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Lord 19話 キナコ 09/1/13(火) 22:45
Lord 20話 キナコ 09/1/13(火) 22:46
感想コーナー キナコ 09/1/13(火) 22:47
感想です。 トリップ 09/1/18(日) 0:05
返信だよ キナコ 09/1/18(日) 2:35

Lord 19話
 キナコ  - 09/1/13(火) 22:45 -
  
「…………ぁ…さか…」
テーブルの上にもたれかかるようにした状態で目を覚ました。
とても身体がダルい。しっかりと寝た感触は得られなかった。
それもそのはずだ。
何ていったって、あれから色々と話す予定だったんだから。
どのみちまた今回の仕事の事にも当然触れられる。
まだ完全に終わってない事を突かれるのはどうにも気分が悪い。

椅子から立ち上がってこのうっとうしい睡魔と気だるさを振り払う。
おぼつかない足取りで、かすかに外から入ってくる光源を目指す。
丁度カーテンとカーテンの微妙な隙間から、テーブルで寝ていた俺の顔にこの眩しいのが来てたんだろう。
閉めとくべきだったか・・・
そんな後悔は…要らないな・・・。

渾身の力で払うと、外には光が満ちていた。
そしてまた奇妙な事に、同時に水も満ちていた。

「狐の嫁入り…なんて珍しいな……」
晴れというよりもほとんど雨に近い。
穏やかそうな日光は仮初のもので、結構雨脚も強そうだ。


外出もまともにできそうにない。
その時ユウヤの頭の中で、ある人物の事を思い出していた。

昨日は来るとわざわざ伝えてきた位だ、ここから予定を変更するような人間じゃあない。
そしてまた…仕事明けの人間を用事に付き合わすなんて事を平然とやってのける人間だ。

それでも部屋を見渡したところで、寝る前と変わったような点は何一つ見当たらない。

よほどの急用でもできたんだろうな。
そう勝手に結論付けて、次はもう一つの問題にかからなければならない。
あれくらいの子どもは、もう起きている頃合だ。
この天候では家に居る事はわかりきっている事で、どう想像してもいいようにはなりそうもない。
ただ覚悟を決めて扉を開ける。

「パパ!お早う!!」
赤い髪をなびかせて駆け回るラシェル。TVの前から一直線に駆けてきてはベッドを飛んだりはねたりの大騒ぎ。
しかしそれ以上にパパという言葉に抵抗感を感じる。ただ受け止めるしかないのはわかってても気持ちが悪い。
それでも普通に挨拶を交わす。

「ゼルエルは?」

「あそこ」

部屋の隅っこで腰を下ろして何かに没頭中のゼルエル。
それを挨拶がてら確かめる。
「ゼルエル、おはよう。」

「…おはよう」

「何してる?」

「……本を読んでる。」
そう言って見せてくれた本のタイトルにはデカデカとこう書かれていた。
黒のカバーに金の字で書かれたそれはある種の威圧感さえ感じ取れる。
ただ呆気にとられながらユウヤはよんでいた。
「・・・・・広辞苑?」

「…棚にあったよ…」

そう言う棚の並び方はグッチャグッチャになっていた。
読みふけったのかも知れない。
参考書とか辞書とかばっかりだけど。


「…外は雨降ってるしお家の中で食べようと思うけど何か食べたいのある?」

「ハンバーガーがいい!!」

「ゼルエルは?」


「…………食べられたら何でもいい。」


「・・・・じゃあ買ってくるまでお留守番頼んだぞ。」


「はーい!!」 「………」


それから十数分経過してこの雨の中、傘を差して街へと移動するユウヤがいた。
相変わらずの雨脚。朝方と変わった所があるとすれば、日光も遮られて雨模様らしくなった事位だ。
行き交う人もまばらなもので、人の会話と走っている車等につい気が向いてしまう。

「さっき向こうで警察集まってたけど何があったんだろうな?」

「何にしてもこの辺りであれだけ警察が集まるなんて珍しいね、事件かな。」

そんな会話を耳にしながらユウヤの横を一台の車が通り過ぎる。
パトカーだ。赤いランプを輝かせて、ユウヤと同じ方向へ向かっていく。

「・・・ハワード?」
思わず呟いた。
何故だかわからない。けどこの凍りつく様な寒気が背筋を冷やしていく。
心音が異常に早く鳴っていて、口の中が乾いてくる。

昨日あいつは来るといっていた。
わざわざ電話もかけてきた。
なのに起きてもそこにいなかった。
そもそも電話をかけてきたのに…来ないわけが・・・。

まさか・・・・嘘に決まってる。
任務の事後処理に追われているだけだ。
忙しいだけだ。

そうだろっ? ハワード…いや…


そうなんだよなっ?


親父っ!
引用なし
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Lord 20話
 キナコ  - 09/1/13(火) 22:46 -
  
いつの間にかユウヤの身体はずぶ濡れだった。
傘の意味も、もはやなしてなんかいない。
ただこの警告に従って走っていただけだ。
周りを気にする事も、自分の事を気にかけてる事もなく。
走って、走って、ずぶ濡れて。
赤い光が警告している場所にユウヤは辿り着いた。


簡単な雨よけが二つ三つ中心にあって、それを囲むようにパトカーと警察官。
そしてその外を覆っているのは多数の野次馬だった。
遠くからは何の様子も見えない。
邪魔だ。どけ。

ユウヤはそう発しながら、人ごみをさっさと潜り抜けていく。


「すいません!関係者以外は立ち入り禁止です!!どいてください!」

関門となっているその警察官。
ユウヤのただならぬ気配を少し感じ取ったのか、彼に向けてこう言った。

「関係者の方ですか?」
やっと人込みを掻き分けて、その警察官の目の前に立った。
さっきからきょとんとしているそいつにユウヤは内ポケットからとりだしたものを見せつけた。

「CIAだ。差し障りのない程度でいいから事情を説明してくれ。」

「はっ!こちらへ。」
若干のどよめきが野次馬に生じたが、流石CIA。
国家直属の機関だけあって話が早く通る。
ただそれだけでは疑われる。何か適当な理由は…。

「しかしCIAは国内は管轄外では?」

「国外で暗躍しているテログループがこっちに渡ってきている可能性もある。はっきりと決まるまでは深入りしない。」

「はっ…わかりました。」

「それで、いったい何があった?」
こう言ったとたん、背筋に走る寒気が一層強くなった。
絶対この事とハワードは関係ない。
親父は何ともない!
ただの思い過ごしだ!!


「本日早朝、この道路脇に男性が倒れているのが発見されました。そして付近に銃痕が一箇所。」


「付近には食料品やお酒などの他、携帯電話が発見されました。」

「その携帯電話から身元は?」

「暗証番号がかけられている為、本部へ輸送してからでないと…」

「……わかった…。」


ユウヤは携帯を開いた。そして同時に遺留品を丁寧に扱っている担当の一人に視線を合わせた。
どうにも暗号解除をするための機材もろくになくお手上げ状態らしい。


ただ、ユウヤは自分の携帯電話の中のアドレス帳を開いた。
そこに記された名前と、電話番号。
その電話番号に通話ボタンを押した。


すると…


ブー! ブー! ブー! ブー…

「被害者の携帯が鳴りました!」

「貸せ! 俺が変わる!」
奥から出てきた刑事らしき人物がその携帯をとりあげた。


「もしもし。警察ですがあなたのお名前は…」

その声が目の前と、あわてて隠したポケットの奥から同時に聞こえてくる。
相手は気づいていない。まだ勝手に話を続けている。

「あなたが本来通話するはずの人は、今朝死亡が確認されています。」


嘘だ…嘘だろ…。
今。何ていった。


死亡?

そんな馬鹿なことが…

「あるわけねぇだろ…が…」
刹那。
世界が歪んでいく光景がユウヤには見えた。


「……ぃ……で…か? だ…じょ……ぶ…?」

「大丈夫ですか!?」

「ぁ…」
視界が定まった時、丁度車内ライトが目の前にあった。
ということは俺は…気を失ってたのか?
あんな人前で?

身体は意外にも軽くて今朝起きた時よりもスムーズに身体が動く。
感覚もいつになく敏感だ。
若干背中が濡れているのも、そのおかげか直ぐに気づいた。

「気を失われていたようですが大丈夫ですか?」

「……ちょっと立ちくらみしただけだ。」

「よければ救急車をお呼びしましょうか?」

「いい。それよりも…」
一拍おいて、周囲を見渡す。
どうやらパトカーの車内でいままで倒れていたらしい。
現場がここからありありと見える。

「この事件の犯人は捕まったのか?」

「いえ…現在捜査中で…」

「あれだけ派手にやってくれたんだ。重要証拠の一つや二つはもうとっくに出てきているはずだ。」

「それが…この雨で捜査が非常に困難となっているんです。」

「どういうことだよ」
捜査員と思しき一人は、外に視線を合わせながら、なおかつ気まずそうに説明した。
フロントガラスには水滴が無数に付いていて、その数は増えていくばかり。
水滴が付いたガラスの向こうには、今もあわただしく捜査は稼動している様だった。

「この雨で血痕は流されてしまい、目視レベルの証拠は見つかっておりません。」

「・・・・」
ユウヤは思考を展開する。


―外の様子は相変わらず雨模様。犯人はおそらくこの状況を狙ってやったんだろうな。
となると、ただの通り魔でも殺人鬼でもなく明確な目的があって殺した訳だ。

いったい何の為に?

ハワードは名目上としてはアメリカ陸軍中佐となっている。実際は別組織に入っているんだが…。
連中は…どこまで知っているかどうかだ。
ただ、どっちにしてもこの件は単純な殺人事件では済まないだろうな。

警察もそう簡単に犯人は突き止められないだろうし…。


「おい。」

「はっ…何でしょうか?」

「使われた銃火器の特定はできてるのか?」

「い・・いえ。現在手配中ですが…」
頼りない…でも好都合だ。

「一応手配の事だけど、俺の知り合いにいい腕持ってる奴いてさ。そいつにまかせたいんだ」

「は…はぁ。それは上に通してもらわないと・・・」
戸惑う捜査官。
当たり前の反応だ。ユウヤにだってこいつが下っ端の一人だという事は気づいていた。
当然、このまま要求が通るわけはない。
CIAの名前を全面的に押し出すか…

「これ 捜査令状。」

捜査員の眼がしきりに動き出した。
今、必死になって内容の記憶に追われているのは一目瞭然だ。
長ったらしく硬い文章だが文面はおおざっぱに記憶している。

政府から直接命を受けた当諜報員に特例をかしている、政府に連なる機関は協力を要請しろ。

って事。


「通してもらえる…よな?」


「わ・・・わかりました!!」


さてこっちの方は多分これでいい。
後はもう一方をなんとかしないとな…。

とりあえず車を降りたユウヤは財布から二枚とりだした。
この二枚が活路を見出してくれる。

まずは一枚目が記す所へと向かっていった。
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 キナコ  - 09/1/13(火) 22:47 -
  
感想コーナーだよ
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感想です。
 トリップ  - 09/1/18(日) 0:05 -
  
どもです。
週チャオが休刊ということですがLordはしっかり続いてくれそうでなによりです。
これからもトリップはキナコsを全面的に応援する所存でございます^^

では早速感想をば。
今回もまるでプロの作家が書いたような読み応えでした。
すらすら読めるのに文に重みがあり、シリアスな雰囲気ととてもマッチしていましたよ。

それにしてもユウヤとハワードの意外な関係にはびっくりしちゃったぜ。
心象表現も参考にもすべき所を痛感致しましたー。
チャオ小説では珍しい(のかな?)サスペンスな展開に
ドキドキしながら次回を待つとします。

以上、剣と石との復活を密かに願うトリップからの感想でしたー。
それではー
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返信だよ
 キナコ  - 09/1/18(日) 2:35 -
  
うれしいお便りありがとうございます。
はげみになります。やはりこういう感想お便りは支えになりますよ本当に。

キナコは戦闘書くの苦手だし加減のわからない奴なので。
暴走が心配です。 本当に。


しかし書く気力はこの感想で異常なほど湧きました。
どうかキナコWORLDに存分に脚を踏み入れてください。


剣石は原稿消失という痛手もあり、大幅な変更がありますが続けます。
先にこれを書ききってからですけど。


それではまた次回よろしくです!!


@チャピルさんや編集員の皆様方。
Lordは引き続き書いていきますので保存の方を何とぞよろしくお願い申し上げます。
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