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チャオラー大運動会オフレポート用ツリー ろっど 14/12/14(日) 21:32

真・ろっどと他五人の物語 だーく 14/12/23(火) 0:00

真・ろっどと他五人の物語
 だーく  - 14/12/23(火) 0:00 -
  
 県境の長いトンネルを抜けると雪国ではなかった。
 僕たちは外の景色をまったく見ずに、自分の手元ばかりを見ていた。通路側に座ってたスマはポメラというペットを可愛がっていた。スマは慣れた手つきでポメラをあやしていた。僕はポメラがどういう生物なのか知らないけど、ポメラはまるで顔に文字が浮かぶかのように――というより浮かんでいる――感情がわかりやすい生物だとことがわかった。いや、よくよく思い出せばポメラは生きていなかったかもしれない。そうだ、ポメラは死んでいたんだ! その死んだポメラを前の座席に取り付けられていた簡易テーブルに乗せたスマは、ポメラと同じように死んだ目でポメラを見てた。なるほど、飼い主がペットに似るというのはこういうことなのか。
 僕はスマに借りた『僕のヒーローアカデミア』の一巻を読んでた。窓側に座っているろっどの性格を具現化したような漫画だった。ヒーローがどうとか、個性がどうとか、そんな話だった。やはり一巻とあって展開が速い。ギャグもあるがそれが本編を邪魔することはなく、上手く溶け込んでいた。そして面白い。だが内容よりもろっどらしさの方が目立つ。力加減を間違えると身を滅ぼすといった展開が多くあり、僕も気をつけようと思った。
 そのろっどは僕のスマホのアプリで遊んでいた。その間ろっどはずっと独り言を喋ってた。「本気を出そう」という言葉を五回は聞いたと思う。ちなみにろっどは自分のことを普通の人間だと思っている。ろっどが普通の人間じゃないことは、僕とスマ、そしてこれから京都で会う予定のチャピル、ホップ、ぺっくにとってはもはや常識だ。でも、ろっどは自分の本当の姿を認めたくないのか、ずっと自分のことをこれと言った才能のない普通の人間だと言い張ってる。可哀想なろっど、愚かなろっど。きっとろっどにはそれを認めるための何かが足りないんだと思った。でも、それが何なのかまだわからなかった。
 京都駅に着いた。雪国ではないけど寒かった。タクシーに乗って待ち合わせ場所に行くが誰もいなかった。チャピルが少し早めに行こうと言っていたから僕たちも少し早く着いたのに、誰もいなかった。僕とスマはまだ大丈夫だったけど、あまりの寒さにろっどはきゅぅんと鳴いていた。
 暇つぶしに辺りの看板を見たり、地下通路を歩き回ったりしていて、地下から地上に上がろうとしたら階段のところにぺっくがいた。髪が短くなっていたけどぺっく・ぴーすオーラはまったく変わってなかった。この人は何をしようが果てしなくぺっく・ぴーすだ。そして靴も前回、前々回のオフ会のときと同じだった。可愛らしくてお洒落な靴だ。でも僕はぺっくがそれ以外の靴を履いているところを見たことがない。草履が似合いそうだと思った。
 待ち合わせ時間は十時だった。僕たちが着いたのは九時三十分くらいだった。チャピルが着いたのは十時五分過ぎくらいだった。ホップが着いたのは十時十五分くらいだった。チャピルの緑のコートは似合ってたし、ホップの短くなった髪も似合ってたけど、待ち合わせ時間は十時だった。
 僕たちチャオラーが集まるのは三ヶ月ぶりくらいだったが、久しぶりという感じもこれといった高揚もなかった。自然だった。
 早速歩いてラウンドワンに行った。チャピルがボウリングもカラオケも予約してくれていたので、何も考えずに向かえば良かった。ラウンドワンに入ると、真っ直ぐボウリング場に向かった。ボウリングはチームに分かれて行うことにした。ろっど、ホップ、僕チームと、チャピル、ぺっく、スマチーム。途中でぺっくの名前がべっくぴーという名前で登録されていることに気づいた。何も尊重されない、ひどい名前だと思った。
 最初からホップがすごい。ホップは左利き。だからボールが曲がる方向も逆で、なんだか新鮮。見た目はナックル回転なんだけど少し曲がる球の力は抜群だった。僕はいつも気になるんだけど、見た目がナックルなのに曲がるというのはどういう原理なんだろう。卓球でもよく見る。多分、少し回転が掛かっていて、ボールの進む方向がその回転方向に逆らっているから、相殺されて無回転になってるのだろう。ボールは本来回転しようしている方向に進もうとしているだけなのだ。いやでも、そもそも回転と推進力の関係がわからない。回転しているからその回転方向に推進力が発生するのか、それとも回転が最初にかかった時点で推進力が回転方向に発生しているのか。それとも、無回転に見えて少し回転しているのだろうか。わからない。
 最初にストライクを取ったのもホップ。このときホップはスーパー化していて、光輝いていた。その後もストライクは一回や二回ではなかった。正直なところ僕はホップに運動ができるイメージをあまり持っていなかったのだけど、イメージを裏切られたと言うには十分な結果だった。それと、ホップはフォームも悪くない。かっこいい。ただ、不思議なのはなんであんなに腕を内側に振っているのに球が前に飛ぶんだろうというところ。でも、野球と同じか。ボールを離すタイミングが絶妙なんだろう。それと、腕を完全に回転運動させているわけではなくて、前に飛ばす調整もしているのだろう。
 曲がる方向と言えば、ぺっくも普通とは逆方向だ。ぺっくは右利きだけどパワーのスキルが低いようで、ボールをちゃんと支えられずに手首が反る。それに加えて腕の振りが体の内側に向かっているからシュート回転になるんだと思った。でもそのシュート回転が功を奏して、左のガターに落ちそうな球も回転力で持ち返し、左側のピンを倒すなんてことが何回かあった。この左端の粘りは正直すごいと思った。でもガターが多かったから、結局のところ球が重すぎるんだと思う。
 ろっども同じく、ガターが多い。ろっどの場合は、道を外れるのが特性みたいなものだからしょうがないのかな。ろっどの球は曲がらない。だからきっと振りは真っ直ぐなのだ。数回ボウリングをやったことある、と言う人は球が曲がりやすいように思うけど、ろっどはそういう意味では脱初心者クラスではないのかもしれない。でも、ガターに自ら向かっているんじゃないかってくらいに真っ直ぐ落ちる。まるでろっどの人生みたいだった。
 チャピルは安定していて安心だ。チャピルのフォームは腕をあまり前に振らない独特なフォーム。腕のバックスイングから振り出しまでは振りが速いんだけど、そこで急激に腕にブレーキをかけて慣性と手首の返しで球を吹っ飛ばす感じかな。振り幅が狭いから、そこだけ調整できれば球のコントロールはしやすい。現に球はややカーブ気味だけどレーンの右側から真ん中にかけて転がっていたから、上手くいっていたのだと思う。でもこの投げ方は腕と手首を痛めやすいので、少し心配だ。いずれはロケットパンチが出そう。
 スマは初めてボウリングをやったという割にはかなり安定してる。フォームがかなり大胆だけど、それに対して球は普通。一人だけ違う次元で戦っていたように思う。彼の場合は僕たちの見えないところにスコアが発生していた。ポージングを決めるついでにピンを倒すという無駄のないところは、さすがスマと言ったところだと思う。結局ボウリングのスコアでは僕たちのチームが勝ったけど、スマの見えないスコアを加算すると引き分け、あるいは負けたのかもしれない。
 僕たちはサイゼリヤに入った。特別お腹が減っていたわけじゃないけど、このあとカラオケの予約があったからそれまでに食べないといけなかった。でも時間に余裕があったから、僕たちはゆっくりと話しながら食事をした。食事よりも、ホップの話が面白かった。ろっどは週チャオ初代編集長のナルさんに似ているらしい。どうか二人が同じ場所に居合わせませんように。それと、チャピルとホップがヘルメタを見ていないという事実をここで知る。チャピルは以前、度重なる内容修正に戸惑っている、と言った話を聞いていたのでしょうがないかなと思う。だがホップ。挑戦状を叩きつけた張本人。あなたが作品を書いていないどころか、見てもいないというのはどういうことだろうか。僕の蝋人形コレクションがまた一つ追加されることがここで決まった。
 そのあとはカラオケに行った。わかっていたけど、ろっどはうるさかった。でもしょうがない。努力賞は間違いなくろっどに与えられるべきだ。ハイトーンが多い曲、さらには女性曲まで原キーで挑戦する精神。ライオンを歌っているときは、百獣の王に相応しい断末魔をあげていた。確かにろっどの努力は、みんなを歌いやすい方向へ持っていくことができていた。しかし、歌いすぎだ。特に僕はぺっくの光る道がすごくいいと思ったのだけど、光る道の素朴さにろっどが首を突っ込むなんて、僕には信じられない! いや、ぺっくがろっどの変身アイテムを持ってきていれば、ろっどはデスボイスではなく女声で歌うことができていた。このオフ会が始まる三ヶ月も前から約束されていたことだったのに、ぺっくは変身アイテムを忘れたのだ。お前も蝋人形にしてやろうか。
 学園天国ではぺっくのテンションとハイトーンに他の人の合いの手がまったくついていけない。それと、聞いただけだから間違ってるかもしれないけど、多分学園天国の最高音はhihiA。歌いだしから三小説目の最初のHeyと、その後のHey連発。これが全部hihiAだと思う。原曲ではメインボーカル以外の男性がオクターブ下で歌っていたから実際はhihiAではないんだけど、これをぺっくは上のオクターブで地声に近い響きで歌えていた。ヘッドボイスだ。これはつまりどういうことかと言うと、音域的にはDeep PurpleのBurnのシャウトもいけるということ。成人女性の平均最高音は地声に響きでは大体hiD前後だから、キーで言うと7つも上。普段の喋り声もミドルボイスのような感じもするし、高音に強いのだろう。もう自分の歌唱スタイルを持っていて、一つの完成形にたどり着いていると言った感じだ。しかも、heyのあとのわーのところではホイッスルボイスが出ていた。どのくらいの高さなのかわからなかったけど、多分hihiEくらいは出ていた。さすがのろっどもこの曲のときには埋もれた。
 チャピルがWhat I'm made ofとNever turn backをロックらしく歌った。おとなしそうだけど、やるときはやるチャピル。その思い切りのいい性格は好きだ。妖怪体操を入れたときも驚いたし、それをちゃんと全部歌ったことにも驚いた。途中で恥ずかしがってやめる人が多い中、こういう思い切りのよさは貴重。あと、チャピルは結構いい声をしている。中音域から高音域の声は聞いたことがないけど、低音域から中音域にかけては芯と落ち着きがあって、包容力がある。ザラつきもないし、ブレもない。磨いたら中音域から高音域も光りそうだ。
 チャピルに限らず、歌うときはみんな思い切りがよくてかっこいい。みんなアニソンを歌ってたけど、その中でホップがサウダージを歌った。なんだか意外だけど、それもすごくいいと思う。あとホップがエルガイムを知ってたのが嬉しかった。僕はアニメのエルガイムを知らないけど曲だけは知っていて(僕は曲だけ知っていることが多い)割と好きな曲だった。オリジナルもいいけど、僕はアニメタルバージョンが好きだ。
 スマはあまり歌わない。僕はスマと音楽の話で盛り上がったこともあったのに、ちょっと残念。でも歌った曲数で言うならチャピルとぺっくもあまり変わらないかもしれない。スマは自分メインで歌う曲が少なかったから印象が弱いのかな。もっと思い切って、Nemesisとか歌ってほしいな! 僕は最後の方で藍坊主のジムノペディックを歌った。でも歌い終わったあとに、せっかくアニソンの流れだったんだからタイバニの星のすみかを入れればよかったと思った。
 そして、escape from the city、Live & Learn。この二曲はみんなで歌った。内容はどうでも良かった。この曲をみんなで歌えたことが、僕は嬉しかった。みんなも楽しんで歌えているようで、オフ会におけるカラオケは大成功だと僕は感じた。
 カラオケのあとはスーパーで夜ご飯を買って、チャピルの家に行った。チャピルの部屋はなんだか広く感じた。というより、実際そこそこ広いんだと思う。僕は部屋の中にいるチャオの姿を想像していた。いてもおかしくない光景だと思うのだけど、どこにもいなかった。
 Nintendolandの鬼ごっこのゲームをやった。四匹の鬼に追い掛け回されて、泣きながら逃げ回る気持ち悪い顔をした人。インパクト抜群のゲームだ。ホップが鬼の中でも強かった。鬼の中の鬼だ。ホップは慣れるとなんでも強い。ホップは僕たちの中で一番すごい人なのかもしれない。ろっどは雑魚だ。自分のことを平凡な人間だと信じてるやつなんて所詮この程度だ。
 WiiUのスマブラをやった。念願のロックマン。なんでXじゃないのだろう。僕はXが一番好きなのに。エグゼ? あんなのロックマンじゃない。ろっどチップをデッキにぶち込まれて感染してしまえばいいんだ。自分のことを人間だと信じながら一生電脳世界の中だけで生きていろクズが。
 結局ロックマンは使いづらかったからやめて、前作でやたら強かったメタナイト。技の隙が大きくなっていて死んでいた。全体的に隙の少ないキャラが少なくなっていた。その代わりに全体的に技が当たりやすくなったような気がする。隙が大きくなったせいかな? でも当たり判定もちょっと変わったような気がする。パルテナの上スマッシュは正直驚いた。大胆すぎる。でも強攻撃が全部アホみたいに隙がでかいので使いづらかった。あとピーチがちょっと強くなってた。もともとDXではダッシュ攻撃が強くて、Xで弱体化して、また今作で強くなった。投げを多用する人にはあまり不用意に使えないけど、やっぱりダッシュ攻撃はいい。あと二段ジャンプもDXの感覚に近くなった気がする。下Bを使うのを忘れていて、どんな使用感だったのかわからないまま終わってしまった。残念。でもそれを差し置いても、今作はピーチで行こう。
 夜ご飯はすき焼きだ。チャピルとスマが準備をしてくれた。そういえばすき焼きの栄養バランスってどうなんだろ。野菜も入ってはいるけど、ベースの味のせいであまり体にいい印象はない。甘いよね、すき焼き。でも、ここで食べたすき焼きは甘すぎずおいしかった。
 まだあまり食べていない状態でお酒を入れたから、僕はちょっとふらふらしていた。そのあとみんな結構笑いながら話していた。チャピルが何度かツボに入っているのを見た。その笑っているという印象と、ろっどが何か言ったのに対して適当に言い返す、というのがその場での僕の意識を支配していた。だからホップとぺっくが帰った頃には、僕は何を言ったんだっけ、という感じだった。ヘルメタがどうとかいう話もあった気がするけど、あんまり覚えていなかった。ヘルメタは全体的にものの役割が明確じゃなくてちょっと心残りなんだけど、真木くんがいいキャラしてたからいいかな、と思っている。あと、美郷さんは、道の上にいたのだ、ってところと、僕、またここに通うよ、のところが好き。でもここら辺は触れられてなかった気がする、多分。
 明確に覚えているのはろっどの「卵が先か、鶏が後か」というセリフだけだ。パラドックスを一撃で粉砕するなんて。
 その後、人生初のドミニオン。ふらふらしてたから大丈夫かな、と思ったけど、意外と簡単に覚えられた。民兵が好き。ドミニオンはすごく面白いのだけど、それについて語ろうとすると戦略についてひたすら話すことになってしまうので、とにかく面白かったとだけ言おう。スマは初めてなのに、完全に要領を得ていて衝撃だった。チャピルは堅実だった。ろっどはまだ覚醒前だった。
 そして寝た。すごく寒かったけど、すぐに眠りにつけた。のちに、僕が布団を巻き取っていたという話を聞いた。ごめんなさい。夜中、ろっどとスマがなんでこのオフのチャオラー達は生き残っているかみたいな話をしていて、元気だなあと思った。僕は頭が痛かった。だから僕は適当なことをちょっと喋って、またすぐに眠った。
 次の日の朝、スマと僕は朝食の買い出しに行った。八時半くらいに家を出たのに、僕たちはなぜかスーパーに向かっていた。途中で「まだ店開いてないよね」みたいな話をして、スーパーに着くと案の定開いていなかった。当然のことだった。
 だから僕たちは引き返して、駅の近くのファミマに行った。そこで適当に朝食を買って、チャピル家に戻って食べた。そしてまたスマブラをやった。やっぱりメタナイトが弱い。空中攻撃と弱攻撃しかすることがない。
 待ち合わせ時間の十時に駅に向かうとぺっくがいた。そして初めていつもと違う靴を履いているところを見た。でもこれからスポッチャに行こうというのに、パンプスって大丈夫なのかなと思う。まあ、どっちでもあまり変わらないだろうという気もしたので、正直すぐに意識から外れた。
 ホップが遅刻したけど、正直タクシー待ちの時間があったので全然問題なかった。タクシーの到着が遅い方が問題だった。待ち合わせ時間が十時だったのに、結局スポッチャに全員集合できたのは十一時半くらいだった。
 そして、スポッチャに入る。初めに向かったのは卓球だったけど、空き台がなかったので近くにあるもので遊びながら待機。すぐに空いて、僕たちは二台を陣取る。制限時間は十分なので、そんなにのんびりはできない。でもとりあえず軽く打とうということで、みんな思い思いに打ち合う。ここで驚いたのが、やっぱりホップ。最初の二球はタイミングも高さも合っていなかったけど、三球目から完全にボールにあった振りができていた。僕は今まで多くの初心者を見てきたけど、これはかなり珍しい。しかも、初心者はボールがオーバーするのを怖がってあまり振りに行かない傾向があるのだけど、ホップは積極的に腕を振っていた。何なんだこの人は。経験者のろっども驚いていた。
 ぺっくがシェークハンドのラケットをペンホルダーのグリップで持っていたので、ペンホルダーのラケットを渡した。この瞬間、ぺっくはニッペンデビューを果たした。
 チャピルとぺっくは割と打ちづらいナックル回転での応酬が多かった。でも二人ともなぜかラケット角度が完璧で、低い弾道でラリーをしていた。ホップもすごいけど、この二人もすごい。なんでチャオラーはみんな卓球が上手いのだろう。
 そして団体戦。チャピル、ぺっく、僕チームとろっど、スマ、ホップチーム。結論から言うと三戦目をやる前に、スマがチャピルに勝って、ホップがぺっくに勝った時点で、ろっどチームの勝利。一応ろっどと僕も試合をしたけど、ろっどは自分のことを平凡な人間だと信じているので僕には勝てない。三試合目にパルプンテ対決、つまりホップとぺっくの試合をやったほうがよかったと後悔する。制限時間も少しオーバーしていたので、さっさと退散した。なんだか慌ただしくて、楽しむ余裕もなかった。
 そのあとはインラインスケート。僕は正直これはやらないだろうと思っていた。けが人が出ると思っていたから。でも、目をキラキラさせている人がいたから、行かざるを得なかった。周りの客が下手くそだった。どいつもこいつもひっくり返っていた。ここが三年峠であったら彼らは悪魔になれていたかもしれない。僕たちはかなり転倒率が低かった。ぺっくがおっかなびっくりな進み方だったけど、転倒はしてなかったと思う。他のみんなはそこそこに滑れていた。店員に肘当てと膝当てをつけろと注意されたのを機にスケートをやめる。僕は飽きて先に外に出ていたから注意をされなかった。
 上の階に上がり、屋外に出る。寒いけど、僕はそんなに気にならなかった。みんなは大丈夫だろうか。サッカー、3on3、バドミントン、テニスのコートは空いてなかったから、バッティングコーナーに行く。ろっどが一番はしゃいでいて、悔しいことにろっどが一番ヒット率が高かった。チャピルと僕はまったくバットにボールが当たらなかった。ぺっくは何本か当たっていたけど、バットを振るときの腰の振りが気になった。僕はコートの空き状況を確認しに行き、3on3がそろそろ空くということでみんなを集めた。
 そして3on3をやったのだけど、それはもう悲惨なものだった。チームはろっど、チャピル、ぺっくチームと、スマ、ホップ、僕チーム。どちらのチームもパスは通らない、パスの相手の位置も悪い、ゴール下にいるのは相手チームの人だけ、と言った風だった。お互いの距離が近すぎるスマとホップ。動きはいいけど味方との連携が上手くいかないチャピル。高く上がったボールに手を伸ばすが足が動かず、届いているのは気持ちだけのぺっく。ゴールの土台やネットに突撃するろっど。一体これは何を競う競技なのだろう。そしてお互いワンゴールもならず、十分が終了。フリースローとパス練習を最初にやるべきだった。
 他の競技もやりたかったけど、どこも順番待ちだったのでまた下の階のゲーセンに行った。結局僕たちはインドアな人間なんだ。ダンレボでスコアは稼げているけど動きが気持ち悪いろっど。それに対し、スコアは稼げていないけど動きが何故かかっこいいスマ。この二人はこんなのばっかりだ。あとはずっとうろうろしていたので、あまりみんなのことを見なかった。強いていうなら、ホップとぺっくがやっていたルパン三世のタイピングゲームが印象的だった。外に出ても結局キーボードを叩くのか、と思ったが、楽しんだもの勝ちだということを考えると悪くない。ホップはドリームキャストのキーボードがどうとか言って喜んでいた。僕にその価値はわからないけど、きっと喜ばしいことなんだろう。僕は十年前くらいにこのゲームをやったことがあったので、懐かしい思いでそのゲームを見ていた。肝心のタイピングしている姿を何故か見ずに僕は歩き出してしまった。僕も何か面白そうなゲームはないかと歩いていたからだ。でも、これは終わってから後悔した。
 あと握力と背筋力を測定する機械があったので、ろっど、チャピル、僕でやってみた。ろっどは妥当な数値が出たように思うけど、チャピルと僕がやったときは壊れてるんじゃないかという数値が出た。チャピルの左手の握力が57kg、僕の右手の握力が67kg。そんな力をひねり出したら肋骨が折れてしまうから、これは何かの間違いだ。ろっどは僕たちより低い数値だったのに肋骨を痛めていた。
 その頃にはもうスポッチャの制限時間が終わりに近づいていた。チャピルと僕はソファで飲み物を飲んでみんなを待った。そして、みんなが集まってスポッチャから出た。
 スマが帰るので、タクシーを呼んで、それを待つ間プリクラを撮ろうとした。撮った写真の人物にメイクができる機種があるという噂を聞いていたので探すとその機種があった。一択だった。
 そしてここで、ろっどを真の姿へと変身させる儀式を行う。前日忘れたろっどの変身アイテムを、ぺっくが持ってきていた。リボン付きのヘアゴムだ。厳密に言うと、ろっどは変身するのではなく真の姿へと戻るだけだ。
 そうか、と僕は思った。ろっどが自らの本当の姿を認めるには、このアイテムが必要だったんだ! 儀式を済ませ、変身したろっどはすごく可愛かった。こんなに可愛いのに、自分のことを才能のない普通の人間だと言うのは、世の中の女性に対して失礼だと思う。
 そしてプリクラを撮った。間違いなく定員オーバーだし、撮るペースが尋常じゃなく速い。なかなか大変だったけど、ろっどがセンターだったので全ては問題ない。しかしろっどはここでも自分の姿を見ようとしていなかった。
 ここからが本番で、そのろっどにさらにメイクを加える。これでろっどは無敵だ。世の中の男どもはきゅんきゅんし、女でさえも惚れる可愛さを手に入れるのだ。ぺっくが画面のろっどにメイクをしていく。僕もメイクをしようとしたが、自分にメイク能力がないことを認めメイクはほどほどに、ぺっくの手によって可愛くなっていくろっどを見ていた。だが、この時タクシーの到着予定時間が迫っていて、メイク終了後に少し雑な操作をしたと思う。そして印刷されたプリクラを見ると、なんとメイクを施されたろっどが入っていなかったのだ。というかそもそもメイクした画像は携帯に送らないといけなかったみたいで、それを知らなかったのが痛かった。それを知ることのできる時間の余裕があれば良かった。そうだ、タクシーを手配したのはろっど。そこまでして自分の真の姿を認めたくないか。ろっどの変身もプリクラが終わったときには解けていた。
 そしてタクシーが来て、チャピルと僕はスマを見送るため三人で乗って駅に向かった。行きのときもそうであったが、タクシーの中で会話はない。多分それは運転手がいたという理由も大きいだろう。チャオラーの会話の中に他の人間が入り込むのはなんとなく抵抗がある。でも、もしかしたら運転手がいなくても話していなかったかもしれない。三人とも進んで喋りだすタイプではないからだ。それに、喋らなくてもなんとなく心地よい。当たり前でもあるが、僕は喋りたいときだけ喋ればいいと思う。
 タクシーが駅の近くについて三分くらいで、ろっどから駅に着いたとの着信が入った。僕たちより早い。一体どうなっているんだ、と思いながら、チャピルと僕は改札に消えていくスマを見送った。またスマは帰りの新幹線でも死んだポメラを可愛がるのだろう。その光景を思うと、切ないわけでもなかった。
 ろっど達と合流し、ファミマで軽めの昼ご飯を買う。きゅうりの栄養素についての話があった。きゅうりにはビタミンが含まれているが、きゅうりの中にビタミンを壊す物質が入っているので、きゅうりにはほぼ栄養がないと言えるのだ。そういう不器用な空回りを見せるのってすごくお茶目だと僕は思う。栄養素はなくても、お茶目さがきゅうりには含まれているのだ。だから、きっときゅうりを食べ続けるとお茶目になれるはずだ。もしかしたら、ろっどは毎日きゅうりを食べ続けてきたからこんなにお茶目で可愛くなったのかもしれない。(ちなみに、一応きゅうりには体温を下げる効果があるみたいだ)
 チャピル家に戻って昼ご飯を食べたあと、僕たちはひたすらドミニオンをやった。ホップとぺっくが初めてなので解説しながらのプレイだったが、二人とも飲み込みが早かったので問題なく進んだ。僕も前日に初めてやったばかりだったので、ほぼ対等と言える。ホップの村祭りデッキ、ぺっくの堀から呪い放出デッキ、ろっどの高速回転デッキは驚異だった。それぞれ驚異の意味合いは違うけど。ホップは引きが強いというのと、無理してアクションカードを引かず財宝に手を出すというところが良かったように思う。ぺっくはやろうとしていることが明確という点で無駄がなかった。ろっどは意味不明だ。しかしやはりチャピルが強い。どんなアクションカードに入れ替えても、安定した立ち回りを見せていた。
 夜ご飯はピザの出前を取った。好き嫌いの多い人が数人いるので、無難なピザを二枚頼み、全員で食べた。そしてまたドミニオン。
 そして最後に僕たちは集合写真を撮った。この時、ろっどはまた真の姿へと戻った。スマがいないのが残念だったがしょうがない。それと、いつか六人で写った写真を撮りたい。いつも誰かがカメラ係になってしまうし、プリクラでは補正が強すぎてなんだかイマイチだ。カメラのタイマー機能で、今度は六人で写ろうと思う。
 そして僕たちはチャピルに別れを告げてチャピル家を後にした。僕たちはそこそこに話しながら駅へと向かう。
 そこで、ようやくろっどがすべてに気づく。はっとした顔でろっどが見つめるのは自分の影。その影は、ろっどの真の姿のシルエットであった。ろっどはさっとポケットから手鏡を取り出し、自分の顔を見て息を飲んだ。ろっどは真の姿の自分を初めて直視したのだった。
「僕、可愛いんだ……普通の人間じゃなかったんだ!」
 ろっどのその言葉と共に、拍手が起こった。僕たち三人の拍手だ。
「おめでとう」
「ろっどさんは可愛いんだよ!」
「そして普通の人間じゃない」
 ろっどはその場に泣き崩れ、その後真の姿のまま帰りの電車に乗った。こうして、真のろっどの物語、僕たちのオフ会が終わったのだった。


 帰りの新幹線から僕が乗り換えのために降りる時だ。ろっどは乗り換えないので、別れは新幹線の中だった。チャオラーが近くにいるのが当然だった二日間が終わり、また一人になると思うと僕は悲しかった。新幹線が停止するギリギリまで、席を立たなかった。
「じゃあね、ろっど」
「あ、待ってください」
 ろっどに引き止められ、僕は振り返る。
「どうした?」
「今日、僕はみんなのお陰で覚醒できました。そのことには感謝しています」
「うん」
 このあと発せられる言葉を、僕はまったく予想していなかった。
「でも僕は、あと二回の覚醒を残しています」


WHITE LEGEND of ROD ―雪山の女神― につづく
引用なし
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