●週刊チャオ サークル掲示板
  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃チャットへ ┃編集部HPへ  
1646 / 4272 ←次へ | 前へ→

第36.5章:操る者、操られる道化
 ホップスター  - 21/9/25(土) 0:05 -
  
パトリシアが、Σ小隊の簡易な葬儀を行った少し後。
オリトがパトリシアに話しかけてきた。
【オリト】「あの…すいません、ちょっといいですか?」
【パトリシア】「あぁ。どうした?えっと…」
【オリト】「あ、オリトです」
そう自己紹介をする。


        【第36.5章 操る者、操られる道化】


【オリト】「あの、ぬいぐるみ…なんですけど…」
と、オリトは血が取れずに薄茶色に染まってしまった、エカテリーナのぬいぐるみを指す。
【パトリシア】「あぁ、エカテリーナのあれか。どうした?」
【オリト】「もし、もし良ければなんですけど…譲ってもらうこと、できませんか?」
【パトリシア】「あれをか?なんでまた?」
パトリシアはそう疑問を呈す。

【オリト】「あの、えっと、エカテリーナさんって子と、戦ったことがあって…パトリシアさんが仰ってたようにいい子のように見えるのに、すごく強くて…なんで戦ってるのかなぁ、って…」
オリトはそう言葉を繋ぐ。
そこまで聞いて、パトリシアは思い出した。
【パトリシア】「あー!思い出した!エカテリーナが言ってたチャオの子か!」

…そして、こう続けた。
【パトリシア】「エカテリーナも言ってたよ。なんでチャオが戦ってるのか、って」
【オリト】「普通、そう思いますよね…」
【パトリシア】「あの子も含めてあたしらは試験管生まれだから、戦う以外の生き方を知らねぇんだ。まぁその結果がこれなんだけどな」
と、薄茶色に染まったぬいぐるみを指す。
【オリト】「…」
その『結末』に、オリトは思わず黙ってしまう。

そんなオリトに、パトリシアが問いかける。
【パトリシア】「あたしには分からねぇが、オリト君にも戦う理由があるんだろ?」
【オリト】「はい。故郷で暮らしている人やチャオのために、俺はここにいなきゃいけないんです」
そう力強く答えるオリト。それを聞いたパトリシアは、納得したような表情でこう答えた。
【パトリシア】「…分かった、そういうことなら、これはオリト君に預ける。…くれぐれも、大事にしてやってくれ」
そう言い、持っていたぬいぐるみをオリトに渡した。

【オリト】「…はい、必ず」
オリトはそう答え、ぬいぐるみを受け取った。チャオには大きいぬいぐるみで、パトリシアから見るとオリトが隠れてしまいそうだったが、しっかり持っていた。


一方その頃、クロスバードの艦内で同じようにぬいぐるみを抱えた人が。
【アネッタ】「うぅ…ほつれちゃった…」
アネッタである。元々ぬいぐるみ好き(本人は隠しているつもりだが全員にバレバレ)でアルタイルのコクピットや自室にもぬいぐるみが多数置かれているのだが、そのうちの1つがほつれてしまったのだ。
こういう時は普段はレイラに頼んでいるのだが、もういない。

【アネッタ】「どうしよう…」
そう悩みながらぬいぐるみを抱え廊下を歩いていると、何やら話し声が聞こえてきた。声の主は、
【アネッタ】「クリスちゃん…?」
クリスティーナ。良く見ると、そこはクリスティーナの自室の前。何故かドアが開けっぱなしになっている。

【クリスティーナ】「…詳細については、添付ファイルの確認をお願いします。なお、今後については…」
【アネッタ】「もしもし?」
思わずアネッタが話しかける。
【クリスティーナ】「んなっ!?…アネッタでしたか…」
驚くクリスティーナ。
【アネッタ】「あ、ごめん…ドアが開いてたからつい…」
【クリスティーナ】「あー、閉め忘れてたのか、しょうがない後で録り直しかなぁ…」

そうつぶやくと、クリスティーナは説明を始めた。どうせ訊かれるだろう、と思った。
【クリスティーナ】「X組に入る前にとある企業さんのシステム構築を手伝ってたので、その残務処理みたいなものね。こっちの任務が優先だし、しばらく手伝えなくなるから」
そのメッセージを録画してたのだ。だが、アネッタにはそれより気になることがあった。
【アネッタ】「それもだけど、その喋り方…」
そう、クリスティーナが「普通」に話していた、そして今も話しているのがアネッタにとっては違和感があったのだ。

それに対し、クリスティーナはあっけらかんとした表情でこう答えた。
【クリスティーナ】「あー、それ。これが素ですよ。さすがにあんな喋り方ただのキャラ付けに決まってるでしょう」
【アネッタ】「え…あ…そうなの?」
アネッタが呆然として表情でそう返す。
【クリスティーナ】「それに会社さんとのやり取りとなるとちゃんとしてないと怒られますしね」
【アネッタ】「いや…ここ軍なんですけど…」
アネッタが思わずツッコミを入れる。常識的に考えて企業よりもっとちゃんとしなければいけない場所のはずなのだが。

【クリスティーナ】「ここはいい意味で緩いですし。それに…」
【アネッタ】「それに?」
クリスティーナがそこで言葉を止めたので、アネッタが聞き返す。それに対し、彼女はこう答える。
【クリスティーナ】「正面切っては言いにくいのでここだけの話ですけど…そんなキャラクターを受け止めてくれる皆さんの器の大きさには、感謝してるんですよ」
【アネッタ】「受け止めるって、そんな…普通に接してるだけだよ?」
【クリスティーナ】「いえいえ、皆さんが初めてですよ、こうやって『普通』に接してくれたのは。大抵、ネタキャラ扱いかそもそも相手にされないかどちらかですからね」
そこでアネッタは、クリスティーナ合流前のカンナの言葉を思い出していた。『とっくに人格に問題のあるメンバーだらけ』。そうか、みんな一緒なんだ、と思った。

そこまで考えて、再びアネッタがクリスティーナに訊いた。
【アネッタ】「差し支えなければでいいんだけど…なんでまたあんなキャラを?」
それに対し、クリスティーナは少し悩みながら、こう答えた。
【クリスティーナ】「そうですねぇ…まぁなんというか、あのキャラも私なりに波乱万丈な17年半の人生を送った結果なんですよ。…私は弱いから、普通ではいられなかった…」
それを聞いたアネッタは、そうなんだ、と軽く返した。この数分のやり取りで全部を理解するのは無理だし、彼女の過去に何があったかなんて知る由もない。それでも、同い年の女の子として、少しだけ分かった気がした。

【クリスティーナ】「…っと、そういえばそもそもアネッタはどうしたんです?ぬいぐるみ持って」
今度はそうクリスティーナが聞き返す。アネッタははっとした表情で、思い出したように答える。
【アネッタ】「あぁ、そうだ、これ!ほつれちゃって、誰か直せる人はいないかなーって」
それを聞いたクリスティーナは、ぬいぐるみのほつれた部分をよく見ながら、
【クリスティーナ】「ふむー…私がやりましょうか?そんなに上手くはないですけど、こう見えて心得はあるんですよ」
【アネッタ】「本当に?助かる!」
【クリスティーナ】「その代わり、今日ここでの話はオフレコということで…いいかな?」
そうニコリと笑う。アネッタもうん、と頷き、交渉は成立。

【クリスティーナ】「それじゃ、このクリスティーナ=フォスターにお任せあれ!」
クリスティーナはいつもの口調に戻ると、棚から手芸用具を取り出し、補修を始めた。

引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Geck...@st4615.nas811.p-tokyo.nttpc.ne.jp>

【Galactic Romantica】 ホップスター 20/12/23(水) 0:06
プロローグ:交差する運命 ホップスター 20/12/23(水) 0:06
第1章:この広い銀河の片隅で ホップスター 21/1/2(土) 0:06
第2章:果てのない世界の果てまで ホップスター 21/1/9(土) 0:07
第3章:伸ばした腕の先に見えるもの ホップスター 21/1/16(土) 0:05
第4章:はじまりと、その終わり ホップスター 21/1/23(土) 0:04
第5章:血の意味、魔女の目覚め ホップスター 21/1/30(土) 0:20
第6章:すれ違う光と想い、振り返った先 ホップスター 21/2/6(土) 0:07
第7章:巡り巡る思惑と甘い夢 ホップスター 21/2/13(土) 0:04
第7.5章:人の理由とチャオの理由 ホップスター 21/2/20(土) 0:03
第8章:ただ大気の底を眺めて ホップスター 21/2/27(土) 0:03
第9章:塵の中でもがくように ホップスター 21/3/6(土) 0:02
第10章:閃光の果ての咆哮は聞こえるか ホップスター 21/3/13(土) 0:05
第11章:思惑が渦巻く銀河の中へ ホップスター 21/3/20(土) 0:03
第12章:流転の渦を飲み込むように ホップスター 21/3/27(土) 0:44
第13章:その最中で何を思わざるか ホップスター 21/4/3(土) 0:03
第14章:迷路の果てに掴む未来で、瞳は灯る ホップスター 21/4/10(土) 0:04
第15章:小さな世界の果てで嘘と踊る ホップスター 21/4/17(土) 0:04
第16章:嘲笑い、交差して、そして瞬く ホップスター 21/4/24(土) 0:03
第17章:深淵の爪先で踊る人形達よ ホップスター 21/5/1(土) 0:06
第18章:その寓話のあっけない終焉 ホップスター 21/5/8(土) 0:04
第19章:意思はまだ、彼方にありて動かず ホップスター 21/5/15(土) 0:03
第20章:英雄への道程は道半ばにて ホップスター 21/5/22(土) 0:02
第21章:煌めきは決して届かぬ御伽噺 ホップスター 21/5/29(土) 0:03
第22章:8つの灯と、11の魂 ホップスター 21/6/5(土) 0:02
第23章:天秤にかけるは、ただ星一つ ホップスター 21/6/19(土) 0:05
第24章:希望を廻して、未来へと繋ぐために ホップスター 21/6/26(土) 0:01
第25章:氷の果てで嗤う世界の渦 ホップスター 21/7/3(土) 0:04
第26章:魔女の咆哮、星を穿つか否か ホップスター 21/7/10(土) 0:19
第27章:運命が巡る時、翼は広がる ホップスター 21/7/17(土) 0:01
第28章:悪戯の果ての一つの結末 ホップスター 21/7/24(土) 0:17
第29章:悲しみの果てでも時計は廻る ホップスター 21/7/31(土) 0:01
第30章:答えの無い世界、答えを求める銀河 ホップスター 21/8/7(土) 0:04
第31章:地獄への入口と明日への出口 ホップスター 21/8/14(土) 0:05
第32章:神の悪戯、悪魔の微笑、そして流星 ホップスター 21/8/21(土) 0:22
第33章:悪魔の玉座に坐るべき者は、ただ一人 ホップスター 21/8/28(土) 0:03
第34章:その熱の残滓、頬を伝わって ホップスター 21/9/4(土) 0:16
第35章:機械の魂はその腕に宿るのか ホップスター 21/9/11(土) 0:14
第36章:祈りと願いが交差し、天に還る ホップスター 21/9/18(土) 0:02
第36.5章:操る者、操られる道化 ホップスター 21/9/25(土) 0:05
第37章:新たな剣は彼方で微笑み、刃を向ける ホップスター 21/10/2(土) 0:03
第38章:墓前に祈るは未来か過去か ホップスター 21/10/9(土) 0:03
第38.5章:その瞳の奥に映るは、星々の光 ホップスター 21/10/16(土) 0:29
第39章:4つの星と1つの希望、それは鼓動 ホップスター 21/10/23(土) 0:28
第40章:魂は此処に、弾丸は彼方へ、運命は銀河へ ホップスター 21/10/30(土) 0:13
第41章:その行方を眺める者達に、私は ホップスター 21/11/13(土) 0:33
第42章:迫る終焉、その楽曲の奏手たち ホップスター 21/11/20(土) 0:19
第43章:その先に心はあるか、その後に涙はないか ホップスター 21/11/27(土) 0:07
第44章:霞んだ光の果てで彼女は何を見る ホップスター 21/12/4(土) 0:02
第45章:語らざる者が語る、一つの答え ホップスター 21/12/11(土) 0:04
第46章:この狭い銀河の中心を ホップスター 21/12/18(土) 0:01
エピローグ:笑え、少年少女と共に ホップスター 21/12/23(木) 0:00
あとがき:AfterWords ホップスター 21/12/23(木) 0:01

  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃チャットへ ┃編集部HPへ  
1646 / 4272 ←次へ | 前へ→
ページ:  ┃  記事番号:   
56296
(SS)C-BOARD v3.8 is Free