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バイザウェイ スマッシュ 15/11/13(金) 23:32

第1回〜第8回まとめ スマッシュ 15/11/24(火) 23:16

第1回〜第8回まとめ
 スマッシュ  - 15/11/24(火) 23:16 -
  
※お遊びコーナーに投稿した小説の文章と、本編の文章は、ほぼ同一の文章です。本編として掲載したものが最新のものとなります。

 スレッド膨らますつもりあんまないんで、まとめます。

 それはそうと、おなじみ毎日投稿ですが、多くても836文字が今回の目安です。どうしてその量かは第9回を見てわかっていただけたと思います。
 短い文量に区切りながら投稿すると、細かい文章の粗に気付けてしまうのが嫌なところです。長いの一気にぶわっといけば、読む方がスルーしてくれるかもしれないのになあ。
 それと毎日0時になってから投稿しようとすると、早く寝たい日も寝られなくて辛かったので、俺、辛いのやめます。


11月14日投稿分

 トラックに衝突されてしまったので、私の彼氏の星谷翔矢は家族と一緒に死んでしまった。父方の祖父母の家に行く途中だった。その事故で彼らは一家丸ごと死んでしまい、私は故人が一人ではない葬式を初めて経験した。しかし彼の飼っていたチャオだけは転生したので今も生きている。
 高校から家に帰ると私はリビングのソファの端にぬいぐるみのように座らされているコドモチャオを抱きかかえる。テレビを見せていれば手がかからないということで母はそこに座らせておくのである。母は今買い物に出かけているらしくて、玄関には靴がなかった。チャオの方もテレビが面白くてソファから離れずに大人しくしている。再放送の刑事ドラマをチャオが楽しめているとは思えないけれど、割とコメディ色の強いドラマだからにこにこして見ている姿に違和感はなかった。このチャオはヒーローチャオに進化するつもりのようで、産まれた時より随分と体が白っぽくなっている。
「ゴウ、ただいま。チャオガーデン行こうか」
 私はソファの後ろからそう言った。ゴウというのはこのチャオのあだ名だ。本当の名前、翔矢がこのチャオに付けた名前は、ソニゴロウである。とてもださいと私は思う。ソニックチャオにするつもりで卵を買ったので、名前にソニを入れることは始めから決まっていたそうだ。そして色々と考えた末にソニゴロウと命名した。彼はこの名前を、可愛らしい名前だと思っていて、一度も恥ずかしがらずにそのださい名前でチャオを呼んでいた。恥ずかしかったから私がその名前で呼んだことは片手で数えられるくらいにしかない。
 彼の親戚から半ば押し付けられる形で、私はソニゴロウを譲り受けた。転生するくらい愛されていて、それで助かったというのは美談だけれど、私はチャオだけ生きていても少しも嬉しくなかった。私はチャオよりもチャオに構っている翔矢を見ているのが好きだったような気がするのだ。


11月15日投稿分

 チャオは手のかからないペットだが、構ってやらなければ寂しがるしチャオガーデンにも連れていかなければいけない。チャオを長生きさせるにはチャオに適した環境で過ごさせる必要があるのだ。
「チャオ!」
 ゴウはソファの上に立つと羽をばたつかせながらぴょんと跳ねる。ゆっくり降りていくところを捕まえて、抱きかかえる。ゴウの頭上の球体がハートマークになる。
 自転車の籠にゴウを乗せる。駅を通り過ぎ、通っている高校を越えて五分の所にチャオガーデンはある。翔矢が通っていたチャオガーデンは隣町のチャオガーデンで、そちらのガーデンの方が広かった。しかし電車賃を使うのが嫌で、私は自転車で行けるガーデンに通っていた。
 日が落ちるのが早くなったとはいえ、四時前だとまだ外は明るくて、影の出来る方角でしか夕方が近付いていることがわからない。私は前に自分の影を見ながら学校への道を走り、背中の熱さで汗をかく。駅を過ぎると、自分と同じ学校の制服を着た人とすれ違うようになる。制服を着たままだと、忘れ物を取りに戻っているように見えそうで恥ずかしい。それでも制服を着たままチャオガーデンに行くのは、制服姿が結構似合っていると思っているし、この格好の自分は割と本当の自分だって気がするからだ。
 三階建ての白い建物がチャオガーデンだ。二階より上の大きな四角い建物を、下の一回り小さな建物とその周りの柱が支えている。その外観通りに、一階は受付や売店になっていて二階と三階がチャオガーデンになっている。建物の中に入ると右側に売店がある。闇の取引所という名前の老舗だ。チャオの保護がうたわれ始める前からチャオガーデンと一緒にあった店で、チャオガーデンの建物には大抵この店が入っている。そのまま奥へ進んでいくと受付がある。身分証か会員カードがないとチャオガーデンの中には入れない。チャオに暴力を振るうトラブルを防ぐためだ。


11月16日投稿分

 おけいこや診察の窓口もここにある。私は受付の女の人に会員カードを見せ、階段を上がる。階段を上がってすぐのところに自動ドアがある。そのドアに手を触れて開けた先がチャオガーデンである。
 チャオガーデンは昔作られた三種類のガーデンを基にして設計されていることが多い。このガーデンはヒーロー系のガーデンだ。やはりガーデンはヒーロー系とノーマル系が多くて、ダーク系は少ない。昔に作られたダークガーデンと似たようなガーデンは悪趣味だと言って近付かない人が多いので、ダークガーデン系のガーデンでも大抵は薄暗いことが快適さに繋がるような、落ち着くガーデンをコンセプトにしている。
 このガーデンの中央は吹き抜けになっていて、三階の照明と窓から光が降りてくる。私はゴウを抱えたまま三階に上がる。チャオの餌の木の実が成る木を植えている都合で三階だけ上に長い。天井が遠くにあって、二階の中央にある噴水を見下ろせるところが好きだ。木の実が落ちていたらラッキーだが、どれも食べられてしまったようで見当たらない。私は木を見上げる。この木は季節に関係なく鶏卵のように木の実を生み出してくれる。十分に大きくなった木の実が付いていたので私は木を蹴ってみた。幹は細いのにびくともしなかった。周りの人が見ていなかったら飛び蹴りをかましてやるのだが、二階にも三階にも人はそれなりにいて、近くには同じ高校の男子や子供を連れた女性までいるとなるといよいよそんな乱暴な真似はできない。
「買ってくりゃよかったね」
 私は木陰に腰を下ろしてゴウに言うと、ゴウはうんうんと二度頷いた。転生する前からゴウは語りかけるとそれらしい反応をしてくれる。
「さあ、好きに遊びな」
 ゴウを下ろしてやる。するとゴウは真っ先にあぐらをかいている私の脚に上り、そして腕をよじ登っていく。右腕だけにゴウの重みがかかって痛い。
「ちょっと、ゴウ、やめようそれ」


11月17日投稿分

 そう言う間にゴウは私の肩を掴み、そこまで登ると次は頭の上を目指そうとする。髪を掴まれたくはないのでゴウを持ち上げて頭の上に乗せてやる。すぐにチャオの重みで首が辛くなって、
「ゴウ、もう無理なんですけど、下りてくれない?」と言うのだがゴウは下りない。私はどんどん猫背のような姿勢になる。そして同じ高校の制服を着た男子が近付いてきた。彼は正座して私に目線を合わせると、
「あの、すみません。チャオの写真、撮らせてもらっていいですか」と言ってきた。彼はデジタルカメラを持っていた。
「いいけど、早くしてくれる?」
 たぶん私の頭の上に乗っているところを撮りたいのだろうと思ってそう返し、私は少し背筋を伸ばす。
「ありがとうございます」
 私が要求した通り彼は急いでくれたようだ。カメラの設定をして二枚撮るまでに一分もかけなかった。それでも私には辛い一分だった。ゴウを頭から下ろして、首を色々な方向に傾けたり回したりしながら、
「もっと早くできなかったの。首、超痛いんだけど」と言った。
「ごめんなさい。かなり急いだんですけどね」
「そうなんだろうけど」
「肩揉みましょうか」
「うん」
 揉んでもらえたら気持ちいいだろうと私は思った。しかし見ず知らずの男に体を触らすのは恋人を事故で亡くした身にしては軽率なのではないのかしらとはっとして首を横に振る。
「やっぱいいよ」
「そうですか」
 彼はカメラを見ているゴウを撮影して、撮れた写真をゴウに見せてやる。そしてまたゴウを撮る。ポーズ取って、と彼が言うとゴウは両手を挙げてにっこり笑った。そのままそのまま、と彼に言われてゴウは笑顔を保つ。
「オッケー」


11月18日投稿分

 そう言われるなりゴウは彼に、と言うよりもカメラに向かって走り出す。そういえばゴウは写真を撮ってもらったことがあまりなかった。私もほとんどゴウを撮っていないし、翔矢もそうだった。撮ってもスマホだ。ちゃんとしたカメラで撮影されたことはもしかしたら初めてのことかもしれない。
「テンション上がってるねえ」と私はゴウに言った。
「そうみたいですね」と男子は言った。
「そういえばさあ、君何年生? 同じだったらタメ口でいいでしょ」
 私は敬語とか丁寧語とか、そういったもので話されるのに慣れていなかった。だから同い年の人間が敬語に使われるのは嫌なのだ。
「二年生です」と彼は言った。私は三年生だ。
「じゃあそのまま敬語な」と私は命じた。タメ口でもよかったのだが、先輩らしく命令してみたかったというだけで私は彼に敬語で話すよう強制したのだった。
「かしこまりました」
 そう答えながら彼はカメラをゴウから遠ざける。ゴウがカメラを欲しがっているのだ。それで写真を撮ってみたいのだろう。彼は、駄目だよ、とゴウに言う。
「面白いチャオですね。カメラ欲しがったり、人の頭に乗ったり」
「いつも乗るわけじゃない。と言うか、初めて」
 私はゴウを抱き上げてカメラから離す。
「ごめんね」と頭を撫でてやると、ゴウは伸ばした手を下ろした。
「それにしてもどうして頭に乗ったんだろうね」
 ゴウにも尋ねるように聞くと、男子は首を傾げたが、ゴウは右手を上げてどこかを指した。指した方を見ると木がある。
「木?」
「行ってみましょうか」
 そう男子が言うので私は立ち上がった。


11月19日投稿分

 ゴウが指した木に行ってみると木の実が一つ落ちていた。さっき見た時にはなかった、落ちたばかりの木の実であった。それを見つけたのだと言う代わりにゴウはしつこくその木の実を指し示す。
「これ?」
 まさかこれを見つけるために頭の上に乗ったわけじゃないでしょうという意味で私は木の実を指して聞いた。しかしゴウは頷く。ガーデンに落ちている木の実は早い者勝ちだ。ゴウを下ろして、食べさせてやる。
「凄いですね」と男子は言った。
「見つかるわけないと思うんだけどな」
 私はさっきのようにあぐらをかいた。座った私の頭の上に立っても、低くて落ちた木の実を発見できるようには思えなかった。
「たとえば、落ちたことを確認してた、というのはどうでしょう」
「そんなまさか。落ちたところ見たとしても偶然でしょ」
 私はチャオが犬や猫のように人間以上の感覚で何かを察知することなんてないと思っている。むしろ人間より鈍感っぽく見える。しかしながらゴウが木の実を発見したことで餌代が浮いたことは嬉しい。犬や猫をキャプチャさせればもっと落ちた木の実に対して鋭敏になってくれるだろうか。そんなことを口に出したら白い目で見られるのだが、私は言ってみたくなった。
「犬や猫みたいなチャオならともかく、だけど」と私はほのめかした。
「チャオって鼻はあるんでしょうか」と彼は言った。彼はカメラを構えない。木の実を食べているところを撮る気はないようだ。
「臭いを嗅げるんだから、あるようなもんでしょう」
「あ、そっか。そうですね」
 キャプチャさせる話にならなくてがっかりしながら、私は彼のことを人の良さそうな奴だと捉え始めていた。写真を撮らせてほしいと言ってきた時など、無邪気な感じがあった。
「君はチャオを飼ってないの?」と私は聞いた。


11月20日投稿分

 飼いたくても何らかの事情で飼えないのだと彼が答えるだろうと私にはわかっていた。彼は思った通りのことを言った。チャオは大好きなのだけれど、住んでいるマンションがペットを飼うことを一切禁止しているのだと彼は言った。チャオを保護することが決められてからはチャオなら飼ってもよいとするマンションが増えたものの、まだそのような所もいくらか残っているのだった。
「高校卒業したら、チャオが飼える所で一人暮らしするつもりです。まあ、できればチャオガーデンに住みたいんですけど」
「最近はチャオガーデンみたいになってるマンションとかアパートとかあるって聞くよ」
 テレビで見たアパートでは、部屋の一室が小さなチャオガーデンになっていた。浴室のようにタイル張りになっていて換気扇があり、浴槽のような池が埋め込まれている。そこに人工芝のマットを敷いて湿気に強い植物と遊具を置いてチャオにとって快適な空間に仕立てているというものだった。
「いえ、こういうチャオガーデンに住みたいんです。一人じゃ飼える数に限度があるでしょう? だからチャオが集まってくる所に住んだ方がたくさんとチャオと触れ合えるわけじゃないですか」
「それに写真も撮れる」
 その通りです、と彼は頷いた。そして彼は将来チャオ専門の写真家になるつもりなのだと語った。私はゴウが飛びたがっていたので、持ち上げて真上に放ってやった。ゴウはハシリタイプにさえ進化しないと思う。飛ぶし登るし泳ぐ。カオスドライブだって与えていない。翔矢はソニックチャオにさせたくて、それ用のカオスドライブをキャプチャさせていたそうだ。
 チャオ専門の写真家になるつもりならわかるだろうかと思って私は彼に聞いてみた。
「ゴウはハシリチャオになる? それとも別のタイプになる?」
「ならないと思いますよ」


11月21日投稿分

 ゴウが降りてくるのを待つこともなく彼は答えた。
「ヒーローハシリタイプは一本だけなんですよ」と彼は角を生やすように頭の上で人差し指を立てた。
「見た感じ、ヒーローノーマルじゃないですかね」
「へえ」
「ハシリタイプがよかったんですか?」
 それならカオスドライブを、と彼は闇の取引所の店員のごとく続けて言ってきそうだった。私は首を振り、違うよ、と言った。
「転生する前はソニックチャオだったんだよ」
「え、転生してるんですか」と彼は驚いた。私は、うん、と頷いた。
「凄いな。それだけ愛されたわけだ」
 両腕を広げ、降りてきたゴウを受け止めようとしながら彼は言った。ゴウは彼の期待に応えて、彼の胸元に抱き付いた。撫でられて、頭上の球体の形をハートに変える。
「私じゃないけどね」
「え?」
「転生するほどそいつを可愛がってたのは別の人。私は代わりに連れてきてるだけ」
「でもあなたが優しくした分もあるんじゃないんですかね」
 社交辞令みたいなものだと私は思った。私はゴウに優しくした覚えはない。むしろ旅行にも付いてくるゴウを邪魔に思ったことならはっきり覚えている。付いてきたと言うか、翔矢が連れてきたのだったけれども。

 その後彼は以前から写真を撮らせてもらっているというチャオと飼い主を見つけて、そちらに行ってしまったので私は家に帰った。母も帰ってきていた。
「ただいま」と私は言った。
「おかえり。チャオガーデン?」
「そう」
 私はゴウをソファに座らせてやり、テレビを付けた。地方局のワイドショーの天気予報のコーナーだった。
引用なし
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