●週刊チャオ サークル掲示板
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チャオアパート
 スマッシュ  - 12/12/23(日) 0:04 -
  
 東京の大学に行くことになったので住む所を探しているとチャオアパートというものがあるというのを知った。チャオマンションというものがあるということはテレビで見たが、アパートまであるというのは知らなかった。チャオガーデンのような環境を家にも欲しいという人がいるらしい。そういう人のために部屋をチャオガーデンのようにしたのがチャオマンションであった。チャオアパートの家賃はあまり高くなかった。それでチャオアパートに住もうと決めた。
 うちではチャオを飼っており、その子を連れて行くつもりであった。どうしても連れて行きたい、と懇願すれば両親は可愛い娘のわがままに付き合ってくれるだろう、と思っていた。しかし祖父母がごねた。孫というのは我が子以上にとても可愛いものだろうからてっきり味方になってくれるものだと思っていたのだが、
「タマまでいなくなるのは寂しいねえ」と言うのであった。
 タマというのは祖父が付けた名前である。昔飼っていたタマという猫に似ているから、ということなのだが私にはチャオのどこが猫に似ているのかさっぱりわからない。雰囲気が似てる、と言っていたが外見が全然違うのだからやはりおかしいと思った。
 両親は私と祖父母のどちらにも味方しなかった。ちゃんと話し合って決めなさい、なんて言って、チャオに興味がないどころか面倒事に巻き込まれたくないと思っているようであった。学校に行く必要もなくなって家でのんびりできると思ったのだが、自室に籠るか外に出るかしないといらいらするばかりだった。祖母はもうすぐ八十になるくせに泣くのを我慢する子供のような顔で私を見ていて、母は家事をしたりテレビを見たりして目を合わせてこない。
 我慢できたのは二日間だけであった。
「私、タマ絶対に連れて行くから。勝手に寂しがってれば」
 敵意をむき出しにして、わがままに言い放った。小さくて黒い祖母の目は一層泣きそうになったが構わずに私はタマを抱き締めて自室に連れて行った。老体に同じことを言う元気はないらしかった。祖母は逃げる私の背中に何も返してこなかった。それをいいことに私は強引にタマを東京へ連れて行くことにした。私はタマをキャリーバッグに入れて電車に乗った。最後まで祖父母とは口を利かなかった。
 いつか帰って謝らなければならないのだろう。もしかしたらそうする前に死んでしまって後悔することになるかもしれない。電車の中で私はそう思いながら、タマが騒がないようにゆっくりと頭を撫でていた。

 駅から歩いて十分。最短ルートをメモした紙の通りにチャオアパートへ向かう。駅から北東にあるのだが、駅からの通りは真っ直ぐ北に伸びておらず西へ徐々に曲がっている。そのため早めに右へ曲がらないと時間がかかってしまうようであった。しかし曲がった先でもまた早めに曲がって北に伸びる道に戻らないと今度は曲がり角が全くないらしかった。メモに蛍光ピンクで書いた道筋はじぐざぐに何回も折れている。これでは迷ってしまうかもしれないと思っていたが、迷わずに着いた。水色に塗りたくられたアパートがその見た目通りチャオアパートであった。
 他の場所を検討する気がなく下見もしなかったのだが、それは失敗だった、とドアを開けてすぐに後悔した。小さなチャオガーデンであった。緑色の床に一瞬見えた物も芝生であった。家賃が安かったのは人の住むことをあまり考えていないからだったのか。納得した後は途方に暮れなければならなくなった。チャオガーデンで生活する人なんて聞いたこともない。もしいればそれはチャオ好きではなく他に住む場所のない人ではないのだろうか。部屋の七割がチャオのために芝生が敷かれていて残りの三割はフローリングになっている。そこが私の分だ。その狭いスペースに家具を置くと、体育座りが似合うくらいのスペースしか残らなかった。
 段ボールに詰めてきたのは服と食器と布団、それと本であった。本が一冊もない部屋は退屈であるように思ったのでお気に入りの小説を五冊程持ってきたのであった。せっかくの新生活、置く物もなるべく新しく買おうと思っていた。持ってきた食器は実家で使っていた物ではなく、そのために買った物だ。ピンク色の蔓が描いてあるご飯茶碗と木の色がそのまま出ている汁椀。その二つをテーブルに置いてみる。これからここでご飯を食べるのだ。端に追いやられているみたいで食べる量も減りそうである。空になった段ボールをどかしてみると、芝生に置いていたためにくぼみが出来ていた。慌てて足でこするようにいじっていると、すぐに目立たなくなった。そのままにしておけば自分の領土に出来たのだろうか。手遅れになってから気付く。そして本当に体育座りをしてみると、チャオのための大きなぬいぐるみになった気がした。タマは引っ越しに喜んでいるようで、転がって芝生の感触を楽しんでいる。本来の私の心の内だ。

 多趣味の会という名前のサークルに私は入ることにした。遊ぶだけのサークルなのだが、色々な趣味を身に着けるという点には忠実で、少し驚かされた。部室には、将棋盤や麻雀牌、テニスラケットに野球のバットとボールもある。まるで大学にあるサークルの備品を少しずつくすねてきて作ったサークルみたいな様相である。将棋もテニスもちゃんとサークルがある。興味はあるけどどれも本気でやるつもりではない、という人にはうってつけのサークルだからだ。私もサークルに入りたいと思ってはいるものの本気で何かに打ち込むのは面倒だと思っていた。それに女子も多くて丁度よかった。
「実はこういうのもあるんだよね」
 吉中さんは腕に注射するジェスチャーをしながら言った。筋肉質という程ではない。だけどひょろひょろでもない腕。顔も同じようにさっぱりしている。
「そういうのやってるメンバーもいるからさ、そっちに手を出さないつもりなら気を付けてな。まあしょっちゅう顔出してる俺とかはやってないグループだから、そういうのとくっ付いてれば安全だけど」
「はあ、わかりました」
 薬なんて、と思った。薬に手を出す程寂しいと思っていない。もし一人になったとしても私は弱い人間じゃないから手を出すことはない。だから私は吉中さんたちとつるむことにした。
「何か気になるのはある?」
「ううん、それより迷っちゃいますね」
「そうかもね。ああ、そうだ。こういうのはどう」
 中村さんが本棚の上の方に置いてあったお菓子の箱から出したのは音符が大きい物と小さい物とで組み合わさっているアクセサリーのような物体だった。
「何です、これ」
「知恵の輪。一応一人用の遊びもカバーしてるから」
「へえ、お洒落な形してますね」
 幼い頃に見たのはトライアングルの小さくした物を二つ組み合わせたようなやつであった。それと比べると同じ遊具には思えない。
「やってみる?」
「あ、はい」
「じゃあ宿題ってことで家でやるといいよ」
 吉中さんは音符を私の手に落とした。ちゃり、と音が鳴る。部屋の鍵をもらう時もこういう音が鳴るのだろうか、ということを考えてしまって体が僅かに熱くなった。本当にこれは知恵の輪なのだろうか。
「もう少ししたら飲みに行くから。麻雀やる?ルールわかる?」
「いえ、わかりません」
「ううん、じゃあそれはまた今度か。トランプくらいならできる?」
 大富豪やる人、と吉中さんが呼びかけると三人が寄ってきた。そのうち二名は私と同じく新入りだった。
「うちでは基本的に縛りありで、都落ちと八切りと階段がある。ジョーカーには三を三枚で対抗できる。これに飽きたら他のローカルルールも採用していくっていうのがうちの流れね。大富豪は大貧民と二枚交換。富豪は貧民と一枚。で、貧民側は強いカードを上から出して、富豪側が出すカードはどれでもいい、ね」
 私は都落ちしてからずっと大貧民のままだった。カードの交換があるから運がよくないと上にいくのが難しいのだと吉中さんは言った。吉中さんはずっと富豪であった。そして吉中さんの同級生の人が大富豪だった。

 アパートに帰るとタマが玄関まで走ってきた。私の足に頬ずりまでしてきて、これじゃあ犬だ、と思った。
「はいはい。ただいま」
 蹴ってしまっては事なので抱き上げて部屋に入る。そのまま芝生の上にぽんと置いてもよかったのだが、泳がせてみたくなってそのままベランダに出た。ベランダには石で作った丸いプールがある。チャオのために用意されているからプールなのだが、池や足湯としても使えそうだ。夏になったら水を張って涼もうと私は考えているのだが、実際に水を溜めるとどうなるか試そうと思ったのである。
 栓をして蛇口をひねる。この部屋にはベランダに蛇口があるのだ。こういう所を見ると家賃からは信じられないようないい家に住んでいるような気もするのだが、どれもこれもチャオのために取り付けられているのであった。豪華なチャオの住まいだ。タマをプールの中に入れて、知恵の輪をいじる。蛇口から出てくる水を打たせ湯に見立てているのかタマは水流を頭から被る。それを私は音符越しに見る。音符の向こうにタマがいる。私は二つの音符を分解しようとするけれど同じ所をかちゃかちゃと音を立てて何度も往復するだけで何も進展しない。
 チャチャオ、チャチャオ、と声がする。タマは何かねだる時にそうやって鳴くのであった。タマは私の手元を見て、腕を伸ばしていた。
「駄目。これは私の」
 そう言うとタマは「チャオオ」と憤慨したように飛び跳ねながら水を蹴って、私に水をかけてきた。
「ちょっと」
 服が濡れて怒った私でタマは喜ぶ。私が部屋に避難するまでタマはひたすら水をかけてきて、やたら楽しそうだった。随分と暴れてきたものだ。着替えながらじっと部屋を見ると、芝生ばかりだった。昨日までチャオのための住まいなんだなあと思っていたのだが、タマの遊び道具を全く買っていなかったことに気付いたのであった。前までは祖父母が家にいたからタマは遊び相手に困ることがなかったのだ。そして今は暇を持て余している。
「やばいなあ」
 本当にやばかった。これからタマには留守番してもらうことが多くなる。私が大学から帰ってきて、その度に構ってくれとせがまれては疲れてしまう。それに付き合ったとして、タマの退屈な時間がなくなるわけではない。問題は転生できないかもしれないということだ。タマと離れたくない祖父が「転生できなかったら可哀想だよ」とよく言ってきた。それを無理やり連れてきた手前、不幸な死に方をさせるわけにはいかない。
 どうせまた濡らされるだろうからジャージを着てベランダに出ると、タマはかかんで待ち構えていて、やはりそこから飛び上がって水をかけてくるのだった。水はもうチャオの肩のあたりまで溜まっている。調子付かせないよう、はいはい、と言ってタマのちょっかいを受け流しながら水を止める。
「ねえタマ、なんか欲しい物、ある。積み木とかどう」
 チャオはペットの中では結構賢い部類に入るようだ。犬や猫のように。だから人の言葉をよく理解しているのか少しだけしかわからないのか、判断できないような反応を返してきて、そのためについ話しかけてしまう。勿論「積み木が欲しいチャオ」なんて返事をしてはこない。
「今度見に行こうか」
 タマは、チャオ、と返してくる。
「本当にわかってんの」
 そう聞くと、今度は首を傾げる。頭の上に浮いている球もクエスチョンマークに変形する。
「わかってないのかよ」
 おでこを指でつつく。するとタマは、きゃあ、というような感じの声を出しながら喜んだ。

 積み木、クレヨンと画用紙、ボール、絵本。タマのために色んな物を買ってしまった。実家から、私が子供の時遊んでいた鍵盤を送ってもらいもした。新居にはタマのための物ばかり増えている。それでも構わなかった。私にとって大切なのは部屋の様相ではなくて、吉中さんと一緒にいられる時間を増やすことであった。
 タマは玩具に囲まれて楽しそうにしている。タマはもう四歳だ。もうそろそろ老体と言ってもいいくらいの歳なのだが、子供のように一日中没頭することもよくあるようだった。夜帰ると画用紙六枚を繋げた力作を描いている最中だったということもあった。
 部室では色々なゲームが出来たが、私は将棋やチェスのような、吉中さんを一人占めできるゲームを好んでやった。当たり前のことだが、それだけでは満足できなかった。
「飲みに行きましょうよ」と吉中さんを誘った。
「未成年だろ、お前」
 吉中さんがそう言ってからかってくる。四月に、大学生なんだから、と言って飲ませてきたのはこの人だ。
「だってお酒おいしいんですもん。おごってくださいよ」
「仕方ないな。飲みすぎんなよ。そしたら自腹だからな」
「はあい」
 私はビールを二杯くらい飲んだ。酔っているのを自覚していて、酔っているのだから何をしたって許されると思って、
「先輩の家に行ってみたい」と言った。
 吉中さんは強く拒否してこなかったので、もっと酔っている振りをして、甘えた。そうしたら吉中さんは私を部屋に案内してくれた。普通のアパートだった。私のように変な所に住まず、自分の領土を好き勝手に使っていた。ここに住みたい、と思った。そしてそこでセックスした。何もかもすんなりと進んだ。吉中さんの体は想像通り、何事もない体だった。頭のてっぺんから足の先まで、何事もない表情をした首や胸や太ももが然るべき場所にあって滑らかであった。私はどこにも驚かずどこにも関心せず、安心だけした。あっさりと私は吉中さんのものになれた。高校生の自分が馬鹿みたいだった。付き合ってくださいなんて面と向かって言わなくても、こういう風にするりと事を運べばいいのだ。
 朝起きて、タマのことを思い出した。ちゃんと食べているだろうか。心配にはなったが帰ろうとは思わなかった。元から餌は好きな時に食べられるようにしてある。遊び道具を山ほど与えたのもこういうことがあるだろうと信じていたからだ。だから一週間くらいここにいたいと思った。着替えも持ってきていないから無理だけど、夜までは粘りたかった。
 朝食を買いにコンビニへ行った。吉中さんは一直線にサンドイッチを取りに行った。
「俺、これ好きなんだ」と言う。カツサンドだった。
 私もサンドイッチにしようと思って、だけどカツサンドはあまり好きではなくて、野菜も摂らなきゃと思ったので、レタスサンドにした。それだけ買って、吉中さんは五百円玉を出した。手は繋げず、アパートに帰った。
「チャオ、大丈夫なのか」
 吉中さんはサンドイッチを食べ終わると、そう言った。吉中さんは食べるのが速い。私はまだ半分も食べていなかった。私は餌や遊具のことを話して、心配ないと言った。
「へえ、そうなんだ。よく聞くけど、チャオって利口なんだな」
「もし言葉を話せたら、小さい人間みたいな感じになりますよ。なんかこっちの言ってることわかってるみたいな素振りをよく見せるんです」
「じゃあ手間とかかからないの」
「水さえ気を付ければそんなにはってところです」
「そうなんだ。いいな。俺ペット飼ったことないからさ、興味あるんだ」
 それならうちの部屋に遊びに来てくださいよ、という言葉が口から出かかったところで急停止した。私がチャオアパートに住んでいることはもう知られているが、あのような部屋に住んでいることまでは知らない。現実の姿を見せたら変人だと思われるような気がした。それに二人で寝るには狭すぎると思った。それで代わりの言葉を探すためにレタスサンドを食む。口の中で鳴るしゃきしゃきでも間は誤魔化しきれなかったと思う。
「親がペット嫌いだった、とかですか」となんとか言う。
「いや。マンションだったから飼いたくても無理だったんだ」
「マンション、ですか」
「そう。隣の人に迷惑だからあまりうるさくするなとかよく言われてさ。ペットのこともそうだけど、小さい頃から一軒家が羨ましかったよ。っていうか将来は絶対一軒家に住むね」
 本当はマンションのことも一軒家のこともどうでもよかった。過去とか将来とかの話ではなくて、もっと他に聞きたいことがあるという気がしている。私は「一軒家ってどんな感じにするんですか」と聞きながら、例えば、と考える。例えば、私と吉中さんは本当にそういう仲になれたってことでいいのでしょうか。セックスをするだけの仲とかそういうことではなくて、私はちゃんと吉中さんの隣にいていいのでしょうか。知りたいことは今のことばっかりで、そして聞きづらいことばかりなのであった。私は目の前にぶら下がってきた単語に反応するしかない。そうしながら私は心のページの端っこに、駄目かもしれない、と書いていた。そしてその部分を折って見れないようにしていた。

 夏になっても私は吉中さんと付き合っていられた。私が疑り深くなって、吉中さんの傍にいながら「本当に私はこの人の彼女なのだろうか」と悩んでいるうちに、私が吉中さんの彼女であるということは周知の事実となっていた。サークルの皆がカップルとして扱ってくるようになって、それに乗っかって吉中さんが肩を抱いてくるなどして、それで私は安心したのであった。それからの私は、それはもう、能天気である。吉中さんと会うなり「暑いね」と言いながらブラウスのボタンを一つ外してみたりしている。露骨だとわかっていても、やめられない。私は幸せな気分になると、つい馬鹿になってしまうようだった。
 チャオアパートでの生活にも慣れてきて、私はよく芝生の上で寝るようになっていた。最近はタオルケットを一枚敷いて、その上でタマを抱いて寝ている。タマの体はひんやりとしている。チャオの体は大抵冷たい。だからタマを抱いていると冷房をつけなくてもよく眠れた。ここに引っ越してきたばかりの頃、チャオが夜中に起きたためにつけられている常夜灯のせいで、眠れなかった。小さい電球のオレンジ色の明かりで眩しかったわけではないのだが、いつも部屋を真っ暗にして寝ていた私はその明かりが気になって仕方なかったのだ。それにももう慣れた。
 タマは毎日六時に起きる。寝る時間も決まっていて、大体夜の十時を過ぎると寝てしまう。休日に私が目を覚ますと大抵タマはもう起きていて、絵を描いていたりする。それを見て、早起きだなあ、と思うのだが、私の寝る時間が遅かったというだけなのであった。吉中さんと電話で話していると、すぐに三時過ぎになってしまう。
 私は九時三分に起きた。携帯電話のアラームで起きられなかった私を、タマが積み木を崩して起こした。私は冷蔵庫からバナナとヨーグルトと牛乳のパックを出す。緑の線の入っているマグカップに牛乳を注ぐ。バナナは一本、ヨーグルトは四つセットになっている物を一つ。それらを小さいテーブルに置く。高校生になったくらいからだろうか、朝食は大抵それくらいの量で済ましている。起きるのがもうちょっと遅れると、お昼までにお腹が空かなくなってしまう。まずバナナを平らげる。朝は一つずつ胃に入れていく食事になっている。今日は吉中さんが泊まりに来ることになっていた。
「お前の部屋行ってみたいんだけど」
 いつもいつも私が吉中さんの部屋に泊まりに行っていたので、やがてそういうことを言ってくるのだろうな、と思っていたのに、上手な返答は練っていなくて、私は何も言わずに頷いた。あまり期待するような部屋じゃないんだということを言っておきたかったのに。私は説明が下手だ。それに本音は恥ずかしい。私は実家から無理やりタマを連れてきた時のことを思い出している。本音を言うのは恥ずかしい。説明が下手だから、上手く伝わらなくて、子供が駄々をこねて泣いているみたくなってしまうから、決して言いたくない。私がどうしてもタマを連れてきたかった理由というのは思い出すことができなかった。あの時には、祖父母に言って理解してほしかった本音があったと思うのに。私はヨーグルトの中でスプーンを一周させては口に運んでいく。そして牛乳を一気に飲んで、マグカップと残ったゴミを持って流しに戻る。
 エアコンの冷房は普段はつけないでいる。タマが冷たいから。タマが暑がった時だけつける。その冷房を今日はつけて、二十八度になっている設定を二十五度まで下げてしまう。氷を息にしたような風がエアコンの口から出てくる。タマが私の手にあるリモコンを見てから、エアコンの方を見て、風が吹いてくる場所に移動していく。やはりチャオにとっても涼しい方が好ましいらしい。私はブラシを持ってベランダに出て、プールを洗う。ここに来て初めて水を溜めた時以来、一度も使っていないので汚れていそうだった。しばらくの間石をごしごしこする。快晴だ。濡れた石は黒くなりながら、太陽の光を反射している。そこに水を溜めていく。でもこれはタマのためじゃない。
 お昼が過ぎて、カロリーメイトを食べた後に、吉中さんは来た。
「迷いませんでしたか」と私は聞く。
 駅からのじぐざぐの道は、いつもそこを通って大学に行く私にとっては既に難しくないものになっていたが、初めて来る人には厄介なものであるので、私はネットの地図を見ながら吉中さんのために道のりを示した地図を書いて渡していたのだった。目印になりそうなものをメモしてある、自信作だった。その甲斐あってか、
「ああ、大丈夫だった」と吉中さんは言ってくれた。
 部屋は十分に冷えて、薄着では鳥肌が立ちそうなくらいになっている。
「すげえ部屋」と吉中さんは言った。
「でしょう」と私は返す。「引っ越してきた時、ちょっと後悔しました」
「だろうな。これ人住めんの」
「なんとか。麦茶、飲みますか」
「うん、頼むわ。外暑い」
 私は冷蔵庫から麦茶のポットを出してくる。今朝牛乳を飲む時使ったマグカップと吉中さんのために買った無骨で真っ白なマグカップに麦茶を注ぐ。吉中さんはタマと握手していた。
「こいつがタマか」
「そうです」
「チャオの頭の先とかってさ、黄色じゃなかったっけ」
「黄色なのはコドモの時ですね。タマはもうすぐ五歳なんで」
「チャオって寿命どんくらいなの」
「長く生きて六年ですね。いじめたりしないでくださいよ」
「転生すんの、こいつ」
 吉中さんはタマを持ち上げて、手のひらの上に立たせる。タマはそこから、えい、と飛び降りる。
「してもらう予定ですから」
「お、羽めっちゃ動いてる」
 タマは、紙に割り箸をつけた人形の動きみたいにゆっくりと落ちていく。それが吉中さんの側から見ると、羽を動かしているのがわかるのだ。私は吉中さんが操っているようなタマを見つめ、着地してぷるりと体が揺れたのを見届ける。吉中さんはチャオを右腕で抱える。麦茶に釣られてテーブルの方へ寄ってくる。そして麦茶を飲みつつ、
「本当にここに住んでんの」と吉中さんは言った。
 私は頷き、自分でも信じられません、と言う。私も自分に「本当にここに住んでるんだ」と言いたいと思った。普通のアパートに暮らしている私が吉中さんと一緒にここへ来て、ここに住んでいる私に言う。本当にここに住んでいるんだ。その場面を想像しながら、
「どうしてこんな所にしちゃったんでしょうねえ」と私は問いかけていた。
「そりゃあチャオが好きだったからじゃないの」
「まあ、そうなんですけど」
「俺もわかる気がするよ。実際に見てみると、チャオって凄く可愛いんだな。こいつのためにこういう場所に住もうって気になってもおかしくないでしょ。ところでさ、チャオっていつもこんくらいひんやりしてるもんなの」
 そうですよ、と私が答えると、吉中さんは「それなら夏はこいつと一緒にいたいな」とタマを抱き締める。その通りだ。ところで私は本当にチャオのことが好きなのだろうか。
「そうだ、ベランダもちょっと面白いんですよ」
 私は吉中さんをベランダに連れて行く。そこにあるチャオ用のプールを見せる。
「これってもしかしてチャオのプール?」
「はい。でもこういう使い方もできるんですよ」
 私は既に裸足でいて、プールの中に足を入れる。服を着たまま座れるよう縁にタオルを置いてある。そこに腰かける。
「なるほどね」
「吉中さんもどうですか」
「うん、それじゃあ」
 吉中さんは立ったまま靴下を脱ぐ。片足を上げた状態でもバランスを崩さず、器用に脱いでみせた。そして私たちは互いの足を踏み合って遊んだ。タマは入れずに。

 夕飯を食べて入浴も終えると、吉中さんはタマと遊ぶのには飽きた様子だったが、ずっとタマのことを気にしていた。
「十時くらいに寝ますよ」と私は言ってあげる。
「ああ、そうなんだ」
 吉中さんはテレビをつける。小さなテレビだが、タマと一緒に見るには小さいくらいが丁度いいのだった。テレビでは、バラエティをやっていた。可愛い動物を見て可愛いと言うものだ。動物園のパンダが、テディベアのように座って、笹を食べている。その後にチャオが出てきた。こういう番組では、チャオのコーナーが大抵ある。チャオには様々な色のチャオがいて、さらには進化すると様々な姿に変わるから、たくさんのチャオを集めて「これがチャオです」と紹介すると、いい絵になるのだった。この番組でもたくさんのチャオが池で泳いでいた。真っ赤なニュートラルハシリチャオと青いニュートラルハシリチャオがレースをしている。そして溺れているコドモチャオ。
「やっぱチャオっていいな」
 吉中さんはそう言って、タマを撫でる。タマは大人しくなっている。
「どうしたんだ、ぼうっとして」
「眠いみたいですね。いっぱい遊んで疲れたのかも」
「ほお。そうか」
 撫でる手がゆっくりになる。まるで時間の進み方が遅くなってしまったかのような手つきにタマは眠りへ誘われる。くてり、と仰向けに倒れそうになったチャオを吉中さんは支えて、芝生の真ん中辺りまでタマを運んだ。まだ十時になっていなかった。吉中さんがタマにそうしていたように、私の肩などを撫でてくる。私はチャオみたいに喜びそうになったが、それを抑える。人らしい喜び方というのはどういうものだろうかと少し考え、自分の頭を彼の体に預けた。静かに、静かに。私は喜ぶ。
 常夜灯のために、タマが起きれば私たちのしていることがタマに見られてしまうだろう。私は吉中さんの体を観察する。吉中さんは私を求め、私はそれに応える。

 目を覚まして時計を見ると、八時だった。吉中さんは私の傍でまだ眠っている。静かに体を起こすと、タマと目が合って、私は慌てて体をタオルケットで隠す。タマはいつも六時に起きる。タマの目には私たちの姿がどう映っているのか。チャオは人間のセックスについてどれだけの理解があるのだろう。タマの大きな黒目に観察されているように感じる。私のことなど気にせずクレヨンや積み木で遊べばいいのに、タマはずっとこちらを見たまま動かない。いつもは服を着て寝ているのに、今日に限って上半身は全くの裸だから、気になっているのだろう。しかしそれ以上の意味があるのではないかと疑ってしまう。そしてチャオにどう思われているのか、私は酷く気にしている。
 決心してタオルケットから出る。タマに背を向けて、ブラジャーを着ける。着けてしまえば後はもう普段の着替えの時と変わらないので安心できる。それでも元々タマに自分の体を見られるのは好きではなかったので、私はそそくさとワンピースを着る。自分の裸体はペットにだって見られたくない。私の肌には私の全てが刻み込まれていて、素肌を見られればそれを読解されてしまう。そういう風に私は思っていて、吉中さんに暴かれる時も恐ろしいとどこかで感じていたのだった。
 朝食はどうしようと冷蔵庫を開けてみるが、これだと思うような物は入っていなかった。一人で食べるなら目に入った物を出せばいいのだが。コンビニに行くことにした。私は音を立てないように注意を払いながら靴を履き、玄関を出る。その時またタマと目が合う。向こうはずっと私を見ていたのだろうか。とりあえず私は、静かにしていてね、ということを伝えるため口の前に人差し指を立てた。
 コンビニでカツサンドとレタスサンドを買って戻ってきても、吉中さんはまだ眠っていた。これでタマがいなかったら、私は吉中さんの体を意味もなく触れるのだが、そうしているところをタマに見られるのは嫌だった。私はどのように吉中さんが起きるのを待てばいいだろう、と考えて部屋中を見渡す。こんな時に知恵の輪があれば没頭するのも悪くない。だけど今この部屋に知恵の輪は一つもない。まだ解いていないやつはあったのだが。
 私はタマが今朝描いたらしい絵を片付ける。そこには吉中さんの顔が描かれていた。下手くそで、似ているとは言えない。だけどタマが題材にできる人間は私と吉中さんの二人しかいない。いつもの私の絵と比べると髪が短いし、私以外の人間を見たのは久々だったしで、吉中さんだと特定できるのであった。人に限らず、タマの絵の題材は少ない。私の絵を描くか、積み木の絵を描くか、といった具合である。絵はタマのおもちゃ箱の底に重ねている。
 絵を片付けて、私はタマを膝に乗せた状態で吉中さんを見守ることにした。正座をして膝にチャオを乗せ、時折チャオを撫でる私。目覚めた吉中さんが最初に目にする私の姿はそういうものであるのが望ましいように思った。私とタマは同じ方を向いている。タマは眠っている吉中さんを見ている。私は眠っている吉中さんの体のタオルケットで見えなくなっている部分について想像する。吉中さんの体は中間だ。マッチョでもなく、ガリガリでもない。その間だ。平均的な体と言うよりも、中間に位置している体と言う方が正しいように私は思う。それは表情がないようなものなのかもしれない。だけど私は吉中さんの体が中間の体で安心している。怒気を感じるような表情の体であったら私はずっと目を瞑っていなくてはならないだろう。タマだってそうだ。もしタマがニュートラルノーマルではなくて、ニュートラルチカラなどに進化していたら、どう扱えばいいかわからなくなっていただろう。こんな所に住むようなこともなかっただろう。私はニュートラルノーマルのタマを撫でる。タマの曲線を撫でることで私は落ち着く。
 ん、んんうん、と言って吉中さんは目を覚ました。すかさず私は、
「おはようございます」と言う。
「おはよう」
 吉中さんの上半身が露わになる。中間の体。私もタマもそれを見ている。
「朝ご飯、サンドイッチ買ってきたんですけど、食べます?」
「あ、ああ、食べる。いただきます」
 吉中さんはタオルケットと同化してもぞもぞと動き、服を着てタオルケットから出てきた。スカイツリーがプリントされた白いTシャツを着ていて、私はさらに安心する。あるべき形に戻ったのである。

 あるべき形に戻ったのである。
 ちょっと用事があるから、ごめん。一度そう断られてから、吉中さんはちょっと用事があることが多くなった。メールの返信がないことも。電話を切るのも吉中さんの方になっていた。それまでは、どっちが切っていたか、よく覚えてはいないけれど。
 それでも私はゴムの紐を握り合っているような気分で、何かがあればびょんと距離を縮めることができると希望を抱いていた。おそらく、そうだった。別れることになるかもしれないとは思っていたが、それでも希望は抱いていたはずだ。今の私は別れ話が来る前の時期を振り返ってそう思うのである。私はよくメールを送信していた。
 切り出したのは吉中さんだった。
「なあ、そのさ、俺たち、別れないか」
 吉中さんの部屋に私たちはいた。久しぶりのお泊りだった。私が吉中さんに抱きついた後の、昼間だった。何をしているわけでもなかった。会話もなく、同じ時間を過ごしていることを感じることに集中している、という感じであった。少なくとも私の方は。私は体育座りをしていた。つま先を上げたり下げたりしつつ、体を軽く前後に揺らしていた。そこに吉中さんの言葉が差し込まれてきて、私の動作は停止したのだった。
「冷静になってみると、お前のこと好きだったわけじゃないんだ。このままずるずると付き合ってても冷めてくだけで、お互い辛くなるだけだと思うんだ」と吉中さんは言った。
 上手く飲み込めなかったので、
「冷静になってみると」と私は繰り返してみた。
 吉中さんは頷いた。私はよくわからなかった。私は基本的に冷静であるつもりだったし、お互い辛くなるだけとは思っていなかった。しかし私は、
「そうですね。そうかもしれません」と言っていた。
 別れよう、と言われたら、そうしましょう、と言うしかないのであった。私は、別れたくない、と言うことができない。

 体育座りで、芝生の上のタマを見る。私の心はいつだってあの日に戻って、どうにかして引き留められなかったのかということを考える。実際にはそれよりもっと前にどうにかしなくてはならなかったのに、私はあの日に戻ってしまう。別れたばかりで、サークルに顔を出す気になれなかった時期は、ずっとこうして膝を抱えていた。でももうちょっとで完璧にあるべき形に戻る。サークルの先輩と後輩。二人でやるゲームは無理だけど、麻雀くらいなら平気になった。
 私はタマを転生させたいと思った。今の私にとって、やるべきことは他に何もないように感じた。私の傍にいるのはタマだけだった。
「タマ」と呼びかける。するとタマは寄ってくる。タマを抱き締める。タマは冷たかった。冷たさを感じると、強く抱き締めずにはいられなくなった。タマが何かを言いながら私を叩く。私はずっと抱き締めていた。

 秋になっても暑いと言われていたが、ここ数日で一気に涼しくなった。夜は寒く感じることがあるくらいで、布団を出した。チャオを抱いていては眠れない季節だ。
「ねえ、くっ付かないでよ。ねえ、タマ。聞いてるの」
 タマにとっては一緒に寝ることが習慣になってしまったらしく、抱きつこうとしてくる。タマはわざわざ部屋の端っこにやって来て、冷たい体を触れさせようとしてくる。くっ付かないで、と言ったところで人の言葉なんてわからないはずだ。わかったとしても離れないのだろう。
 タマが寝付くまで抱いているしかない。そう諦めてぎゅっと抱き締めてやるとタマは喜んではしゃぎ出してしまった。慌ててゆるめてもタマは甘えた声を出していて、私はタマが冷たくて冬でもないのに太ももを震わせる。眠ってよ、と言いたいが通じるどころか余計にタマが眠らなくなってしまう気がして呟くこともできない。私は目を瞑り、この部屋で男に抱き締められていたことを思い出す。私も吉中さんもチャオのような瞬間があった。吉中さんは、今の私のように目を瞑っていたのだろうか。そうして別れることを考えながら私を抱き締めていたのだろうか。
 タマはいつの間にか寝息を立てていた。既に冷たさも忘れていた。そっと身を離す。起こしてしまうだろうか、と思ったが案外体を揺らしてしまっても起きないものであった。腕はすっかり冷たくなってしまったようである。チャオと触れていたところへ布団の熱がじんわりと伝わっていく。何もかも凍り付いてしまえばいいのに、私は頭まで布団の中に潜って息を吐き、体を温めてしまう。
 真っ暗にならない部屋の中で、部屋の角などに真っ暗を探して、私は眠りに落ちる。

 外が冬らしくなる前、紅葉が全て落ちる前、タマは死んだ。五歳になってから死んだ。私がじぐざぐの道を通って帰ると、タマはいなくなっていた。
 チャオは死ぬ時、白い繭に包まれるらしい。そして白い繭ごとすっかり消えてしまうのだという。私にわかったのは、きっとタマはすっかり消えてしまったのだろう、ということだけだった。蚕の糸のような物でも残っていてくれれば、私もすっかりとタマの死を悟って涙を流すこともできたのに、タマがどこにいるのか外に出てしまったのかと何十分も探してしまった。そうしているうちに覚悟ができてしまい、泣くことはできず、どうして死んでしまったのだろう、と吉中さんと別れた時のように私は考えていた。
 祖父母の顔を思い出す。私の記憶から飛び出した二人は「ほら、やっぱり死んじゃった」と言う。私のせいでタマは転生できなかったのだろうか。引っ越しのことも脳裏をよぎる。タマがいなくなったのだから、もうここから出てしまおうか。タマが死んだばかりだというのにそんなことを考える自分はやはり駄目な人間なのだろうか。ここに住み続けるとして、チャオをまた飼うのか。それは嫌だ。チャオはもう飼いたくない。
 私は住むべきものがいなくなった部屋を観察する。プールに入れたのはあの一度だけだった。タマの遺言らしき物が残っていないか、と遊具を点検するが目新しい物は今日タマが描いた絵くらいだった。絵には私が描かれていた。至って普通に、正面から見た顔で、仏頂面をしていた。そこからタマのサインを読み取ろうとしたが、失敗した。似たような絵はおもちゃ箱の底に何枚もある。
 夕飯を作る気が起きないのでバナナとヨーグルトを食べる。そしてお風呂に入るなどして、やることがなくなる頃には、私は当分ここから出ていけないのだろう、という予感が風船と同じように膨れていた。明かりを消して芝生の上に横たわる。部屋は完全に暗くはならない。そんなチャオアパートに住み続ける自分が何という生き物なのか、考える。私の海底で行われる思考に、小さいオレンジ色が入り込んで、灯り続けていた。

引用なし
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チャオアパート スマッシュ 12/12/23(日) 0:04
感想です ろっど 12/12/23(日) 1:22
ありがとうございます スマッシュ 12/12/23(日) 1:55
初見の感想です チャピル 12/12/23(日) 1:43
ありがとうございます! スマッシュ 12/12/23(日) 2:31
感想のような何かです ホップスター 12/12/24(月) 0:10
感想ありがとうございます! スマッシュ 12/12/24(月) 0:49
[無題] ぺっく・ぴーす 12/12/24(月) 0:13
感想ありがとうございます スマッシュ 12/12/24(月) 1:37
感想です! ダーク 13/11/29(金) 10:10
感想ありがとうございますです! スマッシュ 13/11/30(土) 16:33

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