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カオシング現象発生中! 予告 スマッシュ 16/11/17(木) 18:12

第1章 2話 走るホテルウーマン スマッシュ 16/11/20(日) 20:50

第1章 2話 走るホテルウーマン
 スマッシュ  - 16/11/20(日) 20:50 -
  
 レッシはタクシーの運転手に、目的地のホテルの名前を告げた。
 運転手はすぐに、
「ああ、あそこですね。わかりました」と言って車を走らせた。
「お二方は、観光ですか?」
「仕事なんですよ。なんか最近ここらでチャオが徒党を組んでって聞いて。それで」
 レッシはそう運転手に説明する。
「それってもしかして、バードのことですか」
「え、バードって言うんですか。名前とかはまだ聞かされてなくて。できればそこらへん、もっと教えてもらえません?」
「バードって、鳥?」
 ラジカルが首を傾げた。
「たぶんそうですね。鳥のバード。要するに、自由だってことなんじゃないんですかね」
 リーダー格のチャオがヒコウタイプなのだろうか。
 そうレッシは考えた。
「なにか被害が出たりは?」
「今のところは特に聞いてませんけどね。民家が一軒占領されてますけれど、ずっと誰も住んでない所だったので」
 それ以外、被害らしい被害はないそうだ。
 誰も住んでいない民家にチャオが住み着いたというだけ。
「彼らも、城が手に入って満足しているのかもしれませんね」
 これ以上チャオたちが悪さをするとは思っていない。
 そんなふうな言い方だった。
 しかしレッシは、なにかあると思わずにはいられなかった。
 たとえばそのバードが占拠した家の中に、どうしても秘密裏に回収したい物がある、とか。
 どうあれ、詳しいことを依頼主から聞き出す必要があるようだ。
 タクシーはホテルに着いた。
 普段ならまず泊まることのない、高級なホテルだった。
 中に入り、チェックインする。
 金は既に支払われている。
 手付金の一部として、シングルルームが用意されているのだった。
 打ち合わせはこのホテルの上部にある、スイートルームで行われることになっていた。
「まだ時間あるんだよな?」
 ラジカルはベッドに飛び込み、うつ伏せになったまま言った。
 このまま寝てしまうつもりのようだ。
「ああ、寝ててもいいぞ。俺はもうちょっと調べておきたい」
「任せる。そうだ、カオスドライブくれ」
「はいよ」
 レッシはリュックサックからカオスドライブを一本出すと、それをラジカルに投げ渡して、部屋から出た。
 ロビーにはコンシェルジュがいた。
 本当にいいホテルのようだ。
 好都合だとレッシは彼女に話しかける。
「教えてもらいたいことがあるんだけど、いいかな?」
 なんでしょう、とコンシェルジュは笑顔で言う。
「最近ここらへんでチャオが徒党を組んでいるって噂を聞いたんだ。バードとかいう。それについて何か知らないかな」
「バード、ですか」
「うん。仕事で彼らと接触しなければならないんだけど、情報があまり無くて。だから些細な情報でも知っておきたいんだ」
 少々お待ちください、とコンシェルジュは電話の受話器を取った。
 そして五分ほど待つと彼女は心の底から嬉しそうな顔をして、
「スタッフの中に存じ上げている者がおりました。今、こちらに向かわせておりますのでお待ちください」と言う。
「ありがとう。それから、小動物やカオスドライブを扱っている店なんかは近くにあるかな。小動物を奪われたとかそういう被害がないか、知りたいんだ」
「かしこまりました」
 コンシェルジュは様々な所へ電話をかけ、受話器を取って少し話をしては、また置くことを繰り返す。
 チャオを専門に扱っているペットショップが一軒と、他のペットショップ数軒、そして家電量販店などのカオスドライブを扱う店。
 彼女が電話をかけた店では、盗難の被害は全くなかったそうだ。
 レッシは少し安心した。
 小動物やカオスドライブの略奪をしていないのであれば、チャオたちの戦闘力は低いということになるからだ。
 略奪を繰り返せば繰り返すほど、キャプチャーによってチャオたちの能力は高まり、手強くなる。
 そして手が付けられないほどチャオたちが強くなってしまうと、町はチャオによって占領されたも同然となるのだ。
 チャオは本来、大人しくか弱い生き物であった。
 見た目の可愛さもあり、ペットとして愛玩されてきた。
 そんなチャオがどうしてこうも凶暴な生き物になってしまったのか?
 原因は、カオシング現象にある。
 カオスエメラルドを量産する目的で作られた疑似エメラルド。
 その疑似エメラルドが制御不能になった時に引き起こす予測不能の怪現象。
 それがカオシング現象だ。
 五年前、世界で初めて発生したカオシング現象は、チャオに怪物としての性能を付与するという変異を起こした。
「お待たせいたしました」
 走ってホテルに入ってきた中年の女が、息を切らしながらレッシに言った。
 コンシェルジュが、彼女がそのバードについて知っているスタッフなのだと紹介する。
 しかし彼女は普段着であった。
「もしかして、今日お休みだったんじゃないんですか?」
「お客様のためですから」と中年の女は言った。
「ありがとうございます」
 レッシは深く頭を下げて礼を言った。
引用なし
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