●週刊チャオ サークル掲示板
  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃チャットへ ┃編集部HPへ  
1367 / 4005 ←次へ | 前へ→

第38.5章:その瞳の奥に映るは、星々の光
 ホップスター  - 21/10/16(土) 0:29 -
  
カンナ、アンヌ、マリエッタがプレアデスで話し合っていた、その頃。

クーリアとパトリシアが、ある場所を訪れていた。

【クーリア】「これは…取り壊されてますね…」
【パトリシア】「なんだかんだで派手にドンパチやっちまったからなぁ…お役御免って奴なんだろう」

そこは、以前グロリアを訪れた際に戦いの舞台となった、共和国系の企業が入っていたビル。
既に使われなくなり、取り壊し工事の真っ最中であった。


        【第38.5章 その瞳の奥に映るは、星々の光】


【クーリア】「…で、改まって何の用でしょう?」
クーリアが改めて尋ねる。誘ったのはパトリシアだ。

【パトリシア】「あぁ、ちゃんと言っておかねぇと、って思ってな。
        …あの時は敵同士だったとはいえ、ケガまでさせて本当にすまなかった…!」
そう言い、頭を下げるパトリシア。
このビル内で2人が戦った時のことである。
【クーリア】「いえ、敵同士が殺し合うのは何もおかしくないでしょう?わざわざ謝るようなことではありません。…それに、貴方の方が後に余程酷い怪我をしたじゃないですか」
クーリアがそうなだめるが、
【パトリシア】「いや、それはそうなんだが…あたしが頭を下げないと気が済まねぇんだ」
パトリシアはそう言い止めなかった。

【クーリア】「…まぁ、そこまで言うのであれば止めはしませんが…そうですね、例えばちょうどこの場に来ていることですし、模擬でもう一度戦ってみますか?最も、私は誰かさんとは違って凡人なので勝負は決まっていますけど」
と、クーリアが冗談めかしてそう答える。
【パトリシア】「いやいやいや、自分で言うのもアレだけどあたしの攻撃凌ぎ切っといて凡人はねぇだろ…」
【クーリア】「アネッタの援護もありましたから。あとは運が良かっただけです」
【パトリシア】「あーあれ、やっぱアネッタだったんか。道理で厄介だった訳だ」
などと、思い出話(?)が盛り上がる。


そこでふと、パトリシアが語りだした。
【パトリシア】「…最近さ、思うんだよ。遺伝子改造で生まれて親はいない、ついでに脳もいじられて性格改変されてるっぽい、オマケについには右手右脚が吹っ飛んで機械になったときたもんだ。…あたしは、本当に生きてるのか?本当に人間なのか?…この世界にいる意味は何なのか?ってね…」
そう言いながら、自らの右手を見つめる。その手は既に人工皮膚になっていて、外見だけでは機械のそれだとはもう分からない。

それを聞いたクーリアはしばらく黙るが、こう答えた。
【クーリア】「…そういうことを考えることができるうちは、人間ですよ、貴方は」
【パトリシア】「だと、いいんだがな。…あ、ガラじゃねぇし恥ずかしいからあんま他人には言うなよ?」
【クーリア】「心配ありません。バッチリ録音しておきました」
【パトリシア】「なっ…!?」
クーリアの言葉に一瞬顔が真っ赤になるが、
【クーリア】「…冗談です」
【パトリシア】「心臓に悪い冗談やめてくれよ…」
そう苦笑いするしかなかった。


【クーリア】「…そういえば」
【パトリシア】「何だ?」
今度はクーリアが話を切り出す。
【クーリア】「古い文献によれば、『パトリシア』という名前は親しい間柄では『パティ』と略して呼ばれていたそうです」
【パトリシア】「ぱ、ぱてぃ…!?」
思わず凍り付くパトリシア。
【クーリア】「折角仲良くなったのですから、『パティちゃん』と呼んでも差し支えないでしょうか?」
【パトリシア】「や、やめろぉ!その呼び方は体のあちこちが痒くなる!そもそもちゃん付けって時点で色々ヤバイ!頼むから普通にパトリシアって呼んでくれ!!」
再び顔を真っ赤にして叫びだすパトリシア。
【クーリア】「…冗談です」
【パトリシア】「はぁ、はぁ…寿命が縮む…ただでさえ普通の人間と同じ寿命かどうか怪しいってのに…」

そこまできて、今度はパトリシアがこう切り出した。
【パトリシア】「っていうか逆にあれだ、クーリアのミドルネーム!お前、アレクサンドラってガラじゃねーだろ!」
【クーリア】「なっ…!」
ミドルネームで反撃開始。
【パトリシア】「あたしも詳しい訳じゃないが元々は確かえっらい勇ましい名前だったはずだぞ!」
【クーリア】「仕方ないでしょう、オルセン家は代々ミドルネームを付けるのが決まりですし、そもそも生まれたばかりでその人の性格は分かりようがないのでは!?」
【パトリシア】「それを言ったら人の名前なんてほとんどそうだろうが!あたしなんか顔も知らねぇどっかの研究者に名付けられてんだぞ!」

こんな感じでしばらくてんやわんややり合った後、
【パトリシア】「…帰るか…」
【クーリア】「…そうですね…」
用事も済んだのでこれ以上居る理由もないし、何より疲れたので帰ることにした。


クロスバードに戻る途中、パトリシアがこう話しかけた。
【パトリシア】「…しかしあれだな、クーリアってもっと堅物な冗談言わねぇキャラだと思ってたんだが…」
それに対しクーリアはこう答える。
【クーリア】「私だって冗談の1つや2つ言いますよ。…まぁ、X組の皆さんのおかげ、ではあるんですけども」
【パトリシア】「ってことはあれか、昔はもっとこう…だったのか?」
【クーリア】「…ご想像にお任せします」
そこについては、クーリアは多くは語らなかった。

【パトリシア】「…ま、そうだよなぁ。いくらでも視力矯正ができるこのご時世でわざわざ眼鏡かけてる時点でそういうキャラしてるよなぁ」
【クーリア】「いや貴方に言われたくないですよ…」
と、クーリアはパトリシアの眼鏡を指しながら反論する。
【パトリシア】「これはファッションだよファッション!知的でクールでかっこいい眼鏡女子を目指してんのさ!…ま、そういう美的感覚をしてる時点で同じ穴の狢かも知れねぇがな」
そう言いパトリシアは笑い、さらにこう続けた。

【パトリシア】「…ま、眼鏡っ娘同士仲良くいきましょうや」
【クーリア】「今時そんな共通項で仲良くなるというのもどうかという気はしますが…そうですね、不思議と悪い気はしないですね」

沈んでいく夕日が2人を照らしていた。

引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Geck...@st4615.nas811.p-tokyo.nttpc.ne.jp>

【Galactic Romantica】 ホップスター 20/12/23(水) 0:06
プロローグ:交差する運命 ホップスター 20/12/23(水) 0:06
第1章:この広い銀河の片隅で ホップスター 21/1/2(土) 0:06
第2章:果てのない世界の果てまで ホップスター 21/1/9(土) 0:07
第3章:伸ばした腕の先に見えるもの ホップスター 21/1/16(土) 0:05
第4章:はじまりと、その終わり ホップスター 21/1/23(土) 0:04
第5章:血の意味、魔女の目覚め ホップスター 21/1/30(土) 0:20
第6章:すれ違う光と想い、振り返った先 ホップスター 21/2/6(土) 0:07
第7章:巡り巡る思惑と甘い夢 ホップスター 21/2/13(土) 0:04
第7.5章:人の理由とチャオの理由 ホップスター 21/2/20(土) 0:03
第8章:ただ大気の底を眺めて ホップスター 21/2/27(土) 0:03
第9章:塵の中でもがくように ホップスター 21/3/6(土) 0:02
第10章:閃光の果ての咆哮は聞こえるか ホップスター 21/3/13(土) 0:05
第11章:思惑が渦巻く銀河の中へ ホップスター 21/3/20(土) 0:03
第12章:流転の渦を飲み込むように ホップスター 21/3/27(土) 0:44
第13章:その最中で何を思わざるか ホップスター 21/4/3(土) 0:03
第14章:迷路の果てに掴む未来で、瞳は灯る ホップスター 21/4/10(土) 0:04
第15章:小さな世界の果てで嘘と踊る ホップスター 21/4/17(土) 0:04
第16章:嘲笑い、交差して、そして瞬く ホップスター 21/4/24(土) 0:03
第17章:深淵の爪先で踊る人形達よ ホップスター 21/5/1(土) 0:06
第18章:その寓話のあっけない終焉 ホップスター 21/5/8(土) 0:04
第19章:意思はまだ、彼方にありて動かず ホップスター 21/5/15(土) 0:03
第20章:英雄への道程は道半ばにて ホップスター 21/5/22(土) 0:02
第21章:煌めきは決して届かぬ御伽噺 ホップスター 21/5/29(土) 0:03
第22章:8つの灯と、11の魂 ホップスター 21/6/5(土) 0:02
第23章:天秤にかけるは、ただ星一つ ホップスター 21/6/19(土) 0:05
第24章:希望を廻して、未来へと繋ぐために ホップスター 21/6/26(土) 0:01
第25章:氷の果てで嗤う世界の渦 ホップスター 21/7/3(土) 0:04
第26章:魔女の咆哮、星を穿つか否か ホップスター 21/7/10(土) 0:19
第27章:運命が巡る時、翼は広がる ホップスター 21/7/17(土) 0:01
第28章:悪戯の果ての一つの結末 ホップスター 21/7/24(土) 0:17
第29章:悲しみの果てでも時計は廻る ホップスター 21/7/31(土) 0:01
第30章:答えの無い世界、答えを求める銀河 ホップスター 21/8/7(土) 0:04
第31章:地獄への入口と明日への出口 ホップスター 21/8/14(土) 0:05
第32章:神の悪戯、悪魔の微笑、そして流星 ホップスター 21/8/21(土) 0:22
第33章:悪魔の玉座に坐るべき者は、ただ一人 ホップスター 21/8/28(土) 0:03
第34章:その熱の残滓、頬を伝わって ホップスター 21/9/4(土) 0:16
第35章:機械の魂はその腕に宿るのか ホップスター 21/9/11(土) 0:14
第36章:祈りと願いが交差し、天に還る ホップスター 21/9/18(土) 0:02
第36.5章:操る者、操られる道化 ホップスター 21/9/25(土) 0:05
第37章:新たな剣は彼方で微笑み、刃を向ける ホップスター 21/10/2(土) 0:03
第38章:墓前に祈るは未来か過去か ホップスター 21/10/9(土) 0:03
第38.5章:その瞳の奥に映るは、星々の光 ホップスター 21/10/16(土) 0:29
第39章:4つの星と1つの希望、それは鼓動 ホップスター 21/10/23(土) 0:28
第40章:魂は此処に、弾丸は彼方へ、運命は銀河へ ホップスター 21/10/30(土) 0:13
第41章:その行方を眺める者達に、私は ホップスター 21/11/13(土) 0:33
第42章:迫る終焉、その楽曲の奏手たち ホップスター 21/11/20(土) 0:19
第43章:その先に心はあるか、その後に涙はないか ホップスター 21/11/27(土) 0:07
第44章:霞んだ光の果てで彼女は何を見る ホップスター 21/12/4(土) 0:02
第45章:語らざる者が語る、一つの答え ホップスター 21/12/11(土) 0:04
第46章:この狭い銀河の中心を ホップスター 21/12/18(土) 0:01
エピローグ:笑え、少年少女と共に ホップスター 21/12/23(木) 0:00
あとがき:AfterWords ホップスター 21/12/23(木) 0:01

  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃チャットへ ┃編集部HPへ  
1367 / 4005 ←次へ | 前へ→
ページ:  ┃  記事番号:   
56281
(SS)C-BOARD v3.8 is Free