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私の家では、たくさんの動物を飼っています。
ウシ、イヌ、ヒツジ、テン、ライオン、カピバラ、そしてチャオ。
なんてね。
半分はホントで、半分はウソです。
ーー熊本県、阿蘇市ーー
半径約10kmのカルデラの中に、私たちの高校はあります。
自然が豊かと言えば聞こえはいいけれど、悪くいえば新しいものはなかなか入ってきません。
そんな所に住む私たちにとって、転校生は興味を引く存在でした。
小柄で気の強そうな子というのが、第一印象でした。
前髪を短くしてきりっとした眉をはっきりと見せているのも、そう思わせる一因だったかもしれません。
「おい、優花」
後ろの席の一木が、私の背中を叩きました。
「何?」
「ライオンばい」
そんな彼の一言で、転校生の女の子のあだ名は決まってしまったのです。
「なんであたしがライオン?」
「むすっとしとるけん、ライオンに似とると」
私はますますムスッとしたライオンをなだめるために、口を挟みました。
「こいつすぐ人のことを動物に例えるから。私のお母さんはテンで、一木のお父さんはヒツジだから」
「なんで優花だけ動物じゃないの?」
「さあ、優花は優花ばい。なんの動物にも似てなか」
「ずるーい」
私たちの家には、チャピルという名のチャオがいます。
一木と一緒に幼い頃からずっとこのチャオの面倒を見ていました。
チャピルは2回の転生を経て、今はまたコドモチャオに戻っていました。
ライオンは初めて見るチャオに目を見開きました。
「触ってみなよ」
「噛んだりしない?」
「大丈夫、チャピルは大人しいから」
ライオンの指先がチャピルの表皮に触れました。波紋が全身へ広がっていきました。
「ぎゅっと握ってみて」
私はチャピルの丸っこい手を捕まえて、ライオンの手のひらに重ねました。
「チャオの手をね、色んな動物と触れさせていくと、この子はそのうちライトカオスっていうのに育つんだって」
「ライトカオスって何?」
「ライトカオスは永遠に生きるチャオなんだって」
ライオンは私に聞きました。
「優花にとって、一木ってなんなの?」
「幼馴染み、かな?」
「みんな言ってるよ。二人は実質付き合ってるって」
私には自信がありません。
幼い頃から一緒だったせいか、それが愛なのか、情なのか、それとも習慣なのか、よく分からなくなっていました。
だからライトカオスに証明してもらいたかったのかもしれません。私には、人を愛する能力があるということを。
ライカ記念日
2018年公開予定
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