●週刊チャオ サークル掲示板
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絶望 Mr.S 10/7/16(金) 21:52
絶望の直前 Mr.S 10/7/16(金) 21:53
魔法 Mr.S 10/7/16(金) 21:54
目覚め Mr.S 10/7/16(金) 21:54
魔法兵士 Mr.S 10/7/16(金) 21:55
Mr.S 10/7/16(金) 21:56
学校 Mr.S 10/7/16(金) 21:56
魔法の知識 Mr.S 10/7/16(金) 21:58
利奈 Mr.S 10/7/16(金) 21:59
防御 Mr.S 10/7/16(金) 22:00
弱者 Mr.S 10/7/16(金) 22:01
Mr.S 10/7/16(金) 22:02
魔法の仕様 Mr.S 10/7/16(金) 22:02
隠された魔法探し Mr.S 10/7/16(金) 22:04
デノカシクファウロッセ Mr.S 10/7/16(金) 22:04
異世界 Mr.S 10/7/16(金) 22:06
一人 Mr.S 10/7/16(金) 22:06
感想コーナー Mr.S 10/7/16(金) 22:08
読ませていただきました チャピル 10/7/17(土) 8:54
Re(1):読ませていただきました Mr.S 10/7/17(土) 18:25

絶望
 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:52 -
  
――あなたは、魔法の世界に囚われることになる。
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絶望の直前
 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:53 -
  
「うあッ……!あああっ……!!」
「あがあああああ!!」
僕は異様な光景を見ていた。
人が次から次へとおかしくなっていく。
気絶した人もいる。
ただ彼女と目を合わせただけなのに発狂する。
ただ彼女に触れられただけなのに気絶する。
そしてその原因となった女性がゆっくりと歩いてくる。
彼女の異常性を主張するかのように目が赤く輝いている。
あるいはそう見えたのかもしれない。
だがその赤い目。
黒い長髪と黒い衣服の対比でより強調されたその目。
まさに魔女の目と言える。
そう、彼女は魔女だ。
魔女だから、魔法を使う。
いや。
魔法を使っているから、彼女は魔女だと言われるのだ。
そう、魔法を。
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魔法
 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:54 -
  
魔法。
炎を出したりするようなものが一般的なイメージだろうか。
爆発を起こしたりすればさぞかしインパクトのあるものとなるだろう。
さて、この魔法はどのようにして起こされるのか?
それは人類にとって扱える技法なのか?
それらは解決されない謎として未だに残っている。
ゆえに魔法はその非現実性から魔法と呼ばれ、そして憧れや畏怖の対象となっている。

ここでの魔法も非現実的である面では同じである。
当然向けられる感情も等しく大きい。
ただし、炎を出したりするようなことはできない。
端的に言ってしまえばインパクトに欠けるものである。

では、この世界での魔法はどのような効果をもたらすのか。
もっともよく使われる効果として、肉体の破壊が挙げられる。
しかし、実際に肉体が破壊されるわけではない。
魔法の効果により、そうなったと人間は認識するのである。

つまりこの世界の魔法とは、他人に幻覚、錯覚を引き起こすものなのである。
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目覚め
 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:54 -
  
「ううう」
僕は目覚めた。
目覚めてしばらくぼーっとする。
「えーっと、なんで寝てたんだっけ」
そして思い出す。
先ほどまで自分のしていたことを。
「ああ……」
訓練だった。
魔法兵士の訓練である。
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魔法兵士
 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:55 -
  
魔法兵士とはその名の通り魔法で戦う兵士である。
魔法にはそれほど大きな力はない。
銃器の方が殺傷能力、攻撃範囲のどちらとも魔法より遥かに上である。
つまり通常の兵器の方が強力な武器なのだ。
しかし、戦争において用いられるからにはそれなりの利点がある。
魔法はいくらでも使うことができるという点だ。
銃弾などのように無くなる度に補充する必要もなければ使い続けることで劣化することもない。
持ち運ぶ必要もないしメンテナンスいらずでもある。
その他様々な利点を考慮した上で魔法もまた戦争において重要な武器の1つとなったのである。
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 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:56 -
  
そしてその魔法兵士の実践訓練で僕たち兵士見習いが束になって講師の先生と戦ったのだ。
僕は最後まで立っていたけれども、単純に攻撃されたのが最後なだけであった。
そんなことを思い出していた僕に声がかかる。
「おはよう」
「あ、姉さん、おはよう」
姉さんが僕を優しく見つめていた。
姉さんは姉さんである。
僕より早く生まれたから姉さん。
血縁である。
「えっと、姉さんがいるってことは」
ここは僕の家であるということだ。
「昨日、気絶したまま目覚めなかったから私が引き取りに行ったのよ」
「ああ、そうなんだ」
こういうことはよくあるのだ。
「えっと、今は?」
時計を見る。
時間はいつも起きる時間だった。
「うわお」
「体はちゃんと動く?」
「ん……」
一応体を動かしてみる。
問題はない。
「うん、何の問題もないよ」
「そう、ならよかった。じゃあ学校へ行きなさい」
「うん」
起き上がる。
朝食を食べる。
トーストとコーヒー。
軽めの朝食である。
僕の家ではこれが普通なのだ。
のんびりと食べ、飲む。
口の中へ食べ物を入れていくことで目がはっきりと覚めてくる。
「じゃあ、行ってきます」
「ええ。行ってらっしゃい」
結局、今日はチャオ育成をできなかったな、と僕は思う。
いつもは朝食の前に少しソニックアドベンチャー2バトルに触り、チャオを育てているのだ。
帰ったら存分にチャオと遊ぼう。
そう決めて僕は学校へ向かった。
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学校
 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:56 -
  
学校とは魔法兵士としての能力を養うための学校である。
魔法をより効果的に使うための動きを教わる。
この際、当然魔法についてよく知っておく必要がある。
魔法の正しい知識を身につける学習もまたここで行われる重要な訓練なのである。
応用やその場での適切な判断ができるようにと、この魔法の知識というものを生徒は念入りに教わることとなる。
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魔法の知識
 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:58 -
  
魔法では他者に幻覚、錯覚を引き起こすことが可能である。
すなわち、事実ではない情報を脳に与えているのだ。
腕が千切れて非常に痛い、というような情報を与えれば、被害者は実際にはそうでなくともその苦痛を味わう。
しかし、そのような使われ方しかしないというわけではない。
とても楽しい、という情報を与えると被害者はとても楽しいと感じる。
あるいはニュースの情報を与えれば、相手にそのニュースを伝えることができる。
つまり、魔法は正確には他者へ情報を送り込む技術なのだ。

では、どのようにして他者へ情報を送信するのか。
方法はいくつかあるが、端的に言えば相手の五感に接触することである。
相手の視界に自分が入っていれば情報の送信は可能だ。
触れている状態でもいい。
つまり自分が何らかの形で相手の神経を刺激している状態になればいい。
刺激している神経へ自分の送信したい情報も一緒に送信する。
それを神経が受け取って脳へ運ぶことで魔法は成立する。
送るために用意した情報がどのようなメカニズムで相手の神経まで届くのか、それは謎に包まれている。
そうであるからこそこの技術は魔法と呼称されるに値するのだ。

送信する情報はどのようなものがいいだろう。
戦闘時ではその相手に対して費やすことのできる時間によってどうするべきなのか変わってくる。
例えば1秒だけ腕の痛みを味わわせてもあまり意味はない。
せいぜいその1秒間苦しみ、その後痛みが消えたことに戸惑う程度だ。
1分や10分もその痛みが続くのであれば非常に有効なのだろうがこの場合不適となる。
1秒しか時間がないのであれば、精神的にダメージを与えられることが見込まれる映像を送りつける方がいい。
例えばグロテスクな光景だ。
それらを意識させれば相手は精神的ダメージを受け、非常に混乱することも想定できる。
しかし、それらで確実に相手を行動不能にできるわけではない。
それの実現を確実にするにはそれだけ時間を費やす必要があるのだ。
武装している状態ならば、情報を送信してショックを与えている間に射殺することが推奨されている。
魔法によって精神的に攻撃できる世界でも物理的な破壊は非常に有効な手段である。

また戦闘時には魔法が情報を送信する術であることに着目し、相手を洗脳することも視野に入れられる。
情報を的確に送り込めば、相手を洗脳することが可能である。
洗脳と一言に言えども様々な洗脳がある。
わかりやすい例を挙げれば、敵であった者を味方にしてしまう、というようなところだろうか。

しかし、実際に敵を味方にすることは非常に難しいとされ、推奨されていない。
なぜなら、洗脳するために送る魔法は基本的に作られた記憶という情報だからだ。
この場合送る記憶情報は、味方として行動した過去などである。
洗脳するために魔法で送った記憶は当然偽物だ。
本来の記憶と決定的な矛盾を生じることも少なくない。
そのため時間が経てば経つほどその記憶が偽の記憶であると気付かれるリスクが生じる。
それを阻止するには常時情報を与え続け、矛盾に気付かないように意識を逸らさせることなどが必要である。
最善策としては全く新しい人生を1から構築し、その情報を送り続けることで思い通りに操る、といったところだろうか。
しかし、そうまでして洗脳するメリットが生じる機会ははたしてあるのだろうか?
あるいはそれが現実的に可能かどうか、という疑問が生じる。
送信する情報量に限界があるからである。

送り込むことのできる情報量を多くする方法は2種類存在する。
1つは長時間に渡り送信することである。
単純に考えれば、1分かけた場合には1秒しかかけなかった場合より60倍の情報を送れることになる。
送信している時間が長ければそれだけ多くの情報を伝えることが可能だ。
もう1つはより多くの部分で相手の神経を刺激することである。
そうすることで結果的に情報を伝えるトンネルを大きくすることになり、同時に大量の情報の送信が可能となる。
具体的にどうするとよいのか。
相手の視界を占領することが第一に挙げられる。
つまり相手に近づくことである。
当然相手の視界全てを埋め尽くすほど接近すると最大の効果が得られる。
また、そうなるまで接近した場合は体の接触もするとよい。
触れ合う面積の広さを考慮すると、抱く形となることも多いだろう。

魔法は接近すればするほど効果を大きくすることができるのだ。
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利奈
 Mr.S  - 10/7/16(金) 21:59 -
  
「よいーっす」
ばしりと背中を叩かれる。
叩いたのは少女だった。
彼女の名前は、利奈。
僕が惚れている女性である。
……。
……ん?
「ちょっと」
「おはろー。どしたん?」
「勝手に惚れたことにしない」
「あぎゃ。ばれたか」
今までそういう風に思ったことのない僕だった。
彼女は魔法を扱うのがうまい。
今のは背中を叩いた時に情報を送信したんだろう。
「すぐばれるような情報を送り込まない」
「いや、こればれても効果あるんで」
「というと?」
「こういう情報を送り続ければ、その分私を意識するようになるから、そこから恋が芽生えたりするわけです」
自信満々に胸を張る。
実際自信の持てるバストである。
もしかしたら今見ているこれは服によって本来持っているパワーを制御しているのかもしれない。
そしてその拘束具を解き放つことによって真の力を発揮するのだ。
「……胸見すぎですよ?」
出る杭は打たれるが、出る胸は見られるものである。
「君のバストなら胸を見たら洗脳するというトラップに実用性を持たせられる」
「そのトラップで君には私の胸が小さく見えるようにするとして、恋が芽生えたりするわけなんですよ」
「そしてそれは本当の恋なのか、という疑問が発生するわけだ」
「まー、考え方にもよりますなー」
「というと?」
と、突然利奈の胸が小さくなった。
当然本当に小さくなったわけではない。
そういう情報を植えつけられているのだ。
「今私の胸が小さく見えているはずなんだけどさ」
「うん、小さいね」
「この状態で初めて私に会った人は間違いなく私は胸の小さい人だと思われるわけだ。胸の大きさを判断する材料が視覚情報しかないんだから」
「そりゃそうだろうね」
「見た感じ胸は小さかったら、この人の胸は小さいんだな、って判断するしかない。洗脳だって同じでしょ?こういう情報、こういう記憶があるんだからそれに沿って行動するしかない」
それにしても胸小さいを連呼しすぎだった。
怖い者知らずである。
あるいは無礼者。
「結局、どうするかの判断は本人にある。ただ、特定の結論に行きやすいように情報を与えているだけ。それを悪とするかどうか、どの程度まで許容するか、だと思うよ。似たようなことなら洗脳以外でも日常的に起きているだろうし」
「日常的に?」
「親が小さい子供にこうしなきゃだめあれをしちゃだめ、って言うこととかね」
時に過剰な教育によって歪む子供もいる。
しかし適度な教育は必要で、それをされなかった子供もまた歪む。
それらの責任を負うのは教育をした者、親や保護者、そして時に教師などだ。
だから小さい子供に常識を刻み込むことは多角的に必要なことだと言える。
そして彼女は白紙の子供に何かを刷り込むか既に何かが書かれている人間に何かを上書きするかの差でしかないと言っているのだ。
「言いたいことはわかるけど、でも必要なことだよそれは」
「そう、必要なことなの。それを否定する気はないよ。だから、どこまでを許容するか、なの」
子供への教育だけに限定してもどこがボーダーかはわからない。
善悪は完全の価値観ではない。
それが曖昧であることはもはや当然と言えた。
「どこをボーダーラインとするかはわからないけど、でも洗脳は嫌だな」
「それなら、そうされないように自衛するしかない。洗脳されても頑張って洗脳されていると気付くしかない。ほんと、魔法って迷惑だよね」
「うん、そうだね」
魔法は迷惑。
その意思を表すように胸は元通りになっていた。
そして彼女は笑う。
「ちゃんと防御しなきゃだねー」
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防御
 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:00 -
  
魔法から自身を守るにはどうしたらいいだろうか。
魔法を使用する者を知覚すれば魔法にかかってしまう。
ならば知覚しなければいい。
この考え方が魔法に対抗する方法の基本となる。

まず、実際に知覚しないように行動することだ。
これは魔法を使用できない者でも魔法から身を守ることができる手段だ。
なるべく視界に入れないこと。
なるべく離れること。
そうすることで魔法の影響は少なくなっていく。
影響が少なくなればそれだけ洗脳などにも気付ける可能性が上がるのだ。

自身に魔法をかけることによって防ぐ方法もある。
自分が感じている情報を自分で捏造するのだ。
本来ならば見えているはずの相手を見ていないことにする。
触れているはずの手を触れていないことにする。
情報のシャットアウトだ。
欠点はそれが自身の捏造した感覚であることだ。
銃で撃たれたところでそれを感じることもない。
あるいは、そのような危険が迫っていても知覚できない。
対処しなければならないことに対処できなくなるのだ。
ゆえに自身への魔法は必要最低限でないと不都合なのだ。

魔法の攻撃を防ぐことを重視すると単純な攻撃に弱くなる。
自身の魔法によって身を守る際はその欠点が顕著に現れる。
単純に相手の姿を見ないようにする行為も危険である。
うまくバランスを取らなければならない。
偽の情報を植えつけられても少ない情報量であればそれが魔法によるものだと気付けるくらいの耐性は必要だ。
慣れや知識や心構えによって築きあげなければならない。
それができていない者は実戦において弱者となり食われるのみだ。
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弱者
 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:01 -
  
学校では授業で他の生徒と戦うこともある。
授業でないところでそういうこともあるのだが、それとは違い安全性が強調される。
ひどく傷つけた場合はそれなりのペナルティがある。
この授業で学ぶことはどうやって相手を傷つけるか、ではない。
それに至るまでの過程をどう上手にやるか、だ。
回避したり防御しながら回避したり防御できない攻撃をする。
利奈は非常に上手かった。
僕は下手だった。
味わうのは敗北だけだ。
敗北者に与えられるのはちょっとした苦痛だ。
ひどい苦痛を与えることはできないから、代わりにとんでもない映像が送られてきたりする。
勝者にはなれなかった。
弱い者は当然だが魔法によるいじめの対象となった。
この授業はその人間がいじめやすいかどうかを判断するいい材料となったのだ。
幸い僕は狙われることがなかった。
これは利奈がよく僕に話しかけてきていたことが抑止力として働いていたからだ。
あるいは彼女が僕を独占していじめていると認識されていたのかもしれない。
どちらにしても彼女が俺の傍にいることは広く知られていたから、大きないじめは回避された。
受ける攻撃は友人同士でじゃれ合うようなもので済んだ。
その点だけ考えれば僕は結構優遇されている立場だ。
だけど、考えることがある。
魔法が下手な魔法兵士。
その存在に意味はあるのだろうか。
どのようにして意味を見出せばいいのだろうか。
できることなら強さが欲しい。
利奈のように魔法を上手く扱える存在になりたいと思う。
でもなれる見通しはない。
魔法の扱いに関して、僕に持てる誇りはない。
ならば別の方向で自分の誇りとなるものを探すしかない。
一体何がある?
もしあったとしても、その誇りはいつまで維持することができる?
魔法という分野で僕が著しく劣っていることによって感じる劣等感は消えるのか?
安心できる未来が見えない。
そういう未来に行くための道が僕には用意されていないとも思う。
苦痛を与えられない環境は僕に悩む余裕を与えていた。
絶望だ。
この絶望からの逃げ道を求めていた僕は、とある噂を思い出した。
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 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:02 -
  
僕の会話の相手は基本的に利奈だ。
それ以外とも多少は話しているはずだ。
だが一番量が多いのは利奈だった。
すなわち、利奈がいない時は僕は誰とも会話していない状態となる。
そんな休み時間は周辺の会話を耳に入れている。
ある時、たわいのない会話の群れの中に気になる話があった。
「隠された魔法があるって知ってるか?」
「隠された魔法?なんだそりゃ」
男二人が話している。
その会話を聞き取ることに集中する。
「最近出回っている噂なんだけどさ、なんでもこれまでの魔法とは全然違うとか」
「全然違うって……どんな魔法なんだ」
「炎とか出せるらしい」
「炎って……そういう幻覚じゃなくて実際にか?」
「ああ。炎以外にも雷とか出せるらしいし、ワープとかもできるって」
「うーん、でも噂だろ?」
「まあそうだけどさ。あったら面白いだろ?」
「そうだな。いや、面白いどころじゃなくてすごく実用的だな」
そこにまた一人男が入ってくる。
「何話してんの?」
「あのな、噂なんだけど最近な――」
そして三人になって再びその噂について話し合っていた。

その次の休み時間。
利奈が話しかけてきた。
「隠された魔法があるって知ってる?」
結構広まっている噂だったようだ。
「聞いたことはあるけど、本当にあるのかな」
「私はあると思う」
「うーん、どうして?」
「今ある魔法だってどういうメカニズムで情報を相手に伝えているのかわからない。なら、何もないところから炎が出たりする魔法があってもおかしくないでしょ?」
「まだ世界にはたくさん不思議がある、ってことだね」
不思議は解明されれば冷めてしまう。
もしスカイフィッシュがモーションブラー効果によるものだと明らかにされなければUFOの存在を信じる者は現状より多かったに違いない。
何かが明らかにされる度、世界には不思議なことがあると肯定しにくくなっていくのだ。
それと同じで、どのようにして情報が伝達されているのか明かされていないからそういう可能性があると信じることもできるわけだ。
そして彼女は苦笑いをして言った。
「魔法の仕様からして、実際にあっても使えないんだろうけどね」
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魔法の仕様
 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:02 -
  
魔法はどのように教えられるのだろうか。
学校で呪文を教わる、などという手段ではない。
そもそも呪文は必要ではないから、そのやり方で使えるようにはならない。
魔法を使えるようになる手段は現在一つしかない。
魔法の使い方、その情報を魔法によって知るしかないのだ。
言語化して説明することのできない情報が伝えられ、それによって魔法を会得する。

どのように魔法は情報を相手に伝えるのか。
それを理論的に解釈し、言語化できる者はいない。
だが、やり方はわかる。
魔法はそんな曖昧な技術として、しかし確実に存在していた。

この魔法を発明した者も、どういう原理によって成り立っているのかわからなかったのだろう。
そして今も変わらずに、そういうことができる、ということだけが伝えられる。

魔法にはそんな仕様があるため、存在を隠すことは容易である。
存在を隠せなくても、方法を知ることはまず不可能だ。
このため、今回のように一部の者にしか明かされない、隠された魔法があると噂されることは珍しいことではない。
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隠された魔法探し
 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:04 -
  
「実際にあっても使えない……か。どうにかして使えるようになれないかな」
「手探りで見つけるってこと?」
僕は頷く。
利奈は目を大きく開いた。
「そういう手もあるのか……。でもすごく難しいかな、それは」
しかしすぐ渋面になった。
「そうだね。見つける前に死ねるね」
「実際に探すにしてもせめて魔法でどういうことが起こせるか、っていう情報は欲しいよね」
「僕たちがまだ知らない魔法が本当にあるってわかればそれだけで大きな一歩だからね。……うん、そうだな、面白そうだ。それ」
「え?」
「探してみるよ。面白そうだから」
「探すって、どうやって」
「んー適当に。図書館とか探すといいかも。もしかしたらそういうのがあるって示唆する本とかあるかもしれない」
例えば予言だとか伝承だとかの中にはありそうなものである。
それらを根拠にするのはいささか頭が悪そうではあるが、もし隠された魔法があるという前提で調べていくなら、それらから何らかの手がかりを得ようとする行動もあながち間違った行動ではないような気がした。
「私も行く」
「え?」
「私もそれ気になるから」
「まあ、いいけれども」
図書館へ向かった。
どのような本から探していくのかについて、道中で話し合った。
まず除外されたのは魔法をメインに扱った書物だった。
それらで存在を発見できるなら既に噂なんてレベルでは済まないであろうからだ。
そしてそれと同じ理由で、信頼性に欠けるものから探すこととなった。
僕が最初に考えたのと同じ結果だ。
利奈は行動が素早く、何冊かの本に目星をつけるとそれを抱えて机へ向かった。
僕はタイトルと作者の群れをぼうっと眺めるばかりだった。
無数にある列の中で一つに目が留まった。
“デノカシクファウロッセ”
聞いたことも見たこともない単語のタイトルだ。
どこか外国の言語が由来だろうか。
著者は、不明。
その本を手に取り、その一冊だけ持って利奈のいる机へ向かう。
「それは?」
目次を睨んでいた利奈の視線が興味の眼差しになって僕の持ってきた本に向けられる。
机には本が二段になって積まれている。
高さが均等でないが、おそらく目次だけ見て中身を見る必要がないと判断したものが片方の塔なのだろう。
「なんか存在感があったんだよね。この言葉、意味わかる?」
タイトルを見せる。
「……わからない」
「むう。どこの言葉なんだろう」
ともかく、中身を見る。
彼女にならって、目次から見る。
……。
目次はなかった。
「最初から読むしかないか」
僕は“デノカシクファウロッセ”を読み始めた。
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デノカシクファウロッセ
 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:04 -
  
結局この本は一日で読みきることができなかったため、借りて家で読み進めることになった。
結果から言えば、この本はビンゴであった。
この本には隠された魔法についての情報があった。
それも僕が期待していた量よりもはるかに多く、だ。
おそらく魔法がこの世で使われるようになる前に書かれたものなのだろう。
内容は魔法の存在を示唆するものであった。
この世界には存在しない法則の存在があり、それがこの世界に入り込む可能性のあるものと仮定した上でどのような脅威が存在し得るかを書き表していた。
様々な憶測の中に、情報を操作する技術の存在があった。
そしてこの技術だけは多くのページを割いており、文章から伝わる著者の熱意は他の憶測とは比にならないものであると言外に伝えていた。
ここに書かれている内容をそのまま受け止めるのであれば、魔法は元々はこの世界に存在しない力であるということだ。
また、著者は魔法に代表されるような異界の力のことをデノカシクファウロッセと呼んでいた。
この本では、異界の力がこの世にやってくるにはある程度の条件を満たしていることが必要だと主張していた。
例えば魔法であれば、この世でも魔法が使えるように世界を適応させる必要があるし、そもそも別世界からこちらへやってくる手段が必要となるのだ。
つまり、少なくとも魔法が使える環境にできる技術と他の世界へ行く技術が隠されていることになる。
いよいよどうして著者が魔法について他に比べ執拗に書いていたのかが明らかになったのは巻末のページを見た時だった。
そのページは空白だったが、それを見た瞬間僕の脳内に多くの情報が入り込んできた。
それはまさに探していた隠された魔法によってそのページに埋め込まれた情報だった。
僕が得た情報は、ある条件を満たした者(その条件については言及されていなかった)にのみこの情報が取得可能であり、さらに他者へこの情報を伝えることが不可能であるようだった。
それもまた未知の魔法による細工なのだろう。
そのような厳重な方法によって守られていた情報は、先述の二つの魔法だった。
人間以外に情報を埋め込む技法が一つだ。
今まさに空白のページがそうしているように、過去に埋め込んだ情報を他者へ発信することも可能のようだ。
もう一つは他世界への移動を実現する技法である。
これは一つ目の技術の応用であり、空間に他世界へ行くゲートを作るものであるようだった。
空白のページにある情報よりこれらのやり方を僕は習得した。

どうしよう。
どうしたらいいんだろうか。
そう悩む一方で、早速この力を使ってみたいという欲望もあった。
異世界。
そこにはこの世界にないものがあるかもしれない。
例えば、チャオ。
ゲームの中の存在であるあの生物がいる世界などに行けないだろうか?
そう思い、実行した。
異世界へ――
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異世界
 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:06 -
  
たどり着いた場所で最初に出会ったのはチャオだった。
「……本当に来れた」
本当にチャオがいる。
ということはもしかしたらソニックなどもいたりするのだろうか。
とにかくチャオがいるからいいのだ。
ここは森だった。
「森かー……」
人間が住むにはちょっときつい環境である。
というか、自然の中で生きる経験をしていない我が身には無理な話だ。
一旦森の外に出て人里へ行きたい。
しかし、自分はどういう扱いにするべきか。
異世界からやって来た魔法使い……なんて説明で通るとは思えない。
そもそもこの世界で魔法が使えるかどうかもまだわからない。
この時気付いたが、世界に魔法を適応させる技法については全く知らないわけで。
困った。
ここでふと後ろを見た。
自分が通ってきたゲートを見ようと思ったのだが、そこには何も無かった。
「……消えた?」
大ピンチの予感がした。
焦ってゲートを作り出してみる。
しかし、できなかった。
やっぱりこの世界では魔法を使うことはできないのか。
もっと慎重に行動するべきだったのだと猛省する。
しても遅いが。
チャオに惑わされてしまった。
「やばいな」
とりあえず外へ出て人を探そう。
一人は危険だ。
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一人
 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:06 -
  
最初から想定しておくべきだったのだろうが、面食らった。
どうもここには人間は存在しないらしい。
この森は結構高所にあるようで、森から出てすぐに丘から辺りを見渡すことができた。
辺り一面に人がいると思われるような物は見られなかった。
この頃になって、そもそも人と接触したところで言葉が通じる保証も無いことに気付き、もしかしたら“デノカシクファウロッセ”という言葉も魔法が元々存在していた世界の言葉なのではないかという発想が出てきた。
ともかく人がいないのであれば、チャオと一緒にいよう。
そう思って僕は森へ戻った。

チャオが集まっている場所で僕は生活することになった。
湖とでも呼ぶべきであろう大きな水溜りがある場所であり、チャオが水と共に生きる生物であることを感じさせられた一方で自分の水分の心配をする必要がないことに安心しもした。
食べ物は木の実だけだ。
これだけで人間が生きていけるかどうかは謎だが他に食べ物らしいものは無いのだ。
小動物を生で食うわけにもいかない。
火を使えるようになればいける気もするので、そのうちその技術を習得しよう。
チャオとの生活。
それもゲームではない。
結構楽しい生活である。
しかし、人がいないことが少し寂しいとも思う。
人といることで嫌になることもあるが、誰かを好いたり嫌ったりするくらいに人間は人を求めているものなのだろう。
ぼうっとしているとよく仲が良かった人の顔が浮かんでくる。
姉さんや利奈。
そして別にそこまで仲が良いわけでない知り合いの顔も浮かぶ。
考え事をすれば、考えるのは他人のことばかりだ。
夢ではもう会えない人々がせわしなく動き回る。

「んー?」
記憶の中に見覚えのない人間がいた。
黒い長髪。
黒い服。
会った記憶はない。
この世界に人はいないし、前いた世界でもこんな人と会った記憶はない。
「妄想?」
人を求めるあまりに架空の人物を思い描いたのだろうか。
気になる。
でも心当たりがないので思い出せない。
存在感のある人間のように思う。
前の世界であればきっとスペシャルなカリスマ魔法使いに違いない。
しかしどうしてそんな人のことを思い出せないのか不思議だ。
まあ、気にしないでおこう。

もう人に会えないこと。
それは残念だ。
後悔もしている。
しかし、同時に失った代わりに得たものがチャオでよかったとも思った。
このチャオの世界でなら希望を持って生きられる。
そう僕は思った。
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感想コーナー
 Mr.S  - 10/7/16(金) 22:08 -
  
感想があれば、どうぞ。
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読ませていただきました
 チャピル E-MAILWEB  - 10/7/17(土) 8:54 -
  
設定が面白いですね。
他人に情報を送りつけることの出来る「魔法」というアイテムを持ち出すことで、一人称による描写が真実なのか、それとも誰かに植え付けられた嘘なのか分からないままに話が進んでいく。
最後の一見投げ出したかのようなオチも、認識の不確実さをイメージさせるようで不気味です。
もしかすると、異世界への扉を開けたときから主人公は自分で自分に幻影を見せ始めたのかもしれないし、あるいはデノシカクファウロッセの空白のページが、そのトリガーだったのかもしれないし、もしくはずっと前からそういう幻想に取り憑かれていたのかもしれませんし。

私たちも、誰かと情報をやりとりしながら生活しているわけですけど、もしかしたら、どこかに嘘の情報が紛れ込んでいるのかもしれない。
利奈がそれとわかるように魔法を使ってくれていたときは、まだ主観と客観の境目が明確だったのに、一人の世界に行ってしまったとたん、それを裏付けるものが何一つなくなってしまう。そこでチャオが出てくることにも、何らかの意味がありそうなものですが……うーん。

作品自体にどれが解釈として正しいのか分からなくするようなトリックが紛れ込ませてあるために、自分のこの感想も、こんなあてずっぽうなことを書いてていいのかなあと不安になってきましたです。
こういう作品は、感想を書きづらいです><
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Re(1):読ませていただきました
 Mr.S  - 10/7/17(土) 18:25 -
  
>設定が面白いですね。

いざ書いてみたら「魔法」の設定が想像以上にうまく機能して驚いた記憶があります。
いわゆる「信頼できない語り手」の話に挑戦した結果、うまくいったと思ってます。


>作品自体にどれが解釈として正しいのか分からなくするようなトリックが紛れ込ませてあるために、自分のこの感想も、こんなあてずっぽうなことを書いてていいのかなあと不安になってきましたです。
>こういう作品は、感想を書きづらいです><

作者としてもあれこれ喋ると受け取る側の解釈を狭めてしまいそうで、どう書けばいいかわからないです……。

ともかく、感想ありがとうございました。
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