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女性を描く、ペットとしてチャオを描く、という点で、現実感が印象的な作品でした。チャオのかぜのときよりも、遥かに。チャオのかぜのときは、それほど強く現実感を感じませんでした。
むしろ「かぜ」はファンタジー性(という表現が的確なのかは不明)といいますか、作られた世界であることが浮き彫りになっていた気がします。これは、「かぜ」で描いていた世界が隙のない完全なものであったからでしょう。
「アパート」はそういった描く世界(描写していて、読者から見えている世界)が、その世界観のほんの一部である印象を受けます。これは、たぶん舞台がチャオガーデンを中心としたものではなく、主人公の内面に着目している影響もあると思いますが。
それによって、現実感が強く印象に残っています。この作品のそういうところは非常に好みです(面白く感じました)。
また、今までの小説を読んできた成果か、あるいは別の理由かはわかりませんが、以前の女性の描き方と比べて(これは作風やテーマの問題もあるかも)強く女性らしさを感じます。
これまでは女性なのに男性らしい(オタクっぽい？)部分もあったのですが、「アパート」では主人公の内面を切り込んでいるにも関わらず男性らしさは感じませんでした。
その理由として考えられるのがひとつ。以前までは自立していた女性を描き、どちらかというとスマッシュさんの内面・理想を現実化したようなキャラクターを持っていたのですが、今回では主人公が自立していない(精神的に未熟である)点があげられると思います。
あと、男性的なキャラクターを傍に置いたことも重要な点でしょうね。吉中(だったっけ？)を隣に置いたことで、主人公の女性らしさが際立った、という面もあるでしょう。
女性らしさを感じた文章として、＞祖父母に言って理解してほしかった本音があったが最もたるものだと感じました。
ストーリーに関しては、チャオの死を扱うという点と、ぺっくさんのこの間の作品を足したような印象でした。
ストーリーに対し特に興味を惹かれなかったのは、「まあ、そうなるよな」という納得があったからです(悪く言えば、展開がわかりすぎたために特に感じるものがなかった)。死ぬ気配満々のチャオがようやく死んだか、って感じでした。
どちらかというと「アパート」は主人公の内面を描いた作品である、というのもストーリーに目がいかなかった理由でしょう。
そういう意味では、主人公の弱さが非常によく描けていて、楽しめました。
また、会話の間も全盛期のスマッシュさんが戻ってきたように感じます。
特に、
＞「冷静になってみると、お前のこと好きだったわけじゃないんだ。このままずるずると付き合ってても冷めてくだけで、お互い辛くなるだけだと思うんだ」と吉中さんは言った。
＞上手く飲み込めなかったので、
「冷静になってみると」と私は繰り返してみた。
＞吉中さんは頷いた。私はよくわからなかった。私は基本的に冷静であるつもりだったし、お互い辛くなるだけとは思っていなかった。しかし私は、
＞「そうですね。そうかもしれません」と言っていた。
の部分は、思わず生唾を飲み込んだほどの間があったので、おそらく大成功です。
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