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自分の冒険 〜自分ならこう書く〜 冬木野 12/4/26(木) 11:03

ピュアストーリー 第九話 異文化 スマッシュ 13/12/7(土) 23:03

ピュアストーリー 第九話 異文化
 スマッシュ  - 13/12/7(土) 23:03 -
  
 殺人事件が多発していた。無差別に多くの人が殺される事件も度々発生した。そういった事件はテロだと噂されることもあった。ブレイクはそのような事件を起こす人間を殺してやりたいと思っていた。罪のない人々は死ぬべきではない。そういった人たちを殺そうとする人間こそ死ぬべきだ。そう幼馴染と話すこともあった。ブレイクはある日ヒーローズという団体に保護された。
 ブレイクはヒーローズのトップであるベックという整った顔立ちの中年の男から自身が異文化感染者であることを教えられた。しかしブレイクは異文化感染者というのがどういうものなのか知らなかった。説明を求めるとベックは、殺人を助長する文化である、と言った。
「その文化はどうやらこの星の者が作った文化ではないようだ。異星人、あるいは別の世界の者、とにかく敵と呼ぶべき存在が我々に送ってきた文化の形をしたウイルスなのだ。そのウイルスは人々の中に入り込み、人々の文化として根付く。敵は我々に殺し合いをさせることで攻撃を行っているのだ。我々はいずれその敵と戦わなくてはならない。が、問題はそれだけではない」
 ベックは、我々には人間の敵がいる、と言った。力強い声であった。別の世界の敵よりも重要視しているのが伝わってきた。
「異文化ウイルスのことを察知したのは我々だけではない。しかし中には異文化感染者を殺すべきだと考えている者もいる。そうすれば異文化が広まることもなくなると、ありもしない未来を語っている。しかし彼らは行動に出た。報道されている殺人事件の中には彼らが異文化感染者を排除しようとしたものも含まれている。先日の二十名の死傷者を出したテロ事件もまた彼らによるものだ。我々は君を彼らから守るために保護したのだ。そして君には我々に協力してほしい。彼らのような間違った正義を振りかざす者たちを打ち倒し、人々の英雄となるための活動をしてほしいのだ」
 ブレイクはまともに発言することもなく話の流れるままにヒーローズの戦闘員として働くことになった。戦闘員はブレイクの他にも大勢いた。異文化感染者を駆除しようとしているホワイトフレイムという組織の人間を殺害することが任務であり、ブレイクはそのための訓練を受けた。
 ブレイクと同時期に戦闘員として加入した女がいた。真っ直ぐ伸びた金髪の美しい十八歳の少女だった。ソフィアという名前であった。共に訓練を重ねていくうちに仲間意識が強くなり、互いに互いがホワイトフレイムの魔の手から守るべき存在となった。やがて一人前の戦闘員として活動することになったが、その頃には息の合ったコンビになっていた。ばらばらに活動することはなかった。相手のことが自分に欠かせない存在であるように感じられて、二人は恋人として付き合うことになった。しかしその一年後にソフィアは殺されてしまった。十人の戦闘員が参加する比較的大きめの作戦の途中であった。

 ブレイクはベックに呼び出された。ソフィアが死んでから二ヶ月が過ぎていた。パートナーを失い、大して親しくない者と組むようになった。そしてほとんど話したことのないような人間と一緒に行動してもなんとか任務を達成できてしまうことに拍子抜けしていた。
「ホワイトフレイムはカオスエメラルドを集めている。それを許すわけにはいかない。カオスエメラルドを集め、かつホワイトフレイムを叩いて戦いを終わらせてほしい」とベックは言った。そして欲しいと思う人材を連れて行っていいと付け足した。
 ブレイクは一人で行こうと思った。戦いが終わると信じられなかった。それよりも早く殺されてソフィアの所に行きたかった。
「ブレイク、待って」
 呼び止められて振り向くと、幼馴染のミヤビがいた。彼女は戦闘員ではなかった。しかし盗みなどの犯罪行為によって組織を支える構成員であった。
「カオスエメラルド集め、私も手伝うよ。心配だし」
「聞いていたのか」
「まあね」
 付いてこられるのは面倒だとブレイクは思った。途中で死ぬつもりの旅だ。そこで、
「俺は死ぬつもりだ」と言った。
「それ本気で言ってるの」
「ああ」
「本当に本気で言ってる?」
 ブレイクは答えられなくなった。死ぬだけなら自殺という手もあった。そのことをわかっていながらまだ生きている。今生きているという事実が重荷であった。ソフィアの死にさほど心が動いていないのではないかと思われた。ソフィアは大切な存在であるはずだ。そのためにブレイクは死にたいと思うようにしている。自分が本当に死にたいと思っているのか、彼にはわからなかった。
「とにかく付いていくからね」とミヤビは言った。

 カオスエメラルドを入手するために寄った町で騒ぎが起きていた。ホワイトフレイムが何かした可能性もあると考えてブレイクとミヤビは騒ぎの中心となっている場所に向かった。大通りを曲がってすぐの裏通りで無差別に人が殺されていた。ブレイクたちが駆け付けるまでに数分かかったが、銃声が鳴り続いていた。路上にカオスエメラルドが落ちていた。
「カオスエメラルドだ」とブレイクが言う。
 ホワイトフレイムがカオスエメラルドを狙って人を殺した。そのように考えられた。懐に隠していたピストルを握り、ブレイクは裏通りに出る。そこでは突撃銃を持った男が乱射していた。ブレイクは素早く男の頭を撃ち抜いた。男は倒れ、銃は止まった。念のために数発頭と心臓に撃ち込んだ。その間にミヤビがカオスエメラルドを回収した。
「酷いね」とミヤビが周囲を見て言った。人が数十人倒れていた。そのうち何人かはまだ息があるようだった。
「助かったよ」
 負傷した様子のない女が近寄ってきてそう言った。ブレイクには見覚えがあった。ヒーローズの戦闘員の一人であるヘレンだ。活躍していたブレイクとソフィアのことを敵視していた。特にソフィアに対してライバル意識を持っていたようだった。ソフィアが死んだ作戦の時、彼女もソフィアの近くにいた。
 ヒーローズの人間はもう一人いた。そちらは男だった。アヴァンという名前である。彼もまた戦闘員であった。
「流石だな、ブレイク。君の腕がいいって話は本当だったようだ」
 そう言って握手を求めた。ブレイクがそれに応じると、
「本当は俺が先制攻撃を仕掛けて殺すはずだったんだ。だけど勘付かれてしまって、身動きが取れなくなってしまったんだ。君が来なかったら死んでいたかもしれない。ありがとう」とアヴァンは話して笑った。
「そうか、大変だったな」
「お前も大変な仕事をやってるって聞いたぞ」
「まあな。カオスエメラルドを集めている」
「まじかよそれ。そういえばさっきのやつがカオスエメラルドをよこせとかわめいていたな」
 ミヤビが、回収したよ、と言ってアヴァンにカオスエメラルドを見せた。
「ああ、無事だったのか。そうだ、俺たちも仲間に入れてくれ」
「正気?」とヘレンが言った。不愉快そうな顔をしている。「私は嫌なんだけど」
「いいじゃんか。仲間は一人でも多い方がいいだろ」
 ブレイクもヘレンと同じでお断りだという気持ちであった。それなのにミヤビが強引に、そうしよう、と言ってしまった。特にヘレンと一緒になるのは嫌だった。彼女はソフィアの近くにいた。それなのにライバル視するあまりソフィアのことをサポートしなかったせいでソフィアは死んだ。そういう風に考えたことがブレイクにはあった。

「カオスエメラルドってどんなことができるんだろうな」
 旅の途中で不意にアヴァンがそう言った。
「七つ揃えば凄いことができるんだよな。一つでもかなりのことができるって聞いた。カオスコントロールとかソニックはしたらしいし。他にも何かできるんじゃないのか」
「何かって何」
 そうヘレンが言う。
「ええと、なんだろうな。何も食わなくても腹が膨れるとか」
「くだらない」
「そう言うなよな」
「試してみよう」とブレイクが言った。
「本気でお腹を?」
 ヘレンにそう聞かれてブレイクは笑った。
「そんなわけないだろ」
 ブレイクはソフィアを蘇らせようと考えたのだった。カオスエメラルドを強く握り、ソフィアに生き返ってほしいと願う。するとカオスエメラルドは発光し始める。ブレイクはがむしゃらに願った。ソフィアと一緒に何がしたいか頭の中に描き、そして彼女が死んでしまったことを拒絶する気持ちをカオスエメラルドに訴えた。果たしてソフィアが四人の前に現れた。裸であったためにブレイクは自分の羽織っていたコートを渡した。
 ソフィアを蘇らそうとしたとは思っていなかった三人は驚いていた。ヘレンが目をむいていた。失ってしまった者がそこにいる。ブレイクは何も言わずにソフィアを見つめていた。見つめ合ったまま氷になろうとしているような沈黙であった。何十秒という間を味わって、ソフィアが口を開いた。
「私、生き返ったんだね」
「ああ」とブレイクは頷いた。「そうだ」
「そうだよね。そうなんだよね」
 ソフィアは空を見た。何かを喪失した顔だった。
「私は一度死んだんだ」
 ソフィアの呟きを聞いて、ブレイクは彼女に近寄って手を取った。
「そのことは忘れてしまっていいんだ。もう一度やり直そう。今度こそ俺は君を守る」
「駄目だよ。私はもう死んだの。ちゃんとそのことを覚えてる。死人とはお喋りできないんだよ。だから夢から覚めないと」
 そう言ってソフィアはブレイクの懐から銃を取った。
「やめるんだ」
 自殺を止めるために銃を持った手首を握ろうとしたがソフィアはそれを避けてブレイクから離れた。
「ごめんね。二回も死ぬところを見なきゃいけないなんて辛いよね」
 謝りながらもソフィアの手は躊躇いなく動き、自分のこめかみを撃ち抜いた。
引用なし
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