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シャドウの冒険3 第三章 〜半透明〜 二十五話
 ダーク  - 10/1/2(土) 21:34 -
  
 どうしたらこんな形になるんだ、と思いながらマッスルは、驚異的な高さを持つ沢山の絶壁の下を歩いていた。周囲は暗く、ところどころに差し込んでいる日の光だけが道を認識する助けになっていた。
 よくよく考えたら、こんな入り組んだところだということは解っていたのに、方位磁針も持たずにやってくるなんて愚かだった。さらに、現在地も全く解らない上に、仮にこのまま西の方角に行けたとしても偶然そこにルークがあるなんてとても思えない。
 だが、バウスはそんな俺の心配をよそに謎の30×40センチくらいのボードのような機械を取り出して、方角と現在地、そしてルークの位置まで機械に映し出した。機械に映し出されているのは、クローゼス大陸の輪郭と、そのクローゼス大陸におけるルークの位置にある逆三角形と、現在地を表す点滅した四角形である。
 バウスは天才的な創造力がある、ということに気付いたのは最近のことだった。バウスの背中についているホールボールは、俺を含めた仲間達のものとは少し見た目が違う。おそらくは自作ではないかと俺は思っている。ホールボールの仕組みなんて俺は知らないが、たぶんそれは俺が無知だからではなく、ホールボールの仕組みが複雑だからだ。学校の先生も大雑把にしか解らないといっていた。それに、バウスが作れるものはホールボールだけではなく、今手に持っているようなボードだったり、光線銃だったりする。バウスは光線銃を使ったことがないが、使わない理由は俺にだって解る。銃を持っているということは相手を殺す覚悟の表れで、それは戦闘に加わることを意味する。つまり、銃を持つということは殺されてもいいという覚悟の表れにもなるのだ。本人にその気がなくても、敵からはそう判断されるだろう。バウスはそのことを解っているのだ。
 マッスルはバウスに畏怖の念を抱いた。バウスは敵意がないと判断されつつも、実は戦っているのだ。いつも俺たちが戦っているときには機械を操作している。何の作用があるのかは解らないが、意味のないことをしているなんていうことはないだろう。
 ラルドもおそらくは気付いているだろう。バウスの機械を気にしている様子が見て取れる。ラルドの場合は、戦いに参加できない悔しさから、バウスのその密かな戦闘に羨望を持っているのかもしれない。
「そろそろじゃな」
 静かな空気が一度に暴れだしたように感じて、マッスルは驚いた。バウスが立ち止まってモニターを見ながら言ったのだった。
「どうした?」
 ラインがバウスのモニター画面を覗くが、特に変わった様子は見られないといったように首をかしげた。
「そろそろスーマに会ったところだね」
 そうラルドが言って、マッスルははっとした。俺はスーマと会った場所に来るのを楽しみにしていたのに、いざこの場所に来てみたら意識から外れていた。余裕がなくなってきているのかもしれない。これはあまり良くない兆候だ。
 バウスがうなずいて、先程のモニターとは同じようなサイズだが少し違うモニターを取り出して、マッスル達にそれを見せた。そこに映っていたのは今マッスル達がいるこの場所に立っているスーマの姿だった。以前遭遇した時の写真のようだった。写真の中も暗いが、スーマの姿はよく見える。
「本当は動画を撮りたかったのじゃがな。あの時は機械が動かなくて、仕方なく原始的なもので撮ったのじゃが」
 写真の中のスーマは無表情で体と顔をこちらに向けている。その様子は、何事にも動じない、まさに神といわれてもおかしくないような雰囲気である。神秘的という言葉がこれほど当てはまるチャオはなかなかいないじゃろう、とバウスは言った。
「あ、すまんな」
 バウスはそういってモニターをしまった。
「足止めしてしまったな。行こう」
 バウスがそう言ってから、少し時間を空けてマッスルはうなずいた。
引用なし
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