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一言で言い表すなら、とても共感できた物語でした。
染み渡ってきたとか、引き込まれたとか、馴染むとか、或いは引っ張られるとか……読み進めるにつれて、自分にとってこの気持ちを表現する言葉はころころと変わっていったのですが、とにかく私のドツボにがっちりハマってしまった。
阿蘇の人々の心や暮らし、風景などの丁寧な描写が自分の身近にぐぐいと迫ってきて、彼らの日常に不意に笑わされたり、心を乱されてしまう自分がいました。すっかりチャピルさんに良い様に操られた気分です。
舞台となる田舎町の上に描かれた全てと、優花の残したライトカオスという象徴は、どことなくチャオBや週チャオを彷彿とさせます。
(他の人の感想を見てなんとなく気付いただけですけど)
今は見る影も無くなってしまったけど、今も心から離れない場所。多くの人が離れていって、僅かな人が残った場所。この故郷と呼ぶべき場所に、ライトカオスという存在が柱のように立っている。
目に浮かぶような現実の情景の中にチラチラと見え隠れする、架空の存在である永遠の象徴が、この小説のルーツがなんなのかを暗に語っているような気がします。
決して「チャオが出てるからチャオ小説なんです」という単純な話では無いはずです。
あいにく私には、うまく言い表せませんけど。
はじめは優花や莉音よりも、一木をはじめとした他の面々の姿に心を惹かれました。彼らが物語を牽引していると感じたからでしょうか。
特に赤星先生の俳句にはハッとさせられました。彼女の送った俳句、君影草の持つ意味をググった理解したときの衝撃ときたら。
俳句って物凄く強力な武器ですよね。自分がそういうのに弱いだけかもしれないけど。
しかし最終的に、優花と莉音の存在はバッチリ僕の心に刺さりました。鏡像はマジで「ぐさっ」と来ました。
チャピルさんの描いた人物の中で、もしかしたら彼女達の心はほとんどチャピルさんのものだったのかもしれません。けど、一人の葛藤にも見えるような二人の対立の姿は、僕の心さえ揺さぶってきました。
改めて読み返してみると、この二人の後ろめたい心の描写のなんと自分の心と共感することだろうと思います。自分が昔、週チャオから逃げるようにいなくなってしまったせいですかね?
物語全体を覆う雰囲気と言い、どこまでも自分の心に触れてくるなぁと思いました。脱帽です。
そういえば予告編の谷中さん、結局作中には姿を現しませんでしたね。
ライトカオスを特別視していた優花と、気付いたら勝手にライトカオスになってるという谷中さんの存在はとても対照的で、全てを読み終えた後に予告編の谷中さんの姿を見るとなんだか溜め息が出ます。
谷中さんのフラットな感じが、この物語の立ち位置がどこにあるのかを示しているような気がします。考え過ぎですかね?
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