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振り返れば、あの日と同じ坂道 チャフカ 10/3/25(木) 23:19

Re(3):振り返れば、あの日と同じ坂道 第2話 [no name] 10/3/28(日) 10:37
Re(4):振り返れば、あの日と同じ坂道 第3話 チャフカ 10/3/28(日) 10:39

Re(3):振り返れば、あの日と同じ坂道 第2話
 [no name]  - 10/3/28(日) 10:37 -
  
「坊ちゃま、塾のお時間です」
「えっ?あ、うん」


もうそんな時間か。


時計の針は、八時四十五分を指していた。


塾へと向かう、田中がハンドルを握る車の中。


「坊ちゃま」
「うん?」
「先程の曲は、ドビュッシーでございますか?」
「うん。そうだけど…田中、気づかなかった?もう、三ヶ月もやってるよ」
「すみませんでした。あの部屋は、大変な防音性がありますので」
「ふぅ〜ん」


気付か無かった。あの部屋に防音性があったなんて。まぁ、知ろうとしなかった訳だけど。

「大変、上手でしたよ」
「あ、うん。ありがと…」


そんな何気ない会話にも、車が目的地に到着すると同時に、終止符が打たれた。

「終わったら連絡するよ。多分、いつもより遅くなると思うから」
「分かりました。では」


「今日もか…面倒…」

この頃は、毎日のように塾続きだ。

受験って、そこまでしないと駄目なのか?


季節は初夏。
時折、蝉の鳴く声が聞こえる。


伊藤啓作その人は、数時間後に待ち受ける、出会いを知る由もなく、重い扉を開け放つ。


−−−続
引用なし
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Re(4):振り返れば、あの日と同じ坂道 第3話
 チャフカ  - 10/3/28(日) 10:39 -
  
宿題…多過ぎる……。
また、土日が土日でなくなるよ。


「はぁ…」

彼は、ため息をついてケータイを取り出す。
その液晶は、開くと二十三時半を知らせている。
登録してある番号の一番上になっている人に、電話を掛ける。

二回目のプルルルで、出た。

「はい」


彼は、ふっと笑う。
「やっぱり二回目で出たね。田中」
「人様を待たせるのは、良くないですからね」
「そうだね。終わったから、迎え来て」
「かしこまりました」


七、八分もすると迎えが来た。

「あっ、田中。コンビニ寄ってくれる?」
「すみません坊ちゃま。今日は、旦那様より、すぐに帰らせるよう言われております」
「えっ、父さんが?」


なんだろ。
この前のテストはまあまあだったし、ピアノも練習してる。


彼には、父親に叱られる理由が思いつかなかった。

いや、父親に叱られるだろうという考えしかなかった。


車の中で、眠っていたのだろう。意識がぼんやりしている。


「坊ちゃま。着きました」
「う、うん……えっ?」
「遅かったな」


彼は、目の前に父親がいたから驚いたのではない。
ましてや、左手にある携帯電話の液晶が日を跨いて数分経ったのを知らせていたのに驚いたのでもない。


目の前に、周りの空き地には遠く似つかわしくない見るからに科学の結晶と思える装置があったからだ。


−−−続
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