●週刊チャオ サークル掲示板
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02 天界に忘れ去られし奇の石の英知を得るは小さき泉
 スマッシュ  - 12/12/9(日) 3:17 -
  
 連邦政府軍「GUN」は各国に支部が置かれていた。連邦政府という形はあれど、各々の国家が独自に政治を行うことになっているため、GUNは主に国家間の戦争を起こさないための抑止力として働いていた。あるいは世界を揺るがすような大悪党が現れれば、それに対抗する。そういう仕事だ。規模が規模のため、とんでもない陰謀が中で動いているのではないか、という物好きな噂の対象になってもいた。
 GUNの日本支部内にあるチャオガーデン。庭瀬雪奈はそこでチャオの検査をしている真理子に恐る恐る話しかけた。
「あの、お願いがあるのですが」
「何?」
 庭瀬真理子は振り向かずに応じる。調整したチャオが設定通りの能力を発揮しているか調べているのであった。雪奈は俯いたまま何も言わない。
「どうしたの」
 データを取り終えたところで真理子は何も言わない雪奈の方を向く。すると雪奈が「あの」と口を開く。どうやら大事な話であったらしい、と真理子は気付いた。
「どうしたの」
 もう一度、今度は優しく問う。
「末森優という人がいるそうです。もしかしたら雅人さんの息子さんかもしれません」
「そう。あなた、その情報を受け取ったの。でもその子は外れよ。彼のお父さんはうちで働いているの。チャオウォーカーの整備をしているわ」
「でも何かしらの縁があるかもしれません」
「無いわよ。調べたんだから。苗字が同じってだけだった」
「しかしもっと調べればもしかしたら」
 やけに食い下がってくる、と真理子は思った。
 自分が雅人のことについて調べたのであれば漏れなんて無いはずだと雪奈はわかっているはずである。どうもおかしい。本当は雅人のことは口実なのかもしれない。雪奈の望みそうなこと。
「雪奈」
「はい」
「もしかして、学校に行きたいの?」
 雪奈はまた黙ってしまった。何秒か経ってから遠慮がちに「そうです」と言う。
「どうしてもというわけではないです。駄目なら、それで」
「いいわ。行っても」
 すんなりと許可されて雪奈は少し戸惑った。
「学校なんてものがあると知ったら、羨ましくなるでしょう。いいわよ。楽しんでらっしゃい」
 真理子が笑うのを見て、頼んでみてよかった、と雪奈は胸を撫で下ろした。この二年間、お願い事をして聞いてもらえなかったことはなかった。それでも今度ばかりはあまりにも身勝手な願いだから却下されるものと思っていた。
「ありがとうございます」
 深々と頭を下げる。すると真理子からは真っ白な髪が花のように広がっているのが見えるのであった。綺麗な白だ。真理子は雪奈を誇りに思っていた。彼女は非常に出来がいい。
「善は急げね。転校の手続きをしておくわ。あくまで雅人の捜索ということになるから、学校は第三共同学園高等学校になるけどいいわね」
「はい」
 きっと雪奈が学校に行っても末森雅人の情報は手に入らないだろう。それでも雪奈を学校に行かせる。自分は雅人のことを諦めてしまったのだろうか、と真理子は自身を疑った。そうではない、とすぐに思い直す。
 彼女がいなくても雅人を見つけ出せるはずだ。いずれ見つかる。事はもう進んでいる。
 そう考え、自信を取り戻した。そこにチャオを左腕に抱えた男が入ってくる。長身の、目がぎらついている男だった。
「失礼する」
「真田、あなた作戦は」
「その確認ですよ、庭瀬殿。目的地イメージの同期、あれに時間が掛かってる。カオスユニットは五体いる。それならもっと早くに終わっていてもおかしくないはずですが、彼らはきちんと動いているのですかね」
 真理子は溜め息をついた。いちいち説明をするのはかったるかった。だから感情を殺して読み上げるように言った。
「第一号クレマチスにはカオスユニットとして十分な能力がありません。なので第五号リンドウの補助をしてもらっています。第三号ヒメユリと第四号スノードロップは現在稼働させていません。ですから現状カオスユニットは第二号キキョウと第五号リンドウの二体だけです」
「稼働させていない、か」
「それにそちらからここまで距離がありますから。まだCHAO-Sは距離によって生まれるタイムラグに対応できていないのです」
「そういうこと」
 ヒーローカオスチャオが会話に入ってくる。少年のような声で、チャオであるのにしっかりと人間の言葉を話す。
「空気中の水分を光速で飛ばせるようになれば話は変わるけどね。まあ今のカオスユニットじゃあ無理なわけ」
「ちょっと、キキョウ」
「イメージ共有を頻繁にする必要があるってんなら、カオスユニットをリーダー機に置いておけるように量産しないといけないかもね。携帯電話の中継基地みたく各所に配置するのが今のところベストじゃないの」
「キキョウ、仕事をしなさい」
「やだよ。こいつの言ってるイメージ共有って戦争のためのなんだろ。そういうのはリンドウの担当なんじゃねえの。そのためにあいつ調整したんだろ」
 キキョウは左手をガーデンの隅にいるチャオに向ける。ニュートラルノーマルチャオと青色のヒーローハシリチャオが座って目を瞑っていた。青い方が目を開けた。こちらがリンドウだ。
「セイギの、ために」
 日本語を習っている人間が言うそれよりも一層たどたどしく、リンドウは言った。
「ほらあいつもなんか張り切ってるし、あいつに任せておけばいいじゃん」
 真理子が困った顔をする。そこに真田徹が、
「それで、彼の言っていることは本当なのだろうか。カオスユニットの量産が必要というのは」と質問をしてくる。
「ええ、本当です」
「なるほど。現状では日本しか占拠できぬということか」
「残念だったな」
 キキョウが煽るが、徹は表情を一切変えなかった。
「いずれ世界は動く」と言い返して、ガーデンを去っていく。
 ドアが閉まってしばらくしてから、
「あなた、妨害してたなんてことはないでしょうね」と真理子がキキョウに聞いた。
「どうだろうね。雪奈はどう思う?」
「私だったら妨害してます。あの人嫌いですから」
「気が合うねえ」
 キキョウは手を差し出した。雪奈はそれを握る。握手。
「ああ、してないから安心してよ。こんな時にいたずらなんてしたらただじゃ済まないからね」
 真理子はまた溜め息をつかなくてはならなかった。

 格納庫には全長七メートルほどの人型ロボットが三つ並んでいた。ロボットの装甲はほとんどが曲線で構成されていて、実際にはそれは外装であるのだが、そのフォルムはロボット特有の筋肉のつき方をしているように見えないこともなかった。全体的に鉄の生き物を想起させるのだが前腕部だけは兵器としての無骨さを持っている。それがチャオウォーカーであった。
 徹は自分のチャオウォーカーに向かいながら、既に搭乗している二名へ声をかける。
「時間だ。これより出撃する」
 待っていましたと言わんばかりに二機のハッチが閉じた。二つの音と共に徹はコックピットに座り、懐から白い宝石のような直方体の石を取り出した。それを右手側にある機械の窪みにセットする。そして足元に設けられた小さなスペースに抱えていたチャオを下ろす。すると先ほどの宝石が光り始めた。
「超移動を行う。エネルギーを充填せよ」
 指示と同時に徹もハッチを閉じ、チャオウォーカーを省エネルギーモードに切り替える。余剰エネルギーが蓄積されていくのを、測定機器からの情報を担当しているモニターと輝きを徐々に増していく石との両方で確認しつつ呟く。感嘆の言葉だ。
「天界に、忘れ去られし奇の石の、英知を得るは小さき泉」
 モニターに「超移動可能」と表示された。
「準備完了」
「いつでも」
 二人が言う。それを受け、真田徹の口元は歪んだ。
「超移動」
 その瞬間、七機のチャオウォーカーが格納庫から姿を消した。

 その日、日本にてGUNによるクーデターが発生した。最初に占拠されたのは国営放送だった。
 占拠はスムーズに行われた。最も抵抗が激しかったのは国会議事堂であり、それは事前にテロの予告があったためであった。テロの予告はGUNが意図的に流した情報で、目論み通り小規模の戦闘が起こることとなった。
 少人数で奇襲を仕掛けてきたGUNは数の防御に身動きが取れなくなり、このまま撤退していくだろうと思われた時である。突如、巨大なフラッシュが十個焚かれた。
「何だ」と誰かが言った。
 彼らはもう一度「何だあれは」と騒がなくてはならなかった。十機の巨大ロボットが横一列に等間隔で並んで現れていたからである。空から落ちてきたのでも、高速で駆けつけたわけでもない。マジックのようだ。しかしマジックで七メートルもある巨体を十も隠すことができるだろうか。まるで展示品のように並んだ十機のチャオウォーカーのために、自分の体が一瞬にして小さくなったのではないか、と疑う者さえいた。
「超移動成功。誤差ありません。完璧です」
「誤差なしか。なるほど、これぞまさに奇跡の力」
「隊長殿、行きましょう」
「ああ。発砲を許可する。歯向かう者があれば確実に殺せ。それ以外は好きにしていい」
 徹がそう言うと、七メートルの体に見合うだけの威力による虐殺が始まった。驚愕が叫喚に変わった。
 十機のうち七機は左の前腕部が銃身となっていた。小銃である。そこから放たれる弾が人間を二つに引きちぎる。遥か昔より使用されているGUNのロボットは、動力源であるカオスドライブから得られるエネルギーをそのまま銃弾として使っている。その技術を転用したチャオウォーカー用アサルトライフルは分間六百発を実現しながらも、チャオウォーカーと同等の体躯の兵器を貫くだけの口径を持っている。そのため人間を相手に運用すれば、戦場は非人道的という言葉が真っ先に浮かんでくるような殺人現場となるのであった。
 そして残りの三機、真田徹たちのチャオウォーカーであるが、それらの左前腕部は直方体の箱ような形をしている。その箱は十徳ナイフのようになっており、そこから銃身が出てきた。発砲すると、地面があたかも大粒の雨によって削り取られたようになる。こちらは人に向けて撃たれなかったが、絶望感が確かに心をえぐる。
 巨大な小銃と散弾銃によって瞬く間に抵抗がなくなった。
「どうやら英雄はいなかったようだな」
 散っていく抵抗勢力を見下ろしながら徹が言った。
「巨体の鬼が十人も現れて、生身で立ち向かうやつなんていないでしょう」と部下が笑う。
「いればよかったんだがな。まあいい。いずれ出会えることだろう」
「あれま。本気でしたか」

 その日、GUNの主導によって日本は大きく変わることが発表された。GUNはそれを「奇跡時代の到来」と称した。

引用なし
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チャオ・ウォーカー -The princess of chao- スマッシュ 12/12/9(日) 3:14
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