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週刊チャオ鍛錬室 ろっど 11/4/23(土) 4:16

彼女の病室 ホップスター 11/5/8(日) 3:12

彼女の病室
 ホップスター WEB  - 11/5/8(日) 3:12 -
  
…そういえばあれ、今度はいつにするかな。
学校の帰り道、僕はそんなことを考えながら坂道を下る。

「あれ」とは、お見舞い、である。
誰のお見舞いかといえば、知り合いの女の子。いわゆる幼馴染、というやつに近い。
周囲からは「病弱の幼馴染とか最高のシチュじゃねぇか」とよくからかわれるが、断じてその気はない。断じて。

彼女は、7歳の時に大病を患い、以降入退院を繰り返している。
入院する度に僕がお見舞いに行くのが恒例で、基本的に週1回。
一時は「なんで僕が行かなきゃいけないのさ」と拒否したこともあったが、どうも彼女が大泣きしたらしく、それ以来大きな用事がない限り欠かしたことはない。

結局のところ、彼女は「トモダチ」が欲しかったのだろう。
病気になって既に10年。当時の友人関係は既にバラけてしまい、残ってるのは僕ぐらいなものだから。
ずっと入院していた訳ではないのでたまに学校にも行ってたけど、入退院を繰り返す状況で友人を作るのも難しかったようだった。

そうそう。
「トモダチ」が欲しかった彼女は、5年ぐらい前からチャオを飼っている。
基本的に清潔な環境でしか住めないチャオは、普通の動物と違って病院へ連れて行くことも特別に許可されている。
彼女がペットとしてチャオを選んだのは、それが大きいらしい。
ただ、入院してるとずっと一緒、というのは無理なので、普段は彼女の家族が世話をしてるそうだ。

…とか何とか、読者さんに向けたテンプレ説明文章を考えながら、僕はやっぱり坂道を下る。


…決めた。
水曜の夕方にしよう。


「という訳で、現在時刻は水曜の午後4時半、ここは彼女の病室…」
「はいはい、厨二病も大概にね?」
…どうやら読者さんに向けた説明文が口をついて出てしまったらしい。彼女に厨二病だと笑われる。
正直、ちょっとどころかかなり恥ずかしいが、まぁいいか。娯楽が少ない病室って場所だし、笑ってもらうのが一番だろうしね。

で、どんな話題をするのか…といっても、他愛のない話題である。
病室にテレビはあるのでテレビの話、学校の話、あとは…そう、チャオの話。

「そういえば、あの子を飼い始めて、もう5年かぁ…あの子はあんなに成長したのに、私はずっと病院だよ」
「いや、なんだかんだで半分ぐらいは退院してるだろ?」
「そうだっけ?」
もちろん僕も正確な日数を数えている訳じゃないけども、およそ半分ぐらいのはずである。
ただ彼女にとって、その「半分」はどれだけ長くて、大きいのだろうか。それを考えると、少し胸が痛い。

彼女はベッドから出るのは難しいが、自分で食事をしたりするぐらいのことはできる。話すことも問題ない。
側にいたチャオを彼女は抱え上げ、よしよし、と頭をなでた。ポヨがハートマークになって、チャオが喜んでるのが分かる。

そこで僕は、あることに気がついた。
「そういえばさ」
「うん?」
「飼い始めて5年ってことは、そろそろ転生するんじゃない?」
「あ、そっか!」
「今度はどうするの?今はオヨギタイプだから、今度はヒコウとか?」
「そうね…ま、ゆっくり考えることにする」
そう言って、彼女はニコリと笑った。なんだかんだで、その笑顔は癒される。

「あ、そうだ」
今度は彼女が僕に話しかけてきた。
「ん?」
「退院、って訳じゃないんだけど、木曜の夜に家に一泊できることになったの」
「おー、おめでとう!」
「ありがと。この調子でいけば退院できるかもってお医者さんも言ってたし、頑張らないと」
「でも、無理はするなよ」
「うん」
そう軽く頷くと、また彼女は少し笑った。


(そういえば彼女、今は家なのかな?いやもう病院に戻ったか?)
金曜の放課後、やっぱり坂道を下りながら僕は考える。一泊だけだから、少なくとも今夜には病院に戻らなければいけないはずだ。
そんなことを考えていたら、突如携帯が震えた。着信元は…母親か。
「もしもし?」


…それから何時間が経っただろうか。既に深夜と呼べる時間。僕はまた、彼女の病室にいた。
でも、そこで寝ている彼女は目を閉じて、喋らない。呼吸器が繋がれ、電子音が響く。

母親の話をまとめるとこうだ。
今日の昼すぎ、彼女のチャオが繭に包まれた。
しかし、その繭からは、何も出てこなかった―――どうやら転生しなかったようなのだ。

冷静に考えれば当然である。入退院を繰り返す彼女に、チャオの世話が満足にできるはずがない。
彼女の家族が世話をするには限界があったのだろう。

…で、彼女は錯乱して、包丁を自らの胸に…そして、今に至る。
奇跡的に急所から外れたため、一命は取り留めたそうだが…それでも、彼女のこんな姿を見るのは辛い。


君が側にいてあげることが、彼女にとって何よりだから、と彼女の家族に言われ、僕は深夜の静かな病室で、喋らない彼女と2人きりの夜を過ごす。
一昨日はあんなに楽しそうに話してたのに、こんな…こんな…
僕の頭の中で、様々な思考がぐるぐると渦を巻いて、安定しない。

「こんなのって、ないよ」
つい、口から言葉が出てしまった。

僕は心の中で(やってしまった)と思いつつ、無意識に彼女の手に触れた。その時だった。
「…こん…な…の…?」
僕の声じゃない。別の声。彼女の声。そしてその瞬間、僕の左手に触れていた彼女の右手が、動いた。
驚いて言葉が出ない。彼女が、喋った。喋った!!

少し経って、やっと冷静になった僕は彼女の顔を覗くと、彼女はしっかり目を開けていた。
彼女も自分の顔を覗いてきた僕に気がついたらしく、小声でこう話しかけた。
「ごめんね…私が死んだら…悲しむ人が…また増えるのに…」

あぁそうだ。チャオが死んで彼女が悲しむように、彼女が死ねば僕は悲しむ。そうやって世界は繋がっている!
…死に掛けたとはいえ、ギリギリの所で彼女はそれに気がつくことが出来たんだから、きっとマシな方なんだろう。

僕はそっと、彼女の右手を握った。彼女も静かに、強く握り返した。


「…そういえばそんなこともあったねー。さすがにあれは三途の川が見えた。知ってる?あれってマジであるんだよ?3回ぐらい渡りかけた私が言うんだから間違いないって話よ!」

…あれから何年経ったろうか。とにかく、今は彼女も元気に暮らしている。

「おいおい、そんな話茶化していいのかよ」
と僕は苦笑いしながら返すが、彼女は笑いながらこう言い返した。
「過去にどんな不幸なことがあっても、それをネタにして笑って話せる…それが幸せってことでしょ?」

                        おしまい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

どうも。
小説掲載は1年3ヶ月振りでしょうか。
はじめましてな人ははじめまして、お久しぶりの人はお久しぶり。ほっぷすたあです。
むかーしむかし週チャオの編集長なるものをやっていたような気がしますが、気のせいということにしておいてください。

以下、あとがきというか余談的なものになりますので、飛ばして頂いて結構です。


とりあえず、このお話を書くキッカケについて。

PSUでの友人だったとある姉妹がいたのですが、先日、2人とも亡くなったと知らされました。
元々病気がちだった妹が病死、そのわずか20分後に姉が作中の彼女と同じ形で後を追ったそうです。
後を追った、と聞いて納得してしまうぐらい本当に仲の良かった姉妹でした。
そういえば最近見ないなとは思っていましたが…正直、相当なショックを受けました。


このお話は、その悲しみという感情だけで一気に書き上げました。
文章としては間違いなく稚拙だと思います。ほとんど推敲してません。
読者の皆さんは「で、だから何だ」と思うかも知れません。

でも、(自分でこういうのを言うのもアレですけども)こういう純粋な感情こそが、小説を書くエネルギーになり、また作品を名作たらしめる要因だと思います。私が悲しみをキッカケに1年3ヶ月振りにキーボードを叩いたように。

つまるところ、長い前置きですが、「滅茶苦茶だけど勘弁してね」ってことを言いたいだけ、ということで。

それでは、またの機会に会いましょう。感想などなど、お待ちしています。
引用なし
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