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自分の冒険 〜自分ならこう書く〜 冬木野 12/4/26(木) 11:03

ピュアストーリー 第三話 平和の使者 スマッシュ 13/11/23(土) 0:00

ピュアストーリー 第三話 平和の使者
 スマッシュ  - 13/11/23(土) 0:00 -
  
 ドクターフラッシュと名乗る科学者がいた。彼は五十年前からカオスエメラルドという宝石に魅了されている青年であった。ソニックやテイルスといったヒーローたちが活用した宝石。それには物凄い力が宿っているらしい。彼は新しいカオスエメラルドの使い方を研究したかった。エネルギー問題を解決できるかもしれなかった。それ以外の、将来を不安にさせる数々の問題も、カオスエメラルドならば解決できるかもしれない。青年はそう思っていた。世界革命の日、彼はカオスエメラルドの記憶を手放さなかった。誰もそのような宝石があると思っていない世界になってしまったが、彼は一人でカオスエメラルドを探すことに決めた。そして彼は一つの宝石を手に入れた。それはカオスエメラルドではなく、カオスエメラルドにあと数歩届かなかった宝石であった。その八つ目のカオスエメラルドになり損なった宝石が彼の新しい願望になった。彼は今もなおカオスエメラルドを人工的に作り出す研究を続けている。

 ハルバードたちが旅立つ二週間前に、カオスエメラルドを集めてきてほしい、とドクターフラッシュは石のような表情の青年に言った。青年はブレイクと名乗っていた。偽名に偉人の名前を使うふてぶてしい青年が元々集団の創始者であった。フラッシュはその集団に後から参加したのだが、年長者であったために集団のトップのような立ち位置にされてしまった。ブレイクと名乗る青年もフラッシュに権限を持たせようとしていた。彼自身は鉄砲玉であろうとしていた。今回も彼自ら旅に出るようだった。
 ブレイクは三七五町のマンションに住んでいた。築二年の新しいマンションが彼らの集団の拠点だった。三七五町付近で暮らしていた仲間はなるべくこのマンションに住ませるようにしていた。旅支度を終え、玄関のドアを開けると若い女が立っていた。ブレイクにとっては幼馴染のような家族のような女であった。
「私も行かせて」
「無茶だ」
 女はスピアという名前であった。彼女は顔を歪めていて、泣く手前といった表情だった。
「一人でどっか行かないで。心配でたまらなくなるから」
「大丈夫だ。俺は頑丈だから」
「それでも心配なものは心配なの」
「君は脆い。戦いになったら死んでしまう」
「大丈夫」
 スピアは懐からヒーローチャオの頭の上にある輪っかを取り出した。輪っかは僅かに光を発している。それを突き付け、睨む。
「博士からもらってきた。これがあれば戦える」
 その輪っかはエンジェルエメラルドと呼ばれている物であった。ヒーローカオスチャオを輪っかだけ残るように殺して作られる。カオスエメラルドになるための何か。それをカオスチャオは持っていて、頭上にある球体や輪っかはカオスエメラルドに近い物になっていく。他にも魔法使いの死体から心臓を取り出すと、心臓の一部がとても小さなカオスエメラルドになっている。フラッシュはそういった事実を知り、カオスエメラルドには及ばないものの大きな力を持った宝石ならば量産できると考えた。チャオが二回目の転生を迎える十二年後にはエンジェルエメラルドの大量生産が可能になる見込みである。スピアの持っているエンジェルエメラルドは二回以上転生したチャオをさらって作った物の一つであった。ヒーローカオスチャオに進化させたのは、球体よりも輪の方がかさばらないからであった。
「駄目って言っても付いていく」
「わかったよ。好きにしてくれ」
 ブレイクは強く反発することができなかった。昔からそうだった。スピアがこうすると決めたら彼には動かすことはできなかった。旅の準備をするためにスピアは自分の部屋に戻る。スピアもこのマンションに住んでいた。逃げないようにブレイクも部屋の中に入れられた。スピアは着替えをあまり入れず、小さなリュックサックだけで旅立つことにした。可愛げのない女だとスピアは思った。思春期には喧嘩の腕を磨いてばかりいた。可愛く振る舞うことよりも戦うことの方が大事だと自分を納得させて、荷物は増やさなかった。

 カオスエメラルドの発見は容易であった。カオスエメラルドは共鳴するらしいとドクターフラッシュは言っていた。カオスエメラルドが近くにあるとエンジェルエメラルドの光がいつもより強くなった。それだけではなくブレイクも直感的にカオスエメラルドことがわかった。勘にしては気まぐれな感じはなく、エンジェルリングが光を強めれば直感の訴えも強くなった。スピアは何も感じておらず、ブレイクの反応を不思議がっていた。
 一つ目のカオスエメラルドは民家にあった。玄関のドアを突き破って中に入った。家の中には主婦と思われる女性がいた。スピアは剣で脅し、宝石の在り処を聞きだした。剣は刺突用の細い剣であった。ブレイクも剣を持っていた。こちらも片手で扱う剣であったが、主に切ったり叩いたりといった使い方をする物であった。女性は抵抗することなくカオスエメラルドをスピアに渡した。殺すつもりはなかったのでそのまま帰ろうとしたが、ブレイクが十五歳くらいに見える少年の胸に剣を突き刺していた。少年はバットを持っていた。おそらく背後から襲って倒そうと思ったのだろう。服が斜めに切られて破れていたので、一度切ってから剣を突き刺したことがわかった。退散してからスピアは、
「殺さなくてもよかったのに」と言った。子供が相手なのだから手加減する余裕はあったはずだと彼女は思ったのだった。
「すまない」
 ブレイクは俯いた。彼自身殺したいと思ってやったのではなかった。しかし殺さなかったらスピアが危険な目に遭うかもしれないと考えると殺した方がいいと思った。その考えはスピアに叱られても変わらなかった。しかしスピアはそれを望んでいない。だからブレイクは俯くしかなかった。

 ドクターフラッシュの研究はカオスエメラルドを七つ集めなくても進めることができた。集められればよりいいというだけであった。しかしブレイクとスピアは七つ集めるつもりでいた。カオスエメラルドを七つ集めれば奇跡が起こる。その奇跡に用があった。カオスエメラルドの一つは大魔法という魔法使いの結社が持っていることをブレイクは知っていた。カオスエメラルドの力を知った賢者の会は、所属している魔法使いの中で最も強い魔法使いに賢者という称号を与え、その証としてカオスエメラルドを持たすらしい。その賢者から奪うのが一番難しいだろうと思われた。二人の旅は賢者を倒すために他のカオスエメラルドを集めて力を蓄える旅であった。
 二つ目のカオスエメラルドは殺さなければ手に入れられなかった。カオスエメラルドを神の石と称して崇めている宗教団体が相手であった。ブレイクたちのように襲ってくる者を撃退するために魔法使いを三人雇っていた。さらにその魔法使いから魔法を習っていた者たちが戦いに加わった。彼らが使うのは弾丸の魔法だ。一発撃つだけなら子供でもできる魔法である。まさに素人連中は一発撃つだけであった。次の弾を作り出すのに時間がかかる。一度に何発も撃つのは魔法使いだけだ。しかし素人の弾でも当たれば大怪我をする。頭や心臓に当たらなくても死んでしまうかもしれない。先に動いたのはブレイクだった。魔法使いに向かって突進する。何発か弾が当たったが、ブレイクは止まらずに魔法使いの頭を剣で叩いた。切る、というようなすっきりした攻撃ではなかった。剣は頭の途中で止まっていた。それを引き抜くのにブレイクは苦労した。そして首に剣を突き刺した。その間もブレイクは何発か弾をくらった。彼の言葉通り、彼は頑丈だった。肉体を魔法で強化していたため傷は浅かった。エンジェルエメラルドが魔法の力を強化していた。それを見てスピアが人を殺す決意をした。殺さなければ殺されるのだから仕方ないと思った。スピアは学校で魔法の勉強をしていない。弾を一発撃つのがやっとの集団と同じ素人であったがエンジェルエメラルドが彼女に力を与えた。魔力の燃費の悪い不細工な弾丸をいくらでも撃つことができた。肉体を強化して素早く動き回って弾を回避した。やがて連射に耐えられなくなった魔法使いを一人倒した。ブレイクももう一人の魔法使いを倒していた。
 全ての人を殺して、スピアは自分の心が乱れていないことを不思議に感じた。人を殺す時にはもっと大きな心の動きがあるものだと思っていた。死体を見ると気分が悪くなったが見ないようにするといつも通りの自分になった。ブレイクがカオスエメラルドを手にして戻ってくる。
「さあ帰ろう」
「うん」
 後からじわじわと苦しくなるのかもしれないとスピアは思ったが、人を殺した記憶は何事もなく過去の記憶となっていった。人を殺すのはなるべく避けるべきだという考えも変わらなかった。

 ブレイクとスピアは手に入れたカオスエメラルドをフラッシュに渡し、拠点のマンションで生活していた。ハルバードたちが旅に出た頃にブレイクたちもカオスエメラルドの情報を入手した。今度は奪う必要はなく受け取ればいいだけであったからブレイクはほっとした。〇八三町に向かってブレイクとスピアは北上した。
「今回みたいに奪う必要なく全部集まればいいんだけどな」と電車の中でブレイクは言った。
「そうだね」
 〇八三町に着くと騒動が起きていた。買い物客が走って逃げていた。流れに逆らって裏通りに行くと、人の死体があった。
「クレイモアだ」とスピアが言った。
「まさか」
「でも、たぶんクレイモアだと思う」
 顔の一部が破損していたし、数年間顔を見ていなかったから確証はなかった。スピアは死体の持ち物を物色した。財布の中に保険証が入っていた。それをブレイクに見せた。やはりクレイモアの死体であった。
「とりあえず今はカオスエメラルドを」とブレイクは言った。
「うん」
 大量殺人であった。死体が目印となって、殺人犯の足取りがわかった。店の中を物色して回っているようだった。ドアが魔法で破されていた。
「やっぱりカオスエメラルドが狙いか」
「だよね、これ」
 店の中を探すのはやめて、死体を追うことにする。するとハルバードとサイスが建物の中から出てきたところを見つけた。
「サイス」とスピアは叫んでいた。「それにハルバード」
「スピア。どうしてここに」
 カオスエメラルドを奪おうとしている犯人が幼馴染であるとわかって、腑に落ちる。きっとハルバードがやり始めたのだろうとスピアは思った。驚いているサイスにスピアは剣を向けた。
「今すぐ帰って」
「待ってくれ。俺たちは」
「カオスエメラルドは渡せない」
 スピアがそう言うと、ハルバードは剣を構えた。幼馴染を殺すわけにはいかなかった。
「やめて。帰って。二人は今まで通りに暮らしていればいいから」
「そういうわけにはいかない」
「嫌でも帰ってもらう」
 殺さない、と決意してスピアは一歩前に進んだ。殺さなかったために殺されてしまうということがあるかもしれないが、それでも殺すのは嫌だと思った。幼馴染を不幸な出来事から救うためにスピアはカオスエメラルドを集めていた。
 ハルバードが駆ける。とても速くて、肉体を魔法で強化しているのがわかる。スピアは一歩だけ助走して跳ねた。そしてハルバードの顔面を蹴り飛ばした。綺麗に当たってハルバードは地面を転げた。サイスが一発弾を撃った。スピアは足元に向かって飛んできたその弾を片足を上げるだけの動作で避け、素早くサイスに近付いて首元に剣を突き付けた。
「魔法の腕は二人の方がいいかもしれないけどさ、実戦では私の方が強いんだよ」
 エンジェルエメラルドの力は大きいが、それだけで生まれた差ではなかった。ハルバードよりも戦いに慣れているのだった。素の身体能力も優れている。だからこその圧勝であった。
「帰って。お願いだから」
「わかった。私たちの負け」
 サイスが両手を上げた。ハルバードも剣をしまった。スピアは二人から離れる。
「ありがとう」と微笑んで言った。「大丈夫。二人が幸せになる世界を作るから。だから待ってて」
 スピアとブレイクは走ってその場から去った。そしてカオスエメラルドを受け取ることになっていた模型店に行った。模型店の店主は無事だった。襲撃してきたのはあの二人だけだったらしい。そして店内にはもう一人男がいた。真っ黒な服を着た美青年であった。その青年が、
「あんたがブレイクか」と言う。
「君は?」
「俺はレジスト。魔法が得意だからカオスエメラルドを守っていた」
「そうか、ありがとう」
 カオスエメラルドはレジストが持っていた。それをブレイクは受け取る。
「なあ、俺も連れていってくれないか。平和な世界を作るんだろ。俺にも手伝わせてくれ」
「構わないが、死ぬかもしれないぞ」
「それでいい。平和な世界が欲しいんだ。それって人を殺さないで済む世界だろ」
「ああ。そうだ」
「俺、つい魔法で人を殺してしまうんだ。自分がそういうことをしてしまう人間だってことに、耐えられない。だから俺は平和のために戦いたい」
 レジストの告白は二人の心に届かなかった。つい人を殺してしまうという悩みが理解できない。しかしレジストが強い気持ちを持っていることだけはわかった。ブレイクは、
「よろしく頼む」と言った。
引用なし
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