●週刊チャオ サークル掲示板
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☆★☆週刊チャオ第331号(7月4週)【表紙】☆... チャピル 08/7/27(日) 00:00
☆★☆読みきり作品☆★☆ チャピル 08/7/28(月) 0:00
チャオの森と女の子 スマッシュ 08/7/28(月) 0:06
「夏休みの監獄」 ホップスター 08/7/28(月) 0:06
崖の上のポヨ チャピル 08/7/28(月) 0:24
アビリティ占いのうた 08/7/28(月) 0:25
コードCHAOを抹殺せよ ろっど 08/7/28(月) 9:05
(1) ろっど 08/7/28(月) 9:06
(2) ろっど 08/7/28(月) 9:07
(3) ろっど 08/7/28(月) 9:07
(4) ろっど 08/7/28(月) 9:08
(5) ろっど 08/7/28(月) 9:08
(6) ろっど 08/7/28(月) 9:09
(7) ろっど 08/7/28(月) 9:09
(8) ろっど 08/7/28(月) 9:10
ニコタロ´ 〜ただのおまけマンガ〜 ぺっく・ぴーす 08/7/29(火) 17:00
☆★☆新連載作品☆★☆ チャピル 08/7/28(月) 0:00
月光のメイド 斬守 08/7/28(月) 21:42
月光のメイド 『月光のメイド』1 斬守 08/7/28(月) 21:45
月光のメイド 『月光のメイド』2 斬守 08/7/28(月) 21:46
月光のメイド 『月光のメイド』3 斬守 08/7/28(月) 21:48
月光のメイド 『月光のメイド』4 斬守 08/7/28(月) 21:50
☆★☆現在連載中作品☆★☆ チャピル 08/7/28(月) 0:00
Lord 今までの「道」すじ キナコ 08/7/28(月) 21:50
Lord 11話 キナコ 08/7/28(月) 22:15
Lord 12話 キナコ 08/7/28(月) 22:19
Lord 不定期に載せる紹介 キナコ 08/7/28(月) 23:01
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ チャピル 08/7/28(月) 0:00

☆★☆週刊チャオ第331号(7月4週)【表紙】...
 チャピル E-MAILWEB  - 08/7/27(日) 00:00 -
  
●○発刊場所の一時変更について○●
週刊チャオをご愛読いただき、ありがとうございます。
この度はCHAO BBSがメンテナンスから復旧しない状況が長く続いているため、
ここ「週刊チャオ編集部 サークル掲示板」にて臨時の発刊を行うこととなりました。
CHAO BBSが復旧するまで、週刊チャオはこちらの掲示板に掲載されます。

基本的にはCHAO BBSの時と同様に週刊チャオを利用していただきたいのですが、実際のところ、いくつかの動作に違いがあります。
これについてはろっどさんが週刊チャオ331号発刊に関するお知らせにまとめられているので、こちらをご覧下さい。
最も重大な違いは発言の修正が不可能であることですので、これに関して、もしも不安がある方は、投稿練習用ツリーをご利用ください。

次号の発刊は8月2日(土)になる予定です。CHAO BBSが復旧すればそちらへ、しなければこの掲示板での発刊となります。
仮に土曜日までにCHAO BBSが復旧した場合も、次の週刊チャオが出るまでは、このツリーを利用してください。
CHAO BBSが復旧したときには、チャオBの誌面上にて、速やかにこちらの掲示板での臨時措置についてを説明する予定です。

今回の措置に関して意見を下さったたくさんの方々へ、この場を借りて感謝を申し上げます。
ついでに、ふうりんやかいろくんによるいつもの表紙も、書き貯めてあるので掲載します。


【ふうりん】「まれに届くことのある、投書の紹介です。
       『ネタがないです。どうすれば。』
       えーっと、やけにダイレクトな質問ですね・・・」
【チャピル】「確かににネタが見つからないときは辛いですもんね!わかります!
       産みの苦しみ、なんて言えるのかわかりませんが、そんな感じ」
【かいろ】「だが、ネタを求め続けている限り、お前の眼前に必ず道は開けるのだああああああ!!!!!」

【チャピル】「どんな小さな思いつき、それ自体ではとても一つの作品にはなれそうには無いものでも、
       とっておくといいことがあるかもしれません。
       この世界では、1+1が3や4や5になることもあるのですから」
【ふうりん】「アウトプットの拠り所は、やはりインプットにありますよね。
       深く思い悩むばかりではなく、他の作品を見たり、読んだり、人とのコミュニケーションを積極的に取ったりするのも、
       発想の糸口になるかもしれませんよ」

【かいろ】「小説の書き出しが見つからないときは、きっと五里霧中。小説が完成するかどうかすらわからない状況だろう!!!!!
      しかし、お前はそのステップを乗り越えなければならない!!!!!
      いくら苦しくても、辛くても、必ずできる!!!!
      小説を完成し終わって、大きく伸びをする自分をイメージしろ!!!!!!!
      苦しみがあるから感動がある。それはお前の一生の糧となる!!!!!!!!!」

【チャピル】「今週はなんか、良いこといっぱい言いましたね!」
【かいろ】「言ったな!!!」
【ふうりん】「・・・いや、確かに言いましたけど!!」

※チャピル・・・週チャオの発刊をしているひと。気分的に今週は特別号じゃない。
※ふうりん・・・納涼感のある名前のチャオ。チャピルとの関係も微妙。
※かいろ・・・熱血が取り柄のオモチャオ。夏にでくわすとその熱により不快指数が上昇する。

▼週刊チャオとは▼
チャオBBS内で、自分の考えたチャオに関する小説などを、みんなが書き込むツリーのことです。
週チャオに小説を載せるのには、何の資格も要りません。
また、小説以外にも、詩、俳句、歌など、文学作品なら何でもOKです。

なお作品への感想は上の「感想・伝言ツリー」へお願いします。

▼作者の方へのお願い▼
・一回で完結する作品や、詩、俳句、歌などは『☆★☆読み切り作品☆★☆』にレスをして書いてください。
・新たに連載物を始めるときは『☆★☆新連載作品☆★☆』にレスをして書いてください。
・現在連載中の作品は『☆★☆現在連載中作品☆★☆』にレスをして書いてください。

・読者の人が見やすいよう、短文でいくつもレスを付けて続きを書いていかずに、なるべくひとつの発言の字数制限いっぱいまで発言の修正を利用し追加しましょう。
・見やすくするために、2つ以上のレスを使うお話の場合、多段レスをせずに2つ目以降は全て1つ目にレスするようにし、一段になるようにしましょう。

・感想をくれる人のために、なるべくその週に予定しているお話を全て書いてから感想を募集するようにしましょう。

●○週刊チャオのQ&A○●

【私も週刊チャオに、小説を書きたいのですがいいですか?】
週刊チャオは誰でも、いつでも参加できるツリーです。
参加は自由なので書き込むのに許可や登録はいりません。
いい小説ができたら、ぜひ一度書いてみてください。

【週刊チャオのツリーはいつ立ちますか?】
基本的には毎週土曜日の0時、つまり金曜から土曜になった時です。
ただし、立てる人の都合等により遅れることも早まることもあるので、遅れたときはごめんなさい。

【小説を書きたいけど、次の発行日まで日にちがあり、まてません。】
週刊チャオは次の号が立つまでの一週間有効です。
月曜が来たらおしまい、ページが変わったらおしまいなんてことはありません。
もし小説が水曜日に完成したら、前の土曜に発行した週刊チャオを利用してみましょう。

【今日途中まで書いたけど疲れちゃった。まだ明日続きを書く予定なんだけど…】
そんな時はタイトルの中に「未完成」や「今週続きあり」などをいれておくのが読者
のみなさんのためにいいでしょう。あまり無理をせず自分のペースで書いていきましょう。

【書いた小説の著作権についてはどうなるの?】
基本的に各作者にありますが、週刊チャオ編集部に限って無断転載ができるものとします。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.1) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

☆★☆読みきり作品☆★☆
 チャピル E-MAILWEB  - 08/7/28(月) 0:00 -
  
一回限りのお話、詩、短歌、歌などの投稿はこちらへどうぞ。
詳しくは、週刊チャオ表紙の「作者の方へのお願い」を、ご覧下さい。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.1) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

☆★☆新連載作品☆★☆
 チャピル E-MAILWEB  - 08/7/28(月) 0:00 -
  
新たに連載を開始される方はこちらへどうぞ。
詳しくは、週刊チャオ表紙の「作者の方へのお願い」を、ご覧下さい。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.1) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

☆★☆現在連載中作品☆★☆
 チャピル E-MAILWEB  - 08/7/28(月) 0:00 -
  
連載作品の2回目以降はこちらへどうぞ。
詳しくは、週刊チャオ表紙の「作者の方へのお願い」を、ご覧下さい。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.1) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
 チャピル E-MAILWEB  - 08/7/28(月) 0:00 -
  
これより下に小説を書かれた方は週刊チャオの表紙を一度よく読んでから
週チャオに参加してみてください。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.1) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

チャオの森と女の子
 スマッシュ  - 08/7/28(月) 0:06 -
  
女の子は、チャオと遭遇できた。
そのチャオとかいう生き物は子供しか遭遇できないらしい。
だから、大人はチャオと一緒に遊ぶことはできない。
女の子はそれを知っていた。
女の子はもう自分が子供ではなくなることも知っていた。


ねえ、私、もうそろそろ子供じゃなくなるんだ

チャオは返事をしない。
チャオは人間と違うから、日本に住んでいたってこれっぽっちも日本語を話せないのである。
ただ、通じないなりに話は聞いていて、なんとなく理解している。
女の子はそうであると信じている。
石に腰かけて川に足をつけ、水面を見ている女の子の話を、チャオもまた座って水面を見たり、女の子もそうしているように相手の顔を時折見たりしながら聞いているのである。


電車とかの料金なんかは、中学生になってから大人料金
でも、他のものでは中学生料金だったり、子供料金だったり
大人とか子供ってよくわからないよ


そう言って女の子はチャオに微笑みかける。
チャオはそれに同意するかのように首をかしげて、頭の上の球体をクエスチョンマークにしてみせた。


君に会えるってことは、まだ私は子供なんだよね

でも、女の子は気付いていた。
昔、女の子が誰がどう見ても子供であった頃、女の子はもっとチャオと遊んでいた。
川の近くに来れば、水をかけあった。
木がたくさんあれば、追いかけっこをした。
走って転んでは、心配し合った。
いつの間にか女の子は遊ばなくなった。
川を眺めて、木漏れ日を眺めて、ゆっくりと歩くだけになった。
増えるのはチャオに語りかける数のみだ。
女の子は、チャオが遠くなっているのを感じた。
本当の距離ではなくて、お互いの関係性としての距離だ。
大人になるとチャオに遭遇できない、というのはきっとそういうことなのだろう。


きっと、もうすぐ会えなくなっちゃうんだね

女の子は自分の腕を見る。
そこには時計があって、時刻を確認することができる。
中学生になって年齢が増えた時に必要になるからと親がくれたものだ。
その円がついたリストバンドはもうすぐ女の子に帰るべき時間であることを示していた。


もう時間だから、帰るね。

そう言って立ち上がる。
チャオは笑顔で手を振った。
女の子はまた明日も会いたいと思った。


それじゃ、じゃあね。

それだけ言って、手を振り返して森から去った。
いつもなら、またね、と言うのだが、今日は違った。
またね、が叶わないのが明日かもしれないと思ったのだ。
そうして、その人はチャオに遭遇できなくなったのであった。

引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; ja; rv:1.8.1.8pre) Gecko/20071012 lol...@p222.net220148012.tnc.ne.jp>

「夏休みの監獄」
 ホップスター WEB  - 08/7/28(月) 0:06 -
  
現実とは、残酷なものである。
ギャルゲーのように女の子はやって来ないし、少年漫画のように突然特殊能力が備わる訳ではない。

・・・そして、今年も夏はやってくる。


                    【夏休みの監獄】


「あ゛ーっ!!」
少年は声にならない叫びをあげながら畳の床に寝転がった。

彼は現在中学2年生。
趣味は、ゲーム、漫画、アニメ。つまるところ、オタクである。

そんなオタク少年にとって、長野の田舎への帰省は、まるで拷問のようなものである。

祖父の家、当然ゲーム機もパソコンもない。見たいアニメなんかほとんどやってない。
たまに思い出したように夕方に放送されるアニメだって、3ヶ月前に東京の自宅で見たものだ。

「ちくしょう、せめてパソコンさえあれば・・・」
動画サイトである程度アニメをフォローできるものを。

一応、自宅の録画予約はセットしてある。だが、完璧ではない。オタクの前に立ちはだかる、野球中継延長という名の魔物が棲んでいる。
別にスポーツを否定するつもりはないが、彼にとっては9回までテレビ中継をやる必要性を微塵も感じなかった。


『さぁ9回の表2アウト、◎◎高校追い込まれました!バッターは代打の田中!』
・・・野球といえば、高校野球の中継が部屋に置いてある小さなテレビから映し出される。
興味はないが、かといって他にチャンネルを回してもつまんないドラマの再放送かどうでもいいワイドショーしかやってないのだから仕方が無い。

「そういえば、明日なんだっけ、長野の△△の試合。」
「ああ、そうねぇ。でもどうせ今年も"出ると負け"でしょう?」
「そうよねぇ、ほほほほ・・・」

ふすまの向こうから、母親と祖母の会話が聞こえる。


毎年毎年繰り返される『夏の拷問』。期間は約1週間。もちろん、何も対策をしてなかった訳ではない。
DSと携帯電話で何とかやり繰りしようとしたのだが、・・・2日で飽きた。
思い出したようにやろうとしたら電池切れになる始末。それも同時にだ。という訳で、現在充電中。


とりあえず街に出れば、本屋とゲーセンで何とか持ちこたえることはできる。
が、家の近くのバスは去年乗客減少で廃止になり、外に出る手段はマイカーしかない。

この家を囲む四方の山が、監獄の檻に見えたことも一度や二度ではない。
そして、毎年この時期になると、自分がオタクであることを恨むのである。

彼とて、小さい頃は裏山で昆虫採集をしたり、目の前を流れる小川で水遊びをして過ごしたものである。
が、もうそんな年じゃないし、そんな遊びはとっくに飽きていた。


・・・しかし、暑い。
いくら長野の山に囲まれた場所といっても、夏の昼間の暑さは東京とほとんど変わらない。
やや乾燥していて、あの独特のジットリくる湿気があまりないのが救いではあるが、それがなくなったところで暑いことに変わりはない。

そして、自宅ならば部屋でエアコン全開にすればいいのだが、この家にはエアコンというものが存在しない。
扇風機が居間と寝室用に2台あるだけである。
湿気がないため、扇風機の目の前に座っていれば確かにエアコンは不必要なのではあるが、扇風機はさっき書いたように2台しかない。

ちなみに、真冬には氷点下15度になることもあるが、石油ストーブが2台フル稼働。やはりエアコンの出番は無いのである。


そんな暑さの中、彼は団扇1本で自らを扇ぎながら、暑さでボーっとしている頭を必死で回し、暇つぶしの方法を考えていた。


「そういえば、地区長さんとこの息子さん、××大学に受かったらしいわよ?」
「あら、本当なの?案外頭いいのねあの子。」
「それがどうも推薦らしくて、・・・」

未だに家同士の付き合いが強固に残っている田舎である。噂の伝達速度は、ネットに流れる新作ゲームのタレコミ情報と変わらない。
・・・そして、都会なら個人情報流出で裁判沙汰になりそうな内容まで普通に流れるのである。


そんなことをボーっと考えているうちに、ある考えが浮かんだ。
「・・・久しぶりに山ん中行ってみるか・・・」
昆虫を追いかけるようなことはさすがにしないが、まぁ散歩で時間潰しにはなるだろう。
そう思い、立ち上がると、母親に「散歩してくる」と言い、外に出た。


小さい頃、遊んだ小川。今は歩いてまたげる。
橋は架かっているが、敢えて川原に降りて、歩いて渡る。これは暇つぶしなんだから。

小川を越えれば、小さな水田が山と川の間の狭い平地に一列に並んでいる。
その畦道を歩いて越えれば、もう山だ。そのまま、樹木に覆われた坂道へと入った。

「ん、こんなに歩きにくかったっけ…?」

小学生の頃、昆虫採集なんかで遊びに入った頃に比べ、雑草が生い茂り、歩きにくくなってるような気がした。
本来ならば、成長しているはずなので、歩きやすくなってるはずなのに、である。
一瞬彼は、自分がインドア趣味に走ったが故の体力低下か、と疑った。

なお、これは彼が後から聞いた話であるが、実はこの山、村で林業を営む男性が管理していたのだが、高齢で管理ができなくなってしまい、荒れてしまったのだという。


とはいえ、ここで引き返しては暇つぶしにならない。まだ10分ぐらいしか経ってないのだ。
記憶を頼りに、山を歩き続ける。

山といっても、小学校高学年ぐらいであれば普通に歩いて登れる。登るというより、歩くという表現が適切なぐらいである。


さて、頂上へちょうど半分といったところ。彼は、登山道のようなものに突き当たった。
元々名前も無い「ただの小さな山」なので、登山道のようなものは無いはずである。少なくとも、彼の記憶には無い。
「・・・?」

第一、管理が届かずに荒れかけている山に、登山道ができてること自体おかしい話なのだ。

『よく分からないけど、行ってみよう』
ちょっと考えた末に、コースを変えることにした。折角の暇つぶし、ただ知ってる場所へ歩いていって戻るだけじゃつまらない。


山の斜面を横切るように、木々の中を抜ける1本の道。人が2人並んで通れるぐらいの幅。
それをさらに10分ぐらい歩いていくと、とある景色に出くわした。

「・・・!?」

そこには、小さな湖―――いや池、と表現した方が適切か―――があった。
無論、彼の記憶に、こんな池は無い。

木が生い茂る中に突然現われる池。それはまさに、砂漠の中に現われるオアシスのよう。
そして、そこにいたのは―――


「チャオ・・・?」


そこには、ゲームキャラのはずの、チャオがいた。
チャオが数匹、そこを住処にしているように、飛び交ったり、歩いたり、休憩したり・・・

彼は、恐る恐る、その池に近寄ってみた。
チャオは様子を何一つ変えずに、相変わらずの仕草を続けている。

彼はそのまま池のほとり座ってみると、そのうちの1匹がこちらに寄ってきた。
そのチャオは不思議がることを全くせず、彼の周りを飛び回る。


未だに訳が分かっていない彼だが、とりあえず休憩するにはちょうどいい。
しばらくチャオの様子を眺めていることにした。

相変わらず暑い。が、山の中であることと、水場ということもあるだろうか、この周りは少し涼しかった。


「・・・あ、懐かしい顔。久しぶり。」
しばらく座っていると、突然、女性の声がした。
驚いて後ろを振り向くと、そこには自分と似たような年の少女が。
「え?誰・・・ですか?」
久しぶりと言われても、彼の記憶には無い。当然、こう返す。
「そうね、もう5年以上も経ってるから、面影ないかな。」
仮に自分と同い年だとすれば、遅くても小学校低学年、という事になる。そこから中学生なのだから、面影がなくても仕方が無い。

さらに彼女は、こう続けた。
「・・・ここは、ここではない世界・・・」
「ここではない世界・・・?」
「だけど、そろそろ扉が閉まる・・・また会いましょう・・・」
そう言うと、クルリと後ろを向いて、歩き出した。

「え?ちょ、ちょっと待てよ!!」
相変わらず訳が分からない彼だったが、彼女はそのまま歩いていき、彼の視界から消えた。

追おうとして立ち上がり、振り向く。その瞬間、チャオが消え、池が消え、そこには何もなくなり、ただなだらかな斜面に木々が並んでいるだけになった。

「・・・・・」
少女の姿も見当たらない。
幻だったのか、と思い、腕時計を見直すと、2時間が過ぎていた。
「マジ!?」
急いで斜面を駆け下りると、見慣れた風景が広がった。実家の前だ。


結局、何が起こったのか、よく分からないまま、彼の暇つぶしは終わった。
母親には「何してたの?」と聞かれたが、適当にごまかすと、それ以上聞くことは無かった。

「そういえば、こっちに同い年ぐらいの女の子の知り合いいたっけ?」
「さぁ、いないんじゃないの?」
それが、母親の返答である。彼はそれっきり、そのことについて考えるのをやめた。


その後も別段特別なことが起こった訳でもなく、お盆明けには東京の自宅に帰ることになる。
夕暮れ、大荷物を抱え、自宅のあるマンションへ入ろうとする。

その様子を、隣のビルの屋上から、笑いながら見ている少女がいた。あの、チャオの棲む池に現われた彼女である。

「・・・よく言うでしょ?事実は小説より奇なりって。ふふふ・・・」

この後、彼に波乱の2学期が訪れることは、まだ彼女しか知らない。


<おわり>
引用なし
パスワード
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 2.0.50727)@122x210x150x178.ap122.ftth.ucom.ne.jp>

崖の上のポヨ
 チャピル E-MAILWEB  - 08/7/28(月) 0:24 -
  
崖の上のポヨ

チャオガーデンの、遥か上方にいくつも連なる崖の、さらに上の方。
そこに、1匹のチャオがいました。
名前はまだありません。

このチャオはついちょっと前に、オヨギタイプに進化したばかりでした。
そして、最近、おなかが出始めてきたのを気にしていました。

「チャオ、いつもゴロゴロしてるから、デブチャオになったのかも! それだけはいやちゃおー!!」
そう言うとこのチャオは、崖の上に寝転がってじたばたと手足を振って、きゃあきゃあわめきだしました。

ちなみに、このチャオがどうしてこんな崖の上にいるのかというと、ひとえに、ビビりだからでした。
崖の上のタマゴから生まれたのはいいものの、そこから下のほうに飛び降りるというのが、怖くてできなかったのです。


そんなわけで、そのチャオの友達は、
「ぽーよ、ぽーよぽよ、さかなのこー」
崖の上まで飛んでこれる、このガーデン唯一のナイツチャオだけでした。

というわけで、ナイツチャオが、崖の上の、じたばたやってるチャオの所へやってきました。
「がけのー、うえにー、やあーってきたー」
なにやら奇妙な歌をくちずさみながら。
わめいていたチャオも、そのヘンテコな歌をきいて、わめくのをやめ、ナイツチャオにけげんな顔をみせました。

「何ちゃおか? それは?」
「ぽーよ、ぽーよぽよ、ふくらんだー」
ナイツチャオは、そんなチャオのようすなど、こころにも留めず、歌い続けます。

「まんまるおなかの、おんなのーこ」
「きっ、キサマっ!!」
名無しのチャオは、今や顔から火が出んばかりの思いでした。
もちろん、ナイツチャオが自身のおなかの出ているのをブベツしたのだと思ったのです。
名無しのチャオは、ナイツチャオを崖の外にけっとばしました。
「いたっ!」
ナイツチャオが叫ぶのも気にせずに。

でも、そのとき名無しのチャオに、思ってもみないことが起こりました。
崖の上からけおとしたと思ったナイツチャオが、実はその時ちょうど、名無しのチャオの足をつかんでいたのです。
名無しのチャオは足を引っ張られ、ナイツチャオと一緒に、ガーデンの池の中へと落ちていきました。

チャオは、その時初めて、落ちるというのがどんなに怖いことなのか理解しました。
今まで何度も崖の上からおりようとイメージトレーニングしてきた、そのどのトレーニングよりも怖かったのです。
じゃぼん

大きな音と水柱とともに、2匹は水中へと押し込まれました。
名無しのチャオは、その中で、自身がサカナになるのを感じました。

名無しのチャオは、すぐそばによこたわるナイツチャオをそのひれで救いあげました。
そのまま、2匹とも、原っぱへとよじのぼりました。
ナイツチャオは、けふんけふんと、口に含んだ水を地面にはきだしてから、言いました。
「ちゃおちゃおちゃっちゃーちょぺろぺ?」
「何ちゃお?」

でも、名無しのチャオが何度よびかけても、ナイツチャオは、わけのわからない言葉しかしゃべってくれませんでした。

そのうちに名無しのチャオは、自分の目線が、妙に高い位置にあるのに気づきました。
名無しのチャオとナイツチャオは、ちょうど同じぐらいの背の高さだったのに・・・
何気なく下を見た名無しのチャオは、口をあんぐりとあけました。
なんとまあ、驚くべきことに、すごいですよ? 名無しのチャオは、女の子の体になっていました。
大事なことなのでもう一回言います。女の子の体になっていました。

「ちゃおー!? こ、こ、これは一体、誰の陰謀ちゃおか!?」

名無しのチャオは、おそれ、おののきました。
名無しのチャオはもちろんのことオヨギタイプでしたから、もちろんのことサカナになるイメージトレーニングぐらいはすませていたのですが、
もちろんのこと女の子になるイメージトレーニングはまだしたことが無かったんです。

名無しのチャオ、いや、今は女の子の名無しのチャオははっとしました。
これは全て、ナイツチャオの歌の通りなんだと。そして歌には、まだ続きがあるふうだったことも、女の子は知っていました。
女の子は、急いでナイツチャオを探しました。
しかし、側にいたはずのナイツチャオは、どこかわからないところへ行ってしまっていました。
女の子は、どうしたらいいのかわかりませんでした。

どこかの誰かの小説みたいに、夢オチであることを期待しました。
で、ほっぺたつねってみたけど、何も起こりませんでした。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.1) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

アビリティ占いのうた
   - 08/7/28(月) 0:25 -
  
(元ネタ、バスト占いのうた)

Sランク Aランク

Bランク Cランク

Dランク Eランク

データの改造

7組のアビリティを選ぶとしたら

キミならどれが好き?


「S」

Sランク好きは自分に素直

思ったことを隠せない でも

理想と現実だいぶ違うから

夢から覚めなさい


「じゃあA」

Aランク好きは少しお利口さん

Sランク好きより

少しはお利口

それでも まだまだ

夢見がちだから 大人になりなさい


「じゃあB」

Bランク好きは だいぶお利口

Sランク好きより

いくらかCOOL

そこまで現実わかっているなら

もうひと頑張りでーす


「じゃあC」

Cランク好きは正解に近い

もっとも限りなく正解に近い

でも Cに満たない

チャオも多いので

油断は禁物でーす


アビリティチョイスのセンスで

その後の人生は

大きく左右されます

まるで左右のアビリティ(?)のように


「D!」

Dランク好きは中途半端

好みとしては中途半端

「なくてもいいけど

 ちょっとはあったほうが……」

そんなの微妙すぎ〜


「E!」

Eランク好きは卑屈すぎます

自分に自信がない証拠です

アビリティは決して怖くなーい

勇気を持ってください


「じゃあ……」

データの改造をしている人は

たかけりゃいいって

もんじゃないことを

肝に銘じておいてください

チャオの敵ですよー!


いろんなアビリティ

見てきたけれど

最後に私が言いたいことは

チャオをアビリティで判断するのは

良くないことですよー!

ララララ……
引用なし
パスワード
<Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; AOL 7.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1....@cache-tkp-aa02.proxy.aol.com>

コードCHAOを抹殺せよ
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:05 -
  
前書きです。
どうもこんにちは、ろっどです。サークル掲示板へ一時的移行してから、初、となりますね。個人的には、あと二人くらい小説を投稿して終わりなのではないかと不安に思っております。その場合の対策も作らねばなりません。

雑談はさておいて、夏休みスペシャルの読みきり第一号、
コードCHAOを抹殺せよ です。
タグなんて使いません。きっかり4.2kbで統一してあります。本当はチャオBで投稿するはずだったのですが、サークル掲示板となってしまったのです。

ちなみに今のところもうひとつ、読み切りが完成しております。ボクとしてはそっちの方が良い出来なのですが、今回はこちらをお楽しみください。
引用なし
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(1)
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:06 -
  
 若くしてGUNに配属された仲神春樹。持ち前の戦闘技術を生かし、彼はとある人物の暗殺に早くも成功する。
 その実力から、新米にしては波風が強かったが、彼はそれに負けない程の強い精神を持っていた。周りから見ても分かるほどに、彼は自分に自信があった。
 いわく、「自分にこなせない命令などひとつも無い」と。

 そんな中、彼、仲神春樹にひとつの命令が下される。


 ――謎の生命体、「コードCHAO」を抹殺せよ。


 『コードCHAOを抹殺せよ』 作:ろっど


 1 仲神春樹とそれを取り巻く状況


 仲神春樹はいつも一番だった。勉強でも一番、運動でも一番、彼に出来ない事など無く、苦手なものなど一つも無かった。
 もちろん、彼の性格に由来しているからでもある。彼は完璧主義者なのだ。だが、それを成し遂げる努力の出来る人間性が彼の「一番」たる理由だった。

 強いて欠点を挙げれば、社交性ゼロ。その一点に絞られる。

「もっとやさしければ良いんだけどねー」
「だよね。あ、仲神くんよ。きゃー、相変わらず冷たい顔」

 そんな彼は現在、上司に呼ばれていた。大切な命令があるとの事。訓練を終えた彼は休養をとっていたのだが、突然訓練教官が大きな態度でやって来て、その旨を伝えたのが最新の記憶である。
 GUN関東本部の中で、仲神春樹は「研修生」という立場にいた。これは彼がまだGUNに入って二週間しか経っていない証であり、しかしその成績からこうやって任務を与えられる事も数多くある。
 こんこん、と重たい鋼の扉をノックする。扉越しに返って来た声は、くぐもっていた。

「失礼します」

 きびきびとした動作で春樹は扉を開けた。その部屋は立方体に作られた完全防備の一室で、無駄なものを一切省いた、まさに鉄格子の部屋である。
 さっと敬礼してから、春樹は直立不動の姿勢で待った。

「君に任務がある」

 眼鏡を掛けた切れ長の目を持つ上司は、GUN副司令官。単刀直入に言えば、関東本部で第二に偉い存在だ。
 春樹はそのままの姿勢で眉毛一つ動かさない。これ一つで一芸に秀でているといえるほどのポーカー・フェイスだった。

「コードCHAOを抹殺して欲しい。詳細はこの書類に記載されている。使用武器は倉庫から自由に取り出して良い。これはランクSの超難関任務だ。今までに部隊のエリートがBIGFOOTを使用して八十人、挑んだが全滅した。もはや君しか希望はいない」
「了解です、須沢副司令。期限はいつまででしょうか」
「一週間。それまでに任務を達成できなかった場合、他の人に任務は移される。ああ、失敗しても階級に変化は無い。これは特例任務なのだからな」


 春樹はひとまず食堂へ向かう事にした。腹が減っては戦は出来ぬ。昔の人の言葉だが、案外的を射た意見だと春樹は解釈していた。
 食堂はGUN東棟の端にある。規模の大きいそこは研修生にとっては先輩と関わり合う憩いの場所であり、春樹にとってはただのシステム、食堂という名の必須アイテム同然である。
 食堂はやはり賑わっていた。群を抜いてトップクラスの実力を持っていた春樹が与えられた訓練をクリアしたのがおよそ一時間前であるから、恐らくは今さっきクリアしたばかりの研修生が集まっているのだろう。彼は無駄のない動作でカレーライスをフロントから取ると、隅の方に席を置いた。
 辺りが静まって行く。「研修生である仲神春樹のところへ、上官が来て何かを命じた」という噂は瞬く間に広がっていた。だが、当の本人に話しかけようとする無謀な輩は誰一人としていない。

「はるき!」

 訂正しよう。たった一人だけいた。
 その女性は長い髪を肩辺りで結び垂らした日本人女性で、顔は若干整っていると言えなくもないが、若々しい輝きがある訳でもない。いわば「無難」という表現が適した女性である。
 GUN本部で自分から進み仲神春樹に話し掛けるのは禁忌(タブー)に近い。彼は百年に一度の天才児であるが、同時に百年に一度ほどの異端者だったからだ。ところが例外はどこにでもいるもので、彼女はその例外に分類される唯一人者――……。

「報告は?」
「……午前九時半、研修生訓練開始。午前十時五十二分、訓練終了。上官に呼ばれ副司令室へ行きました。これ以上は機密情報に該当するため報告する事が出来ません、軍曹」
「――機密情報(トップ・シークレット)? 研修生のあなたが保持する? まさか、そんな事あるわけ……」

 彼女の言葉を軽々と無視し、カレーライスを頬張る春樹。うむ、なかなかの味であると古風な言い回しでモノローグ的に語ってみるが、そういえば昨日もカレーライスだった。そして昨日も同じモノローグを流した気がする。春樹は脳の活性化のために、明日は違う料理を持って行こうと考えた。
 完。彼の頭の中でその漢字がどしりと現れる。これ以上話すべき事も、聴くべき事さえ何一つないのだ。当然であろう。
 しかしそうは考えなかった人物がいた。該当する人物は一人しかいない。

「春樹、人の話はちゃんと聴こうね?」
「尽力します」

 無駄な言動は省き、エネルギー消費を抑えるのが仲神春樹の仲神春樹たる特徴だった。
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(2)
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:07 -
  
 私の部下はとても無表情だ。そもそも私の階級を間違えるくせに、他の事はなんでも完璧。完璧すぎて彼が人間でないんじゃないかと思ってしまうくらいに、私の部下は何でもかんでもそつなくこなす事の出来る、文字通りの天才。
 だけど私は知ってるよ。あなたは天才なんかじゃないよね。天才の振りをしているだけ。もういっぱいいっぱいで、それでも足を引きずって歩いているだけ。
 だから私は彼を独りにはしない。きっと彼は強いから、倒れてしまった時に、手を差し伸べなければ立ち上がれない。だったら、私が手を差し伸べれば良い。それが上官として、当然ことなのだから。


 ――研修生「仲神春樹」を護衛しろ。これは第一級Sランク任務である。


 『コードCHAOを抹殺せよ』


 2 CHAOと呼ばれる謎の生命体


 上官である大倉仁恵を完全にいないものとして扱う事に決めた春樹は、まずコードCHAOについて出来る限り調査に励もうと考えた。
 分かっている情報は、コードCHAOとは身長50cmから60cm程度の水色生物で、生態は不明。相手の能力に関する証言も取れていない。分かっているのは、今まで八十人抹殺任務を遂行しようとして、殉職(じゅんしょく)。
 ――誰かにとって邪魔な者を排除する陰謀説という考えは? そして自分もその中に入っているのではないだろうか。想像は絶えない。だからこそ想像する事に意味がある。
 コードCHAOの情報はデマで、真実に辿り着いた時に昇格するという一種のシステムである可能性は? 情報がデマだった推測に基づくと、8パターン、自分を陥れる為の流れと、3パターン、自分が昇格できる流れが浮かぶ。

 ――更にもし、コードCHAOの存在が事実だった場合――

 その能力はGUN最強の兵器、72型BIGFOOTをも上回るという事に……。
 こちらからの科学的攻撃を無効化する能力が付いていると考えるのが妥当か? もっと考えれば、科学的攻撃または攻撃そのものを反射する能力なのかもしれない。
 ならば範囲は? 死角はないのか? 行動時間は? そもそも人間のとって、害のあるものなのか?
 出現場所は? 現在位置は? 民間人からの目撃情報などは一切ないのか?

 そこでやっと、春樹は書類を手に取った。予習と復習、どちらが簡単に記憶できるかと問われれば、彼は復習と答えるだろう。なぜか。記憶する事に関してのみ言えば、復習、つまり繰り返す方が効率が良いのだ。しかし事が専門的な対策となるとまた別格。予習の方が大切になる時がある。
 最善の方法は、予習を終えてからすばやく知識を読み取り、復習しながら実行に移す事。

「――生態不明? 自分の生命を脅かす者の前にのみ現れる――?」

 これで陰謀説の裏づけはされた。そんな兵器があるとしたら、上官の命令のみでその部下は殉職だ。
 これは仮説だが、研究施設で生み出された実験機、コードCHAOが何者かによって暴走を助長され、あわよくば邪魔な人物を皆殺しにしてしまおうという算段なのではないか。

「呆れるな……だけど、ボクは易々死んでやるつもりなんてない」

 物理的攻撃を封じられる。反射される。相手の動きが素早すぎる。相手の攻撃が常軌を逸している。この四つのいずれかに当てはまるであろう科学兵器、コードCHAO……。
 だが、自分の生命を脅かす者の前にのみ現れるというのは好都合だ。こちらから探す手間が省ける。相手には何らかの陰謀に加担しているから、自分の居場所くらい造作もなく調べ上げられるだろう。
 問題は、どのような武器を使えば勝利する事が出来るか。巨大な鉄の釘を上空から落とす? いくら物理的攻撃を封じるといえど限度はあるだろうから、そこまでされたら相手も即死のはず……。


 突然、気配を感じた春樹は身を屈めてソファの陰に隠れた。腰のホルダーに差してあるハンドガンを手に取り、ロックをはずす。弾数を確認した後、物陰からすっと身を出して銃口を向けた。
 ――だがいない。冷静に思考をめぐらす春樹。敵は上か、後ろ。どちらも隙を作りかねない。飽くまでこちらの目的は不審者の捕獲および目視だ。それ以上の行動は研修生として禁止されている。
 春樹はハンドガンを上へ放り投げた。隙を作らせ、――そして、春樹は再び身を屈める。空中へジャンプするとハンドガンを華麗に手を取り、体をひねりながら三発、撃った。

 しかし、その生物には通用しない。

 銃弾はその生物の目の前にある何かに阻まれ、水面に波紋が浮かぶように、消滅した。
 再度波紋が現れた時、春樹の耳を銃弾が掠め、壁を貫く。

 銃口からあがる煙。静けさの支配する研修生休養室。

 その生物は、水色の体をしていた。身長は50cmから60cm程度。頭の上には球体が浮かんでおり、そう、それはまるで――


 コードCHAO、だった。
 春樹の額から汗が滲み出る。状況分析が間に合わない。武器はハンドガン一丁。地の理は活かせない。

 やられる――! 春樹は死を覚悟し、必死に情報を伝える事を考え始めた。

 ……そしてコードCHAOは、静かに小さな手を振り上げる。
 
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(3)
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:07 -
  
 コードCHAOは振り上げた手を、そっと下ろす。
 やさしくにっこりと微笑むように――されど悪魔が魂を抜き取る時のように――妖艶に、純粋に、コードCHAOと呼ばれる謎の生命体は笑った。
 なぜ殺さない? 春樹は疑問に思って、警戒を怠らぬよう、辺りを見回す。何も異変はない。あるとすればそれは戦闘の痕跡。

 仲神春樹はハンドガンを構えた。そして――


 ――コードCHAOに問う。貴様の目的は何だ?


 『コードCHAOを抹殺せよ』


 3 地球自然回復計画


 コードCHAOはまたもや微笑む。これは戦闘意識がないのか? しかし油断は出来ない。春樹はハンドガンをおろさず、黙って答えを待った。
 彼、いや、彼女かもしれないが、コードCHAOはさきほど「波紋」のようなものを生み出したと考えて良い。それが銃弾を吸収し、はじき返した? もしかしたら吸収してから好きな時に解放できるのかもしれない。
 となれば、八十人の武装集団が敗北したことにも納得がいく。
 陰謀説は消えてはいない。新たな仮説として自分を殺さない理由に、「捕らえられる」という選択肢が増えただけだ。春樹は自分の考えに改めて納得すると、コードCHAOの一挙一動を見逃さぬよう注意した。
 しかし、コードCHAOは動かない。それどころか何かを語る気配すらない。もしかしたら、攻撃を吸収し解放する能力はあれど自分から攻撃する能力はないのではないだろうか?

 ――なら、コードCHAOは放って置けば問題ない。イコール陰謀説が色濃くなる。放って置けば良いにも関わらず、わざわざ抹殺するのは……生態を調べられたら困るという選択肢もあるか。

「仲神春樹。血液型はAB。幼い頃から天才肌と呼ばれ、その実力を遺憾なく発揮し、GUN関東本部に入隊。現在、研修生として訓練を積んでいる」
「……目的は何だ? お前の正体は? なぜそこまで調べが付いている?」
「君に頼みがある」
「聴こう」

 銃を狙い定めたまま、春樹は頷いた。コードCHAOの情報から何か推測が出来る可能性もある。注意を削いではいけない。
 コードCHAOはゆっくりと歩いて、ソファの上に飛び乗った。行動の意味が分からない。気まぐれか?

「地球自然回復計画――全世界の機械を停止させ、有酸素連鎖爆発を起こす計画が発動している」
「有酸素……? 何だそれは。誰が計画している事だ?」
「同胞だ」

 コードCHAOの言葉は冷たかった。ただ現実を淡々と語っているだけの言葉の連続。
 恐らく本当に危機が迫っている。春樹には全世界の機械を停止させる方法など思いつきもしなかったが、それがコンピュータのみに限るなら出来ないでもないと思った。
 そもそも、コードCHAOの存在が謎だらけである。地球自然回復計画というのは、自然破壊生物たる人間を殺し、自然を食物連鎖の頂点に置く、という考えで良いのだろうか。

「現段階では準備。ワタシは人間の支配化に及んでいると見せ掛け、それを阻止すべく動いている。今までに来た人間はワタシの能力を目の当たりにした瞬間、ありとあらゆる攻撃でワタシを抹殺しようとした。しかしワタシにはとある能力が備わっている」
「ボクは慎重だった。だから採用、という訳か……だがお前の話を信じる義理も理由もない」
「ワタシたちの能力はキャプチャー。物質を取り込み自分の能力として扱う事の出来る能力だ。信じてもらうためならば何でも話そう。そう、たとえばキャプチャー能力の弱点」

 表面上は冷静を装っていたが……春樹の頭は困惑で満たされていた。コードCHAOの同胞が計画する地球自然回復計画。全世界の機械を停止させた上での有酸素連鎖爆発。専門的な知識だろうが、春樹といえど見当も付かなかった。
 コードCHAO、彼の話を信じるならば――彼は同胞を殺そうとしている。仲間を殺そうとするか? 目的は何なんだ?

「質問に答えよう。ワタシは地球自然回復計画に賛成していない。だがキャプチャー能力には弱点があり、ほとんどの同胞は計画に賛成的だ。この意味が分かるか」
「計画に反対すれば、抹殺されるという事か……良いだろう。仮に信じたとして、ボクに何が出来る? お前の同胞の抹殺か?」
「ワタシを殺せ」

 思いもしなかった選択肢に春樹は一瞬動揺した。
 相手の思惑に乗せられている気がしてならない。それどころか、目の前にいるコードCHAOを抹殺してどうにかなるのだろうか。殺したところで計画が発動する可能性もある。
 安易に殺すべきではない。上司と掛け合う――だめだ。春樹はその考えをすぐさま否定する。上司は黒。黒幕は明らかに上司だ。誰だ? 副司令? それともあの明朗快活な女性か?
 取引として黒幕の名前を教えてもらう。……問題はない筈だ。本当にこいつが味方ならば。

「黒幕は誰だ。GUNと関わりがあるのは分かっている」
「……知らない。コードCHAOと呼ばれるシステムは全てで一つ。一つ死ねば全てが死ぬ。同胞から指示を受けているだけのワタシに出来る事は、ワタシの命を持って同胞を殺す事」
「信用する事は出来ないな。だが、お前の情報には価値がある」

 春樹の頭に名案が浮かび上がった。

「お前、ボクの家に来い。信用出来るかどうか判断してやろう」
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(4)
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:08 -
  
「須沢宰副司令、彼はまだ死んでいないか?」
「はい。未だ生きております。とはいえ、時間の問題でしょう」

 眼鏡をかけた切れ長の目の男が直立不動の姿勢で断言する。対して向かい合うのはたっぷりとひげを生やした男。見るからに老人だが、その体からは強烈な威圧感が放たれている。
 彼こそがGUN総督。頂点に立つ男である。

「芳川総督――全ては計画通りです」
「そうか。ではお前に命令を与える。近頃、関東本部に滞在しているあいつの動向がおかしいという情報が入ってきてな。……そこで、だ」

 芳川正宗総督はひげをさらさらと撫でながら、怪しげな笑みを浮かべて言った。


 ――大倉仁恵本部長を拘束せよ。隠密裏に、な。


 『コードCHAOを抹殺せよ』


 4 24時間監視体制


 仲神春樹は自宅にいた。部屋が三つある小さなマンションの一室。隣にはコードCHAOがイスに座っている。何でもない日常風景だった。
 違うのは、話している内容そのもの。コードCHAOが信用出来るものかどうか確かめるため、春樹が提示した策だ。もし彼の言葉が嘘だったとしても、いつでも殺す事は出来る。

「キャプチャー能力の弱点は頭の上の球体。これを貫けばワタシたちはキャプチャー能力を発動出来なくなる」
「なるほど。キャプチャー能力のシステムは? どこまでキャプチャー出来る? 例えば、人間の肉体の一部をキャプチャー出来るか?」
「出来る。ただしキャプチャー範囲はワタシの体の30cm以内でなければならない。それ以上は届かない」

 春樹は未だ揺れていた。信用出来るか否かの瀬戸際。コードCHAOの言う事が本当だとして、信用するのが手遅れになった場合、それはまずい。しかし彼の言う事が嘘だった場合、信用してもまずい。
 まさに身動きが取れないのだ。恐らく自分をこのような状況に置いた者はよほど頭が良いに違いない。
 置いた者――副司令官か、やはり。良き上官だと思っていた春樹にとって、それは少なからずショックな出来事だった。

「いささか居心地が悪い。監視するのにも動きがなければ意味がないだろう。外に出るぞ」
「ワタシの姿を確認されれば――」
「もうお前の動向はバレバレだろう。後はどうやってお前の動きを封じるかだ。殺すのはまずい。お前の言ったチャオ一体説のお陰だな。かといって拘束するにもボクが邪魔になる。相手にとってボクとお前が手を組むのは不利なんだ」

 最低限の武装をして、春樹は家の鍵を手に取った。


 街中を歩いていると、春樹はさほどこのコードCHAOが目立たない事に気づく。いや、まるで視線を浴びていない。
 もしかしたら、見えていないのだろうか。春樹はその考えに頷く。自分を殺そうとする者の前にしか現れないコードCHAO……現れないのではなく、見えないのならば納得は出来る。
 つまるところ、自分は今も彼を殺そうと考えているのだ。誰かがそう判断し、コードCHAOの姿を見せているのか、または自分がそう考えている事によって姿が見えるシステムなのかは分からないが、ともかくその仮定は正しい。

「面白い。やはり人間の世界も捨てたものではない」
「……お前は地球自然回復計画に賛成ではない、と言っていたな。理由を聴いてもいいか」

 コードCHAOは宙に浮いている。便利な力だ。ソラも飛べる。攻撃は効かない。弱点という弱点はほぼないのだから。
 唯一の弱点を狙うにも、照準をずらされれば対策は練られてしまう。相手は頭が良い。小細工は通用しない。ならばどうすべきか。そもそも地球自然回復計画は自分にとって都合が良いとも考えられる。
 有酸素連鎖爆発の意味はよく分からないが、文字列から想像は出来た。酸素あるべきところに連鎖させて爆発を起こす。コードCHAOの能力を持ってすれば出来ないことではない。
 そして――コードCHAOの能力を持ってすれば。脳の回路をキャプチャーする事によって、いとも簡単に人を操る事だって出来る。それをして来ないという事は、信用出来ると考えていいのかもしれない。
 長い沈黙だった。色々な事を考えられるくらいの沈黙。やがて、コードCHAOは語り始めた。

「ワタシは一度、人間に助けられた。ワタシの力を知らなかったのだろう。だが、助けられた事に変わりはない。人間にも色々な人がいる。――それを一概に悪だと決め付けるのは傲慢だ」
「助けられた……? という事は、助けた奴はお前を殺そうとしていた、という事になるじゃないか」
「彼女はワタシを殺そうとしていたのではない。人間がワタシたちを見る事の出来る方法は二つある」

 これはワタシしか知らない事だ――そう言って、コードCHAOは春樹にしか聴こえぬよう、静かに小さく、呟いた。

「CHAOを、助けようと思う事」
「……だとしたら、コードCHAOの存在を知らなかったそいつは、とんでもないお人好しだ。いつも全て助けようと考えているような。そうでないとお前が見えない」

 この時から、春樹は考え始める。
 コードCHAO。彼らが地球自然回復計画を起こそうとする理由。

 自分が助かりたいという、生命として当然の思いなのではないか、と。
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(5)
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:08 -
  
 電話が掛かって来た。GUN専用回線の携帯用電話のディスプレイには、見た事のない数字が表示されている。
 ……ついに悟られたか。自分が、コードCHAOの弱点を知っていながら殺さなかった、という事が。それがなぜなのか自分でも分からない事を人に訊かれるのは春樹にとって我慢ならない事だった。
 分からない事などない。出来ない事などない。それをわざわざ他人から言われるまでもない。
 コードCHAOが不思議そうに首を傾げる。仲神春樹は携帯電話の通話ボタンを押すと、そっと耳に押し当てた。


 ――須沢副司令だ。今より副司令官室へと来ていただこうか。


 『コードCHAOを抹殺せよ』


 5 突き付けられる選択肢


「失礼します」

 春樹は再び副司令官室へとやって来ていた。まさに鋼鉄に囲まれた部屋。その中心には須沢宰なる一人の上官が立っている。
 やはり黒幕だったか。春樹の考えは的中してしまっていたようだ。だからといって、対策がある訳でもない。伏兵がいなければ、先手必勝という手もある。
 殺せるのに殺さないというのは不自然だ。情が移ったと考えられても仕方がない行為。だからといって、殺せば相手にとっては不利になる。それゆえの先手だろう。

「……仲神春樹。まずは武器を捨ててもらおうか」
「分かりました」

 腰のホルダーからハンドガンを見せつつ、床に落とす。
 須沢副司令は厳格な表情のまま、春樹をにらみつけていた。

「なぜ呼ばれたかは、分かると思う」
「はい」

 もはや自分に出来る事は一切何もないだろう。表上、コードCHAOに殺されたという事になるかもしれない。任務中に事故、という事も。
 しかし手遅れだ。何もする事はない。だからこそ、何もしない。自分の運命ならば自分で進んで辿る。それが仲神春樹の生き方だ。

「では、死んでもらおう」

 すっと、須沢宰副司令官はハンドガンを春樹の額に突き付けた。

「今なら間に合うぞ。コードCHAOを抹殺するか?」
「……妙ですね。須沢副司令は黒幕ではないのですか」
「私は人類の平和を望んでいる。その為にはコードCHAOを殺すしか方法がない。弱点を吐いてもらおう」
「……弱点? 何の事ですか? キャプチャー能力は絶対無敵です。とてもではないが太刀打ち出来ない」

 春樹は眉間にしわを寄せた。
 ふっと鼻で笑う須沢。ハンドガンの引き金にかけた指に、力を込める。

「ラスト・チャンスだ。私に与するか、己の未来を棒に振るか――選ばせてやる」
「NOです。ボクにコードCHAOを殺す意志はありません」
「そうか、ならば仕方ない」

 銃声が狭い部屋に鳴り響いた。


 大倉仁恵は自宅でパソコンと睨めっこしていた。時刻は昼過ぎ。多くの監視カメラから見られる映像に、怪しいものは映っていない。
 ふうとため息をついてコーヒーを飲む。味がいまいちだ。もう少し砂糖を入れるべきだったと後悔する。

「久しく会う、大倉仁恵」
「……っ、誰?」

 彼女は振り向いた。しかし誰もいない。幻聴か。そう思ってパソコン画面に向き直った。

「……そうか。ワタシが見えないか」
「……誰?」
「ワタシはコードCHAO。仲神春樹研修生より伝言を授かった」

 その一言で、大倉仁恵はもう一度振り向いた。
 何もいない。いないけど、何かがいる。何かがいた気がするのだ。天の声とか、そういう次元ではない。
 目では見えない。だけど、心が「彼」を見付けている。それがなぜなのかはよく分からない。彼女は分かろうとも考えない。ただ、自分が正しいと思った事を貫くのみ。

「そっか。あの時の……懐かしいわね。八年も前かしら」
「七年と三ヶ月二週間六日前だ。ワタシを見るにはワタシを助けると思わなくてはならない。しかし今、大倉仁恵は仲神春樹を助ける事に精一杯だ。無理強いはしない。こうして声が届くだけでも幸運だ」
「それで、伝言って?」
「仲神春樹は須沢宰副司令官に呼ばれ、恐らく殺害されるだろう」

 彼女の表情が真っ青になった。あわてて監視カメラに目を向けるが、彼らの姿は確認出来ない。副司令官室には、誰もいなかった。
 だとしたら、どこで殺されたのだろうか。いや、まだ殺されたと決まった訳ではない。
 諦めたりはしない。決して――

「絶対、助ける」
「仲神春樹から言い渡された作戦を伝えよう。黒幕は吉川正宗総督だ。副司令官に命令する事が出来、なおかつ現状を全て把握できる立場にいるのは彼しかいないと言っていた」
「総督が……?」
「しかし真実の黒幕はコードCHAO。大倉仁恵。ワタシを殺せ。殺せば全て解決する」

 大倉仁恵は迷った。脈絡が分からない。だが、コードCHAOは嘘をついていないだろう。
 そして彼が殺せといっているのにも何か理由がある。それ以外に方法が見つからないから、そう断言したに違いない。
 もしかしたら仲神春樹が下した結論かもしれない。だけど、

「嫌」
「そう言うと思った。仲神春樹もワタシと同じ意見だろう。大倉仁恵は人から頼まれても殺さない、と。ゆえに――大倉仁恵、吉川正宗総督の元へ行き、彼を拘束せよ。ワタシが彼をキャプチャー能力で操る」
「……分かったわ。私の後ろから付いて来て」

 彼女は立ち上がった。
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(6)
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:09 -
  
「なんだね、大倉仁恵本部長」

 関東本部、総司令官室にて、大倉仁恵は吉川正宗総督の前にいた。
 ハンドガンを突き付けながら、彼女は要求する。

「武器を捨てなさい。両手を挙げ、抵抗は考えない事」
「大人しく従うと思うか?」
「ええ、もちろん。殺されたくないならね」

 総督はにやっと笑い、両手を挙げた。副司令官室と構造は変わらない。隠れられる場所は机の陰くらいだが、そこには人間一人分も入る余地はないだろう。
 入るとしたら、それはコードCHAOのみ。大倉仁恵はそう考え、一歩慎重に踏み出した。

「大倉仁恵本部長。コードCHAOを殺さなければ地球自然回復計画が発動する。人類は滅亡だ。そう、後ろにいるそこのコードCHAOを殺せ」
「滅亡……? そうしようとしているのは、あなたでしょう!」
「違うな」

 白いひげに隠れた口元がいやらしく吊り上がる。吉川総督は両手を挙げたまま大倉仁恵から目を離さない。

「コードCHAOに騙されている。お前は騙されているのだ」
「騙されてなんかっ……!」
「銃を下ろせ。総督の言う通りだ。残念だが、君はコードCHAOに騙されている」

 背後から声がした。彼女はそっと横目で見る。
 須沢宰副司令官が拳銃を持ってたっていた。それも、怪しい笑みを浮かべて、しっかりと照準は大倉仁恵に定まっている。
 万事休す。追い込んだと思えば、追い込まれていた。コードCHAOの姿が見えているのだろうか? 彼女は考えるが、分からない。まったく分からなかった。

「副司令……仲神春樹は?」
「はっ、速やかに排除いたしました。後は……総督の仰せのままに」
「銃を下ろすのは須沢宰副司令官だ。大人しくせねば――」

 コードCHAOの言葉に、須沢副司令官は笑みを一層濃くする。

「私は貴様の弱点をも知っている。大人しくするのは貴様だ、コードCHAOの反逆者めが」
「……ワタシを殺せば計画は失敗する」
「だからどうした? もう計画は発動しているのだ」

 吉川総督の自信満々に断言した言葉で、大倉仁恵は人類が滅亡するという現実を目の当たりにしなければならなくなってしまった。
 そう、一刻も早く目の前の人物を殺さないといけない。しかし副司令官は生き残る。意味がない。コードCHAOを殺して仲間になり、奇襲を仕掛ける事も……出来ないだろう。
 ならば地球自然回復計画の起動条件を知っておかなければ。それなら阻止できるかもしれない。この状況でも、自分の命と引き換えに――

「遅い。起動条件はその反逆者の死そのものだ。もはや反逆者と我々の接続は切った。そいつを殺せば、地球自然回復計画は終盤を迎える!」

 ふと、声がした。大蔵仁恵には見えない。つまり、黒幕を殺す事も出来ないのだ。
 なぜ見えないのか。自分に殺す意志がないから? 本当はどこにもいないから? なぜなのだろう。見えていれさえすれば――

「大倉仁恵本部長、君からはコードCHAOに対する殺す意志を消させてもらったよ。これで君はワタシを撃つことが出来ない! 我々の勝利はもはや目前となったのだ!」
「っ……」
「さあ、副司令官――反逆者を殺せ」
「――仰せのままに」

 須沢副司令官は銃口をコードCHAO――反逆者である彼に向ける。
 そして、


 ――死ぬのは貴様だ、黒幕。


 『コードCHAOを抹殺せよ』


 6 欺くならば味方から


「なに……?」

 姿の見えていない黒幕のコードCHAOが銃声と同時に声を発した。
 副司令官の舌打ちが聴こえる。失敗したのだろうか。大倉仁恵には分からない。分かるのは、須沢宰副司令官は敵ではなかった、という事実のみ。
 しかしそれだけでも状況は一変する。

「須沢副司令――裏切りおったか……!」
「総督、私は初めから人類滅亡など興味ありません。コードCHAOを抹殺し、地球自然回復計画を阻止する。それが私の目的です」

 再び銃口を定める。そう、副司令官には見えている。さらに大倉仁恵が総督に狙いを定めている為に、勝機は十割と化しているのだ。
 一転して勝利への道が見えて来た。大倉仁恵はハンドガンを持つ手に力を込める。

「ふふふ……だがね、弱点を狙い撃ちしても無駄だ。キャプチャー地点をずらせば問題はない。起動条件をワタシの発信源にすればいいだけの話でもある」
「……なるほど。考えたな。だけど、一つ忘れている。こちらには貴様の言う反逆者がいるという事を」
「それも残念。反逆者というのは偽りだ。コードCHAOは姿が似ていれば別人だと気づかないところが良くてねえ……声しか聞こえない事によって大倉仁恵も騙しやすい。我が同胞よ! そいつを殺せえ!!」

 須沢副司令官の目が驚きに見開かれる。――彼の手に持っていた拳銃が消える。とっさに一歩下がり、彼は二丁のハンドガンをホルダーから引き抜いた。

「遅い!」

 二丁拳銃すらキャプチャーによって消滅する。これでコードCHAOは二つの拳銃を手にする事が出来るのだ。

「……く、そ……」
「さあ、銃を捨ててもらおうか、大倉仁恵――ッ!!」

 銃声が響いた。
引用なし
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(7)
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:09 -
  
 その銃弾は綺麗な直線を描いて、黒幕の球体を撃ち抜いた。
 もう一発放たれた銃弾は、反逆者と偽っていたコードCHAOの球体をも撃ち抜く。
 総司令官室の入り口に立っていたのは、今年の研修生一のエリート兵士だった。

「なぜッ……生きている!?」
「殺されてないからだ」

 仲神春樹はハンドガンを手にしたまま言う。

「もうキャプチャー能力もない。総督は大倉仁恵が狙っている。お前の負けだ」
「くそ……なぜ人間はこうも、こうもこうもこうも!! ワタシはただ、死にたくないだけなのに!!」

 錯乱したように叫ぶ黒幕。大倉仁恵には姿が見えない。しかし声だけは聞こえる。

「自然を破壊しているのは人間、貴様らだ! 貴様らは悪だ! 自然を破壊する貴様らは傲慢にも自らを正義と考えている! ワタシは、他の生命を駆逐する貴様らが許せない!!」
「分かってるとも。だからボクは、お前たちを助けに来たんだ」
「信じられるか! 散々破壊して置いて、何が助けに来た、だ! 貴様らは結局、死によってしか償えん!!」
「ワタシが話した。コードCHAOの正体を」

 静かに歩く、コードCHAO。
 仲神春樹とともに来た、一人で戦うコードCHAOは、黒幕の前に立つ。

「植物とは生命だ。意志はある。しかし植物そのものにはない。ワタシたちが植物の意志そのものだという事を」
「人間に飼い慣らされた犬め! 貴様のような輩がいるから……!」
「だから助けに来たと言っているだろう。ボクは人間に生まれたが、人間には散々うんざりしている。今回の地球自然回復計画にも若干賛成しているぐらいだ。だが、コードCHAOはそれで救われるか? 生命は助かるかもしれない。しかし心は? 罪の意識というものは、よほど扱うに長けたものでなければ――」
「黙れ、黙れこのッ!」

 黒幕は怒りの形相で仲神春樹を睨み付ける。どこまでも冷静な表情で、仲神春樹は黒幕とにらみ合う。

「……総督、私は平和であれば構わないと思って来ました。ですがコードCHAOはそう思っていません。少しでもそう思う人がいる限り、私たち大多数は行動すべきです」
「……そうだな。私もそう思う。だから……」

 総督の行動は早かった。
 腰のホルダーからハンドガンを抜き、仲神春樹の心臓部分を撃ち抜いたのだ。
 悲鳴さえ上げられずに春樹は倒れこむ。大倉仁恵は総督のハンドガンを撃ち、真っ青な表情で春樹の下へ駆け付けた。

「だがね、私は人類がどうなろうと知った事ではないのだ」
「くっ……総督!」
「コードCHAOがどうなろうとも私の知った事ではない。ただ私は下らぬ世界にうんざりしていた。だから作り変える為に、私は存在しているのだ」

 そういう総督の表情は冷たかった。まるで何もない。無そのものだ。それゆえに感動もしなければ悔やみもしない。

「春樹! 春樹!!」
「軍曹……ボクは殉職ですか。二階級……特進です。研修生から……一気に軍曹と同じ立場まで上がりました……だから、もう軍曹から教えられる事はありません……」
「や、やめて……死なないで……」
「……総督、確かに下らない。だけど……ボクは……少数派なんだ……多くの人間が生きたいと願っている以上、見捨てる事は、出来ない……」

 目元に隈が出来ている。体は異様に冷たかった。
 コードCHAOは思考をめぐらせる。総督を殺すか? いや、彼はもう何も出来ないだろう。キャプチャー能力をもってして仲神春樹を救えないか? 不可能だ。
 キャプチャー能力は万能ではない。例え銃弾を取り除いたとしても……。

「大倉、退け。体をゆするな。応急処置を」
「副司令、ありがとうございます……ボクは他人に分かってもらえたのは、生まれて初めて、です」
「……仲神春樹」
「……はは、死ぬのか。そうか。案外、悪い気分じゃないな……」

 仲神春樹の視界はぼやけていた。思考すらぼやけて、何がどこにあるのか、自分は何なのか、よく分からない状況に立たされている。
 客観的に物事を見るというのは、こういう事なのだろうか。今、自分はここで死にそうになって倒れている。その状況にすら疑問を抱く仲神春樹。何が起こっているのか脳が付いていかない。
 だが、分かる。もう、命は消えかけているという事が。

「ボクの代わりに……コードCHAOを助けてやってくれ……」
「か、代わりだなんて、言わないでよう……」
「分かった。約束しよう」

 最後まで無表情のまま、仲神春樹は目をゆっくりと閉じた。
 どれくらいの時間が経っただろうか。さほど時間が経っていない気もするし、経った気もする。コードCHAOは、自分が悲しんでいる現状に気づいた。
 自分が悲しむという事は、他のコードCHAOも悲しんでいる。大自然の全てが彼の死を悲しみ、慈しんでいる。

 自然に愛された少年とは、彼の事なのだろうか。
 冷酷で冷静に見えた仲神春樹は、情に厚いただの人間だった。コードCHAOはただそれだけを理解し、彼との約束を果たすべく、黒幕に手を差し伸べる。


 ――仲神春樹との約束を果たそう。ワタシたちが一丸となって。


 7 死をもって伝えること
引用なし
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(8)
 ろっど  - 08/7/28(月) 9:10 -
  
 大倉仁恵は退屈な日常の中、誰かを出来る限り助けようと努力をして来た。
 それこそが彼女の努力の結晶、GUN関東本部本部長の階級を作り出した目的である。きっかけは些細な事でとある生き物を助けた事だった。
 人助けというのは、決して正義ではない。しかし悪でもない。そもそも正義と悪が反対だなんて間違っている。彼女はそう思っていた。

 そんな中、一人の少年が研修生としてやって来た。彼の名前は仲神春樹。
 成績は上の上。トップクラスとしての実力を遺憾なく発揮し、試験を最速でクリアした彼はあまりGUN内部で馴染めていないようにも見える。
 しかし彼は天才だ。きっと何もしないでも出来るのだろうと彼女は考えた。


 ところが、仲神春樹はとんでもない努力家だったのだ。
 研修生の訓練が終了し、就寝時間となったある日、大倉仁恵は散歩をしていた。気分転換のつもりだった。その途中、何者かが訓練場の中にいるのを見付けた。
 不審者かもしれない。そう思った大倉仁恵は、すぐ行動に移った。だが、その必要がない事に気づく。

「仲神春樹……? 何でこんな深夜に?」

 走っていた。体力づくりのためだろうか。
 何だか大倉仁恵は感動してしまった。たぶん照れ屋なのだろう。人に努力を見られるのが嫌いなのだ。そう考えた途端、なぜだか急に仲神春樹がかわいく思えて仕方がなくなって来た。

「もう就寝時間よ。何やってるの」

 悪戯心で話しかけてしまった時には、もう、手遅れだったのだ。


「ボクは出来る限り多くの人を助けたいのです」

 彼は言った。

「その為ならばボクが努力する事にためらいはありません。他人が傷付くくらいならばボクが傷付いて見せましょう。その為にボクがGUNに入った。配属させるように努力したのですから」

 そして後日、彼はとある人物の暗殺命令を出される事になった。


「なぜ殺すのでしょうか。世界は間違っていると思います」
「きっとあなたみたいな人は少数派なのよ。だから長いものに巻かれなくちゃいけないの」
「……認めたくありません」

 やさしいのね、と大倉仁恵は言った。春樹は照れたように顔を逸らした。


 更に後日、再び彼、仲神春樹にひとつの命令が下される。


 ――謎の生命体、「コードCHAO」を抹殺せよ。


 完 ――そしてTRUE ENDへ――
引用なし
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月光のメイド
 斬守  - 08/7/28(月) 21:42 -
  
月光のメイドの注意事項(?)

毎回コピペされているので、読んだ事がある場合は読まなくても結構です。


・本作品は毎回1話ごと完結する作品になっております。(一部例外もあるかも)
 ですので、どの話から読んでも楽しめるようになっていると思います。そうなるように努力します。

・本作品は話によってはジャンルが変わる可能性があります。

・本作品に毎回、必ずしも戦闘シーンは載せておりません。

・本作品に萌え要素は除外します。(自然にできたものなら可)

・本作品にパクリは多分ないと思います。そうならないように努力します。

・本作品が必ずしもおもしろいとは限りません。あたりまえです。

・本作品の筆者はちゃんと首は存在しております。斬首してません。多分。

・本作品によるこの注意事項は、真面目に書いていない項目がある可能性があります。


以上、どうでもいい注意事項でした。
引用なし
パスワード
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月光のメイド 『月光のメイド』1
 斬守  - 08/7/28(月) 21:45 -
  
彼女は守るために存在している

守るべき時、月の光はいつでも彼女を照らしていた

そして、彼女はこう呼ばれた・・・・・


『月光のメイド』


第一話「月光のメイド」


季節は春。4月である。
ここはチャオの森。
人に捨てられたりしてくる、チャオの国でもあった。
そのチャオの森は、チャオが作った街、平原、火山など人間にとっても広い森であった。
そのチャオの森の『チャオティックルーイン』という街の北の森の奥で、あるチャオが逃げていた。


???(1)「はぁ、はぁ・・・・・。」

その森の中で、一人のチャオ(HSS型)は走っていた。


ダーク1「おい!どこいきやがった!?」
ダーク2「落ち着け・・・しかし困ったな。これでは取引が無効になってしまう。」

その森の中、走っているチャオの後ろの方で話し合いをする3人のダークチャオがいた。

ダーク3「とにかく、こっちにきたのは確かだ。探すぞ。」

そういって、3人はまたあるダークチャオを探し始めた。


やがて、走っていたチャオ・・・・・僕は、森を抜けた。

???(1)「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・・?」

僕は目の前のある建物に驚いていた。

???(1)「・・・なんだ・・・・・こんなでっかい家始めて見た。」


目の前には大きな屋敷があった。
屋根は赤く染まり、壁は白かった。
鉄格子でできた入り口の先に玄関の扉があり、そこまで行く道の周りは庭になっていて、いろんな植物、花が咲いていた。春の季節のせいか、桜が咲いていた。
まるで、人間の貴族が住むような家だった。


???(1)「とにかく逃げないと危ない・・・この家に逃げ込もう。」


そう思ったチャオは、玄関にあるインターホンを鳴らした。これもチャオの森では珍しい。


???(2)「どなたでしょうか?」


鳴らしたところから、声が聞こえた。


???(1)「助けてください!人に追われているんです!このままでは殺されてしまうかもしれません!」


そう逃げてきたチャオは叫んだ。

しかし、それ以来返事は返ってこなかった。
悪戯かなんかと思ってしまったのかもしれない。
そう思っていたが、向こう側にあった玄関の扉が開き、あるチャオがでてきた。
そして、こちらに近づいてきて鉄格子の入り口を開けた。ぎしぎしと音が鳴る。


???(2)「とにかく、屋敷の中にお入りください。」


と近づいてきたチャオがいったが、そのチャオを見て更に僕は驚いた。


そのチャオはメイド服をきていたのだ。
普通のチャオなら、服を着ることもありえやしないのに、そのチャオはメイド服をきていた。
しかし、NNN型の普通のチャオであった。


そうして、言われるがままに僕は屋敷の中に入っていった・・・警戒をしながら。


屋敷の中は、やはり人間が住んでいるかのように広かった。


???(2)「申し遅れました。私はこの屋敷のメイド、『メルト』と申します。」


その???(2)の名は『メルト』というらしい。
そして、僕の自己紹介もする。


???(1)「僕はジェイドといいます。」
メルト「ジェイド様ですね。お嬢様がおよびなのでこちらへ。」
ジェイド「お嬢様?」
メルト「この屋敷の主人でもあります。名前は『フィル』様と申します。」
ジェイド「はぁ・・・・・。」


なんか不安になってきた。
メルトさんについていく途中にある廊下を見ると、一人のチャオが倒れていた。
・・・・・ますます不安になってきた。
引用なし
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月光のメイド 『月光のメイド』2
 斬守  - 08/7/28(月) 21:46 -
  
フィル「ふーん、あんたが殺されかけている奴ね。」


食堂らしき場所に連れてこられ、そこにお嬢様と呼ばれるチャオがイスに座っていた。HFF型のチャオであった。


フィル「名前はなに?」
ジェイド「ジェイドです。」
フィル「そんなことどうでもいい!」
ジェイド「あなたが聞いてきたんじゃないですか!!」
フィル「うるさい、黙れ。」


なんだこのチャオ・・・・・。
どうやら、ひねくれ者なのかもしれない。


フィル「私はなんで殺されかけているのか聞いてるの。」
ジェイド「初耳なんですが。」
フィル「そのくらいテレパシーで分かりなさい。」
ジェイド「無理ですよ!!」
フィル「うるさい、黙れ。」
メルト「お嬢様。楽しむのはそこそこにしましょう。」
フィル「えぇ、そうね。」


なんだこいつら!?
なんでこんなにいぢられて楽しまれているんだ!?


なんだかんだで、なんで僕が追われているのか彼女らに話始めた・・・・・。


フィル「ふーん。ということはあんたは誘拐にあって、それから逃げ出したと。そして、身代金を請求しているから、あんたをそいつら捕まえに、あんたを襲ってくると。」
ジェイド「はい。」


フィルはため息をついた。


フィル「厄介な奴いれたわね、メルト。」
メルト「それは・・・。」
フィル「黙れ。」
メルト「黙りたくないのですが。」
フィル「だったら、そのことを言うな。」
メルト「かしこまりました。」


なんか自分勝手なお嬢様である。
メルトさんは大変そうだ・・・。


ジェイド「ちなみに、この屋敷は他に人がいるんですか?」
フィル「教えるか馬鹿。」
ジェイド「なんだと!?」
フィル「逆らう気なの?」
ジェイド「・・・・・いや、止めておきます。追い出されたら困るので。」


我ながら冷静な判断である。自分に褒めてあげたい。


メルト「私から説明をしてもよろしいでしょうか?」
フィル「別にやんなくてもいいでしょ。」
メルト「お嬢様。」


メルトさんはフィルの目をずっと見続けた。
やがてフィルは観念したのか、ポヨがグルグルまきになった。


フィル「・・・分かったわよ、勝手にしなさい。」


とフィルが言った。
メイドがお嬢様を説得するっていうのもどうなのかと思った。


メルト「この屋敷には、私とお嬢様。そして他に図書館で幻闘術の研究をしている『ジェネリクト』と屋敷の周りの管理をしている庭師の『ピューマ』さんの計四名がいます。」
ジェイド「計四名・・・ですか?」
メルト「はい。」


なんという屋敷の無駄遣い。
この広い屋敷にチャオ4人しかいないとは・・・・・。後50人以上いてもいいくらいなのに。


ジェイド「・・・・・?もしかすると屋敷の中の管理は・・・。」
メルト「私一人でやっております。掃除、洗濯、料理、屋敷の修理、お嬢様の世話などが主な仕事です。」
ジェイド「全部一人ですか!?」
メルト「そのくらいできます・・・・・さすがに掃除は一日で全部せずに、日にちごとに掃除する場所を変えるようにしていますが・・・。」


それだとしても大変凄い事になるのだが・・・・・。


フィル「メイドなら当然でしょ。」
ジェイド「あなたは何をしているのですか?」
フィル「ご飯を食べる、遊ぶ、寝るくらいかしらね。」
ジェイド「・・・・・。」
フィル「普通のお嬢様はそんな感じよ?」
ジェイド「まぁ、そうなんですが・・・。」
フィル「なんか文句あんの?」
ジェイド「いえ、何も。」


どうやら、フィルに勝てそうな気がしない・・・精神を攻撃するのが得意のようだ。
ん?待てよ・・・・・?
僕のポヨが?に変わる。


ジェイド「あの・・・・・さっき、どこかの部屋で誰かが倒れていたのを見たんですが・・・・・。」
フィル「倒れていた?・・・メルト。ジェネリクトとピューマは?」
メルト「さきほど確認されました。ジェネリクトは図書館。ピューマさんは庭の手入れをしておりました。」


庭にピューマさんがいたのに僕は気づかなかったのか・・・どこにいたんだろう。

フィルは誰が倒れているのかをしばらく考えていたが、やがて一つの答えを見つける。


フィル「あぁ、あいつね。」
ジェイド「あいつ?この屋敷に住んでいる人ですか?」
フィル「いや、あいつは『ヴァン』といって、屋敷に遊びに来る酔っ払いよ。はっきり言って迷惑だけど。」


とフィルが言う。
警備はそこまで万全ではないのか・・・。


フィル「あんた、お風呂に入ってきなさい。」


そういきなり僕に向かって命令した。


ジェイド「何故いきなり・・・。」
フィル「臭い。」
ジェイド「率直に言わないでください!」
フィル「うるさい。黙れ。」


どうやら、フィルの口癖は『うるさい。黙れ。』のようだ。


メルト「確かにここまでずっと走ってきたのでしょうから、汗を流したほうがよいでしょう。浴室にご案内します。」
フィル「それがいいわ。ほら、ささっと行きなさい。」


もうどうにでもなれ。
そう思い、僕はいわれるがままに浴室に案内された。
引用なし
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月光のメイド 『月光のメイド』3
 斬守  - 08/7/28(月) 21:48 -
  
ジェイド「想像はしていたけど・・・・・やっぱり広いな・・・。」


浴室は、もはや大浴場となっていた。
これなら人間が20人は余裕に入れるだろう。
メルトさんは僕をここに連れて来た後、掃除をしにいったようだ。

風呂につかってみた・・・すぐに分かる。
これは天然の温泉だ。たいしたものだ。


チャオは綺麗な水がなくては暮らしていけない。
そのため、水がどのような状況かはすぐに分かる。
おそらくジェイドもチャオであるから、天然でできた温泉だということが分かったのだろう。


ジェイド「あのお嬢様といい、変な屋敷だ・・・。住んでいる人は少なすぎるし、メイド服着ているチャオもいるし、人間でも十分暮らせる広さといい・・・。」


ジェイドは浴室・・・・・いや、大浴場でいろいろ考えた。


この屋敷のこともまだ気になるし、自分はこれからどうすればよいのかも分からない・・・・・下手に外を出歩くと、また捕まってしまう・・・。


・・・・・今後のことについてフィル・・・いや、メルトさんに相談することにしよう。聞きたいこともあるし。

そう考えをまとめ、大浴場でゆっくりすることにした。


メルト「今後のことについて・・・・・ですか。」
ジェイド「いつまでもここにいても迷惑でしょうし・・・・・。」
フィル「えぇ、迷惑よ。」


時は夕方。
食堂で、メルトさんとフィルで今後のことについて話し合うことにした。
ちなみに脳内でフィルと呼び捨てにしているのは、僕的にあの人が気に入らないからだ。
今もすっぱりと言われて反抗したいが、我慢することにする。


メルト「とりあえず今日一日はここに泊まって、明日にあなたの親の所へ行きましょう。一日経てば、その人攫いもどこか違うところを探すと思いますし。」
ジェイド「はい、分かりました・・・。」
メルト「ということでよろしいですね、お嬢様。」


そう言って、フィルに確認をとる。
また、ポヨがぐるぐる巻きになっている。


フィル「はぁ・・・一日だけよ。明日になったら、さっさと帰れ。」
ジェイド「なんだ・・・・・ぁ・・・・ありがとうございます。」


途中で反論を返そうと思ったが、凄い目つきで睨まれたため、反論できなかった。
本当に怖かった。


ジェイド「・・・ところで、この屋敷は誰が働いて稼いでいるのですか。」
フィル「・・・・・。」
メルト「ジェイドさん、すみません。そこのところの話は、あまりお嬢様もしたくはないようです。」

とメルトさんに言われ、

ジェイド「あ、はい。分かりました・・・。」

と返答をした。フィルは怒った顔をしていた。


フィル「少しは発言する時は、人を傷つけないような言葉遣いになるようにしなさい。」


あんたがそういうのか。


フィル「とりあえずディナーにしましょう。メルト。今日は何かしら?」
メルト「今日は和食となっております。」


和食?なんだそれ・・・・・。

料理は白い粒の物体に、赤い刺身がのった料理だった。


フィル「ほら、あんたも食べなさい。」
ジェイド「あ、はい。」


そう言われて食べてみた。
食べたことはなかったのだが、とてもおいしい食べ物だった。


ジェイド「こ、これは何という料理なんですか!?」
フィル「寿司よ。なんだ、あんたは人間にあったことがないのね。」
ジェイド「へー、人間はこんなもの食べているのか・・・ってことは、フィル・・さんは人間にあったことがあるんですね。」
フィル「なんでそうなるのよ。」


あきらかにさっき言ってることと矛盾している気が・・・・・。


フィル「こういうお金持ちは、世界の食べ物を食べることも可能なのよ。今日は珍しく和食だっただけで、寿司を食べたくなったのよ。」


どうやらフィルはいろんな食べ物を食べているらしい。


メルト「では、私はピューマさんとジェネリクトを呼んできますね。」


と言って、部屋を出て行く。


だが、ある侵入者のせいでその行動は遮られた。
扉が強くメルトの前で開けられた。


ダーク1「ようやく見つけたぜ。糞小僧が。」


そこには、ジェイドの人攫い達がいた。


ジェイド「お前らどうしてここを・・・。」
ダーク1「勘だ。長年こんなことやってるとすぐに分かるんだよ。」


ジェイドは椅子から立ち上がった。


フィル「ちょっとあなた達。」


ダークチャオ、3人ともフィルの方を向く。


ダーク3「何だお前?」
フィル「玄関前の鉄格子の扉にある、インターホンを鳴らしてきた?」


ダークチャオ達は微笑した。


ダーク3「そんなものするわけないだろ。」
ダーク2「というか、あいつも結構高そうな感じするぜ!こいつもさらっていかないか?」
ダーク3「あぁ、それはいいな。」


とダークチャオ達は会話をし始めた。
ジェイドは情けない姿で怯えていた。

すると、フィルがこう言い始めた。


フィル「金に目が眩んだ悪党どもが。人を傷つけて、自分は金を手に入れてそれで楽しいとは、あんた達の人生はろくでもない屑だった人生だったのね。」
ダーク1「なんだとこらぁ!?」
フィル「金以上に大切な物を見つけられない人は、もう金しか信用できないろくでなし。そんなやつ悪役で結構、そして無様にやられろ。」
ダーク3「・・・おい。あいつの口、二度と開かないようにぶち殺せ。」
フィル「そしてムカついた奴は、とりあえず殺すという・・・なんとも分かりやすい連中・・・。」


フィルは椅子から立ち上がった。
そして、ジェイドと一緒に机のもの影に隠れた。
一度フィルは顔をだし、メルトに言った。


フィル「メルト、ひさしぶりの大きな命令よ。あいつらを追い返しなさい。」


そしてメルトは手を地面につけて、


メルト「了解しました。」


手を天空に向かって、手を上げた。


僕はその時始めてみた光景にびっくりした。メルトさんとフィル以外の人のポヨは!をしていた。

そして辺りはすぐに夜になり、月光がメルトを照らしていた。
その姿はあまりにもかっこよく、全てのチャオが一時見つめていた。


メルト「全てはお嬢様のために。」


メルトは、メイド服の中からボールを取り出し、あちこちに投げ始めた。


ダーク1「どこに向かって投げてやがる!!」

ダーク1はメルトに向かって走り出したが、後ろからの衝撃が来て倒れてしまった。
衝撃を与えたものはボールだった。


ダーク1「ッ!?なんでこのボールが後ろから!?」
ダーク2「気をつけろ!そいつはただのボールじゃない!かなりはねるぞ!!」


ダーク2の言うとおり、ボールはあちこちはねまわり、そして的確に当たっていったのであった。スーパーボールを使ったのだろう。


ダーク3「くだらん攻撃・・・。」


ダーク3はナイフを持ってメルトに襲い掛かったが、布状の物でナイフを刺さらせ、大きく布を振り払って上手く攻撃をそらした。
その布状の物の正体は、窓に飾られていたカーテンだった。


メルトは、椅子をダーク2に投げた。


ダーク2「うわっと!・・・へへ、がら空きだぜ!!」


そう言って、ダーク2はナイフでメルトを襲おうとしたが。


ダーク2「がッ!!」


後ろから衝撃で、倒れてしまった。
ダーク2が、ピンク色の繭に包まれていった。


チャオは危険になると、(例えば寿命など)繭に包まれていく。ピンク色の繭は人生が幸せの証。そして転生することができる・・・。


メルト「・・・こんなことしていても、幸せだったということですね。」


だが、転生したところで能力をほぼ失うチャオにとって、敗北と同じ事なのであろう。


ダーク1「こいつ・・・椅子をブーメランの代わりにしやがった!」


メルトの投げた椅子は、ブーメランのように戻ってきて、ダーク2に当たっていた。

そして、ダーク1にフォークが刺さった。


ダーク1「・・・なん・・・だとッ・・!?」


音速の速さで投げたフォークがあたったのだろう。
それが倒れる前の遺言だった。
もっとも、ピンクの繭に包まれたのだが・・・。


ダーク3「お前・・・・・只者じゃないな・・・。」
メルト「それは褒め言葉として受取っておきましょう。」


そんな会話をしている最中、フィルとジェイドは隠れて戦いを観戦していた。


ジェイド「メルトさん・・・強い。まるでマジックのようだ。」
フィル「メルトにとってはマジックなんじゃないかしら?」


そうフィルが言った。


フィル「メルトはね、戦うときに何故か月光が照らす夜になるの。その時点でマジックでしょ。そしてもう一つ、特殊な戦いをするの。」


メルトは、ポケット中から小さい黒いケースを取り出した。

黒いケースの中身はトランプだった。


ダーク3「ふざけるんじゃねぇ!!」


そうやってダーク3はナイフを投げたが・・・・・。


フィル「メルトはね・・・・・どんなものでも全ての道具を武器として扱うことができるの。」


メルトはトランプを投げて、ナイフを真っ二つに破壊してしまった。


ダーク3「!!!!??」


驚いている間にトランプを投げられ、ダーク3の額に刺さった。
そして、ピンク色の繭に包まれていった。


ジェイド「トランプで、ナイフを破壊!?」

ダークチャオ達は全てやられてしまった・・・。

フィル「メルトはそこら辺のメイドとは全然違う。人はみんな彼女のことをこう呼ぶのよ。」


月光を呼び出し、月光の似合うメイド。


月光のメイドと・・・・・。
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Lord 今までの「道」すじ
 キナコ  - 08/7/28(月) 21:50 -
  
CIA直属の工作員ユウヤ は任務で、国境を跨ぐロッキー山脈内のある施設に潜入する。
その施設内部にいた研究者レイヴァンの情報はユウヤをそしてアメリカをも驚かせるものであった。

CHAOという小さな存在が世界を大きく揺るがせる・・・
引用なし
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月光のメイド 『月光のメイド』4
 斬守  - 08/7/28(月) 21:50 -
  
辺りは夕方に戻っていた。何が起こっていたのかジェイドは理解できず、騒いでいた。ポヨが!や?を交互に繰り返しでていた。


ジェイド「待て待て待て待て!!」
フィル「うるさい。黙れ。」
ジェイド「なんでだよ!?なんでトランプでナイフを破壊できるんだよ!?」
フィル「メルトだからよ。」
ジェイド「答えになってない!!」


メルトは、しばらく部屋のかたずけをしていた後、転生した卵3つを縄で縛っていた。


ジェイド「おかしいだろ!?」
フィル「本当にうるさい。本当に黙れ。」
ジェイド「何でいきなり夜になったんだよ!?」
フィル「メルトだからよ。」
ジェイド「答えになってないって!!」


この2人はまだこんな会話をしていた。

メルトは全てを終えたのか、フィルのそばに近寄ってきた。


フィル「メルトご苦労様。食事の続きをやるから、こいつお願い。」
メルト「かしこまりました。」


そう言ってフィルは椅子に座り、食事の続きを始めた。


メルト「さて・・・困りましたね。何を説明すればよいのでしょうか・・・。」
フィル「適当でいいんじゃない?」


とフィルが食事をしながら言った。


ジェイド「まず、なんでいきなり夜になったのか教えてください!」


とジェイドが質問をする。


メルト「分かりました。ですがはっきりというと私にも分かりません。」
ジェイド「え?」
メルト「ジェイドさんは、『幻闘術』をご存知ですか?」
ジェイド「あぁ、昔お爺さんに話をされたことがあります。」
メルト「ジェネリクトによると、幻闘術に近い技らしいですが、私は幻闘術は主に使えません。もしかするとこの夜になる技自身が幻闘術で、能力を底上げする能力かもしれないと思ったのですが、道具を武器にすることなどは普段からできますのでよく分かりません。」


幻闘術とは火、氷、雷、風、光、闇の6つの自然現象を利用した戦闘術。取得するには数々の訓練が必要である。

しかしメルトの場合、夜にするような幻闘術は存在しないし、そもそも普段から道具を武器にすることができるのなら、意味のないものになる。


ジェイド「ってことは、夜になったからって強くなるってのは・・・。」
メルト「普段とあまり変わりませんから、なんなのかはやっぱり不明です。すみません。」
ジェイド「あ、いえ、分からないのならいいです。」
フィル「あら、私の時と態度が全然違うわね。」
ジェイド「メルトさんとフィルなら、メルトさんの方がいい人みたいだしね。」
フィル「呼び捨てするな、馬鹿が。」
ジェイド「(こいつ・・・・・!)」


怒りはやはり心の中にしまっておくことにした。
やはりストレスは体に悪そうだ。


ジェイド「じゃあ、何故トランプでナイフを破壊することが・・・。」
メルト「きゅうりをトランプで真っ二つするのと同じ原理です。もっとも鉄を真っ二つにすることは、なかなかできないことですが・・・。」


物理的に不可能な気がしたが、もうつっこまないことにした。


フィル「で、どうするのあんた。追っては全部捕まえたし。」


確かにここにいる必要性はなくなった。
僕の家族の場所に戻れるようになったということだ。


ジェイド「それなら帰ります。これ以上僕がいても迷惑ですから。」
フィル「素直なことね。メルト、街までおくってあげなさい。」
メルト「かしこまりました。」


そして、別れのときがきたのであった。


屋敷からでて、森をぬけて、僕の家のあるチャオティックルーインにたどり着いた。

そして、警察に犯人三人・・・・・卵三人を受け渡した。
自分は行方不明になっていたことは知っていたので、事情を説明したところなんとか説得に応じてくれた。

その間、メルトはメイド服を着ていたためいろいろと疑われたが、助けてくれた恩人と説明したら疑いは晴れたらしい。


そして、僕の家族・・・父、母、妹に迎えられた。


ジェイド「本当にありがとうございました。」


別れの前に、メルトさんに挨拶することにした。
家族はちょっと怪しい目でメルトを見ていたため、離れたところで待たせるようにした。


メルト「いえ、どういたしまして。」
ジェイド「あの時、あなたが屋敷の中に入れてなかったらどうなっていたことやら・・・。」
メルト「あぁ、その分はお嬢様に感謝してください。」


ジェイドのポヨは?になった。
何故、フィルに感謝しないといけないのかよく分からなかったからだ。
さんざん毒舌をはかれたのに・・・。


そう思っていたら、メルトさんは僕に説明し始めた。


メルト「本当は言ってはいけないのですが・・・やはり言っておきますね。」


僕は考えるのをやめて、メルトさんの話を聞くことにした。


メルト「あなたを屋敷にいれるように頼んだのは・・・・・お嬢様自身なんですよ。」
ジェイド「・・・・・え?」
メルト「つまり、お嬢様があなたを屋敷に入れるように私に頼んで、屋敷にあなたをいれたのです。」
ジェイド「メルトさんがいれたんじゃなくて・・・フィルが僕を屋敷にいれてくれたということですか?」
メルト「そうです。」


一体何故フィルが僕を屋敷にいれたのだろうか・・・・・。
なにかたくらんでいたのか?

そう考えている間にも、メルトさんは話しを続ける。


メルト「お嬢様は・・・本当は良心の持ち主なのですよ。そうでなければ、ヒーローチャオな訳がありません。お嬢様はあなたが困っていたので助けたのです。・・・・・人前ではあんなこといいますけどね。」


メルトさんはそう言うと、森の方に向いてこう言った。


メルト「そんなお嬢様を守るのが私の使命なのです。・・・・・では、またどこかでお会いしましょう。」


メルトさんは森に向かって歩き始めた。屋敷に帰るのだ。
僕はなにか一言言いたくて、叫んだ。


ジェイド「メルトさん!!」


メルトさんはこっちを振り向いた。


ジェイド「いつか、屋敷に遊びに行ってもいいですか?」


メルトさんはこう言った。


メルト「いいですよ。あなたいるとお嬢様が喜びますので。」


そう言って、メルトさんは森に帰っていった。


フィルはあんなこと言っていたけど、実は喜んでいたのか。

よく分からない方々だ・・・。


僕は今日、あの人達に助けられた。


でも、普通な人達じゃなかった。


大きな屋敷に住むメイドとお嬢様。


お嬢様は人前では嫌な感じの人だったが、本当は良心の持ち主だった人で・・・。


メイドは誰よりも強い・・・・・かっこいいメイドだった。


その名は・・・・・月光のメイド。


第一話「月光のメイド」          終わり
引用なし
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Lord 11話
 キナコ  - 08/7/28(月) 22:15 -
  
半強制的にオフィスを追い出されてしまった。
どうもすぐ仕事場に戻る様な雰囲気ではない。あれよりもまたいっそう冷たい視線を浴び続けなければならなくなるのだから。
―いいかげん覚悟を決めよ・・・。
そう自分に言い聞かせてはその紙切れを視線に合わせる。
元はといえばこのプリントの集合体が私に襲い掛かるからこうなったわけで。
・・・・どうもまだ腑に落ちないようね。
と自分の性格というものを再認識させられた。
そういえばよく言われる・・・。

「あなたは本当にわがままね〜」

「だまっていれば可愛らしいのに・・・女の子は性格も問われるのよ?」

「あとは正直になりなさいよ。嘘を付いてばかりなんだから・・・。」

「ねっ? アオイさん」
回想なのに本当に自分の名前を呼ばれているようで少しドキッとした。
亜麻色の髪を揺らす少女 アオイは思わず後ろを振り返る。
その時だった。
大きく弧を描きながら飛んでくる白を思わず手で取った。
―これは・・・私の携帯・・・。
どこから投げたのか。もうわかりきっている。
見上げてみれば答えはもうあそこにあった。

「いってらっしゃいな アオイさん!」

笑顔と激励。 アオイはしっかりと受け取ったのであった。


そしてそれから十数分後・・・。
彼女は狭い車内のシートの上にいた。
ひっきりなしに座席は揺れ、道にあわせて遠心力が身体に加わる。
しかしそんなことはお構いなしにアオイは携帯のTVに聞き入っていた。

『一昨日、国境沿いのロッキー山脈で発生した山火事は今だ消火活動が続いており・・・』
―こんな調子でTVは語ってくる。
それを私は呆然と聞き流す。だってあまりに単調なリズムだから。
「何かおもしろい事でもないかな?」心の中の口癖はいつもこれ。
「だってつまんないんだもん」 「もっと刺激が欲しい。」
未知なる物を追い求める事でも・・・
常に危険と隣り合わせの冒険でも・・・
胸焦がす様な大恋愛でも・・・
何でもいいから・・・・。


「お嬢ちゃん!ここいらかい?」
「へっ?ちょ・・・ちょっと待って!・・・・そこじゃなくて次のアパートまで。」
もう景色は乗り込んだ場所とは随分変わっていた。
こんな古くてオマケに煉瓦の壁は崩れかけてて、ストリートギャングとでも鉢合わせそうな場所。
実際にこんな所に来るのは初めてだ。
珍しい景色にアオイは車の中であっちこっちを見渡し世話しなく動き回っていた。

「彼氏の所でも行くのかい?」
「あっ・・・そんなんじゃないですよ!」
「そうかい?随分と楽しそうだからついそうかと・・・」
「彼氏かぁ・・・」
「まぁここいらは治安も悪いから気をつけなよ?お嬢ちゃんみたいな可愛い子がこんな所うろついていたら・・・」
「いたら・・・?」
「餓えた男共にパックリ食われちまう。」

―パックリかぁ・・・・
まぁ相手が相手なら別にそれもいいけど・・・・
適当に愛想笑いを作ってその場は過ごした。

お金を払って車を降りて、聳え立つボロボロアパートを正面に捕らえた。
四階建て程度の小さなアパート、その階の一番下、一番端っこの部屋。
紙切れが指示している場所。
私は難なくそのドアの前にまでたどり着く。

「この中を調べたら・・・いいのね?」
引用なし
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Lord 12話
 キナコ  - 08/7/28(月) 22:19 -
  
そっとアオイはドアに身体を密着させ、中の気配を確かめる。
誰かいるのか?それとも留守か?
神経を研ぎ澄ませ目を閉じ集中させる。
すると・・・うっすらとだが部屋の中に誰かがいるのが【みえた】。
本当にうっすら。何をしているのかも部屋の間取りさえもわからなかったが・・・
この中には人が居る!
何をしているのかまでは【みえなかった】が充分だ。
アオイはそっとドアノブに手をかけてゆっくりと回した。
―鍵が掛かってない? 嘘でしょ・・・無用心にも程があるわよ!
声には出さず、ドアをゆっくりと押した。

内装は少し広めのワンルーム。その一部屋というのは入って真っ直ぐの所に在った。
玄関から中を全て一望できる訳ではないが、ほぼわかってしまう。
彼女はその廊下を難なく通過した。
そして部屋に一歩踏み入れた瞬間。

ガタ ガタガタッ
と不審な物音が聞こえてくる。
どこから? 何の音?
思わずこの狭い部屋を見渡した。内装は小さな丸い机と、テレビだけ。
他には家具らしき家具なんて見当たりはしない。
そして今更になってこの内装は日本の部屋である事にも気がつく。
また・・・
あの不審な音はあの押入れの向こうからだという事にも気が付いた。

―まさか・・・あんなとこに隠れるか?
と疑問は浮かぶがそれ以外に隠れられそうな場所はないという証拠もある。
―開けてみるしかないか・・・。
さっきから想定外の出来事続きで心臓の音がうるさい位に激しい。
それを落ち着かせる為、軽く呼吸を整えて・・・・
渾身の力で横にスライドさせた。

「・・・あれ? ケータイ?」
そこにあったのは綺麗に折りたたまれた布団と枕。
不自然な位置に置いてあった携帯電話。
もしかして物音の原因は・・・・これ?
ケータイから手を離そうとしたその時であった。
後ろから不意にバランスを崩され派手にこける。
一瞬にして視界が天井にへと切り替わった。

「動くな」
今、アオイの頭上には銃口が向けられていた。

―嘘 ってかいつの間に・・・・・
もうこうなってしまえば身動き一つとれやしない。
下手をしたら自分の命さえ奪われるかもしれない 
今、アオイを乱暴にねじ伏せている男はそうだと記されていた。
このまま黙っているわけにはいかない。
彼女は男の問いかけに応じることなく着々と打開策を考えるのであった。
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Lord 不定期に載せる紹介
 キナコ  - 08/7/28(月) 23:01 -
  
ユウヤ
CIA直属の工作員。黒いロングコートを身に纏い、黒髪黒目の姿。
銃火器の技術、知識に長け、特に短銃(ハンドガン)を携帯している。
彼の愛銃は「コルト アナコンダ」4インチモデル、Mk-Vシリーズの大型リボルバー。
大型バイクを乗りこなしているが本人の物かは不明。
任務成功を第一としており、任務に関係ない物事にはまったく興味を示さない。
これ等の理由から「薄情な奴」とか「機械人間」とも言われる。


レイヴァン
ロッキー山脈内の施設で研究を強いられていた研究者。
顔立ちは整っているが無精ひげを生やしている。
軽い性格でかなりのおしゃべり。しかし人の話を聞くのは大嫌い。
女好きでもあるためどうしようもない様に見えるが頭の切れる人物。
名前の由来はサングラスメーカー 『Ray-Ban』より。


ハワード
ユウヤの上司、階級は中佐。
レイヴァンからのSOSを間接的に受け取った彼はユウヤを調査員として派遣。
自身はユウヤのバックアップとして彼に指示を与えていた。
しかし任務中無線が破壊されてからは登場していない。
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ニコタロ´ 〜ただのおまけマンガ〜
 ぺっく・ぴーす WEB  - 08/7/29(火) 17:00 -
  
週チャオにも雑誌とか新聞みたいに、
四コマ漫画とかあるといいですよね。
いらない?
だまらっしゃい。
せっかくだからさらしてみるよ。
添付はしないよ。重たいんだよ。
4分の1が漫画であとの4分の3は落描きだよ。
ノートの切れ端に鉛筆描きで
びっくりするくらい見づらいから
そんなときは素直にクレームするといいと思うよ!!

本編はこちら

こっちはおまけです。

タイトルはニコタロダッシュと読みます。
早い話が番外編です。
Final dashとは関係ありませんなんだぜ。
引用なし
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