●週刊チャオ サークル掲示板
  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃チャットへ ┃編集部HPへ  
2170 / 2221 ツリー ←次へ | 前へ→

☆★☆週刊チャオ チャオ生誕10周年記念特別号☆★... チャピル 08/12/23(火) 0:00

2メートル50センチ --1 チャピル 08/12/23(火) 0:01
2メートル50センチ --2 チャピル 08/12/23(火) 0:04
2メートル50センチ --3 チャピル 08/12/23(火) 0:04
2メートル50センチ --4 チャピル 08/12/23(火) 0:04
2メートル50センチ --5 チャピル 08/12/23(火) 0:04

2メートル50センチ --1
 チャピル  - 08/12/23(火) 0:01 -
  
僕はため息をつく。
まさか旧友との再会がこんなにも疲れるものだなんて、思いもよらなかった。
昔は何の隔たりもなかった二人が、今ではこんなに気を使ってしまうのはなぜだろう。
それがつまり、仲違いというものなのか?
いや、しかし彼は僕にとっていつまでも親友で、彼にとって僕もいつまでも親友だと、そう思う。でなければ、いくら誕生日が近いからといって、プレゼント交換のためにわざわざ時間を割いて再会しようなどということにはならなかったはずだ。
……それだけが親友として、本当にするべきことなのだろうか。
僕には分からない。僕が何をすればいいのか。

再会前に感じていた不安の二割は喜びへと昇華した。でも、残りの八割はこの、ぐるぐると渦巻く、何とも言えない心の重荷として僕にのしかかっている。
何だろうこの気持ちっ!……なんて、ナックルズのような台詞を言ったところで、彼には分からないんだろうな……
彼がソニックXを見ていたという話を、僕は聞いたことがない。
そう、彼はもうチャオを育てていないし、ゲームもほとんどしないし、だから僕と彼の価値観は、あの時から大きく変わってしまった。
毎日のようにソニアドを共に攻略し、毎日のようにチャオの育成状況を報告し合ったあの日には、もう戻れない。


小学校を卒業すると、自動的に僕らは同じ地区の中学校へと進学できる。
だから僕は当然のように、彼と同じ中学校に行くものだと思っていた。学校がどうなろうと、放課後、彼と遊び続ける生活は変わらないものだと、思っていたのに。

中学校から本格的に勉強を開始するというのは、彼の両親の方針だったらしい。
彼は近所に一つだけある、国立大の付属中学の受験を決めていた。そしていつの間にかそこに受かって、彼の生活は、途端に忙しくなっていった。
時々彼の自宅まで遊びに行ってみると、話は出来るものの、一緒にスポーツやゲームをするような時間はなくなった。
それでも何度も彼と遊ぼうとしたのだが……いつからか、次第に僕も諦めに気づき始めた。
一応連絡を取り合っていたので、友人としての関係は維持できていた。けれど、それが僕には不満だった。

僕は小学校のときのような関係を望んでいたんだ。
端から見れば、それは幼稚な望みのように思われるかもしれない。
でも、遊びの時間というのが当時の僕にとっては、とても重要だったんだ。


二メートル五十センチという言葉が、僕の頭の中に浮かんできたのは、いつのことだろう。
もし、写真家が僕ら二人の距離感を表現する写真を撮るとしたら、写真家は僕と彼とを、二メートル五十センチ離して立たせて、それを撮る。
なぜならそれが、僕ら二人の距離感だからだ。
近いとも遠いとも言えない。
この距離を縮めるために、僕が必要とするのは時間である。それは分かっている。
でもその時間は、もうない。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.5) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

2メートル50センチ --2
 チャピル  - 08/12/23(火) 0:04 -
  
彼と再会するきっかけとなったのは、ほんの些細なことだったのだけど、それは一つの誕生日メールだった。
もともと、僕と彼との誕生日は非常に近い。一日しか違わない。
だから僕らは小学校のときも出席番号が隣り合わせで、それをきっかけとして仲を深めていったように思う。
でも、それだけではない。

彼とは不思議と馬が合った。
例えば、小学校六年生の時に修学旅行があったのだが、あの時の僕らの班の計画は僕と彼の二人がいなければ決してまとまらなかったと断言できる。
互いに意見を交換すればするほど、彼と僕との間では、不思議な推進力が発生する。
僕のアイディアは彼によってより具体化され、それを僕が実行して……また逆も然り、というような、正の方向へのスパイラルが、僕ら二人の間ではいつも成り立っていた。
喧嘩したこともなかったと思う。
そしてそれぐらい仲が良かったのに、まるで兄弟のような間柄だったのに、いざ再会してみると、こんなにも違和感を感じてしまう。

彼は中学高校と必死に勉学に励み、社会の上へ上へと、一歩ずつ着実に歩みを進めていったのだろう。
一方の僕は、悠々と遊びに時間を費やして、他は割とほったらかしにしていたが、まあ、なんとかなっていたという、すごくいいかげんな人生だ。
僕がまだチャオを育てていると言うと、彼はとてもビックリしたというような顔をした。
今回の再会では、彼が僕の自宅へ訪問するような形だったので、ゲーム機を引っ張りだしてきて、一緒にチャオレースなどもやってみたのだけど、全く覚えていない様子だった。
それも仕方がないかと、僕は思った。
自分とて、今までにいつどのタイミングでチャオを止めていたか分からない。そんな僕が彼を責めることは出来ない。

なぜ僕がチャオを止められなかったかと言えば、それはおそらくCHAO BBSの存在を知ってしまったからだろう。
あそこで他のチャオファンとたくさんことによって、自分も、チャオブリーダーとしての知識も格段に身につけたのだから、チャオの奥深さに触れることが出来た。
でも、彼は違う。
彼の家にはもともとPCもネット環境もなかった。
環境が彼にそうさせたのであって、もし僕が逆の立場だったら、おそらく同じ道を歩んでいたことだろう。
それは自明だ。
だからこのもやもやの正体は、そんなくだらないことではない。
何なんだ、一体。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.5) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

2メートル50センチ --3
 チャピル  - 08/12/23(火) 0:04 -
  
あの再会の場面で、彼は僕に対してどんなふうに思って接していたのだろうか。
僕が今、彼に対して抱いているような、ひどく不器用で、言い表しようのないもやもやを感じながら接していたのだろうか。
僕には、そうは思えない。
彼のそぶりはナチュラルだった。
そもそも彼は、固より自分が他人からどう思われるかなんて、全然気にしていないようなところさえある。
彼は小学校のときからずっといじられやすいキャラだったが、それでも楽しく生きていた。
いつだってそうなんだ。

ひょっとすると変わってしまったのは、彼ではなく、僕の方なのかもしれない。
勉強や社会というものから目をそらし、結果としてチャオの世界へ逃げ込んでしまった僕が。

チャオBや、そこで育まれていたたくさんの文化……チャオ研究やチャオ小説といったものに多大な感銘を受け、そこにたくさんの時間と労力を費やしてきた。
でも、一つだけ、恐れていたことがある。
それはこの世界にいくら力を注いだとしても、周りの人は誰もそれを理解してくれないということだ。
例えばチャオBに立てた企画ツリーが今までにない成功を収めた。そう誰かに伝えたとして、その価値を分かってくれる人がいるのだろうか。
その答えは、Yesだ。
同じBBSの参加者なら、きっとこの感情を理解してくれる。

僕にとって、チャオとは、世界の縮図だった。
チャオの持つ、統一的な遺伝のモデル。
チャオBBSで繰り広げられる、若年層と高齢層の衝突。
そして週チャオには無数の作家群と、それを束ねる編集部という「社会」がある。
現実にも適応できそうなたくさんのパターンを、僕はそこに見出していた。

こんなこと、現実という世界に生きる人達に言っても、なかなか伝わらないのかもしれない。
でも、その当時僕が求めた社会的承認というのは、全てそのチャオ世界の中に通じていた。
それが僕にとっての現実であり、実像だったのではないだろうか。
今になって思う。
真に現実に取って代われるようなバーチャル・ワールド、というのは、いつだってチャオのような姿をして現れるのかもしれない。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.5) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

2メートル50センチ --4
 チャピル  - 08/12/23(火) 0:04 -
  
週刊チャオと呼ばれる、チャオに関係する創作活動を日々行っている集団がいる。
「週刊チャオ」とは彼らの発行する仮想週刊誌であり、今日もチャオ小説を中心とした様々な作品が掲載されている。
実は2ちゃんねるよりも長い歴史を持つ。

昨夜、その歴史にピリオドを打つことを決めた。
徐々に減っていく参加者。今や誰もが個人でウェブサイトを作れる。ニーズの低下は明白なのに。
休刊を提案すると、皆が口を塞いだ。

そもそも僕は単なる一人のコミッターだったはずなんだ。
それがいつの間にか、重要なポジションを担うようになっていた。
この週刊誌には、季節に合わせた企画がいろいろとある。
そういうのに、口を出していた。面白そうな企画であれば、進んでプッシュしていた。
良く言えば、実行力があったということなのかもしれない。
気がつくと中心的な立場に立っていて、休刊を決断しなければならないのも、なぜか自分だ。

実行力と決断力は全くの別物だと思う。
事を始めるのと、事を終わらせるのでは、全く違う。


僕は怖いんだ。一人だけで責任を負うのが。
みんなどうして自分の意見を紡ごうとしないのか、わけが分からない。
実はこの決断をする前の日に、僕の隣の席のやつが言った「善悪は結局のところ多数派によって決められる」という理屈に、ひどくイライラしていたところだった。
その時は口に出さなかったけれど、僕は自分の意見すら持てないような人間を、非常に恥ずかしいものだと思っている。
善悪のようなグローバルな話でも、週チャオのようなローカルな話でも、その「場所」を作っているのは紛れもなく自分たちであるというのに。
目の前にして逃げるのか?
このコミュニティの原則は全員参加にあるはずだろう?

だからそのイライラした感情のまま、僕は一人で半ば伝言板と化したチャットルームに書きなぐった。
脅迫にも近い形で、全員参加を訴えるような文章だ。
もちろん、こんな文章で全員が意見を述べてくれるとは思わなかったけれど、二、三人なら、乗ってくれる気がした。
すると、案の定、一人の男がその意見に口を出してきた。僕はにんまりした。
そんな脅迫まがいの事はやめろと言う。ついでに、聖誕祭で休刊の方針に賛成だとも言う。
これだ。これを狙っていたんだ。僕はますますにんまりした。
この一連の書き込みは、あなたにそれを吐かせるための罠だったのだよ!!
あなたに意見を出させ、それが休刊決断へと、僕の勇気を後押しするようにね!!

なんて、決断した後ならこういう考えに駆られるのだけど、これが真相だったかどうかは、実は自分自身にも分からない。
僕の発想は常に突飛で、解釈は後から論理的っぽくするために付け足しているのではないかと考える事がよくある。
実際のところ、その脅迫の内容……僕がそのコミュニティを離脱する事で、根本から倒壊させて終わりにするという、それも結構本気で考えていた事なのだ。もちろん、彼が発言してくれた以上、それは彼を釣るための餌だったということになってしまうのだが。
僕の思考は常に仮定と経過と結論とがごっちゃになっていて、どうしようもないぐらい混沌としている。
だから、仮定や経過から考えたのか結論から考えたのか、ニワトリとタマゴの話のように、僕にだって、分からないんだ。

一つだけ言える事実は、僕は昨夜決断したんだということ。
決断してみて分かったのは、実はみんな結構優しかったんだということ。
たくさん迷惑をかけたのに、何事もなかったかのように許してくれてありがとう。
この四年間は、本当に最後まで僕を成長させてくれた。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.5) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

2メートル50センチ --5
 チャピル  - 08/12/23(火) 0:04 -
  
本当のところ、僕は彼から認めてもらいたかったんだと思う。
今までこのチャオBという空間で僕が身につけてきた知識を、技能を、そして、僕がこのBBSに、何を貢献してきたかということを。
しかしながら、その貢献は結局のところ、彼には何ら関係のない世界での出来事なのだ。
僕はこのチャオ世界での出来事がどうすれば理解してもらえるのか分からない。
彼だけじゃない。
僕の周りに生きるほとんどの人は、このチャオ世界に触れることなく一生を過ごしてしまう。

彼なら理解してくれると思っていた。でも、チャオを忘れてしまった彼にとって、こんな世界の存在を知り、そこでどのような富が動いているかなんて、そもそも関心になかったんだ。
僕は彼に、自分がチャオ世界に置いてきた作品を、自慢できない。
一方の彼は社会的にみんなから理解を得るような道を選んで、そうして実力を僕に見せつける。
悔しいんじゃない。悲しいんだ。
自分で言うのもなんだが、僕ら二人は、どちらも頑張ってきたと思うよ。
でもその力が別々の方向を向いている限り、もう昔のような、新しいミラクルが生み出せるようにはならないんだろう。
それがとても悲しい。

僕は彼の背中を追いかけたいとは思わない。
ここ数年間、社会のルールにへそを曲げて生きてきた自分に、今更そんな道が似合うとも思えない。
ただ、僕には自信を持って言えることが一つある。
彼の存在も、チャオの存在も、僕にとっては同じ世界だ。

僕が彼と出会ったことは、今でも僕の胸の中で光り輝く思い出だ。
僕がチャオと出会ったことは、そこで身につけた知識や技能は、いつまでも深い体の奥底で眠る。
僕は決して、この二つを無駄にはしない。
だから僕は言う。ありがとう、と。
それは別れの挨拶である。もう彼らは僕の生きる道しるべ、羅針盤ではないのだ。
でも、僕は彼らをいつまでも思い続けながら、生きていける。
道がなくても進んでいける事を示してくれたのは、彼らだったのだから。

僕のハンドルネームには今でも、君と僕の、二匹のチャオ達の間に生まれたあの子の名前が使われている。
だから、必ず。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.5) Gecko/2...@ntttri018177.ttri.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp>

  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃チャットへ ┃編集部HPへ  
2170 / 2221 ツリー ←次へ | 前へ→
ページ:  ┃  記事番号:   
56407
(SS)C-BOARD v3.8 is Free