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シャドウの冒険3 第三章 〜半透明〜 二十六話
 ダーク  - 10/1/3(日) 18:02 -
  
 小さな山の麓から出ていた赤い光線は、シャドウ達が光線から10メートル程度の距離まで来ても依然塔のように空へと伸びていた。高さが果てしない円柱の形をしたこの光線を目の前にして、シャドウ達はどうしたものかと光線を見上げていた。
「どうしたものか」
 と、実際にシャドウは口に出してみるが、状況はなんら変わりない。口や文章に表して見て初めて気付くこともあるものだが、どうしたものかなどと口に出しただけで状況が理解できるのならば苦労はしない。
「上の方でも見てこようか?」
 ナイリアがシャドウに尋ねる。シャドウは肯定し、飛び立つナイリアを見送った。
 ナイリアは瞬く間に空へ吸い込まれていき、地上からは点にしか見えなくなった。それをナイツが心配そうに見上げているが、ナイリアはあっさりと戻ってきた。
「途中で途切れてたよ。もしかしたら見えないだけかもしれないけど」
 シャドウはうなずき、またどうしたものかと考えた。この光線は触っても平気なのだろうか。しかし、危険かどうかを確かめるのに手を突っ込むなんて馬鹿げている。間接的に何かをするべきか。いや、外的な刺激を与えるだけで爆発する可能性もある。これは変化を待つのが得策だろう。何かの囮かもしれない、ともシャドウは考えたが、赤い光線に変化が現れたのはそれからすぐだった。
 赤い光線はその直径をゆっくりと縮めて行き、ついには消滅した。そこには赤い光線が現れる前の光景とおそらくは同じであろう光景が広がっていた。
「なんか拍子抜けしちゃうな。何もなくて良かったけどさ」とナイツが言う。「ルークに戻る?」
 そういったナイツは急に目を大きく開いて、驚いたような顔で先程まで赤い光線が出ていた地面を見る。その様子を見たシャドウとナイリアがナイツの顔を見る。
「どうした」
 シャドウがそう尋ねると、ナイツは見ていた地面に近づいた。
「声が聞こえる。何か喋ってる」
 ナイツは鋭い風の魔法でその地面の表面を削り取り始めた。シャドウとナイリアにはその声が聞こえなかった。だが、ナイツは特に耳がいいのでナイツを信用し、二人も風の魔法で手伝い始めた。しばらく続けると機械と思われる銀色が姿を現した。さらに作業を続けると、黄土色の地面に銀色の部分が大きくなり始めた。その中にはスピーカー部分があり、その隣には00:05:40と数字が表示されている。数字が減っていくことあら、これは何かのカウントダウンだろうとシャドウは推測した。
 スピーカーからは声が発せられており、その声は男の声だった。
「やはりナイツは耳が良いようだ。気付かなかったのならば放っておこうと思っていたのだが、気付いたのならば伝えよう。そんなに周りを気にしてもそちらからは見えない。こちらからは、ある媒体を使ってそちらをモニタで見ている。が、そのようなことは重要ではない。本題に入るが、私はこのプログラムを使って機械だけの世界を作ろうと思っている。このプログラムだけでは出来ないが、他の様々なプログラムを実行することで、それは可能だ。君たちはそれを阻止しようとするだろう。それでいい。君たちは生物社会の代表として阻止しようとしてもらう。もちろん、マッスルやラインと協力しても良い。本当ならばルークに全員が来た時点で光線を出そうと思っていたのだが、まさか二手に分かれるとは思っていなかった。このプログラムの実行時間も定まっていたので、急遽予定を変更し、君たちだけに伝えることにした。だから、こちらとしても分かれたメンバーに伝えてくれると助かるのだ。私はこの時を待ちわびていた。やっと準備が整ったのだ。その時期に君たちが現れて、これは良い機会だと思った。機械による社会と生物による社会のどちらが正しいか、遂に確かめられる時が来たのだ」
 しばらくの沈黙。気分が高揚しているようだ。
「このプログラムはもうすぐ実行されるだろう。君たちは他のプログラムを停止させることで勝利を手にするのだ。しかし、私のプログラムはそう簡単には停止しない。強力な爆弾も組み込まれているから、例えばこのプログラムを物理的に壊そうとすればクローゼス大陸の半分は消し飛ばせる。私としても爆弾を爆発させるのは不本意である。今すぐこちらから爆発させることも出来るが、そんなことはしない。さて、そろそろ時間だ。次のプログラムはクローゼス大陸のどこかにあり、今から丁度2日後に起動する。頑張ってくれ」
 そこで言葉はブツンという音と共に聞こえなくなり、タイマーも00:00:00だ。機械は起動音のような音をたてた。見た目に変化はない。
 三人は今の言葉を聞いて、しばらく黙っていた。だが、黙っていても仕方がないので、シャドウは口を開いた。
「今のが本当だとしたら、解決すべきだろう。だが、今はとりあえずルークへ戻ろう」
 三人はルークへ戻る途中、新たな問題に対する対処法を話し合ったが、抽象的な言葉しか出てこなかった。結局、プログラムを止めるにはバウスの力量にかかっているのだ。
 ルークに戻ると、ルークはギルダンタウンのような機械だらけの町となっていた。
引用なし
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