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☆★☆週刊チャオ第332号(8月1週)【表紙】☆... チャピル 08/8/2(土) 0:00 [添付]

魔法のサンクチュアリ 16-1 ろっど 08/8/2(土) 10:07
魔法のサンクチュアリ 16-2 ろっど 08/8/2(土) 10:09
魔法のサンクチュアリ 16-3 ろっど 08/8/2(土) 10:10

魔法のサンクチュアリ 16-1
 ろっど  - 08/8/2(土) 10:07 -
  
「なんだあれ」
セントリーナス上空―そこに辿り着いた一行は、驚愕した。
上空に、雲に隠されたそこに、巨大な城が浮かんでいたからだ。
間違いなく、本拠地だと、優輝の直感が告げる。
探す手間が省けたようだ。
「よし、ここで止めてくれ」
「了解」
船長が答えると、優輝はすぐに甲板に出た。
乙姫が待っている。
「さあ、助けに行くんでしょう」
「うん」
「全く、優輝といると、侵入経験が豊富になりますね」
「最もだ」
それぞれの思いを乗せた船から、彼らは飛び降りた。
風が運ぶ。


 魔法のサンクチュアリ 16 -父親-


間違いなく、城である。
このような城が上空に浮かんでいるのは不気味だったが、とにかく考えている暇なんて無い。
侵入に気がついた相手が、行動を起こしている頃合だろう。
「行くわよ」
難なく城に入った優輝は、不気味な気配とは別に、何かの寒気を感じていた。


「わっかんないわね、どこかしら」
「乙姫、一人でも大丈夫?」
「もちろんよ」
うなずく乙姫。
「俺とナイトとスカイで向こうを探す。乙姫は向こうを頼む」
「分かったわ。何かあったら叫びなさい」
「分かった」
二手に別れ、優輝はそそくさと走り出した。
それにしても、城内は静かだ。
音一つしない。
「罠、でしょうか」
「だろうな。だが、いや……」
考え込むスカイ。
裏腹に、優輝は目をこらし、神経を集中させていた。
「ナイト、この建物って……」
どこかでみた事があるような気がして、優輝は訊ねようとしたが、首を横に振る。
「なんですか?」
「なんでもない。それより、縦に長かったから、上の階があるんじゃないか?」
「そうですね、最上階に行ってみましょう」
どうやって、とは訊ねなかった。
行くといったからには行く。
優輝は天井に向けて右手を突き出した。
「“圧縮する風圧”!」
天井を突き破って、優輝は上へと進んで行った。


すたん、と着地した場所は、真っ暗で何もなさそうなところ。
「まだ最上階じゃないのかな?」
「おそらく、まだ上がありますね」
「行こ―」
「侵入者か」
声がして、優輝は振り向く。
誰だ、と訊ねる前に、炎が放たれた。
とっさに身を捻って避ける。体をそのまま回して、体制を整えた。
「“Full winding”!!」
風が優輝の後ろから飛んできた。その風は声の主に向かっていく。
しかし、割れる音がして、風は別方向の壁に激突した。
「乙姫、なんでここに?」
「魔力の気配を辿ったのよ。それより、まだ上があるんでしょ。ここは私がやるから―」
すっと右手を出して、
「あなたたちは上に、行きなさい!」
風が優輝とナイト、スカイを天井へ放つ。
そうはさせまいと、声の主は炎を放ったが、それは風にかき消された。
「あなた、誰?」
「名乗る名はない」


「痛っつっつー」
頭から激突したせいで、頭に激痛が奔った。
すぐきょろきょろと見回す。
ナイトも探すが、なにぶん暗闇だ。ナイトの“保存機(コンサーヴァス)”程度しか役に立たない。
「どなたですか?」
「人がいるぞ、優輝」
優輝は声を頼りに、その方向へ向かった。
「助けに来ました」
「助けに……? わたくしを…?」
「はい」
その女性はわずかに泣いて、優輝に飛びついてきた。
いい匂いが鼻をかすめて、優輝は戸惑う。
「急いで、はやく、逃げます!」
「「“Full winding”!」」
ナイトとスカイが同時に叫んで、優輝たちを飛ばした。
一気に階下まで落ちた優輝らは、乙姫がそこにいるのに苦笑いして、すぐ走る。
「とりあえず拘束しておいたわ。問題ないでしょう。とにかく、逃げるわよ」
抱えた女性の表情が、段々と見えてくる。
真っ白の中にも、やわらかそうな肌が目に入る。
いやいや、魔法界には美人しかいないんですか、と優輝は思った。
「乙姫、この子を!」
抱えた女性を乙姫に受け渡すと、先に船に乗らせた。
優輝も、上空に浮かぶそれから、船に乗ろうと足を出し―
「手遅れだ」
声がした。
「優輝! はやく!」
まさか、と優輝は思って、振り向く。
有り得ない。
あいつがここにいるはずがない。
「“空間切断”」
そう言った男は、自ら城を砕いた。
崩壊した法則が、その城を上空に留まらせない。
足場を失った優輝は、慌てつつも何とか岩の破片にしがみついた。
「優輝!」
「落ち着いてください、優輝」
「落ち着け。まず船へ―」
「なんで、なんで!!」
優輝は叫ぶ。
「俺はメシア=フォース、第三の冠…江口、」
男が言った。
「敬三だ」
引用なし
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魔法のサンクチュアリ 16-2
 ろっど  - 08/8/2(土) 10:09 -
  
「なんで!!」
「“Blast wind”!」
放たれた爆風が、船を押し返す。
岩にしがみつくだけで精一杯だった優輝は、船に戻ろうとして失敗した。
乙姫の叫び声が、かすかに聞こえた。
「誰です、彼は」
「俺から教えてやろう。そいつの父親だ」
みれば、どこか優輝の面影があった。
「父親がメシア=フォースの…?」
「さて、戦闘に関して、実の父が評価してやる」
ぶん、とすばやく、崩れた岩の上を渡った敬三が、優輝に向けて右手を定めた。
「“Blast wind”!」
「“Full winding”!」
爆風と風圧の激突。
それらは突風となって渦をなし、岩をさらに砕いていった。
「何もしなければ、死ぬだけだ、江口優輝!」
「“ディフォーム・コントラクティ”!!」
驚きに目を見開いた、ナイトとスカイ。
それらの“保存機(コンサーヴァス)”が、優輝の両手に吸収されていく。
片方は白い、篭手。片方は黒い、篭手。
そして、それらから突き出る巨大な爪。
長すぎる鎖が二つの爪を繋ぎ、優輝はその爪を岩に突き刺した。
「腕を覆いかぶさるかのような篭手爪……黒と白、両極端を表す“ディフォーム・コントラクティ”…なるほど、やつと同じか!」
「らあああっ!!」
優輝が叫び、右手の爪を敬三に向けた。
それと同時に、爪は敬三を突き刺す勢いで伸びる。
何とか避けた敬三は、一気に右手を振りかぶって、
「“Blast wind”!」
同じく、優輝はナイトとスカイを鎖で抱えると、岩に突き刺さっていた左手の爪を外した。
爆風は、優輝のいた場所に放たれ、一瞬で優輝は反対方向へと移動する。
右手の爪に突き刺さった岩へ、縮む事で向かったのだ。
「さすがは我が息子だ―“Blast wind”!」
「「“Blast wind”!」」
ナイトとスカイが、敬三に対応するかのように唱える。
三つの爆風は、優輝が叫んだ言葉と共に、吸い込まれた。
「“魔力吸収”!」
優輝の両方の爪に、呪力が集中する。
顔を苦く歪めた敬三が、逃げようとするが、間に合わない。
「“Blast wind”!!」
その爆風は、城ごと粉々に吹き飛ばした。
同時に、優輝とナイト、そしてスカイ。その三人をも、別々に吹き飛ばした。
「最後に、教えておいてやろう、息子」
敬三の声が聞こえた。
「“クロス・コントラクティ”は、契約が解き放たれたとき―両者は、死に至る」


どれだけ眠っていただろうか。
長く眠っていた気もする。短かった気もする。
父親がメシア=フォースの一員だったこと。王妃を助けたこと。“ディフォーム・コントラクティ”が成功したこと。
全てが頭の中に入って、全てが頭の中から出て行った。
ばっと、優輝は飛び起きた。
辺りを見回す。見たことの無い場所だった。
一瞬、あの場所を思い浮かべた。
聖域。
だが、なんとなく感覚が違う。
その家は珍しくも木製で、丸太を積み上げて出来たような家だ。
ただし、人間の手が加えられている。
自分はベッドの上に寝転がっていたらしい。みると、あの時の服装のままだ。
こんこん、とドアがノックされる。
この部屋の唯一のドア。
「はい?」
「あ、起きた?」
青色の髪の毛の少女が、入ってきた。
それなりに整った顔立ちをしている。人間界でいう、普通の女の子、というやつだろう。
だが、髪の毛が青い。しかも、腰辺りまで届きそうなロング。
髪の毛のせいだろうか、どことなく乙姫に似ている。
「ええと」
「びっくりしちゃった。散歩に出かけてたら、空から人が降って来るんだもん」
よくみれば、体中のいたるところに包帯が巻いてある。
そうか、あの高さから落ちたからかもしれない。
「ありがとう」
「どういたしまして。それで、あなたどこから来たの? 何者?」
わくわくとした雰囲気で、少女は訊ねた。
「中央魔法国…じゃなくて、セントリーナスから来たんだ」
「へえ」
注意深く少女を見てみると、あらゆる特徴が分かる。
服装は緑のワンピース。幼い感じがする。
目の色は深い青。髪の毛と合わさって映えていた。
「江口優輝だよ。それで、ここは?」
「エレクシア。セントリーナスから海を越えて南東の大陸よ」
「海を、越えて?」
と言う事は、自分はどうやってセントリーナスからここまで来たのだろうか。
空から落ちてくるにしても、海に落ちずに隣の大陸まで吹き飛んだのか。
「最初見たときは、ほんとにすごい怪我だったんだからね」
「あ、ごめん…ところで、ここからセントリーナスへはどうやって帰ったらいいんだろう?」
「セントリーナスまで? んーとねえ、」
海を渡って、東セントリーナスに行って、大体十日くらいかかるかな、と少女は言った。
それほど遠いのだろうか…。
だとしたら、自分はどうやって帰れば良いのだろう。
「お金がかかるからね。たぶん、稼がないと」
「…そういえば、俺と一緒にチャオが落ちてこなかった? こう、頭の上が光ってるチャオと目が怖いチャオ」
「みてないなあ。あ、ここあたしが作った場所だから、好きに使っていいよ」
おかしい。
いや、あの衝撃で全員ばらばらの場所に…?
だとすれば、ナイトやスカイは、海に落ちている可能性もある。
引用なし
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魔法のサンクチュアリ 16-3
 ろっど  - 08/8/2(土) 10:10 -
  
しかし…自分はまだ生きている。と言う事は、あいつらも生きているのだろう。
親父の言葉を信じるなら、そうなる。
「お世話になるのも悪いから、いいよ。俺は、これから住むところ探してみるし」
「住むところなんてないよ。あなた、無一文でしょ?」
うっ、と優輝は言葉につまった。
確かに無一文である。
だが、「終焉のウォーデン」という名前を出せばなんとかなるのではないか、と優輝は思う。
「上等魔法官とか、いないかな?」
「ここは圧政されてるし、いたとしても会えないよ」
「圧政?」
「うん。あたしの親は領主だから問題ないけど、一般市民が魔法官にお目通り願うには難しいと思う」
なんて事だ。
「この国は王制を採ってるから」
「王制ね」
いろいろな街があるんだなあ、と優輝は思った。
しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。
「何とかして帰れる方法とか、ないかな?」
「うーん……列車を乗っ取るとか」
「列車?」
「海底列車! 何にも知らないの?」
ごめん、と優輝は謝った。
最も、人間界から来たのだから何もしらないのは当然である。
「ま、まあ、謝らなくてもいいよ」
「それで、海底列車ってのは、どこで乗れるの?」
「ここはエレクシアの中央あたりだから、セントリーナスに行くなら西にまっすぐ」
ありがとう、行ってみると言おうとした優輝は、体が全然動かない事を自覚した。
あれ、と思って動かそうとしてみる。
ところが、痛みが奔るだけで、全く動かない。
「怪我酷いって、言ったでしょ」
「こんなに酷いとは……」
「何かあったら呼んで。あたし、ご飯つくったげる」
とことことドアの向こうに消え去った。
それにしても……。
ここは地図でいえばどこらへんで、どんな形をしているのだろう。
海底列車を乗っ取る。はっきりいって不可能だ。
それに犯罪だ。
どうすれば良いのだろうか…こればかりは、まったく見当がつかない。
どうにかするにも、方法がそもそも無いしなあ、と優輝は溜息をついた。


優輝がいなくなってから、すでに一週間が経とうとしていた。
ガーランドから帰国した乙姫、その夜。
乙姫はチャオガーデンに来ていた。
ナイト=ノクターン、スカイ=クラウディア、消息不明。
江口優輝も、消息不明。
意地でも止めて置けば、と乙姫は後悔した。
「あの、大丈夫ですか?」
淡い赤色の髪の毛をした、セントリーナス王妃が訊ねる。
いつの間にか背後にいたのであった。
「そうね、平気よ」
「すみません……わたくしのせいで…」
「あなたのせいじゃないわ」
しょんぼりと、王妃はうつむく。
乙姫はチャオガーデンを見渡して、うなずいた。
きっと、帰ってくる。
だから、待つ。
「あの、八島さん」
「ごめんなさい。ちょっと一人になりたいの」
「いえ、あれはなんでしょうか?」
チャオガーデンの暗い空を指差す。
見上げた乙姫は、そこに巨大すぎる船があることに驚いた。
「プリンセス=ウィッチ」
百夜のオメテオトル、工藤の声であった。
「やつを探しに行くのだろう? わざわざヴィクトリー号を拝借して来てやった」
「あー、ちくしょう! どうやって動かすんだよ、これ!」
「さあ、早く乗りたまえ」
驚きに目を見開いた乙姫は、一瞬ためらってから、にやりと笑った。
そうだ。待つのではなく、迎えに行けば良い。
彼だったら、そうするだろう。
「あの! わたくしも連れて行ってくださいませんか?」
王妃が訊ねる。
「あなたは、待ってなさい」
首を横に振った乙姫は、そして、唱える。
風が船まで運ぶ。
その風は、再び脈動を始めた。
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