで、
第三者の目線からチャオバトルを見ることができる。
これによって得た情報から戦略を練り、
再びチャオと融合することで有利に戦いを進める。
これがスイッチングという技である。


【協調性の壁】
チャオバトルでは、飼い主とチャオがどれだけ心を通わせられているかがものを言う。
この壁を越え、自由自在に動けるようになったチャオと飼い主はデュランダムやスイッチングといったテクニックを駆使して戦うことが可能。
心を持たないチャオを操るがゆえに壁が存在しないタスクは、
それゆえに操縦者候補たちとの戦いでは不利だとハバナイは指摘した。


【アナザータスク】
心を持たないクリアを操縦しながらも、
デュランダムを再現するためにタスクが編み出した技。
別の戦闘パターンを持つもう一人の自分を作り、それと交代交代で戦うという作戦。
この技によってタスクは操縦者に昇格することができた。


第三話 ライオン


【タスク】
この物語の主人公。
第三話は、タスクがアーティカのパイロットとして、
戦場を経験する物語。


【操縦者】
アーティカの操縦者は全部で四十二名。
うちエースアーティカのパイロットは七名であり、
その七名を部隊長とした七つの部隊が存在している。


【ハバナイ】
エースアーティカのパイロットになっていた。


【シドヤ】
エースアーティカのパイロットであり、
タスクは彼の部隊の所属となった。


【ダンシングビート】
シドヤの乗るエースアーティカ。
素手での格闘に特化した機体。


【小動物】
宇宙から飛来する敵の機体。
小動物を模した機械の群れであるため、このように呼ばれている。


【マキナ】
GUNの操縦者たちにちょっかいを出しているカオスチャオ。
ルウに懐いている様子。
人と同じように話すことのできる高い知能を持っており、
それゆえに人工カオス化を免れた。


【人工カオス】
アーティカの中核となっているパーツ。
カオスチャオを素材に作る。
人工カオスになると心を失ってしまうため、
高い知能を持つマキナを素材にすることをGUNの研究者たちは嫌がった。


【シューティングスター】
スターダムをさらにカスタムした、エースアーティカ。
ルウの機体。
しかし敵に撃墜され、機体も敵に回収されてしまった。
脱出ポッドが発見されたが、中にルウの姿はなかった。


【クリア】
タスクの飼う心を持たないチャオ。
寿命により死亡。
心のないチャオは転生できない。
パートナーを失ったタスクは、アーティカの操縦者の資格も失うこととなった。
引用なし
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第四話 Butter-Fly
 スマッシュ  - 17/8/21(月) 22:59 -
  
 チャオを失い、アーティカに乗れなくなった僕が求めたのは、やはりチャオだ。
 新しいパートナー。
 それがどのチャオかは、もう決まっていた。
 たぶんこれが運命なのだった。
 GUNのチャオガーデンに入る。
 そして見覚えのあるヒコウチャオ――つまり僕が幼い頃一緒に暮らしていたチャオの姿を探す。
 そのヒコウチャオは、ガーデンの池で仰向けに浮かびながら、きらきら星のリズムでほにゃほにゃと歌っていた。
「ロヴ。久しぶり」
 僕はそう声をかけた。
 ロヴ。
 死んだ兄の、テスクのパートナー。
 僕の兄のチャオで、そしてエースアーティカに乗っていたこのチャオなら、新しいパートナーになれる。
 まるであの嫌味なカオスチャオの言うことに従ったみたいなのが少し癪だけど、だけどこれ以上にふさわしいパートナーなんてどこにいる?
「チャオ?」
 ロヴは首を傾げた。
 僕のことがわからないみたいだ。
 そりゃそうか。
 何年も会ってない。
 そして僕はその間にだいぶ成長した。
「僕だよ。タスク。タスクだよ」
 そう自分の顔を指して名乗る。
「タスク……タスク!」
 思い出したというふうに頭の上の球体をエクスクラメーションマークに変えた。
 僕の方へ泳ぎ、池から上がったロヴを抱き締めてやる。
 服が濡れてしまうのが気にかかったけれど、それよりもとっととロヴと仲良くなって、アーティカの操縦者に一秒も早く舞い戻らなくてはならないと僕は思っていた。

 ロヴは凶暴なチャオだった。
 スケヤ君に頼んで試しにチャオバトルをしてみたら、ロヴは勝手に動きたがった。
 僕はスイッチングをやってみようと、制御を諦めてロヴに任せてみた。
 流石はエースアーティカに乗ったチャオだ。
 結局僕はロヴを操作することなく、ロヴは自分の力だけでスケヤ君に勝ってしまった。
 心のあるチャオをこれまで操縦したことのない僕は、下手に手を出さない方がいいみたいだった。
 本的にロヴが動いて、スイッチングやデュランダムのために時折僕が操作する。
 その戦い方でロヴも納得したようで、僕たちの間に協調性の壁は生じなかった。
 そして僕は操縦者候補の中で再び一位となり、すぐに操縦者に舞い戻った。
 原因はライオンとルウにある。
 ルウがカオスエメラルドごと機体を回収されてしまったせいで、エースアーティカは一機減ってしまった。
 その上、これまでの小動物とは一線を画すライオンが猛威を振るうので、戦死者が増えたのだ。
「おかえり、ロヴ」
 マキナが姿を見せ、僕を見ながらそう言った。
「僕はロヴじゃないよ」
「チャオに頼り切って戻ってきたんだろ?」
「違う」
「違うもんかよ」
 僕には、心を持たないクリアと勝ち上がってきた実力がある。
 だからこそロヴをうまく扱うことができる。
 そう自信があったけれど、マキナにそう言い返すのはなぜだか躊躇われた。
 マキナの、無表情の嘲笑にこれ以上晒されていたくなかった。
 なら戦いで証明してやる、と思った。
 ロヴだけで戦っているなら、これまでの僕の戦いと同じことをしているに過ぎない。
 だけどそうじゃない。
 僕たちこそが最強のペアであることを見せつけてやろうと思った。
 マキナにも、そして他の操縦者たちにも。

 待ち望んだ小動物の襲来。
 僕はアーティカを、前と同じようにナイフでの戦闘だけを意識した装備にしていた。
 とにかく撃墜数を稼ぐ。
「前に。前に出るぞ、ロヴ」
 初めに僕が操縦権を握って、小動物に向かって走った。
 ロヴが戦場でどのような戦い方をするのか、僕は知らない。
 だから撃墜数重視で戦うのだということを教えるために、まず無理やり僕が操縦をした。
 それでロヴが従ってくれるかどうか、ということはあったけれど、幸いロヴは従順だった。
 僕に完全に操作を任せ、そして僕が撃墜数のためにとにかく前に出ているのだということを理解すると、もっともっと前に出たいという意思を見せた。
 それで僕はロヴに操縦権を明け渡してみる。
 ロヴはぐんと前に出て、被弾するが、それでもナイフを振って次の小動物を目指す。
 危険を顧みない。
 そうか、と僕は納得した。
「エースアーティカを目指すなら、死ぬ覚悟が必要ってことなんだな」
 死に飛び込み、それを退けてみせた者がエースアーティカの操縦者になれる。
 ロヴにはその経験があって、それでロヴは僕にそれを見せているのだと思った。
 僕はロヴに操縦を任せて、周りに気を配る。
 そして見つける。
 ライオンだ。
 剣を振うその凶暴な小動物を倒すために、エースアーティカが集まり、普通のアーティカはライオンから離れて雑魚に専念する。
 僕はそのライオンの存在をロヴに教える。
 するとロヴはライオンの方へ向かった。
 そうだ。
 ライオンを討ち取れば、エースアーティカの座はぐっと近づく。
「うあああああ!!」
 ロヴは絶叫しながら、ライオンに向かった。
 泣きそうな叫びだった。
 そしてロヴはライオンに正面から戦いを挑み、僕たちのアーティカは瞬く間に破壊された。

 目覚めると、医務室だった。
 僕は助かったらしかった。
 だけど重傷で、体を動かすこともままならない。
 そしてロヴは死んでいた。
「お前が弱いから、ロヴは死んだ」
 最初に見舞いに来たのはマキナだった。
 というか、マキナ以外誰も見舞いに来なかった。
 スケヤ君さえも。
 僕には人望がなかったのか。
「お前がロヴを殺したんだよ」
「そうかもしれない」
 ライオンの強さをロヴは知らなかった。
 だから僕が制御するべきだったのだ。
「どうしよう、ロヴを死なせてしまった。もうエースアーティカに乗れない」
 希望が断たれた。
 エースアーティカに乗ったことのあるロヴこそ、クリア以上の可能性だった。
 その最大のチャンスを僕はこうも簡単に手放してしまった。
 後悔が押し寄せる。
「罪の意識はないんだな」
 呆れたようにマキナは言った。
「ならお前は、僕がロヴにすまないと泣けば満足なのか?」
「そうか。お前はチャオの命をその程度にしか見ていないというわけか」
 死なないカオスチャオが、命がどうこうなんて、変なことを言う。
 僕はそう笑ってやろうと思ったのだけど、それよりもカオスチャオが死なないというところに可能性を見出した。
 こいつこそが僕の最強のパートナーなのか。
「まあ、いいさ。ロヴは死にたがっていたからな」
「え?」
「パートナーを失い、そして戦いに恐怖を持ったあいつは、死に囚われていた。そしてお前があいつに死ぬチャンスをくれてやってしまったというわけさ」
「じゃあ、自殺だったのか、あれは」
 あの叫びは、死の恐怖と、その死に抱かれるためのものだったのか。
 マキナは、そうだ、と答えた。
「お前が死のうが生きようが、ロヴは自分が死ねればどうでもよかった。そういう意味じゃ、お前も犠牲者だな、今回は」
「死ぬことを望むチャオか……」
 パートナーとしては最低だ。
「死なないチャオがいいな……」
「あ?」
「お前、僕のパートナーになってくれないか」
「はあ?」
「だってお前、死なないだろ」
 マキナはたぶん渋い顔をしている。
 体を動かせなくてマキナの方を見れないけれど。
 それにカオスチャオだから表情は全然変わらないけれど。
「お前、馬鹿だな。狂ってるって方が正しいか?」
「そうかな。どう考えても、合理的なんだけど。死なないチャオなら、ロヴみたいにライオンに突っ込んでも大丈夫だろ。いくらでも勝負ができる。ライオンを倒せる」
「その前にお前が死ぬかもしれないんだが?」
「死んで星になれれば簡単なんだけど、エースアーティカに乗るには生も死も手中に収める必要があるんだろうな」
「お前、大怪我して頭もおかしくなったのか? 言ってることの意味がわからないぞ」
「僕はいつだって本気だ」
 マキナは少し考えてから、
「わかった。いいだろう」
 と言った。
「望み通り、俺がお前を殺してやる。おんぶも抱っこも」
「それでこそだよ」
 こうして僕たちは組んだ。
 すぐに操縦者となって、僕たちは誰にも真似できないくらい、自分たちの安全を考えない戦い方をした。
 毎回毎回ライオンにやられた。
 だけど僕は生きていた。
 当然マキナは死ななかった。
 ライオンへの対策は徐々に固まり、僕以外の犠牲は出なくなって、そのせいで僕がエースアーティカの操縦者に選ばれるまでに、十年もの年月が必要となってしまった。
 それでも僕はとうとうなった。
 エースアーティカのパイロットに。


<<次回予告>>
ついに次回、カオスエメラルドの真の力が覚醒!!
タスクとマキナが発動させる、カオスコントロール!

その力ははたしてタスクたちを英雄へと変えるのだろうか?
今、タスクとマキナの運命が動き出す――!

次回、覚醒の星物語(スターストーリー)第五話
Escape from the City
お楽しみに!
引用なし
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第五話 Escape from the City
 スマッシュ  - 17/8/22(火) 10:44 -
  
「ついにアンデッドタスクのエースデビューというわけだな、おめでとう」
 僕よりもずっと背の高くなったスケヤ君がそう言ってきた。
 小動物が襲撃してきていた。
 これから僕たちは出撃する。
 そしてこれがエースアーティカのパイロットとしての初陣だった。
「アンデッドって、あんま嬉しくない呼び名なんだけど」
 と僕はむくれる。
 その反応にスケヤ君は笑う。
「不老不死様も大変だな」
 不死ってわけではないんだけど。
 なんと僕は、不老にはなっていた。
 どうやらカオスチャオであるマキナとずっと一緒にいるせいであるようだ。
 マキナが年を取ることがないように、僕も年を取らず、少しも成長していない。
 十四歳の時のままの姿でずっと生きている。
 まるでマキナの周りだけ時間が止まっているかのようだった。
 そして数えきれないくらいライオンに撃墜されながらも生き延びているので、不老不死、アンデッドと呼ばれてしまっているのである。
 アンデッドってあんまりいいイメージなくて、嫌なんだけれども、なぜかみんなそう呼んでくる。
 まだ不老不死って呼ばれた方が気分いいんだけど。

 僕たちのエースアーティカは、まだ専用の強化パーツを装着していない。
 どのような機体にするのか定まっていなかった。
 兄と同じ、飛行特化の機体にしたかったけれど、僕とマキナの戦い方は死を厭わない突撃だ。
 それでこれまで同様の、ナイフでの戦闘特化の機体である。
 パーツ自体は過去に作られた、オーダーメイド品を再利用している。
 機体名はビフォーライト。
 夜明け前という意味だ。
「まるでツギハギだな」
 機体を見てマキナが笑った。
「僕たちらしいよ。まるでゾンビみたいで」
「ゾンビか。確かにそうだな。不老不死と言うほどお前の戦いは綺麗じゃない」
「お前の戦いって、お前だって戦ってるくせに」
「知らないね」
 マキナは相変わらず口が悪い。
 だけど十年も一緒にいれば互いのことを知り尽くしてしまっていて、要するにこれは軽口なのだった。
「しかし朗報がある。俺が乗ることでこいつはただのツギハギのゾンビじゃなくなる」
 とマキナが言った。
「え?」
「今の俺には、最新のカオスコントロールシステムが組み込まれている」
「カオスコン……? なんだって?」
 マキナが言うには、カオスエメラルドの真の使い道、それがカオスコントロールなのだそうだ。
 カオスエメラルドは膨大なエネルギーを生み出し続けている。
 しかし人類の技術では、そのエネルギーの一部を取り出して使うことしかできない。
 つまりほとんどのエネルギーは無駄になっていて、そのせいでカオスエメラルドを動力源としてしか使ってこれなかった。
 それがGUNの技術者の努力の甲斐あって、短時間ながらそのエネルギーの大半を一気に使うことが可能になったそうだ。
 桁外れのエネルギー量を用いれば、様々な現象を引き起こすことが理論上は可能。
 そしてエネルギーを制御し、思いどおりの現象を呼び寄せるためのシステムを組み込んだのだとマキナは言った。
「制御の鍵は俺たちの脳だ」
 マキナは自分の頭を指した。
「つまりチャオバトルやアーティカと同じってことだな。カオスエメラルドと息を合わせて脳でコントロールするわけだ」
「なるほど。そういうことだったら、やれそうな気がするな」

 出撃。
 戦闘開始と共に飛来してきている小動物の索敵が行われる。
 そのデータを受け取って最初に攻撃をしかけるのは、ハバナイだ。
 ハバナイの乗る重装備型エースアーティカ、ホワイトナイト。
 真っ白な鎧を着込んで太った機体は大きな砲を装備している。
 カオスエメラルドからもたらされるエネルギーを砲に溜め込み、放つ。
 チャージショットによる広範囲への高火力攻撃。
 これがホワイトナイトの持ち味だ。
 対処できるアーティカが限られる、飛行タイプの小動物の群れを優先してチャージショットで落とす。
 ライオンは撃墜されない。
 チャージショットを的確に避けて、降り立つ。
 僕とシドヤは、ライオンの位置情報が転送されるのを待つ。
 シドヤの格闘戦特化のエースアーティカ、ダンシングビート。
 武器を持っていないのに、ライオンとそこそこ張り合える。
 シドヤのセンスあってのことだ。
 彼はアーティカのパイロットの中で最も戦闘のセンスに長けていて、チャオバトルでも無敗だ。
 ライオンに立ち向かうのはGUN最強の彼と、そしてアンデッドと呼ばれている僕だ。
 これまでとは違い、僕もエースアーティカに乗っている。
 今回こそはライオンを討ち取ってみせる。
 そう息巻く。
 ホワイトナイトは次弾のチャージを行いながら、対空射撃をする。
 しかしチャージショットを撃つ機会はほぼないだろう。
 町中での戦闘。
 ホワイトナイトの射撃は町の被害を拡大しかねない。
 それゆえに飛んでいる小動物の処理が主となってしまう。
 地上の小動物の殲滅は、他のアーティカと、そしてスケヤ君の仕事だ。
 スケヤ君は僕より先にエースアーティカのパイロットになっていた。
 彼のエースアーティカは、盾と銃と剣を装備していて、どんな状況どんな相手にも対応できることを重視しているみたいだ。
 名前はブルースカイ。
 飛行も得意な万能タイプのアーティカだ。
 エースアーティカにしては目立った能力がないが、その器用さを活かして、飛び回っている。
 雑魚を倒しているアーティカがライオンを発見し、僕たちに知らせる。
 僕たち、シドヤ、そしてもう一機のエースアーティカがライオンと対峙する。
「マキナ、あれを使うぞ」
「いきなりか。まあいいだろう」
 僕とマキナは同時に叫ぶ。
「カオスコントロール!!」
 カオスエメラルドから発せられたなにかが瞬間的に周囲に広がるのを感じた。
 世界が遅くなった。
 時間の流れを歪めたらしい。
 動けるのか?
 試してみると、時間の流れの変化に関係なく、僕のアーティカは普通に動いた。
 たぶん周りには、高速で動いているように見えているはずだ。
 ライオンに向かってダッシュし、ナイフで切り付ける。
 抵抗することなく、いや、抵抗が間に合わずライオンは傷を負う。
 剣を持っていた腕を切り落とす。
 残念ながら僕たちが好機のうちにできた攻撃はそれだけだった。
 なにが起きたのか把握するのに時間を使いすぎたのだ。
 ライオンの腕が地に落ちる。
 そしてライオンは慌てて飛び退いた。
「時の流れを操る。僕たちらしいな」
 マキナにそう語りかけると、
「とんでもない力だな」
 とカオスコントロールの強大なパワーに驚いている様子だった。
 とにかくこれで倒したも同然だ。
 そう思っていると、ライオンは残った腕を突き出した。
 その腕はなにかを制御しようとしているみたいに見えた。
 ライオンから発せられて、周囲に広がる濃密な嫌な気配。
 これは。
 先にその正体に気づいたのはマキナだった。
「カオスコントロールか!?」
 そして爆発が起こった。
 無数の爆発が機体を破壊してゆく。
 周りのアーティカから動揺の無線音声が聞こえてくる。
 不幸中の幸いというやつだった。
 僕に対しての一点集中の攻撃だったら、僕は死んでいたかもしれない。
 しかし広範囲への攻撃だったおかげで僕のアーティカは腕や脚を破損しただけで済んでいた。
 周囲を見ても似たような感じで、戦闘能力を奪われた機体ばかりだった。
 ただ一機だけ、僕たちの加勢に入っていたエースアーティカが大破していた。
 そしてライオンはその機体を抱えた。
 これは前と同じだ。
 ルウのシューティングスターと同じように、カオスエメラルドごと機体を回収するつもりなのだ。
 させてたまるか。
「させぇてたまるかああああ!!」
「タスク!?」
「カオスコントロール!!」
 僕は叫んだ。
 そしてカオスエメラルドはそれに応えた。
 戦場が明るすぎる光に包まれて、なにも見えなくなった。
 僕はひたすらに、手を伸ばそうとしていたような気がする。
 かきむしるように。
 握り潰すように。
 貫き破壊するように。
 そしてカオスエメラルドの力が鎮まった時、僕のイメージが凄惨な形で実現されていたことが明らかになった。

 ライオンをついに倒したというのに、僕は戦犯扱いを受けた。
 あのカオスコントロールによってGUNは様々なものを失った。
 まず僕のアーティカに装填されていたカオスエメラルド。
 カオスコントロールによって暴走した果てに、搾りかすのような小石になってしまった。
 もうなんの力も持たない小石だ。
 そしてアーティカを集めていたこの拠点を手放すことにもなった。
 町にはなおもカオスコントロールの影響による異常現象が各所で発生していた。
 もはやここではなにが起こるかわからない。
 住人たちもここから避難をしなくてはならない。
 僕とマキナはこのような被害を出した罪により白い目で見られ、謹慎処分を受けていた。
 噂では、後々なんらかの刑に処される話もあるそうだ。
「俺たちも随分と立派な英雄になったものだな」
 自室で、マキナが笑う。
「笑えないだろ。英雄じゃなくて犯罪者扱いだ」
 奪われそうになったカオスエメラルドの方はちゃんと守れた。
 ライオンだって撃破できた。
 それなのにこの扱いは不当だ。
「英雄にはよくある話だ。いい気分だろ?」
「最悪だよ」
 僕は考えていた。
 噂のとおりに、あるいは別の形でも、僕たちはもうアーティカに乗れないのではないかということを。
 それは嫌だった。
 僕はアーティカに乗り、戦わなくてはならない。
 それが僕の生き方だからだ。
 アーティカに乗って敵を倒すのが、僕にふさわしい人生だからだ。
「マキナ、逃げよう」
「は?」
「アーティカを奪って逃げよう」
「お前、マジか?」
「そうしなきゃ僕たちはもう一生アーティカに乗れないかもしれないんだぞ」
「ううん、まあ、そうなんだけど」
「じゃあ行こう」
 僕は立ち上がる。
「ええっ? おい、マジかよ。おい」
 マキナはそんなふうに言いながら、僕の後ろを走って付いてきた。

 夜。
 拠点を手放すにあたり物資の運搬の準備作業があるため、普段より人が多かったが、構わない。
 奪うアーティカは、ホワイトナイトだ。
 エースアーティカを奪うことは決めていた。
 そして逃走に最適なのはこのホワイトナイトだ。
 僕たちは他の人の目をかいくぐり、ホワイトナイトに乗る。
 すまないハバナイ。
 あなたの機体を頂戴します。
 まずホワイトナイトのチャージショットで基地の壁を一直線に破壊する。
 これが逃走経路だ。
 身を守るために装備している装甲は邪魔なのでパージする。
 鎧を全て捨てると、身軽な黒いアーティカになる。
 これだけ派手なことをすれば、騒ぎになる。
 だがホワイトナイトを発進させ、破壊して作った道を進む。
 後ろから追ってくるアーティカが一機。
 それはシドヤのダンシングビートだった。
 奇しくも向こうもこちらも素手だ。
 相手がそれ用にパーツを作っている分、肉弾戦は不利だが。
 しかしこちらには切り札がある。
「カオスコントロール!」
 ダンシングビートが追いつきそうになったところで、時間を歪める。
 そしてダンシングビートに掌底の連打をみまい、さらに蹴っておく。
 スローに流れる時間の中では追撃が簡単にできる。
 もう追ってこれないように、片脚を念入りに殴っておく。
 そして逃げる。
 ダンシングビートはもう追ってこなかった。
 脱出に成功した。
「これで本当に罪人になってしまったな」
 とマキナは言った。
 それは違うと僕は思った。
「いや、僕たちは自由になったんだ」
 そう。
 僕たちが手に入れたのは自由なのだ。
引用なし
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予告・新章覚醒
 スマッシュ  - 17/8/22(火) 10:44 -
  
覚醒の星物語はついに新たなる章へ物語を進める!

GUNから脱走したタスクとマキナを待っていたのは……
な、なんと、
可憐な美少女たち!?

「あたし、整備士やってました、メッキィです」
「私は強化パーツの開発をしていた、ビルティです」
「チャオのメンテナンス、餌の配合を担当していました、ナンティです」

「そして私がパパパパーン・マママンである!」
あんたは男だ。

ついにタスクに幸福な日々が訪れるのか!?
美少女たちとのウハウハ逃亡劇を見逃すな!
引用なし
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第六話 おどるポンポコリン
 スマッシュ  - 17/8/23(水) 16:48 -
  
 空から飛来する敵がカオスエメラルドを狙っているのは明らかだった。
 ライオンはエースアーティカを破壊してカオスエメラルドを持ち帰ることに執着している様子だった。
 それにGUNは七つ全てのカオスエメラルドを一ヶ所に集中させていた。
 敵の飛来する地域を狭めるためだったのだ。
 僕がGUNから脱走したことで、僕の逃走ルートをなぞるように敵が飛来してきていた。
 その敵を僕が迎え撃つべきなのだろう。
 しかし僕のホワイトナイトには装備がなかった。
 カオスコントロールによる攻撃は可能だった。
 だけどそれで全ての敵を倒すのは難しくて、僕は飛来する敵をそのままに逃走を続けていた。

 アーティカは目立つが、カオスエメラルドを搭載したアーティカを捕らえられる者はいなかった。
 同じエースアーティカをぶつける余裕はGUNにはない。
 逃走七日目。
 僕は十機のアーティカに取り囲まれていた。
 見たことのないアーティカだった。
 ドラム缶のような丸みを帯びた寸胴のボディ。
 それでもカオスエメラルドがあるから負ける気はしなかった。
 しかしそのうちの一機のコクピットハッチが開き、中から見覚えのある男が顔を出した。
「久しぶりだな、タスク君!」
「パパパパーン司令!?」
「そのとおりだ! 君を助けに来たぞ!」
 助けにってどういうことだ。
 パパパパーン司令は連れてきたアーティカのパイロットにハッチを開けさせ、それぞれの顔を僕に見せた。
 見覚えがあったりなかったりした。
 どこかで会ったような気がする人も、どこで会ったのか覚えがない。
 ただパパパパーン司令を除く全員が若く、僕よりも年下のようだった。
「あっ、ナンティじゃんか。えっ、ていうことはそっちはメッキィ? ああー、もしかしてそっちはビルティか」
 マキナが覚えていたらしく、声を上げた。
「知ってるのかマキナ」
「知ってるもなにも、GUNにいたじゃんか。お前興味なかったかもしれないけど」
 GUNにいたと言われても、僕は少しも思い出せない。
「えっと、どういうことです?」
 と僕はパパパパーン司令に聞いた。
「彼らは私の考えに賛同して共に来てくれた者たちだ。君とは馴染みが薄いかもしれないが、彼らは全員君の後に入ってきた、元パイロット候補たちだ」
 元パイロット候補。
 その意味さえ咀嚼し損ねる。
「いつまでもアーティカのパイロット候補のままGUNに居続けることはできない。だからパイロットになる見込みのなかった者は、アーティカのメンテナンスだとか他の仕事に就くんだよ。あいつらは全員、俺たちを後ろから支えてきてくれたやつらだってこと。本当に見覚えないのか?」
「ああ、そう言われればなんかわかるわ」
 僕たちは警戒を解き、パパパパーン司令から詳しい話を聞いた。
 GUNはアーティカ部隊の拠点を移し終え次第、逃亡した僕を捕らえてカオスエメラルドを奪還するつもりでいる。
 僕はカオスエメラルドを消滅させ、さらに強奪した犯罪者として処罰される予定らしい。
「私はそれに反対して、GUNを裏切り君を追ってきたのだ。私は君のカオスコントロールこそが、世界を救う鍵だと信じている」
 こんなにはっきりと味方だと言ってくれる人が現れて、僕は嬉しくなった。
「ありがとうございます」
「そして君を助けるために用意したのがこの新しいアーティカ、バイオレットだ」
 バイオレットは量産を最重要視して設計されたアーティカで、強化パーツの付け替えができなくなっている。
 パパパパーン司令はこのバイオレットを、生産した分だけ民間人にばらまいてからGUNを抜けてきたと言った。
「君を追いかける形で、小動物はあの拠点の町以外にも出現するようになってしまった。その原因が君と、君のカオスエメラルドであることを隠すため、私はこの手を打った。通常のアーティカに使用されるカオスバッテリーは、カオスエメラルドと似た反応を出すため、小動物を呼び寄せる可能性があるのだ」
 全国にバイオレットが配置されてしまえば、もはや小動物はどこに現れても不思議ではなく、それが僕の存在を隠すことになるということだ。
 元々小動物の存在に怯え、アーティカの配備を求める声は多かった。
 それに応える形で、バイオレットは配られた。
 こうなればGUNはバイオレットを全国に流し続けるしかなくなる。
 というのがパパパパーン司令の読みだった。
「そして我々は小動物を倒すことを生業にする傭兵団として各地を渡り歩き、逃走を続けるという作戦だ」
「なるほど」
「どうだろう。我々の提案に乗ってくれるだろうか」
「勿論です」
 この誘いを断って、僕たちだけで逃亡を続けるのは無理がありそうだったから、乗る以外の選択肢はなかった。
 僕がうなずくと、パパパパーン司令の後ろにいた三人の女子が、きゃあ、と喜んだ。
 そして三人がずんずかと寄ってきた。
「タスクさん! あたし、アーティカの整備士やってた、メッキィです! タスクさんと一緒に戦えるの楽しみにしてました! って言うか、タスク君って呼んでいいです!? タスク君って、見た目は私より年下じゃないですか、すっごく可愛いと思ってたんですよ!」
 メッキィは早口で、僕の手を握り締めながら喋った。
「う、うん。よろしく」
「私は強化パーツの開発をしていたビルティ。バイオレットの開発にも関わってるから、この機体での戦闘なら私にも分があると思うよ」
 ビルティは腕を組み、不敵な笑みを見せて、
「よろしくね、タスク君」
 と言った。
「わたしはナンティ。チャオのメンテナンスや餌の配合をしていました。アンデッド様のことはずっと気になっていました。ぜひ寵愛を賜りたく思います」
 ナンティは深々と頭を下げる。
 寵愛ってなんかエロい、とメッキィが非難する。
「なら私も寵愛がほしいわ」
 ビルティがそう続くと、じゃあ私も、とメッキィが挙手する。
 一体なんなんだこれは。
 ほとんど知らない女性三人から急にアプローチを受けて僕は戸惑う。
「え、いや、その」
「俺ならいつでも愛してやるぜ」
 マキナが三人に言った。
 しかし三人は、へらっと笑っただけでなにも言わなかった。
「おいタスク、こいつらとは絶対に付き合うなよ」
「それは僕の自由だから」
 いつものノリでマキナにそう返すと、きゃあと三人がまた声を上げた。
 困ったことになったな、と思った。

 パパパパーン司令によって、既に宿は手配されていた。
 アーティカを格納する小屋も含めて全て用意が整っていた。
 しかもGUNに通報する町の者がいても大丈夫なよう、僕たち以外の人は宿や小屋への出入りを禁止しているという徹底っぷりだった。
 宿の持ち主すら、今晩は別の場所に泊まるという話だった。
 よくそんな条件で話をまとめられたものだと思う。
 それだけ人々はアーティカ乗りを求めているのだろうか?
「夜這いに来たりしてな」
 マキナは寝ようとベッドに入った僕に言った。
「勘弁してほしいよ、それは」
「来たらどうする?」
「どうするもこうするもないだろ。お前だっているのに」
「そうか。それもそうだな。じゃあ俺は別の部屋で寝ることにするよ」
 マキナは部屋から出ていこうとする。
 僕は必死にそれを引き留める。
「やめて、マジでそれはやめて」
 もし彼女たちが本当に夜這いに来たら大変なことになる。
 そして彼女たちの興奮した様子には、そのもしもがあり得るのではないかと不安に駆られるような熱っぽさがあった。
「じゃあこうしよう。俺はクローゼットの中に隠れる。それでもしものことがあったら、その時は俺はこっそり覗いている」
「最悪だよ。それが一番」
 マキナはクローゼットの中に隠れてしまう。
 中からマキナは、
「そうは言っても、鍵かかってるから、入れなきゃ大丈夫だろ」
「それはそうなんだけど」
 ガチャガチャ、と部屋の外で音がした。
 ドアが開いて、三人が入ってきた。
「なんで!?」
「ピッキングです!」
 メッキィが勝ち誇ったように針金を掲げて言った。
「あたしたち、抜け駆けはなしってことで、最初は三人一緒って決めました。抱いてください」
「助けて、マキナ!」
 返事がない。
「マキナちゃんからは、アンデッド様を好き放題してよいと了承を得ています」
 ナンティがピースサインをして言った。
 ふざけるなマキナ。
 よく見るとクローゼットの扉が僅かに開いていた。
「マキナのことなんて今は忘れて、ね?」
 ビルティが僕の体をそっとベッドに倒した。
 絶妙な力加減で、乱暴さはなく、だけど僕が抵抗できないように押し倒された。
「あたし、ずっとタスク君に憧れてました。GUNに入った時から……。私はパイロットになれないまま大人になっちゃったけど、タスク君はずっと変わらなくて、ずっと憧れの姿のままで。だから今でもタスク君に憧れてる」
 メッキィは僕の小さな全身を包み込もうとするように抱き締めてきた。
 抱き締めれば宝箱にしまえると思っているみたいだった。
「あんなに無茶な戦いをして、それでエースアーティカに乗るまでになるなんて。私もそういう馬鹿になりたかったな」
 ビルティは快楽に無我夢中になって、互いの理性を激しく揺さぶってきた。
 アーティカに乗れなかった自分というものを忘れて、この瞬間の自分だけを受け入れようとしているみたいに懸命だった。
「老いを知らない体、そしてあのカオスコントロール……。あなたの力は美しくて、眩しい」
 ナンティは僕の体を愛おしそうに舐める。
 磨くのと味わうのを同時に行っているかのように、丁寧でゆっくりとした動作で交わる。
 三人との交わりは朝まで続いた。
 僕はその後一日疲労で動けず、ベッドに横になっていた。

 傭兵業は非常にうまくいった。
 パパパパーン司令の根回しもあったのだろう、逃走中の生活に困ることはなかった。
 バイオレットは量産されているために、修理が容易だった。
 ただし僕のホワイトナイトばかりはそういかず、戦闘での被弾を避けなくてはならなくなった。
 メッキィビルティナンティの三人が僕を守っていいところを見せようとすることもあって、僕は以前のようながむしゃらな戦いはできなくなった。
 僕らしい戦いができていない。
 そう心配になるけれど、エースアーティカやライオンのような強敵との戦いに備えてホワイトナイトは万全の状態を保つべきというパパパパーン司令の言葉に僕は従っていた。
 そしてとうとうGUNからの追手が姿を現した。
 逃げ始めてから一か月後のことだった。
 夜間に警備をしていたメッキィが追手を確認したのだった。
 相手はエースアーティカだった。
 全員でアーティカに乗り込む。
 エースアーティカは、シドヤのダンシングビートだった。
 ただ下半身が鳥のような脚に改造されていた。
 まさか最強のアーティカ乗りが最初に来るなんて。
「久し振りだな、タスク」
「一番会いたくないやつでしたよ、あなたは」
「今のGUNには正直あまり余裕がなくてな。だから俺のこのダンシングビースト一機でお前たちを捕らえる」
 確かに他のアーティカの姿はなかった。
 ダンシングビート改め、ダンシングビースト。
 鳥の脚になんの意味があるのか。
 警戒が必要だが、だからと言って臆するつもりはない。
「マキナ」
「ああ」
「カオスコントロール!」
 時間の流れを歪める。
 そして元々バイオレットの武装であったサブマシンガンで射撃しながら、接近する。
 このバイオレットの銃にはナイフが仕込んであり、近接戦闘もできるようになっているのだ。
 しかし予期しないことが起きた。
 ダンシングビーストは遅くなった時間を中を普通に動き、銃撃を回避した。
 そして前進する僕に飛び蹴りをしかけてきた。
 その蹴りをかろうじて避ける。
「なんだ!?」
 動揺しながらも僕はホワイトナイトを振り返らせ、ダンシングビーストの背中を狙った。
 ダンシングビーストはバイオレットを足の爪で切り裂きながら掴み、それを盾にして僕の銃撃を防いだ。
 そのまま蹴り飛ばすように脚を突き出して、バイオレットを僕の方へ投げ捨てる。
 時間の流れが元に戻り、バイオレットが飛んでくる。
 そして爆発した。
 僕は退いて、それをどうにか避けた。
「カオスコントロールができるのは、お前だけじゃない」
 シドヤはそう言った。
「逃げろタスク!」
 パパパパーン司令が叫んだ。
 続いてメッキィビルティナンティに、僕の逃走を助けるよう指示を出す。
「ここは私が食い止める!」
 そんな指示を出す間にも、ダンシングビーストに手を出そうとしたバイオレットが一機、カウンターで破壊されていた。
「バイオレットでは無理です!」
 ビルティが言った。
 僕もそうだと同調した。
 しかしパパパパーン司令は、時間稼ぎならできると言って聞かなかった。
 メッキィとナンティのバイオレットが、僕のホワイトナイトを引っ張るようにして、命令どおり逃げるよう促す。
 僕はまだ勝てるのではないかと算段をするのだが、マキナがホワイトナイトの操縦権を僕から奪って、ホワイトナイトを逃げさせる。
「マキナ!?」
「たぶんこのまま戦ったら負ける。逃げるしかない」
 そしてビルティも遅れて僕たちに付いてくる。
 残ったバイオレットたちがダンシングビーストを囲む。
「カオスポイントへ向かえ!」
 パパパパーン司令はそう言った。
 メッキィがわかりましたと答える。
 そしてパパパパーン司令は、
「いいか、タスク。この世界で鍵を握るのは、カオスエメラルドとそれに選ばれた者だ。カオスエメラルドが君を、君の望む場所へと導く。君は選ばれた者なのだ」
 と僕に語りかける。
「最後に、選ばれなかった者の運命を見せてあげよう。カオスコントロール!」

 パパパパーン司令がどうして僕を助けたのか。
 その理由を詳しく聞かせてもらったことがあった。
 自分は生まれたのが早すぎた、とパパパパーン司令は言った。
 アーティカが生み出され、小動物と戦うようになった頃には既にパパパパーン司令は大人だった。
 大人の精神では、チャオの精神とうまく融合できないことがあるのだ。
 協調性の壁は年齢と共に高くなる。
 子どもの頃にそれを越えることが、最も効率的な解決策で、そのためGUNは子どもを操縦者候補として徴集していた。
 戦えない自分たちの代わりに子どもを戦場に送り込むことを、パパパパーン司令は快く思っていなかった。
 しかしそうしなくてはならないとも確信していた。
 そこにマキナと組んで不老の体になった僕が現れる。
 僕の肉体は十四歳で成長が止まった状態にある。
 肉体が子どものままなら、どれだけ人生経験を重ねたとしても、脳やホルモンの働きに引っ張られて完全に大人にはならない。
 そしてマキナは、大体六年と半年ほど生きて二回転生している。
 その後一年で進化してカオスチャオになっていて、だからマキナも十四歳である。
 十四歳で時間が止まった者同士のコンビ。
 そこに可能性があるとパパパパーン司令は見ているのだった。

 パパパパーン司令はカオスコントロールによって時間の流れを遅くし、攻撃をしかけたが、返り討ちにあったようだった。
 逃げていたから一部始終を見れたわけではないが、そのようなことが起きたのだと遠目で戦闘を見て感じた。
「どうしてパパパパーン司令はカオスコントロールをできたんだ?」
 マキナが、メッキィたちに尋ねた。
 確かにカオスエメラルドを持っていないのに。
「カオスバッテリーを暴走させたんだ。タスクさんがライオンを倒した時にしたみたく、バイオレットに二基積まれているカオスバッテリーを暴走させて、それでカオスコントロールをするだけのエネルギーを得た」
 ビルティがそう説明した。
 カオスコントロールを起こせるだけのエネルギーを得るシステムが開発されており、それをバイオレットの隠し機能として組み込んだのだそうだ。
「動力源を失って戦闘不能になるから奥の手なんだけど、カオスエメラルドが不足している現在、小動物に対抗する手段としてバイオレットに組み込んである」
「カオスポイントっていうのは?」
「前までGUNの拠点があったところ、私たちが元々いたあの町です。あそこは今、時空間がおかしくなっていて、外側から中の様子が観測できない上、一度入ったら出てこれないとも言われています」
 そこならそう簡単には追ってこれない。
 傭兵業をしながら逃げ続けるのはもう無理だとパパパパーン司令は判断したのだろう。
「そうか。なら帰ろう、僕たちの町へ」
「あっ、私は遠慮しておくよ」
 ビルティが立ち止まった。
「あのエースアーティカ、振り切れてないみたいだから、私がとどめの時間稼ぎをする」
「ビルティ、お前」
「安心して。私だってカオスコントロール使えるから」
「ならあたしも残る」
 メッキィも立ち止まった。
「ビルティだけだと失敗しそうだし。それでタスク君捕まっちゃったら大変だもん」
「悪いけどあんたより私の方が強いから」
「じゃあ私も残るわ」
 ナンティまでも止まってしまった。
「いやいや、三人残ったら、私がせっかく気を利かせた意味ないんですけど?」
「いいじゃん三人で。三人ならもしかしたら勝てちゃうかもよ?」
「それは無理」
「えっと、とにかくタスク君、絶対に逃げ切ってね!!」
 任せろ、と僕とマキナは逃げた。
 少しして僕たちは三人の断末魔を聞いた。
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第七話 BOY MEETS GIRL
 スマッシュ  - 17/8/24(木) 21:18 -
  
 メッキィ、ビルティ、ナンティ。
 三人は僕のことが本当に好きだったのだろうか。
 自己犠牲をして相手を守れば愛なのか?
 僕と共に逃げることを選ぶことは、愛ではない?
 好きではなかったからこそ、離れる道を選べたのではないか。
 しかし彼女たちは僕を守るために死んだ。

 そもそも僕は彼女たちのことが好きだったのだろうか?
 僕は彼女たちの死を特別悲しむような気持ちにはならなかった。
 僕たちを逃がすために死んでいった人たち。
 その代表として彼女たち三人と、パパパパーン司令の顔が浮かんでくるだけで、僕は彼女たちのことを愛していたわけではない気がする。

 そんなことを考えているような暇が、今はあった。
 カオスポイントに逃げ込むと、そこには元の町が残っていなかった。
 元の町よりも圧倒的に広大な、異世界と呼びたくなるような空間になっていた。
 全く知らない町がいくつかあり、それらを包み込むように砂漠があり、町々の中心には泉があった。
 空はずっと曇っている。
 GUNの追手はおらず、小動物も降ってこない。
 薄暗い世界は平和な世界だった。
 アーティカに乗る僕は、小動物に対する武力として一応は歓迎されている様子だった。
 そしてここには僕と同じように、逃げてきた人がたくさんいた。
 なんらかの罪を犯した者が特に多い。
 だから僕はこの世界が好きにはなれなかった。
 悪人を救ってどうする、と思った。
 マキナが以前言った、英雄という言葉を思い出す。
 あの時、敵を打ち倒したのに悪者にされたことを皮肉ってそう言っていたのだが、今度は悪人を救う英雄になってしまいそうだ。
 逃げてきた人の中には、どうしようもなく非力な被害者もいた。
 そういう人たちだけ守る手段があればいいのに、と僕は思った。
 以前よりましになったのだろうが、それでも弱者のままだったからだ。

 僕とマキナはアーティカに乗って砂漠をうろつくのを日課にしていた。
 カオスポイントがどうして状態なのか調査するためだ。
 しかし一体なにをどう調べればいいのか不明だった。
 不明なくせに、なにか手がかりを見つけてやる気で僕はいた。
 すると僕たちは、見知らぬアーティカを発見した。
 まさかGUNの新型だろうか。
 警戒するが、しかしパイロットらしき少女はアーティカから出て、シャベルで砂を掘っていた。
 僕たちがアーティカで近づくと、彼女は手を止めて警戒したようにホワイトナイトを見る。
「なにをしているんです?」
 少女は少し間を置いてから、
「小動物のパーツを探してるの」
 と答えた。
「小動物? どうしてまた」
「調べたいことがあるの。そっちはアーティカに乗って、なにしてんの」
「僕も、まあ、調べものかな。どうしてここがこんなことになったのか、知りたくて」
「なあ今思ったんだけどよ、それ、シューティングスターじゃねえか?」
 マキナが少女のアーティカを指して言った。
 少女は首を傾げる。
「シューティングスター?」
 僕は彼女の機体をよく見た。
 すると確かに、シューティングスターの顔と胴体だった。
 飛行用に付けられていた巨大な強化パーツが外されており、代わりに小動物みたいな翼と脚が付けられているせいで印象がだいぶ変わっていたが、素体はシューティングスターだった。
 シューティングスターは、ライオンに破壊され、敵に回収された機体。
「お前、一体何者だ」
 マキナがホワイトナイトを操作し、銃を少女に向ける。
 少女は両手を挙げて苦笑いする。
 そして自分のアーティカの方を見て、
「ねえ、助けてくれたって、よくない?」
 と呼びかけた。
 きっと中にチャオがいるのだろう。
 しかしアーティカは動かない。
 少女は諦めた。
「私は、宇宙から来ました。あなたたちの言う、小動物をこの地球に降らせている人間です。と言っても私が降らせているわけじゃなくて、私はその宇宙船に住む一人って言うか、そんな感じです」
「宇宙人?」
 ですかね、と少女はうなずいた。
 だけど宇宙人にしては、人間と全く同じ容姿だ。
 マキナは僕に、なにかあったら撃てと命令して、アーティカから降りる。
 そして少女から武器を取り上げた。
 マキナがボディチェックをしたが、腰につけていた銃以外に武器はなにも持っていなかった。
 銃とシャベルをマキナは遠くに放り捨てる。
 僕もアーティカから降り、銃を取ってから少女に近寄る。
「まるで人間みたいだ」
「ね。私も驚きました。この星の人たち、私たちとそっくりって」
「奇跡だなあ」
 僕がそうしみじみと言うと、少女は強く二度うなずいた。
「ですよね。たぶんカオスエメラルドには、私たちみたいな生物が生まれるように生命を誘導する力があるんでしょうね」
「え? なんでカオスエメラルド?」
「はい?」
 少女はきょとんとした。
「いや、今の話とカオスエメラルド、全然関係ないじゃん」
「なに言ってるんですか? 生命とカオスエメラルドは切っても切れない関係ですよ」
 僕もマキナも彼女の言っていることの意味がわからなかった。
 それで彼女も、自分たちとこの星との知識の差を理解したようだった。
「カオスエメラルドは命の源なんです。カオスエメラルドを失った星からは、全ての生命が消えてしまいます」
 反対にカオスエメラルドの数を増やせば、それだけ繁栄が約束される。
 カオスエメラルドの量と生命の量は比例するのだと、少女は言った。
「私たちは一度滅亡しかけました。それで今は宇宙を旅してカオスエメラルドを集めているんです。この先なにが起きたとしても、滅亡を回避するために、できるだけたくさん」
「だからってカオスエメラルドを奪って僕たちを滅ぼすのか?」
「そういう倫理的な問題は確かにあるんですけど。それでも私たちにはもっとたくさんのカオスエメラルドが必要なんです」
 僕は彼女や、彼女の宇宙船が抱えている深刻さをいまいち理解できなかった。
 彼女の話からすると、もう滅亡は免れているみたいだ。
 それならカオスエメラルドを奪って悪人のようなことをせず、誰も傷付けないで大人しく暮らしていればいい。
「マキナ?」
 チャオの声が緊張した空気を壊した。
 少女のアーティカからチャオが出てきて、マキナに近寄ってきたのだった。
 マキナはそのチャオをじっくりと見る。
「もしかして、レイじゃないか?」
「そう、そう。マキナ、お久しぶり」
「レイか、久しぶりだなあ!」
「なんなの、知り合い?」
「ほら、ルウのチャオだよ。転生してたんだなあ。十年前とそっくりだ」
「この子、あの機体を回収した時、乗ってたんだよね」
 少女はレイを抱き寄せて、撫でた。
 レイは頭上の球体をハートに変えて喜ぶ。
「パイロットは? パイロットはいなかった?」
「いなかった。脱出ポッドで逃げたっぽくて、コクピットがなかった」
 そういえばそうだった。
 しかし脱出ポッドの中は空だった。
 ルウはどこへ行ってしまったのだろう。
「それなんだけどさ、なんで脱出ポッドでチャオも一緒に逃げられないようになってたの? チャオは使い捨てってこと?」
 少女は顔をしかめて言った。
 だけどそれは僕たちにとっても疑問だった。
 そもそもアーティカには普通脱出ポッドがないことも一緒に彼女に話す。
 変な話、と少女は呟いた。

 僕と少女は行動を共にすることになった。
 マキナとレイが再会をとても喜んでしまって、対立する空気ではなくなってしまったからだ。
 もしここまでGUNが追いかけてきた時のことを考えると、味方がいるのは心強かった。
 僕は彼女をGUNに売るつもりは微塵もなく、むしろGUNと徹底的に戦う気さえあった。
 だけど僕は宇宙からの敵とも、つまり彼女の仲間とも戦わなくてはならない。
 それはなんだか気まずい。
 このままカオスポイントから抜け出せない生活が続けば、そんな思いをしなくて済むから楽なんだけど。
「私がここに来た理由はもう一つあって、カオスコントロールの調査なの」
 少女――名前はミツル――は早くも僕に心を開いているようだった。
 僕の方はまだ少し警戒しているのに、無邪気な子だ。
 それが本当の十四歳の彼女と、体だけ十四歳の僕との差なのだろう。
 僕たちは砂漠で火を焚き、キャンプをしていた。
 ミツルはその身分のせいか、町に泊まることを嫌っていた。
 火の傍で、町で買ってきたフライドチキンを食べている。
「うちのライオンが破壊された日の戦闘、未知のカオスコントロールが観測されて、それがなんだったのか調べてるの」
 未知のカオスコントロール。
 きっと僕がカオスエメラルドを暴走させたやつだ。
「砂漠で、なにかわかるの?」
「うん。ライオンのパーツと、カオスエメラルドを探してる。ライオンの戦闘データが見つけられれば、ライオンが起こしたカオスコントロールについては調査ができると思う」
「ん? ライオンが未知のカオスコントロールを?」
「そう。あの日、私たちが観測した未知のカオスコントロールは二つ。そのうち一つは、ライオンが起こしてる」
 僕はライオンが起こしたカオスコントロールを思い返した。
 広範囲への爆撃。
 規模も威力も、特別なカオスコントロールという気はしなかった。
 だから僕は、
「別にあれは普通のカオスコントロールじゃないの」
 と言った。
 ミツルは、普通だけどおかしいんだよ、と首を振った。
「ライオンには確かにカオスエメラルドを積んでいたけれど、でもライオンにカオスコントロールをする機能はないの」
「なるほど」
 僕たちの場合、マキナにカオスコントロール用のシステムが組み込んであるから、カオスコントロールができる。
 ライオンにはそれが存在していない。
「パイロットが見つかれば一番いいんだけど、たぶん生きてないと思う」
「ライオンにはパイロットが?」
「そりゃ、カオスエメラルドを積む機体は無人機にできないよ。マニュアル操作が必要な非常事態に陥る可能性はあるんだから」
「パイロットが乗っていたなら話は簡単さ。そいつが自力でカオスコントロールをした」
 マキナが話に入ってきた。
「自力?」
「カオスエメラルドは心に反応して力を出す。共鳴さえできれば、システム抜きでもカオスコントロールができる」
 理屈の上では、とマキナは付け加えた。
「心……。カオスエメラルドにはそんな特性があったんだ……」
「宇宙船作れるのにそのことは知らないんだな」
「うん。私たちにとってカオスエメラルドは生命の数を左右する石で、機械の動力源。心なんて関係ないシステマチックなものだから」
「もっとドラマチックなものだぜ、カオスエメラルドはさ」
 かっこつけて言うマキナに僕は笑った。
「ドラマチックって」
 でもミツルは、覚えておく、と深くうなずいた。

 食事途中の僕たちに、美女が近づいてきた。
 町の方向から一人で砂漠を歩いてきたのだった。
 なんだか奇妙な感じがした。
「こんばんは」
 と美女は僕たちに声をかけた。
 戸惑いながら小さく返事をする。
 美女は僕をじっと見て、
「あの時から少しも変わっていないわね、タスク君」
 と言った。
 あの時から。
 一体いつだろう。
 しかし彼女は僕のことを知っている。
「あなたは?」
「覚えてないかな、だいぶ変わったからね。私はルウ」
「ルウ!?」
 僕とマキナとレイが驚いた。
 中でもレイの驚きようは凄くて、本当に飛び上がっていた。
 異様な反応を見せたチャオにルウは目をやる。
「レイ?」
「そう、レイ!ルウ、ルウ!?」
 激しく上下するレイ。
 そのコミカルな動きに僕は笑いそうになった。
「そうだよ、ルウだよ。まさかお前が生きていたなんてね」
 ルウはレイに銃を向けた。
「まるで昔に戻った気分になるわね」
 撃った。
 マキナがレイをかばって、銃弾を受け止める。
「いってぇ!」
「大丈夫か!?」
「俺は不死身だ!!」
 ルウはその場から飛び退く。
 するとルウが立っていた場所から、爪のようなものが姿を出した。
 地中に隠れていた機械が姿を現す。
 僕たちは逃げながらそれぞれのアーティカに乗る。
 地中から出てきたのは、ドラゴンを模した巨大な機械。
 しかしそれは小動物ではなく、複数のバイオレットを無理やり組み合わせた結果出来上がったものだった。
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第八話 輪舞-revolution
 スマッシュ  - 17/8/26(土) 23:55 -
  
「このエンペラーは、お前たちのカオスエメラルドを取り込むことで完成する」
 ドラゴン型の巨大アーティカが僕たちを睨む。
 だがしょせんはバイオレットをくっ付けただけの積み木アーティカだ。
「なら今は未完成ってことだろ!」
 僕はカオスコントロールをする。
 時間の流れを遅くして懐に入り込む。
 僕はバイオレットの銃から刃を出して、首を切り落とそうとした。
 しかし刃が通らない。
「なんだ!?」
 時間の流れが元に戻ってしまうので、退く。
「これはカオスコントロールで作る障壁。遊びでアーティカをくっ付けたわけじゃないんだよ、タスク君」
 ドラゴンの顔が僕の方を向いた。
 なにかまずいことが起こる。
 それを察知する。
 もっと退かなければ、と思ったらミツルのアーティカ――フォーレンテスターが僕の前に躍り出た。
 僕の庇うというわけではなく、真正面から射撃をする。
 さっきの僕の攻撃が見えていなかったのか、通用するはずのない攻撃をして隙だらけだ。
 そしてエンペラーの口からなにかが放たれる。
 その瞬間僕はカオスコントロールをして、再び時間の流れを制御する。
 フォーレンテスターを引っ張って避難する。
 エンペラーの口から放たれたのは、ハバナイが乗っていた時のホワイトナイトのチャージショットに似ていた。
 あのチャージショットの散弾版。
 危うく二機ともにやられるところだった。
 連続のカオスコントロールでは、大して時間の流れを制御できず、かなりぎりぎりの回避となった。
「まずいな」
 マキナが舌打ちする。
「でも向こうはカオスバッテリーの寄せ集め。バリアもたぶん大したことない。チャージだって吐かせたし」
「ならここから形勢逆転ってわけだな」
「それはどうかな?」
 僕たちのアーティカの周りで小規模な爆発が起きた。
 これは、カオスコントロールによって引き起こされた爆発だ。
 だけどその発生源はエンペラーではなかった。
 発生源は、フォーレンテスターだ。
「ミツル、一体なにをしている!?」
「なにもできない!」
 とミツルは答えた。
「レイはいつも私にあんまり操縦させてくれなくて、そのレイもなんか様子がおかしい!」
「そういうことかよ!」
 ミツルの報告を聞いてマキナが吠えた。
「ルウ、てめえ、レイを経由してフォーレンテスターを乗っ取っているな!」
「まさかレイまでいるとは思わなかったからね。私はラッキーだ。愛しているよ、レェェイ!」
「さっきの爆発の弱さからすると、まだ乗っ取りは完璧じゃない。だけど調整されるとまずいぞ」
 マキナが言う。
 ホワイトナイトもフォーリンテスターも、大して破損していなかった。
「私の計画では、GUNからこのカオスポイントに逃げてきた君からカオスエメラルドを奪うだけだったのに、まさかカオスエメラルドがもう一つあって、しかも予定より楽に手に入るだなんてね!」
「雑な計画だな。俺たちが来なかったらどうするつもりだったんだ?」
 マキナは挑発する。
 ルウも興奮のあまり余計に喋る。
 おかげで小休止する時間が生まれる。
 僕はその間に次のカオスコントロールでエンペラーを破壊する手段を考える。
「君たちは絶対ここに来る。忌々しいことにこのカオスポイントは、外界から完全に隔たれてはいない。入ることはもちろん、出ることも可能だ。しかし、だからこそカオスポイントの情報を外の世界に流して、君たちに安全な避難先というイメージを与えることができた」
「そして俺たちからカオスエメラルドを奪って、俺たちの身柄をGUNに渡して、それで返り咲くつもりだったのか?」
「まさか。もう一度あの時と同じカオスコントロールを起こして、このカオスポイントを外界から完璧に隔絶するんだよ」
「なんでそんなことを?」
「私ね、恋をしたんだよ」
 その語りをこれ以上聞く必要はない。
 こちらのカオスコントロールの準備は整った。
「カオスコントロール!」
 イメージは槍だ。
 鋭く、一点を貫く。
 カオスエメラルドから得た力を細く集中させて飛ばす。
「カオスコントロール」
 しかしその渾身の攻撃も、ルウの展開するバリアによって防がれてしまった。
「私はこの恋のために生きることにした。だからアーティカに脱出ポッドを付けて、そして私は戦いから逃げた」
 エンペラーは地を這い、爪で切りかかってくる。
 僕のホワイトナイトはそれをたやすく避けるが、武装の万全ではないアーティカでは反撃の術がない。
 そしてフォーレンテスターは避けることすらままならず、弾き飛ばされた。
「私にはね、子どもがいるの。とても可愛い子よ。今は八歳。その子を無益な戦争に巻き込ませない」
「こりゃ無理だな。俺たちじゃ勝てない」
 マキナが虚脱して言った。
「なに言っているんだ。母親なら偉いのか? 母親なら人を殺しても正しいのか? そうじゃないだろ、ふざけるな」
「それは関係ない。勝てるかどうかの鍵は俺たちじゃなくて、ミツルとレイが握ってるってことだ」
 ルウの乗っ取りに、ミツルとレイが対抗できさえすれば、勝機は十二分にある。
 それを妨げているのは協調性の壁だ。
 ミツルとレイの間にはそれがあり、そしてルウとレンの間にはそれがない。
 マキナはレイに呼びかける。
「レイ、お前はこれでいいのか? このままあいつに殺されるのが、お前はいいのか?」
「ぼくはいやだ!」
 レイが叫んだ。
 マキナがレイに叫ぶ。
「ならミツルを頼れ、レイ! 今のお前のパートナーはあいつじゃない、ミツルだ!」
「そうだよ、私なんだよ、レイ。私なんだよ」
 そしてミツルの言葉は、レイに届いた。
「ミツル、てつだって。ぼくはあいつにフクシュウしたい。ぼくにあいつを殺させてくれる?」
「うん。いいよ。しよう。復讐しよう! あいつを殺そう!」
 フォーレンスターは飛んだ。
 背中に付けられた小動物、ツバメの翼でミツルとレイのアーティカは飛行する。
 自分の支配を逃れたフォーレンスターに、ルウの意識は向いてしまう。
 エンペラーもパワーダウンしている。
 ここが勝機だ。
「カオスコントロール!」
 再び槍の攻撃。
 反応が遅れたが、ルウはカオスコントロールのバリアで攻撃を受け止める。
「今だミツル!」
「わかった! いくよ、レイ!」
「おっけー!」
 ミツルとレイが同時に叫ぶ。
「カオスコントロール!!」
 フォーレンスターの脚部に、カオスコントロールの力が集中する。
「ふざけるなあ!!」
 エンペラの口がフォーレンスターの方へ向く。
 そこから放たれるチャージショット。
 しかしチャージが不完全で、弾の密度が薄い。
 フォーレンスターはそれを綺麗にかいくぐる。
 弾が全て見えているかのよう。
 いや、見ているのだ。
 おそらくは操縦を代わりながら、操縦をしていない時に弾を避けるルートを見切っている。
 そんな技を二人は自然とやってのけているのだ。
 そしてカオスコントロールによって、とてつもないパワーを得たキックが、エンペラーを頭部から両断する。
「レイ、タスク……結局私は過去に……!」
 エンペラーは爆散する。
 フォーレンスターがその爆発の中から転がってくる。
 そしてホワイトナイトの傍で止まって倒れる。
「勝てた……」
「ころした……」
 満足そうにミツルとレイが呟いた。

「おかげでカオスコントロールができるようになったよ! ありがとう!」
 戦いの余韻が落ち着いて、ミツルは僕とマキナに礼をした。
 まさかカオスコントロールが使えるようになるとは思っていなかったけど。
 それもシステムなしで。
「これなら帰ることができそう」
「帰る?」
「うん。このカオスポイントの異常と、それと私の宇宙船のカオスコントロール装置の故障とが重なって、この星から宇宙船に帰ることができなくなっていたんだ」
「故障してるのに降りてきたのか」
 マキナが笑う。
「仕方ないでしょ。ちょっとダメージ受けただけで、普通なら問題なかったんだもん。それにライオンの回収は早くしないと、こっちの星の人に奪われちゃう可能性もあった」
 それに想定外のことがあったのだとミツルは言う。
「ここをカオスポイントにしたカオスコントロール。それが私たちの宇宙船まで届いたの。そんなの想定できるわけないじゃん」
「まじかよ」
 マキナは愕然とした。
「とにかく。私は帰るよ。ライオンのパーツは回収できなかったけれど、私がこれまで未知だったカオスコントロールを起こせるようになったからね」
「そっか。ちょっと残念だな」
 と僕が言ったら、
「うん。私も残念」
 とミツルは苦笑した。
「ねえ、もしよかったら、私たちの宇宙船に来ない?」
「え?」
「ほら、あのルウって人が言うには、君はGUNに追われてここに逃げてきたんでしょう? それなら私たちの宇宙船に来れば、まず安全だよ。それに私たちも、君たちの戦力とカオスコントロールは喉から手が出るほどほしいんだ」
 どうしよう、と僕はマキナを見た。
 別にいいんじゃねえか、とマキナは言うが、最後の決定は僕に下させる気のようだった。
 彼女は戦力と言った。
 彼女たちと一緒に行けば、それは侵略者としてGUNと戦うことになることを意味している。
 だけどこの星に残ったところで、僕になにができるというのか。
 それを考えると、この誘いに乗るのは悪くないのかもしれない。
 少なくとも、せっかく仲良くなった彼女とは戦わずに済む。
 その一点だけでも、この星から離れるには十分な理由だった。
「わかった。行くよ」
「ありがとう。じゃあ私が私たちの船に案内するよ」
 ミツルのフォーレンスターが、宇宙へ向けて手を伸ばす。
「カオスコントロール!」
 フォーレンスターは宇宙船とコンタクトを取ることに成功し、機体を浮上させる。
 僕のホワイトナイトもそれに付いていく形で、宇宙へと旅立った。
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予告・物語はさらなるステージへ覚醒する
 スマッシュ  - 17/8/27(日) 0:24 -
  
ミツルと一緒に宇宙船に行ってしまったのだから、
僕は地球人の敵として戦わざるを得ない。

アーティカ同士の戦闘は、これまでの小動物との戦闘とは一味もふた味も違った。
小さい頃からの知り合い、スケヤ君との殺し合いにだってなる。


そして最強のアーティカ、ダンシングビースト。
その荒ぶる獣に対抗する最新兵器がついに完成。
名前はビーストマスター。

でも戦場でものを言うのは機体の新しさじゃなくて、
カオスコントロールの使いよう。
つまりこの小説って、カオスエメラルドの物語なんだよな。


覚醒の星物語はさらに上のステージへ。
今こそ覚醒の時、
みんな地球を大事にしろよ!
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第九話 ひゃくごじゅういち
 スマッシュ  - 17/8/27(日) 20:23 -
  
 僕たちが転送されたのは、公園のような空間だった。
 公園内には小動物が並び、樹木のように見える物から伸びたケーブルに接続されている。
 上を見ると青空だが、それは天井に投じられた映像だった。
 丁度公園の銅像が立つような台座に、僕たちのアーティカは降り立っていた。
 技術者たちだろうか、人々がアーティカに集まる。
 姫様、という声がする。
 ミツルが先にフォーレンテスターのコクピットハッチを開くと、その声はさらに大きくなった。
「みなさん、ご心配をおかけしました。ミツル・カミワラただいま帰還いたしました」
「姫様、よくぞご無事で!」
 ひげをめちゃくちゃ伸ばした爺さんが叫んでいる。
「私は今回の降下で、カオスエメラルドを一つ入手することに成功しました」
 おおっ、と声が上がる。
「さらに一人、新たなるジーンを連れてくることができました」
「おおおおっ!」
 カオスエメラルドよりも大きな反応を人々は見せる。
「それがこのアーティカのパイロット、タスクです。さらに彼のパートナーで、チャオのマキナ」
 紹介されて僕たちは人々に姿を見せる。
 マキナは歓迎ムードを感じ取って、英雄気分で手を振っている。
 ジーン。
 遺伝子という意味だ。
 彼女たちはカオスエメラルドだけでなく、その星の技術や人材も集めていて、それらの総称がジーンなのであった。
「そしてもう一つの朗報です。彼らの協力のおかげで、私はカオスソーサラーとなることができました」
 ミツルは証拠を見せるように、カオスコントロールをしてみせる。
 遅くなった時間の中を彼女は動き回る。
 さながら瞬間移動。
 そしてミツルがフォーレンテスターのコクピットに戻ると、拍手が巻き起こった。
 さらに万歳まで。
「祭りじゃああああ! 今夜は祭りじゃああああ!!」
 ひげ爺さんが叫ぶ。
 呼応して男衆が叫ぶ。
 そしてホラ貝の、ぶおお、という音が放送で響き渡った。

 祭の準備は瞬く間に進められた。
 そしてこの宇宙船の船長の演説で幕が開く。
「城宝(ジョウホウ)のみなさん、ご機嫌よう。船長のソウカツ・カミワラだ。この度は我が娘、ミツルが無事に帰還した。さらに一つのカオスエメラルドと、新たなジーンも連れ帰ってきた。このことを祝し、本日から二日間、急ながら祭りを執り行うこととなった。我々城宝の新たなる羽ばたきを存分に祝い楽しんでほしい」
 さっきからミツルは姫様って呼ばれていたけれど、つまり彼女はこの宇宙船で一番偉い人の娘ってことらしい。
「みんなあ〜、のってるか〜い!? 早速私、ミツルが歌わせていただきます! 聞いてください、蝋人形の館」
 フォーレンテスターに乗ったミツルが歌う。
 僕とマキナもホワイトナイトに乗せられていた。
 祭りの始めだけでいいからと、乗せられたのだ。
 アーティカと小動物の格納庫が祭りのメインステージになっていた。
 そしてミツルや僕たちは祭りの主役というわけである。
 ミツルが歌い終わると、
「ジーン様も歌ってー」
 という声が人混みの中から聞こえてきた。
「ど、どうしよう」
「俺が歌ってやろうか」
「あはは。まだここの文化に慣れてないってことで、勘弁してもらおう」
 ミツルの救いの手によって、大恥をかくことは免れた。
 その後も一時間くらい城宝の人々の注目に晒された。
 設営されたお立ち台ではひげ爺さんが、めでたいのう、と大声で歌いながらずっと腰とひげを振っていた。
 アーティカから降り、一段落する。
「どう? 賑やかでしょ」
 ミツルの頬が興奮で赤くなっていた。
 僕はうなずく。
「それにしてもこの船の名前、城に宝っていうんだな。つまりここが君たちの城であり、宝そのものであるってことか」
「いや、関係ないよ。あんまり」
「あれ? そうなの?」
「私たち、正確にはこの宇宙船を作った人たちが暮らしていた、惑星マドカマユカ。そこで有名だった神話の登場人物が由来。城宝は人間なんだけど、翼を生やして世界を飛び、両腕を武器を変えて戦う神の使いなんだよ」
「人間じゃないだろ翼生やしたら」
「細かいツッコミはなし。神話なんてそんなもんでしょ。タスクの星はそうじゃないの?」
「いや、まあ、似たようなもんかな。たぶん」
「とにかく行こう、お祭り。色んなお店があって楽しいよ」
 ミツルに連れられて、出店を回る。
 イベント会場の多い祭りだった。
 僕たちの星のアーティカという機械がどのようなものなのか科学者が説明しているブースがあったり、十年前にジーンとして船の一員になってからアイドル的な地位を獲得していたらしいレイが握手会を開いていたり、ダンスバトルやラップバトルをしていたり、様々だった。
 珍しい店では、客にコスプレ衣装を見繕ってその場で着替えさせるというものがあった。
 僕はなぜか城宝で人気のアニメのヒロイン、冬きゅんなるキャラのコスプレをさせられ、衣装を買わされた。
 ここのお金は一文も持ち合わせていないので、ミツルが払ってくれたのだけど。
 ヒロインのコスプレだから、女装をする羽目になったのだ。
 群青色の長い髪の毛のかつらをツインテールにして、金色のカラーコンタクトをし、軍服風の衣装を着せられた。
 なぜか、似合うとか可愛いとか言われまくった。
 この宇宙船、馬鹿ばっかりだった。

 祭りが終わって一月が経つと、地球へ襲撃をしかける話が持ち上がった。
 残りのカオスエメラルドと、アーティカのデータを回収するための作戦だ。
「あの星の技術はチャオの生命を軽視している面があり、倫理的な問題が目立つものの、戦闘力については長けています」
 作戦前、ブリーフィングルームで研究者がそのように説明する。
 チャオの改造。
 カオスチャオを素材として作られる人工カオス。
 それらによって得られる兵器、アーティカ。
 これまでの小動物との戦闘を考えれば、彼らが興味を持つのも当然だ。
 話を聞いているのはアーティカのパイロットである僕とマキナと、ミツルとレイ。
 そして小動物指揮班と呼ばれている、小動物を宇宙船から遠隔操作している人たちだ。
「それにカオスコントロールの技術では彼らの方が先を行っている部分があります。たとえばこの度我々に加わったチャオ、マキナ君」
 俺だ、とマキナは立ち上がった。
 その行動に話をしていた研究者が苦笑いする。
「うん、マキナ君にはカオスコントロール発生装置とでも言うべき機能が入っていて、それを利用することでカオスソーサラーでなくともカオスコントロールを起こすことが可能なのです」
 カオスソーサラー。
 それは城宝の研究者の中で存在が示唆されていた、特殊能力者のことだ。
 その名前のとおり、カオスコントロールを自在に使うことのできる人間のことで、ミツルによってその存在が証明された。
「当作戦は、カオスエメラルド及び各種の技術を開発した軍事組織GUNの拠点を襲撃し、これらを奪うことが目的です。一機でも多くのアーティカの回収をすることで目的は達成されます。作戦の要は、カオスエメラルドを搭載した二機のアーティカです」
 そして話は各々への具体的な指示へと移る。
「タスク君、マキナ君。君たちの要望どおりホワイトナイトには、我々の有人小動物の装備を転用しただけではありますが、近接戦闘用の装備をさせてあります。戦闘力に劣る小動物たちを守るために、大暴れしてください」
「任せとけ」
 マキナが自分の胸を叩いた。
「ミツル様、そしてレイ君。あなた方のアーティカには、持ち帰っていただいたデータを基に最終調整を行いました。これによりあなた方のアーティカには、小動物のパーツを装備するキャプチャーシステムが実装されました」
「これでビーストマスターが完成ということですね」
「はい。今回は全ての種類の小動物を投下しますので、役立ててください」
「わかりました。ご厚意に感謝します」
「そして小動物指揮班。今回投下する小動物は百五十一機。目的は先ほども伝えたように、アーティカの回収、そして姫様のビーストマスターの支援です。今回から、無人機に仕様変更したライオンタイプが投下されます。無人機、量産機である以上、これまでとは違い、数ある小動物の一機に過ぎない性能にパワーダウンされているので、気を取られないよう注意してください」

 降下。
「懐かしの地球だな」
 マキナは言った。
「そんな感じは全然しないけど」
 と僕は答える。
 降りたのは、聞いたこともない国だった。
 そこにGUNはアーティカ用の拠点を移し、小動物を誘っていた。
 だけどその中にアーティカが混ざっているなんて、それも二機もだなんて、想像していなかっただろう。
 ホワイトナイトの装備は、元々ライオンが使っていた剣だった。
 大剣と、片手剣。
「ナイフはないみたいだ」
「いいじゃないか。英雄には剣が似合う」
「裏切り者だろ、僕たちは」
「地球にとっては、だろ。城宝にとっての英雄になるのさ、俺たちは」
 マキナはこの状況に抵抗はないみたいだ。
 城宝の人たちは僕たちに温かく接してくれて、だから僕も彼らのためにがんばろうという気分ではあった。
 だけどカオスエメラルドを全て奪ってしまったら、この星の人たちチャオたち、それ以外の生き物も全て滅んでしまうことを思うと気が重い。
 悩みそうになるけれど、そんなこと考えていても仕方がない。
 僕はいつもどおり駆けた。
 無鉄砲に突撃して、剣を振るう。
 それが僕たちにできることだ。
 ホワイトナイトの前に、剣と盾を装備した機体が立ちはだかる。
 ブルースカイ。
 スケヤ君だ。
「勝負だ、タスク」
 スケヤ君は剣を構える。
「ずっと前から俺とお前はライバルだった。お前は何度か俺の先を行ったが、だが最初に上だったのは俺。最後に上なのも俺だ!」
 僕はもうスケヤ君への興味を失っていた。
 それよりもシドヤのダンシングビーストを見つけないと。
 あれの相手は、ミツルだけだと難しい。
 そんなことを僕は考えていた。
「行くぞ、俺の、カオスコントロール!!」
 スケヤ君のカオスコントロールに合わせて僕もカオスコントロールを行い、時間の流れを遅くする。
 スケヤ君は突進してきていた。
 そして剣を振る。
 剣にもカオスエメラルドの力が宿っているのを感じた。
 僕はそれを避ける。
 するとスケヤ君の動きが止まる。
 カオスコントロールで時間の制御も剣のパワーアップもしようとするからだ。
 僕は大剣でブルースカイを切断する。
 時間の流れが元に戻ると、ブルースカイの上半身が慣性で前に飛んでいった。
 小動物指揮班に、カオスエメラルドの回収を頼む。
 すると連絡相手から、
「姫様が苦戦しているようです。大丈夫だと思いますが、加勢をお願いします」
 と言われる。
 きっとシドヤだ。
 それなら大丈夫ではない。
「行きます」
 と答える。

 ミツルが戦っていたのは、ダンシングビーストではなかった。
 見たことのないアーティカ。
 しかし剣や銃を持たずに拳と足で戦うスタイルは、シドヤのものだ。
 真っ向勝負で勝てる相手ではない。
 横やりで勝つ。
「カオスコントロール!」
 相手の攻撃が届かない、遠くから槍の攻撃をしかけようとした。
 だがカオスエメラルドから力を引き出せない。
「どうしたマキナ!?」
「わかんねえ!」
 戸惑っている僅かな時間で、僕たちはシドヤの機体に殴り飛ばされていた。
 こちらに近寄る動作すら見えなかったが、僕たちがいた場所にシドヤの機体は立っていた。
「カオスコントロールか!?」
「いや、違う。そんな反応はなかった」
 じゃあカオスコントロールなしで一瞬で接近したというのか。
 あのアーティカは一体なんなんだ。
 それになんでカオスコントロールが使えないのか。
「カオスコントロールが使えなければ、お前たちは小動物と大して変わらない。残念だったな」
 シドヤが僕たちに言った。
「これはカオスエメラルドを鎮圧する、マスターコントロールだ」


機体紹介コーナー!!

今回紹介する機体は、ブルースカイ。
タスクの幼なじみ、スケヤの乗るエースアーティカだ。
本来ブルースカイは安定性を重視したバランス型の機体だったけれど、
タスクとの勝負を想定して攻撃に重きを向いた調整が施されているよ。

まず装甲を全体的に薄くし、機動性をアップ。
さらに武装の一つであったアサルトライフル銃を捨てたよ。
その代わりに、盾で隠れている左腕には銃が仕込まれているんだよ。
隠した銃で不意打ちを狙うことも視野に入れていたんだね。
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第十話 SONIC DRIVE
 スマッシュ  - 17/8/29(火) 10:34 -
  
 究極のアーティカ誕生!
 カオスエメラルドによるカオスコントロールと、マスターエメラルドによるマスターコントロール。
 この二つの力を駆使し、戦場を完全に制御する指揮者。
 さらにカオスエメラルドのエネルギーをチャージすることで、カオスコントロールを使用せずとも高速戦闘が可能。
 これこそ現代に蘇ったソニック。
 戦え、青き英雄、ソニックオブアース!
 異星人をなぎ倒し、世界に平和を取り戻せ!!

 士気を高めるために作られた、GUNの映像を僕たちは見ていた。
「無〜理〜だ〜よぉぉぅ。やめよ〜〜うよ〜〜」
 ミツルがめっちゃ泣いている。
「無理だよ〜ぅ。勝てないよう。逃げようよ〜〜。このままだとみんな殺されちゃうよぅぅ。早く逃げないとあいつが追いかけてくるよううぅぅぅ」
「姫様、静かにして」
 会議中であった。
 僕たちはどうにかこうにかあの戦場から撤退できた。
 シドヤの乗る新しいアーティカには歯が立たず、当初の目的のほとんどを達成できなかったが、カオスエメラルドは一つ入手できた。
「カオスエメラルドいっぱい手に入ったし、もういいじゃん〜。これでカオスエメラルド、十一個目だよ〜〜。もうこんな星から逃げようよ〜」
 ビーストマスターの機能で小動物のパーツを装備し、破壊されてはまた別の小動物を装備する。
 そんな手段でミツルはなんとか被害を最小限に食い止めることができたのだが、それでも圧倒されたことがトラウマなようだ。
 今すぐにでもこの宙域から去ることを彼女は主張していた。
 しかし泣いて駄々をこねているようにしか見えないので、とても迷惑がられていた。
「だああ、誰か姫様を黙らせろ!」
「いや、ここからつまみ出してしまえ!」
 研究チームや小動物指揮班の男たちが、ミツルを力ずくで部屋から出そうとする。
 しかしミツルは泣きながら抵抗する。
「カオスコントロール!」
 カオスエメラルドの力を引き出し、床を叩く。
 ミツルを中心に、衝撃波が巻き起こる。
「地衝撃!!」
 男たちが衝撃波によって弾き飛ばされた。
「姫様! それはろっどの物語じゃないでしょうが!」
「十四歳にもなるのにそんなふうに駄々こねて、恥ずかしくないんですか!」
「うるさいよ!!」
 議論は難航した。

 結局ミツルの主張は聞き入れられなかった。
 もう一度降下してからこの宙域を離れる。
 そう決定された。
 城宝が地球にもう一度襲撃をしかけたい理由は二つある。
 一つは、先の作戦が失敗に終わったこと。
 まだ地球の技術を回収しきれていない。
 そしてもう一つの理由が、マスターエメラルドの存在だ。
 カオスエメラルドの力を鎮める力を持った物。
 そんな物を、城宝はこれまで一度も見たことがなかった。
 だからそれが欲しいのだ。
「でも問題は、マスターコントロールをどうするかってことでしょう?」
 僕は挙手して、研究チームの代表に問う。
 研究者は大きくうなずいた。
「しかし対処法はないわけではない。マスターコントロールには、カオスコントロールと同様に、効果範囲に限界がある」
 これを見てほしい、と研究者が映像を表示させる。
 それは僕が倒したスケヤ君のアーティカを、小動物が回収する様子だ。
 宇宙船のカオスコントロールによって、小動物は宇宙船へと帰っていく。
「この映像と同時刻、ソニックオブアースはマスターコントロールを発動している。だが小動物はマスターコントロールに妨害されることなく、帰還を果たしている」
「あいつから離れていれば、カオスコントロールは使える、というわけですね」
 でもそれは根本的な解決になっていないと僕は思った。
 離れていたら、あいつを倒すことができない。
「ゆえに今回はソニックオブアースを陽動し、GUNの拠点から引き離すことで、一つ目の目的を確実に達成することに重きを置く」
「マスターエメラルドは? マスターエメラルドはどうするんです」
「残念ながら確実にソニックオブアースを仕留める方法はない。だから撃墜が難しそうなら引き上げるしかない」
 しかしビーストマスターをさらに強化して投入する予定であると研究者は言った。
 マスターエメラルド、ソニックオブアースは二の次。
 これはもう消化試合なのだと言われている気分だった。

「ソニックオブアース、貴様に決闘を申し込む」
 宣戦布告、決闘の申し込みの映像が地球に送られた。
 城宝を代表するパイロットを自称する男が、カメラに向かって喋っている。
 それは仮面をつけた僕だ。
「我が愛機、ホワイトナイトの剣が貴様たちの希望を八つ裂きにするだろう」
 セリフを読まされているせいで、若干棒読みだ。
 そして決戦の日時と場所を指定する。
 GUNの拠点から約100km離れた平原だ。
 地球の裏側とか、そのくらい遠く離れた所を指定しなかったのは、ソニックオブアースを撃退した後にGUNの拠点を占拠して地球を侵略するというシナリオに見せるためだ。
 よって決闘の場所はGUNの拠点の近くにある、人が少なく、なおかつ開けた場所に決まった。
 映像でも、そんな感じの目的であることを喋らされた。
 そして決闘の日。
 この地球での最後の作戦の日。
 僕がこの地球に最後に降りる日。
 ホワイトナイトが先に決戦の場に降り立っていた。
 マスコミ等が集まり、ホワイトナイトの存在が確認されてから、ソニックオブアースがやって来た。
「裏切者、タスク。お前に鉄槌を下す時がとうとう来たな」
 構えたままシドヤは喋る。
「カオスコントロールを使えるだけのお前に、マスターエメラルドを装備したこのソニックオブアースの前で何ができる。決闘など大口を叩くほどの、何がお前にできる?」
 僕は答えない。
 成立しなかった会話にシドヤは未練を見せず、ソニックオブアースを動かした。
 カオスコントロールも、マスターコントロールも使わない。
 しかしソニックオブアースの特徴である、高速移動によって接近する。
 それはチャージショットと原理は同じなのだ。
 カオスエメラルドから得られるエネルギーを蓄えておき、それを一気に開放する。
 それによって驚異的なスピードが出るというわけだ。
 ソニックオブアースの拳から繰り出される一撃が、ホワイトナイトの胴体を貫いた。
 その瞬間、小動物指揮班が自爆の指示をホワイトナイトに送る。
 ホワイトナイトに詰め込まれた大量のカオスバッテリーが暴走し、大爆発を起こす。
 これで壊れてくれれば話は楽だが、そうはいかないだろうと僕たちは思っている。
 あくまでこれは陽動でしかない。

 僕はホワイトナイトに乗っていなかった。
 そもそもあのホワイトナイトはアーティカではない。
 ホワイトナイトに似せて作られた、ただの自爆する張りぼてだ。
 僕が乗っているのは、ライジング。
 ホワイトナイトをベースに作られた、ライオンとアーティカの合いの子のような機体だ。
 さらに今回の作戦のために作られた新型の小動物、オクトパスを背中に装着している。
 このオクトパスにはカオスエメラルドが搭載されている。
 僕のライジングと、ミツルのビーストマスターはGUNの拠点に降りていた。
「急ぐぞ。カオスコントロール!」
 カオスコントロールで起こす現象、それはGUNの拠点にあるパソコンへの接続だ。
 電波ではなく、カオスコントロールによる、空間的距離を無視した無線接続。
 そしてオクトパスが接続したパソコンをハックし、データを盗み取る。
 ミツルのビーストマスターも同様のことを行っている。
 程なくしてデータの収集は完了する。
「データの収集完了を確認した。これより順次帰還せよ」
「御意」
 このまま撤退すればミッションコンプリートだ。
 しかし空をなにかが飛んでいた。
 真っ直ぐ高速で向かってくる。
 あれはソニックオブアースだ。
 僕のいる地点を通り過ぎ、ミツルのいる方へ落下する。
「来たああああ」
 ミツルの絶叫が通信機から聞こえてくる。
「今助けに行く!」
 オクトパスを分離し、ライジングは走る。
 分離したオクトパスは自身のカオスエメラルドを用いて、速やかに宇宙船へ帰る。
 ミツルのいる地点からもオクトパスが発射されていた。
 ソニックオブアースを真似た高速移動によって空を飛び、マスターコントロールの範囲外に逃れてから宇宙船のカオスコントロールで退避する。
 オクトパスは確実にデータを持ち帰るための小動物なのだ。
 僕が駆けつけた時、ビーストマスターはライオンのパーツを装備して戦っていた。
 このライオンは決戦に備えて強化されている。
 ビーストマスターは頭部に乗せたライオンの顔からチャージショットを撃った。
 ホワイトナイトの機体からチャージショットのデータを採取し、ライオンにチャージショットを装備させたのだ。
 だがソニックオブアースはカオスコントロールの障壁でチャージショットを完全に防御する。
 ソニックオブアースはビーストマスターを蹴り飛ばす。
「ミツル、合体だ!」
「うん!」
 僕が今乗っている機体、ライジングはアーティカであると同時に、小動物のライオンでもある。
 つまりビーストマスターのキャプチャーに対応することを前提に作られているのだ。
 まずビーストマスターの全身が伸びる。
 伸びた分だけ細く、骨のようになる。
 そしてその骨を軸にして合体するライジングはいわば肉と皮だ。
 はたして一回り大きなアーティカが完成する。
 これこそソニックオブアースを打倒するために生み出された新たなるアーティカ。
 モーニングスターだ。
 僕はシドヤに宣言する。
「これこそが新しい時代を切り開く、明けの明星だ!!」
「それがどうした」
 シドヤの殺気は、モーニングスターではなく僕に向けられていた。
「お前だ……。お前こそが地球の敵だ、タスク。カオスエメラルドを失ったのも、多くの人やチャオの死も。お前のせいだ」
「いや、全部が全部僕のせいではないでしょ。確かに一部は僕のせいかもしれないけど」
「その一部のことを俺は言っている!」
 理不尽だなあと僕は思った。
 ソニックオブアースが接近してくる。
「悪魔め!」
 ソニックオブアースの蹴りの連打。
 それをモーニングスターは、ぎりぎり当たらない距離を保って避ける。
「僕は人間だ!!」
「比喩だろうが!」
 ソニックオブアースの渾身の正拳突き。
 だが僕は突き出された手を掴み、受け止める。
 そして剣でソニックオブアースの突き出された右腕を切り落とした。
「そんな比喩が僕に通じると思うな!!」
「通じろよ」
 ミツルがぼそっと言った。
 全くだ、とマキナが同意する。
 味方がいない。
 右腕のなくなったソニックオブアースの抵抗は凄まじかった。
 モーニングスターと互角に戦っている。
 いや、それどころか激しく的確な連打でモーニングスターを押している。
 僕の読みは外され、意識していない軌道で打撃が飛んでくる。
 なんだこれは。
「これでとどめだ。カオスコントロール!」
 しまった。
 マスターコントロールで、カオスコントロールが封じられていると思い込んでいた。
 しかしシドヤは僕の不意をついてとどめを刺すために、マスターコントロールをいつの間にかやめていたのだ。
 やられたと思った。
 しかし。
「カオスコントロール!」
 そう対抗したのは、ミツルだった。
「マキナ、レイ、お願い!」
 ミツルの指示を受けて、レイがアースオブソニックの攻撃を手でさばき、さらにマキナが蹴りを入れた。
 モーニングスターはすぐ前に足を踏み込み、アースオブソニックへの追撃を狙う。
 前進の操縦はミツルがしたものだ。
「マスターコントロールを封じるよ!」
 アースオブソニックの両肩を掴み、膝蹴り。
 右手で肩を掴んだまま、左手で顔を殴打する。
「レイ、後はお願い! マキナ、サポートして!」
「おう」
「カオスコントロール!」
「あの、僕は?」
 返事はなかった。
 二度目のカオスコントロールは一瞬で終わった。
「見えた!」
 ミツルの操るモーニングスターの左手が、アースオブソニックの首のすぐ下を貫いた。
 そしてマスターエメラルドを握った。
 カオスコントロールで位置を探ったのか。
 そう僕が気づいた時には、更なる追撃によってモーニングスターはアースオブソニックに装填されていたカオスエメラルド三つを奪っていた。
 なんという早業だ。
 僕は驚愕した。
「なんだと……!?」
 シドヤも驚いている。
「これが私たちの力だ!」
 ミツルは高らかに叫んだ。
 泣くほど恐れていたアースオブソニックを倒して、めちゃくちゃ興奮しているのだろう。
 でも今の戦い。
 私たちって、そこに僕は入っているのか?

 ともかくマスターエメラルドも、地球に残るカオスエメラルドも、全部手に入った。
 しかし僕はこのままカオスエメラルドを全部持って帰りたくはないと思った。
 そうしてしまったら、この星の生命は絶えてしまう。
 それは嫌だった。
 だから僕は、カオスコントロールで浮上するモーニングスターをこっそりと操作して、カオスエメラルドを一つ地上に落とした。
 一つだけでも、たった一つだけでもカオスエメラルドがあれば、生命は誕生する。
 きっと人の数はぐっと減ってしまうだろう。
 だけど人類がこの地球から絶滅せずに生き続けられるよう、僕は願った。
「アディオス……。青くて丸い、僕の星……」
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最終話 光る道
 スマッシュ  - 17/8/29(火) 11:25 -
  
 最後の戦いで手に入れた三つのカオスエメラルド。
 その一つは僕が勝手に地上に落としてきた。
 だから二つしか手に入らなかった。
 と思ったら、なぜかモーニングスターの手に握られているカオスエメラルドは一つだけになっていた。
「なんで減ってるの!?」
「言ったでしょ。カオスエメラルドがなくなったら、命が生まれなくなっちゃうって」
 ミツルが呆れたように言った。
「それは倫理的な問題があるから、私たちは絶対に二つ、カオスエメラルドを残すようにしてるの」
「はい?」
「要するに、君がわざと落とすまでもなく、カオスエメラルドは二個あの星に残す予定だったの」
「はああああ!?」
 徒労だった。

「祭りじゃあああああああ!!」
 ひげ爺さんが叫ぶ。
 また祭りになった。
「君たち、もしかしなくても祭り好きだろ」
「祝うことは大事なことだよ」
 ミツルはにこにこしている。
 マキナがミツルの肩をぽんぽんと叩いた。
「なあなあ、今度は俺も歌っていいか?」
「うん。歌っちゃいなよ」
「よっしゃあ。レイがアイドルみたいになってるんだ。俺だってアーティストになってやるぜ」
 こいつは一体なにを目指しているのか。
「タスクは歌わないのか?」
「いや、僕はいいよ……」
 そして祭りが始まる。
 マキナはモーニングスターの頭の上で何曲も続けて歌いまくっている。
 人々はマキナの歌に興奮していた。
 モーニングスターを取り囲んで、飛んだり跳ねたりしながら聞いている。
 たまにミツルも混ざって歌い、さらに盛り上がる。
 その楽しそうな様子を遠目に見ていると、僕も歌えばよかったかな、という気分になってくる。
 僕はうまく歌えないけど。
 そういえばひげ爺さんが踊っていない。
 お立ち台にはミツルが立っている。
 あの人はいつも踊るわけじゃないのか、と思っていたら、
「一対の翼さえあれば、空を飛ぶことができる」
 と話しかけられた。
 ひげ爺さんだった。
「え?」
「惑星マドカマユカに残ったカオスエメラルドは二つだけだった。我々はそこから宇宙船城宝を作り上げ、ここまで再興することができた。ゆえに我々は信じているのじゃ。たった二つだけでも、カオスエメラルドがそこにあれば、人類の可能性は潰えない」
「それが、一対の翼?」
 ひげ爺さんはうなずいた。
「我々はこの新しい伝説を信じている。モーニングスターの勝利もその伝説の象徴の一つとなるだろう」
 二体のアーティカが合体することで、二つのカオスエメラルドを持つことになるモーニングスター。
 それもまた一対の翼なのだ。
「君たちの星が生み出した、アーティカという兵器。人間とチャオがペアとなり、共に動かすという点は美しい」
「それもまるで翼みたいだ、と?」
「そのとおり。人とチャオ。チャオとチャオ。そして、人と人。そこに翼ができれば、可能性は生まれる」
 地球にもまだ可能性は残っている。
 ひげ爺さんはそう僕を励ましているのだろう。
「君もまた、この城宝で誰かと翼になるだろう。その日が来ることをわしは祈っているよ」
 マキナが歌い終わり、しかしすぐ次の歌を歌い始めた。
 ミツルはサビから歌に加わって、好き放題に高音を出している。
 観客たちはリズムに合わせて手を振っている。
 今の僕たちには、未来がある。


 城宝は僕たち以外にも何名か、ジーンとして地球人を迎え入れていた。
 その中に、レイがとても懐いている子がいた。
 イチロウという名前の、八歳の少年だった。
「お母さんを亡くしてしまって、それで行く当てがないみたいだったから、父親と一緒に保護したの」
 とミツルは僕に説明した。
 少年には母親の面影があった。
 イチロウはレイと息が合い、アーティカもうまく操縦してみせる。
 それでミツルは、レイをイチロウに譲った。
 イチロウとレイ。
 新しいコンビの誕生だった。


「シドヤ亡き今、残った俺たちが平和を守らないとな」
「ハバナイさん、俺、悔しいですよ。こんなふうに生き残るなんて。いつかあいつを追いかけて、復讐したいです」
「そう言うなよスケヤ。まずはGUNの再興、そして治安の向上が先だ。今回の混乱で、世の中は乱れてしまったからな」
 一対の翼という伝説がある。
 地球の人々の知らない、しかし宇宙を旅するある船で信じられている伝説だ。
 たった二つだけでもカオスエメラルドがあれば、人類は繁栄できる。
 そう彼らは信じている。


「ビルティさぁん、タスク君を追いかけられる宇宙船、作ってくださいよぅ」
「無茶言うなよメッキィ。そんなの作れるわけないだろ」
「そもそも女であることより、母であることを優先するべきでは。ただでさえ片親しかいないのだから」
「そうだ。ナンティの言うとおりだぞ」
「ええ〜。お母さんであることも大事ですけどぉ、女であることも捨てたくないです」
「とにかく宇宙船は無理だ。だから子ども三人を立派に育てることだけをまずは考えろ」
「もしかしたらこの子たちが宇宙船を作ってくれるかもしれませんよ?」
「あ、それいいね! じゃあ英才教育しなきゃね!」
 たった二つだけでも。
 そこにカオスエメラルドがあれば、可能性は潰えない。
 一対の翼という伝説が、地球からカオスエメラルドを奪い去ったあの宇宙船にはある。


  覚醒の星物語 〜完〜
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ミツルとマキナのアフター真実の星物語
 スマッシュ  - 17/8/29(火) 22:08 -
  
ミツル「ミツルと〜〜」
マキナ「マキナの〜〜」
ふたり「アフター真実の星物語〜〜!!」

ドンドンパフパフ!
キキィーッ! ガチャーン!
キャアアアアア!!
うらめしや〜
ドカーン!
ウホホ、ウホホ、ウホウホ!!

マキナ「SE過剰」
ミツル「盛り上がるよ?」
マキナ「第九話で、ほら貝の音が放送で流したり、祭りでとにかく歌ったり、お前ら音流すの好きな」

アッハッハッハッ

マキナ「ほらまたやった!」
ミツル「最後までこの調子でいくから慣れてね〜」
マキナ「まじかよ」
夏木野「それでは最後までお付き合いお願いします」
マキナ「誰!?」
夏木野「特別ゲストです」
マキナ「自分で言うのか……」
ミツル「あ〜、もしかして作者じゃない? こういうコーナーで出てくるのってよくあることだし」
マキナ「ああ、なるほど作者か」
夏木野「いえ。私は作者ではありません」
ミツル「……」
マキナ「……」

ミツル「あ、じゃあ冬きゅん。特別ゲストに冬きゅんを呼んだんだ」
マキナ「作者でもない週チャオ作家が登場する意味はわからんが……それなら特別ゲストというのもうなずける」
夏木野「いえ、私は冬木野さんではありません」
マキナ「じゃあお前誰だよ!?」
夏木野「俺はまだ何者でもない!」
マキナ「そういうやつが出てくるコーナーじゃねえんだよここは! もう本編終わってんだぞ!」
ミツル「せめて出てきたキャラがいいよねえ」

夏木野「じゃあ、私、あれです。イチロウの父」
マキナ「どうでもいいキャラすぎる……」
ミツル「もういい! カオスイレイザー!!」
夏木野「ぐああああ!!」
マキナ「だからお前、ろっどの物語じゃない技を出すんじゃない!」


Q.ミツルはだーくさんの象徴なのですか?
A.いいえ。違います。

マキナ「なんか急に始まったぞ」
ミツル「地衝撃、蝋人形の館。ろっどさんじゃない要素を私はよく出してたね」
マキナ「ろっどパロディネタはそれまでも色々あったけどな」
ミツル「うん。そして星物語の中で、ろっど以外パロディをやるのにふさわしいキャラは誰かって考えた結果、ヒロインしかいないって判断したみたいだよ」
マキナ「ヒロインがろっど以外ネタをやってこそ、ろっどの物語らしい。そんなところか」


Q.そもそもこの話、ろっどの物語にする気あったんですか?
A.ろっどの物語ですけど?

マキナ「ちなみに投稿されたストーリーは、当初考えていたプロットほぼそのままらしいぞ」
ミツル「最初からこれをろっどの物語って言い張るつもりだったんだ……」
マキナ「ろっどを不幸にすれば、ろっどの物語にするのは簡単。だからあえて主人公がハッピーエンドを迎える物語にする、というのがこの星物語の企画だったんだ」
ミツル「そのせいで周りに不幸がまき散らされた感あるね」
マキナ「仕方のない犠牲だった」
ミツル「ちなみに当初のプロットでは、マキナもその犠牲になる予定だったとか?」
マキナ「ああ。第九話以降のどこかでタスクが俺から離れる話が入る予定だった」
ミツル「相棒との距離が開くのね。なんか普通にエンタメっぽい!」
マキナ「タスクが『お前は俺の最高の相棒だ』と俺に言った直後、ピンチに陥ったミツルっていうお姫様を助けるために一人でライオンに乗って出撃するって話だ」
ミツル「星物語さ、直後に系多いよね」
マキナ「没エピソードながら、最高にろっどの物語っぽいよな」


Q.当初の予定になかったエピソードはあるの?
A.最終話(光る道)

ミツル「ろっどの物語って感じ少ないもんね、最終話って」
マキナ「だな」
ミツル「じゃあなんで入れたの、あれ」
マキナ「ハッピーエンド感を強くしたかったことが一番の理由だな」
ミツル「あとたぶん、あのタイトル使いたかったんだよきっと」
マキナ「エピソード短縮にあたり、泣く泣く使えなかったタイトルがたくさんある……。悲しいことだ」
ミツル「地上の星とかね」


Q.急にギャグが多くなった?
A.昔のチャオ小説をリスペクトしました。

マキナ「このコーナー自体、完全に当時のノリだもんな……」
ミツル「過去のチャオ小説を真っ向から打ちのめすチャオ小説にしようと、途中から考え始めたみたいよ」
マキナ「正気を疑う」


ミツル「それじゃあ飽きてきたから今回はここまで〜! みなさんまたね〜!!」
マキナ「いや、またはないだろ、これ。完結済作品なんだから」
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