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おまけ「探偵少女のステータス」
 冬木野  - 11/8/8(月) 7:14 -
  
 こうやって服を着るのも、実に二年振りになる。姿見に映った自分の制服姿に、私は懐かしさを感じていた。
 あれから二年。私はずっと別人として生きてきた。本当の自分の事も知らずにのうのうと。それでもこうして本当の自分に立ち戻っても、これが自分なんだと思うことができるのだなと、私は感慨を覚える。
 青春を謳歌するうら若き少女の真似事でもするように、姿見に映る自分をくるりと回転させたりしてみた。ちょっと恥ずかしいだけで、特に大した事はなかった。やれやれ。

「変わってないわね、未咲」
 姿見の端にアンジュさんの姿が映った。
「そう?」
「ええ、変わってないわ。……って、本当に変わってないわね」
 前半は普通に我が子を優しく見守る母親のようだったのに、いきなり顔色と声色が変わった。なんだ急に。
「身長とか、髪の長さも変わってないじゃない。びっくり」
 そういって私の髪やら肩やらをぺたぺたと触り始めた。途中でいきなり私を抱えて「うそ、体重も?」とか抜かしたが、なんで知ってんだ。教えてもなければ抱えられたこともないぞ。
「羨ましいー。いいなぁ、二歳はサバ読めるじゃない」
 つっこめばいいのか、私は。
「まあ、前の服がそのまま着られるのは便利かな」
「良かったわ、服とか全部残しておいて」
 断りも無くアンジュさんはクローゼットの中を開き、中にある服を眺め出した。ちなみにそのクローゼットの中は、学校の制服が大半を占めている。制服と言っても全部バラバラで、同じ学校の制服は二着程度しかない。
 実を言うと、高校までの知識なら小学生くらいの頃にアンジュさんのスピード教育の元で学んだ。情けないことに、成績自体にはそこまで自信はないけど。
 じゃあこれらの制服は何かと言えば、どれもこれも全て変装用に使っている物だ。基本的に身分を明かさずに行動する探偵としては、調査対象付近の地元に馴染む必要がある。未成年の私としては、制服一つ着てしまえば身分くらいは簡単にごまかせるわけだ。同年代の友達の有無までは、残念ながらごまかしようがないけど。

「ところで、今まで仕事に使ってた道具がいくつか見当たらないんだけど……」
「えっ? ああ、ええ」
 急にアンジュさんがしどろもどろな仕草を見せ始めた。
 ひょっとして、ひょっとする。
 冷たい目線でもってじーっと、体に穴でも空けてやるかのように見つめると、アンジュさんは手をパンと合わせて困った笑顔を作り出した。
「失くしちゃった」
 案の定だった。
 とても致命的な事に、アンジュさんは探偵でありながらよく物を失くすという欠点がある。日常で使う物は勿論、業務に必要な道具まで。こんなんでよく探偵やってられるなと常々思う。
「……ワトソン君、キミって奴は……」
 ちなみに私がワトソン君という呼称を使う時は、専らアンジュさんに非難の言葉を浴びせる時だ。
「ごめーんっ。でもほら、また買い直せばいいから。未咲、お金なら沢山あるでしょ?」
 我が子同然の娘相手にこの台詞は酷いと思うのは私だけか。
「ひょっとして私の免許証まで失くしたり」
「してないしてない! それだけは絶対にしてない! 私の財布の中に入れておいてあるから!」
「その財布を失くしたりは」
「今持ってるから! ほらほら、ちゃんとあるから!」
 再発行の手間は省けたようだ。本当に良かった。切実に。
「わかったから、残りの服もスーツケースに入れておいて」
「むー、ほんとに変わってなーい。年上を敬う気持ちがなーいー」
 あなたが年上っぽくないからでしょうが。他の人には普通に接してるのに。というのも、お互いに弱点とかを知り過ぎてるせいだろうけど。
 アンジュさんはぷんすか文句を漏らしながら、クローゼットの中の制服を纏めて手に取った。


 ̄ ̄ ̄ ̄


 つい先日の事だ。
 大した問題も無く早期に退院することができた私は、まずアンジュさんのいる探偵事務所に戻ってきた。一応保護者に元気な姿を見せてやろうと思って帰ってきたら、まるで親バカみたいに抱きつかれて頭をわしゃわしゃと撫でまくられた。帰るんじゃなかったと思った。
 それから私には、二つの選択肢があった。
 探偵事務所で、探偵業務を再開するか。
 小説事務所で、気軽な生活を続けるか。
 軽く悩みこそしたが、私はすんなりと後者を選んだ。やはりお地蔵よろしくゴーストタウンの守護者をしているよりも、見慣れた顔が多く居る場所の方がいい。この町に未練があるわけでもないし、どちらかと言えばあの街の方に未練がある。
 その旨を伝えると、アンジュさんはあっさりとそれを受け入れ、それじゃあ引っ越しをするぞと言い出した。どうやらアンジュさんも寂れきった町に居続けるのはゴメンだったようで、密かに引っ越し先を探していたらしい。とは言っても、私の居ない間の探偵業務はサボり気味だったらしく金銭面の余裕はそれほどなかったようだが、私に大金があると知ってか知らずか随分と目を輝かせていた。ひでぇ親だ。
 とは言っても流石に急な話ではあるので、しばらくはホテル暮らし。私もチャオの頃に住んでいたアパートを払うことに。ちなみにホテルの宿泊代等は私持ちである。ひでぇ親だ。


 ̄ ̄ ̄ ̄


 早朝に探偵事務所を出発してから数時間、ようやく小説事務所に到着した。
「うんうん、腕は鈍ってない。相変わらず良い運転ね」
「どうも」
 久々に車を運転したが、特に大した問題はなかったようで心底安心した。免許の持ち腐れになっていたらどうしようかと内心焦っていたものだ。
 ともあれ、小説事務所の面々との顔合わせと、必要な物の買い出しに行かなければならない。
「とりあえず、レコーダーと単眼鏡だけ買っておいて。後は自分で買うから」
「別に全部任せてくれてもいいのよ?」
「信用ならない」
「はいはい、悪かったですよーだ」
 子供っぽく悪態をつきながら、空いた運転席に座るアンジュさん。
「じゃ、また後でね」
 さっきは不満そうな顔をしたかと思えば、笑顔でアクセルを吹かして去っていった。コロコロと表情の変わる人だ。


 事務所に入ってまず私を出迎えてくれたのは、受付のリムさんだった。
「あら、ユリさんじゃないですか」
「どうも、お久しぶり……って言うのかな?」
 あれからそれほど経ってはいないのだが、気持ち的にここに来るのは随分と久しい感じがある。
「そうですね、私も同じ感じです」
「そうですか。じゃあ、お久しぶり」
「ええ、お久しぶりです」
「ユリ!」
 和やかな談笑の途中、廊下の向こう側から後ろで手を組んだパウがやってきた。
「もう退院してたんだ。連絡ぐらいしてくれればよかったのに」
「ごめんね、ちょっと引っ越しの準備をしてたからそんな暇なくて」
「引っ越し?」
「うん。探偵事務所を払って、アンジュさんとこっちに」
「そっか。ユリがこっちに残ってくれてボクも嬉しいよ。あ、そうそう」
 途中で会話を区切り、パウが後ろに隠していたそれを取り出した。
「げ」
「はい、新しいの。ちゃんと用意しておいたよ」
 ……それだった。リボン付きの白いカチューシャ型通信機だった。ハゲた親父が内心被りたくないものに似た存在のそれだった。
「えーっと……私の為に、わざわざ?」
「もちろん」
「あー、嬉しいんだけど。リボンはちょっと。ほら、探偵やってる身としてこういう目立つものは」
「あれ、こっちでも探偵業務を続けるつもりなのかい?」
「まーそういう時もあるんじゃないかなって」
 建前だけど。
「そっかぁ。でもそのリボン、いわゆるアンテナだから取り外せないんだよね」
「え、アンテナ? これが?」
「うん。流石に機能性を重視するとアンテナの機能を薄っぺらくて曲がった形状のカチューシャの中に内蔵するのは厳しいんだよね。本体自体を大きくするのはナンセンスだし、こう見えてかなりの妥協策なんだけど」
 てっきりデザイン重視かと思ってました。サイズ的に言えば近年の薄型ケータイよりは大きくないのか、こいつは。
「あー、そう。まあ、どうしてもって時は外してればいいわけだしなー。別にいっかなー」
 口に出すのは躊躇われた。一応これも好意だ。パウにとっても自信作なんだろうし。ああ変なところで良い人ぶってる私もっぺん死ね。
「そうそう、みんな所長室にいるよ。顔を見せにいったらどうだい?」
「そうするね。それじゃ」
 受け取ったカチューシャを装備して、私は階段を上がった。


 まあ、しかし、なんだ。
 玄関は平然と通り抜けたが、この所長室は何かと話が違う。気がする。
 同じように入ってしまえばいいのに、所長室に入るのに随分と躊躇している私がいた。少し緊張しているようだ。
「すー……ふう」
 深呼吸をして、覚悟を決める。前までは高い位置にあった低いドアノブを捻り、ゆっくりと扉を開けた。
「お邪魔しまーす……」
 声は割と弱々しかった。
 まず私が見たのは所長室の隅っこだった。知らない人から見ればただ置いてあるだけの椅子。そこはミキの座る場所だが――やはりいない。ということは、所長専用のデスクにも所長はいないわけだ。私の事は済んだというのに、今はどこで何をしてるんだろう。
 他はほとんどいつも通りだった。来客用ソファを我が物顔で占領しているカズマとヤイバが相も変わらずゲームをしていて、違うことと言えば向かい側にはヒカルとハルミちゃんもいたことだろう。
「ユリ?」
「ユリさん!」
 初めに駆け寄ってきてくれたのは女性陣だった。男性陣二人は私の姿を見るや否や口を開けてしまっている。灰色の方は特に。
「ユリさん、帰ってきてくれたんだぁ」
「ははー、綺麗になって帰ってきたわね」
「えーっと、ありがとう。……それにしても」
 足元の二人をじっと見下ろして、さっきパウやリムさんと会話していた時にも思ったことがポロっと漏れた。
「チャオって、やっぱり小さいね」
 今までは同じ高さの目線で話していたのに、これほどまでに身長差ができてしまうと小動物を相手にしている感じが強まる。
「ふーん、何気に酷いこと言うわねユリ? あたし達も元は立派な人間だったってこと、忘れてないでしょうね?」
「あぁ、そういえばそんな話も――」
「みっ、みーみみみ、未咲、ユリ、さんっ!」
 突然、酷く上擦って裏返った声が飛んできた。見ると何やらソファの上でヤイバがピンと直立して目が泳ぎまくっているではないか。
「お、オレっ! あなたに聞いてほしいことが!」
 あー、そういえばそんな話もあった。聞いてもないのに先が読めてしまった。
「ずっと昔から、あなたのことが好きでした!」
「嘘こけ」
「来る日も来る日もあなたのことだけを考えて大人になりました!」
「嘘こけ」
「お願いします! オレとケッコンをゼンテーにオツキアイを」
「おとといきやがれ」
「ありがとうございます! これでオレも脱非リアげふっ!?」
 蹴ってもいいというお告げが聞こえたので蹴っ飛ばした。ソファの背もたれを綺麗に飛び越して床に落ちるヤイバを見て、カズマは盛大に笑い、ヒカルは笑いを堪え、ハルミちゃんは慌て、私は鼻で笑った。
「一生独身で生きろ」
「ぶはははっ、こんな振られ方、初めて見た、は、はは」
「や、ヤイバさんっ。大丈夫ですかっ」
「ふふふ、案ずることは無い。我々の業界では……ぐふっ」
「ヤイバさーんっ!」
 しかしなんだ、これから所長室に入る度にこんなことを続けなければいけないわけか。今度から所長室に近付くのはやめようかな。

「それで、結局小説事務所には居続けるわけなんだ?」
「まあね。だからアンジュさんと一緒にこっちへお引っ越し。物件見つけるまではホテル暮らしだけど」
「すごーい、優雅ですねー」
 金は私持ちだけどな。余裕があるのは確かだけど、素直に優雅だとか思えない感がある。逆に寒々しくてたまらない。どうしてだろう。
「ホテルで二人……グフフフフぶふぉ!?」
 殴ってもいいというお告げが聞こえたので殴り飛ばした。ハルミちゃんという幼い少女がいる前で妙なことは言わないでもらいたい。
「それでこっちでも探偵業をやるかもしれないから、一応必要な道具の買い出しをするつもりなんだけど」
「わぁ、一緒についてってもいいですか?」
「うん、いいよ」
「はいはい! オレもオレも!」
「失せろ」
「ふふふそんな言葉でオレが止まるとでもぉっ、ああんもっとぉ」
 踏んでもいいというお告げが聞こえたので踏み潰してみたが、こいつは逆効果だったらしい。早々に蹴っ飛ばしておいた。
「……カズマ、そいつのことお願いね。ユリ、一緒に行こ」
「えー? 僕も留守番?」
「他に誰がヤイバを止めるのよ? 少なくともあたしは嫌よ」
「わたしも嫌ですー」
「はいはい……じゃ、行ってらっしゃい」
 渋々ながらも了承し、カズマは留守番兼お守りを引き受けてくれた。所長室を出る際に「待ってくれー! 行かないでくれー!」とかなんとか聞こえた気がしたが、努めて無視して扉を閉めた。


 ̄ ̄ ̄ ̄


 思えば、事務所のみんなと一緒に買い物に行くなんて珍しいことだ。みんながみんな好き勝手に日常を過ごしているものだから、誰かと一緒にどこかへ出かけるなんてことはそうそうしない。
 私達とのお散歩が楽しいのかややはしゃぎ気味のハルミちゃんや、手間の掛かる妹を見守る姉のようなヒカルを見ていると、こういうのも悪くないなと思う。写真に収めたいくらいだ。

「それで、何を買うの?」
「どこか秘密のお店で盗聴器とか買ったりするんですか?」
 途中、二人のどこか期待に溢れた視線を浴びせられ、私はちょっと苦い顔をしてしまう。何やら大層な道具でも使うのだと思われているんだろうか。
「いや、そういうのは買わないかな。折りたたみ傘とか懐中電灯とか」
「え」
「え」
 さぞ地味であろうラインアップを聞いて、二人が呆気に取られたような顔をした。楽しみにしていた誕生日プレゼントがロクなものじゃなかった時の顔のそれと似ている。
「……え、それだけ?」
「うん。レコーダーと単眼鏡も必要なんだけど、それはアンジュさんに任せておいたから」
「なんていうか……軽装ですね」
 重装備の探偵なんてこの世のどこにもいないだろう。いたとしたらそいつは雰囲気を楽しんでいるだけの素人に違いない。
「とりあえず傘と懐中電灯はすぐそこのコンビニで買えるから。さ、行こ」
「あ、はーい……」
 目に見えてテンションの下がった二人が私の後ろをついてくる。勝手に期待されて勝手に期待外れみたいな顔をされても、ねえ?


 かくして、折りたたみ傘と懐中電灯はすぐに買い終わった。
「もうちょっと慎重に選ぶのかと思ったら、凄くあっさり買い終わったわね」
 結局、二人は終始呆気に取られた顔のままだった。楽しみにしていたマジックショーがロクなものじゃなかった時の顔のそれと似ている。
「あの、どういう基準で選んだんですか?」
「小さいものを選んだ」
「え、それだけ?」
「うん。邪魔にならなければならないほどいいの」
「はあ……」
 ……まずいな。これ以上期待外れにさせて空気を悪くするのも良くない。ここは一つ、ちょっと専門的な話をしてやるべきかな。
「でも、探偵がよく選ぶ懐中電灯っていうのもあるんだよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。大体の警察はみんな使ってる懐中電灯なんだけど、車で踏んでも壊れないってくらい頑丈なの。だから護身に使われたりするわけ。懐中電灯としてもかなり使い勝手が良いの」
「へぇー。じゃあ、なんでそれを買わないんですか?」
「凶器にもなり得るから、使用しちゃいけませんってところがたまーにあるの。私としてはそういうのはあまりよろしくないかなーって」
「ふーん、ユリって慎重派なのね」
 ううむ、まだ気まずい空気は回避しきれていない。ここはとっておきを見せてやらねばならないだろうか。
「あ、そうだ。二人とも、先にお昼ご飯を食べに行っててくれない?」
「え、なんでですか?」
「いいからいいから。ちょっと一人で寄っていきたいところがあるだけ。すぐに行くから」
「うーん……わかった。じゃあ、この先のファミレスで待ってるから」
 こうして私達は一旦別れることに。
 さて、探偵のちょっとした本気というものを見せてやろうではないか。


 ̄ ̄ ̄ ̄


 ファミレスに到着したのは、然程時間も経っていない頃だった。
「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
「いえ、待ち合わせがありますので」
 我ながら、少し緊張していた。なるべく表情には出さないようにして、私は店内にいるはずの二人の姿を探した。
 二人は窓際の席を取っていた。腹を決めて近寄ってみる。こちら側を向いていたハルミちゃんが私を見つけるが、さほど気にも留めずに視線を離した。思った以上に効果はあったようだ。
「あの……すみません」
「ん?」
「その、ヒカルさんと、ハルミさん……で、よろしいでしょうか?」
「え? ああ、うん」
 二人とも知らない人に話しかけられていると思って戸惑っているようだ。はてさて、ここまでうまくいくとは思わなかった。
「あの、どちら様ですか?」
「私ですか? その、未咲と申します」
「え?」
 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした二人が、私の顔を凝視してきた。驚いてる驚いてる。
「え、ユリさんですか?」
「うん」
「え、ええ!?」
 椅子の上で立ち上がって、私の目元口元をじっと見つめてきたヒカル。やがて「あ、ほんとだ」と感嘆の息を漏らした。どうやら成功したようだ。満足気な顔を隠さず、私はハルミちゃんの隣の席に腰を降ろした。
「あの、ユリさん」
「なぁに?」
「それってその、いわゆる変装ですか?」
「そうそう。凄く手軽な変装」
 私の行った変装は実にシンプルなもので、眼鏡を掛けて髪型を二本の三つ編みに変えただけだ。眼鏡は黒縁の伊達眼鏡を使用。そこいらのメガネショップで買ってきたものだ。太い黒縁は眼鏡そのものに印象を集めやすい為、とりあえず身分を隠しておきたい探偵には定番の変装グッズだ。
 大層な事は何もしていないが、少なくとも未咲ユリとしての印象はほとんど消え、立派な文学少女になっていたことだろう。変装の真骨頂は誰かに成り代わることであろうが、自分を隠したいだけならこれだけで十分なのだ。
「すごーい、眼鏡と髪型だけでここまで……」
「裏を返せば、人の人に対する認識力なんてこんなものだってことだけどね」
 ヒカルの隣に座り、眼鏡と三つ編みの装備を外していつもの未咲ユリに戻る。そのギャップに驚いたのか二人は「おおー」と感嘆の声を漏らした。
「他にも、背筋をピンと伸ばしてみたり、猫背になってみたり、手を組んでみたりするのも変装の内。探偵の変装は、与える印象を変えることにあるの」
「へー、ユリもそういうことできるの?」
「うーん、流石にそこまでうまくはないかなぁ」
 もっと言えば、そこまでの変装が必要になった事がないというのが正しいだろうか。制服や髪型を変えるだけで済むケースがあまりにも多かったものだから、そういうスキルを伸ばしてこれなかった。

 ……さて。
 キリもいい頃なので、私は車の運転に続いて二つ目のリハビリの成果を見てみることにした。
 ポケットにしまっていたカメラを取り出し、撮影した写真をざっと眺めてみる。
「ん、何それ?」
「見てみる?」
 ま、成果は他人に見てもらった方が早いだろう。内心得意気になりながらカメラをヒカルに渡してみる。中に残っている写真のデータにどんな反応を示すのかと思うと楽しい。いやはや、私も若いなぁ。……若いんだけどね。
「え、何これ? ええ?」
 予想通り、ヒカルは驚いた。ハルミちゃんも気になって写真を見せてもらい、同じように驚いた。
「ちょっとユリ、こんなのいつ撮ったのよ?」
「そりゃあもちろん」
 言葉は必要なかった。写真が答えになっているから。
 私が撮った写真というのは、ズバリ今日一日に二人と一緒に買い物に行っている途中の写真だ。当然後ろを向いているなんていうお話にならない写真ではなく、横顔だったりこちらを向いているものを。
「ユリさん、いつカメラなんて構えてたんですか?」
「ずっと構えてたよ。ほら、こうしたり、こう構えたり」
 試しに、カメラを取る為のいろんなポーズを見せる。ただの構えではあるのだが、それでも二人は驚いていた。
 その理由は単純なもので、どの構え方もファインダーを覗いていないからだ。探偵が暢気にファインダーを覗く姿を見られては問題だから、ファインダーを使わず、かつ正確な写真を撮らなければならない。
「へぇー、ユリ凄ーい……ん」
 感嘆の息を漏らしながら写真を眺めていたヒカルの手が、そこでピタリと止まった。
 そこからの行動は実に早く、椅子からさっと立ち上がったヒカルは、店員や他の客と華麗にすれ違い、風のように店の外へと飛び出した。

 程無くして、ヒカルは二人の問題児を連れて帰ってきた。
「何故バレたし」
「こっちにはね、優秀な探偵がいるのよ」
 カメラにあったカズマとヤイバの写真を見せつけ、ヒカルは踏ん反り返っていた。褒められてるってことでいいのかな、これ。
「あのー、ヒカルさん。僕はその、ただ付き合わされただけなんで」
「ちゃんと抑えとけって言ったでしょ!」
「ごめんなさい」
「ユリさん、いつ尾行されてるって気付いたんですか?」
「気付いたっていうか、尾行くらいはしてくるかなって予め考えてたっていうか」
「ぎぎぎ! これではストーカーなぞできぬではないか!」
 独房に繋げておいてやろうかこいつ。


 ̄ ̄ ̄ ̄


 昼食を終えた私達(野郎二人を除く)は、その後大した用事もなかったのでちゃっちゃと事務所に帰ってきた。
 みんなへの帰還報告と買い物しか予定のなかった私は、陽も落ちていないのにもう暇になってしまう。特にやる事もなく、結局は前と同じようにソファに座ってやる気無さげに窓の外の青空を眺めていた。若いのがすることじゃないな。実に勿体無い。
「ふつくしい……」
 ヤイバはなんか耳障りなこと言うし。
「窓から差し込む日差しに照らされた俺の嫁……なんて絵になるんだ……ハッ!」
 描写も求めてないし。
「まあ、あんな奴ほっといて。ユリってなんか趣味とかないの?」
「趣味?」
 そういえば、そんな話はしたことがなかったな。ここで働き始めた頃は我ながらドライだった節もあるし、慣れ始めた後も所長室でボーっとするかパウの研究室で本を読んでいるかだけで、誰かとそんな他愛の無い話をする機会を作っていなかった。
「趣味ねぇ」
「ほら、普段からやってることとか、いつもどうやって暇潰してるとか」
「うーん、読書?」
 未咲時代の暮らしを思い出してみても、仕事をしている時と本を読んでいる時の場景くらいしか思い出せなかった。
「じゃあ、パウさんから何か借りてくればいいじゃないですか」
「でもライトノベルとかばっかりなんだよね」
「嫌いなの?」
「言うほどじゃないけど、ちょっとね」
 ライトノベルに限らず、物語関係の本は読み終えた時にいろいろと考えてしまうのだ。私の場合はそれがずっと後を引いてしまって、あまり好ましくない。
「じゃあ、他には?」
「……無いかも」
 聞いた方がうーんと唸って首を傾げてしまった。
「ユリってさ、なんていうか――いや、なんでもない」
 別に言っちゃって構わないんだけどな。面白みがないとか、つまんなくないのとか。
「そうだ、ユリさん料理はしてませんか?」
 ぽんと手を叩いて、ハルミちゃんが話題を膨らませ始める。気を遣ってくれているのだろう。
「ううん。普段からアンジュさんが作ってるし」
 当の本人が「これが私の生き様よ!」とかなんとか言って台所を明け渡さないし。探偵業への情熱はさらさら無いのだろう。じゃあなんで探偵なんかやってたんだか。
「だったら一緒にやってみませんか? 楽しいですよ!」
「うーん、時間があったらね」
 腐るほどあっても多分やりそうにないけど。
「で、ヒカルは普段何をしてるの?」
 ここまで根掘り葉掘り(というほどでもないが)聞かれたのだから、逆に聞き返してみる。ヒカルは少し悩んでから答えた。
「私も今は料理くらいしかしてないかな」
「今は?」
「昔はね――人間の頃の事だけど、剣道やってたの。家が道場だったから」
 なかなか意外な話が飛び出してきた。こうも身近に実家が普通とは異なる人物がいると興味をそそられるものがある。
「ヤイバ、知ってる? 剣道やってる人間がどれだけ握力が強いのか」
「ほお、どれくらいだ?」
「少なくとも僕はヒカルが腕相撲で負けたとこを見た事がない」
「なるほど、ヒカル印のハリセンが良い音出すわけだあうち」
 わざわざ実例を見せてくれだ。確かに良い音をしている。
「ったく……始めたばかりの頃は乗り気じゃなかったんだけど、お父さんがとにかくおだててきたのよね。お前には他の奴にはない特別な力があるー、とかいって」
「へえ、特別な力ね。そんなに剣道やらせたかったのかな」
「さあね。中学に上がる頃にも聞いてみたんだけど、ずっと同じ事言うのよね。人知を超えた力だとか、霊的染みた素質があるとか。聞くだけ無駄だって悟ってからは、不必要に話しかけることもしなくなっちゃった。一種の反抗期かしら」
「ふーん」
 人知だの霊的だの、確かに並々ならぬ事を言う。チャオの姿しか知らない私が言うのもなんだが、ヒカルがそこまで異常な存在には思えない。至って普通の女の子だと思うのだが。

「ん」
 ヒカルに関する奇妙な事を思い出したのはその時だった。
 確か、フロウル・ミルの素性を探る為に一同が所長室に集まった時の事だ。あの時、ヒカルは偶然私と同じ可能性に辿り着き、見事にフロウルの僅かな手がかりに辿り着いた。にも関わらず、当のヒカルは釈然としない顔をしていた。
 あの時はただの偶然かなと思って片付けてしまったのだが、ヒカルのお父さんの言う霊的な力というのは、ひょっとしてダイレクトに霊感の事を言っていたのではないだろうか?
「あの、ヒカルってさ」
「なに?」
 聞こうと思って、その言葉はすぐに萎んでしまった。
 何を考えてるんだ。ヒカルと言えば――まあ、カズマから聞いたことしかないのだが、幽霊だの心霊現象だのが苦手だ。わざわざ親しい人物の心を突っつくような物言いは控えるべきだろう。
「あー、なんでもない」
「そう?」
 気になる所ではあるが、深追いは禁物だ。
 しかし、未だによくわからないものだ。自分が幽霊だった記憶が本物だったのかどうか。時間が経つにつれて、少しずつどうでもよくなっていって、やがては夢だったのかなと思うようになるんだろう。
 まあ、それでも悪くないのかな。


 ̄ ̄ ̄ ̄


 その後、他愛も無い話で夕方まで時間を潰して事務所を出た私は、あらかじめアンジュさんから貰っておいたメモを頼りにホテルへとやってきた。着いた頃には既に夜になっていた。
 なんの嫌がらせか、ホテルというのはステーションスクエアの中では一、二を争う有名なシティホテルだった。一抹の不安を覚えながら恐る恐る受付嬢にアンジェリーナ氏の宿泊している部屋を尋ねてみたところ、流石にスイートルームを選んだりはしていなかったようだ。あいつならやりかねないと内心ハラハラものだった私は、思わず深い溜め息を漏らしたものだ。
 ほっと胸を撫で下ろしながら、アンジュさんのいる部屋の階層まで向かうべくエレベーターを待つ――つもりだったのだが、二つあったエレベーターのどちらもが、運の悪い事に上へと昇り始めてしまった。一度死のうがなんだろうが昇降機の好感度は変わらないらしい。慣れたものだと自分に言い聞かせ、エスカレーターを利用することにした。あってよかった。階段じゃなくて良かった。
 様々な人の顔触れを何気無く視線に映しながら、上へ上へと上がっていく。目的の階につく頃には、主に宿泊の為の客室のエリアになっているせいか人の姿はあまりなかった。この辺りからはエスカレーターはないようで、仕方なく階段を使ってようやく部屋の前までやってきた。
 まずは軽くノック。
「ふぁああ、あいてますよぉ〜?」
 ……悲しいかな、聞き慣れない口調の女性の声に聞き慣れている私がいた。意を決して開けてみたが、そこにいたのは間違いなくアンジェリーナ・ワトソンその人で、どうやら部屋を間違えたわけではないらしい。何か間違っているのは、ベッドに倒れ込んでムカつくほど幸せな顔をしているアンジュさんの方だった。
「……酔ってやがる」
「なぁうー、ねてるだけぇ」
 とかなんとか抜かしてるが、物証としてお酒らしきビンがテーブルの上に置いてあった。
 別にアンジュさんは酷い悪酔いをするわけじゃない。酒に弱いのは確かだが、何かアクションを起こすでも無くすぐに眠くなってしまう。それだけなら良いのだが、次の日の二日酔いによる弱りっぷりが半端ではなく、絶え間無く「みさきー、みさきー」とオウムみたいにうるさい。だから飲酒は控えさせているのだが、たまに目を離すとこれだ。私のいなかった二年は大丈夫だっただろうか。
「ああもう、おつまみ無しに飲むから」
 私自身は当然酒を飲んだことはないが、アンジュさんがこんなもんだから悪酔いしない方法というものは一応頭に入れている。何やら胃が空の状態だとアルコールの吸収が早くなって分解が間に合わない、とかなんとか。ロクに腹も満たしていない状態での飲酒はよろしくないらしい。
「わかったぁ、あしたからやるってばぁ」
 なんの話だ。アルコール対策か。明日も飲もうって言うのか。
 呆れてものも言えなくなった私は、ベッドに腰掛けて部屋を見回す。そして重大な事実に気付き、頭を抱えた。
「この部屋、ダブルじゃねえか……」
 二人用のベッドが一つだけ置かれたこの部屋は、間違いなくツインルームではなかった。ここはダブルルームだ。
 なんてこった。今晩私は酒臭いワトソン君と同じベッドで寝なきゃいけないのか。今後絶対酒は飲ませねえ。
「みさきー、いっしょにねよぉよー」
「いえ、私はあそこのソファで寝ますので一人でごゆっくり」
「やーだー、いっしょにねたーいー」
「ええい放せ、私は未成年として酒とは臭いすら無縁でありたいんだっ」
「うふふー、これはぁ、おさけじゃなくてぇ、わたしのにおいー」
 もうおしまいだこの人。


 結局、数分もしないうちにアンジュさんは眠ってしまい、部屋は暗く静まり返っていた。
 そんな中で私は、事務所にいる時と同じようにソファで寝転がっていた。特に何もしていない。ソファの前にはテーブルを挟んでテレビが置いてあるが、リモコンに触ってすらいない。
 ただ、ずっと考え事をしているだけだった。ズバリ、今後の事だ。
 とは言っても、それほど漠然としたことではない。今後私は小説事務所でどのように過ごしていこうか、ということだ。
 今日買ってきた折り畳み傘と懐中電灯、眼鏡にカメラ、アンジュさんが用意してくれておいたレコーダーや単眼鏡を眺めながら物思いに耽る。
 結局私は、探偵としての活動を続けるのだろうか?
 もちろん必要となった時は探偵の未咲として活動するのだろう。それが私の取り柄だし、私の手馴れた仕事なのだから。
 ただ、私の頭の中ではある言葉が反芻していた。

 ――やっぱり、探偵なんてするべきじゃないのよ。

 ベッドの中のアンジュさんは、やはり静かに寝入っている。
 今こうして再び会ってみても、アンジュさんは何も変わっていない。私の前でのみ大人であることを忘れ、ただひたすらに子供っぽい人。そんなアンジュさんが言ったからこそ、ただひたすらに彼女の言葉が気になって仕方なかった。

 ――あなたは人の身でありながら死神になったの。

「死神、か」
 死人になった覚えはある。知っているのは私を含めた僅かな人物のみ。そんな私が、先ず死神であった。アンジュさんはそう言ったわけだ。

 ――死神にだって牙を剥くのよ。

 或いは、牙を向けられた結果死人になったのだろうか?
 今一度、私がフロウルに手を掛けられた理由を再考した。今度は私が未咲であった頃、何をしていたかを前提にして。
 二年前――私がいなくなる前までの事。確か私は、ある人物の素性調査を終わらせた後だった。その後、私はある考えに思い至って独自に調査を再開した。
 そう、フロウルに狙われるだけの理由はあったのだ。私はその時、とある裏組織に探りを入れていた。件の掲示板にいたユーザーが好き勝手に想像した動機は半ば正解だったわけだ。
 だが、あくまで半ばである。残念なことに、私は大したことは何も掴んでいなかった。そのはずだ。それなのに、いつかに顔を合わせたらしいフロウルに目をつけられ――ということになる。唯一妙な点があるとすれば、私は殺されてはいなかったということだ。
 それとも、実験台にでもされたのだろうか? 噂のプロトタイプの持つ性能の程を私で試した、とか。ある意味、それがしっくりくる理由でもあるのだが……まあ、考えてもよくわからないな、これは。

 ――最初は確かな幸せを信じて集った人達なの。

 或いは、乱してはならない領域に踏み込んだ私への制裁だったのだろうか?
 しかし、少なくとも私の知る裏組織と言えば、悪の組織と呼んで差し支えないに違いない。チャオ関係の裏組織と言えば、いつかのGUNとの合同作戦時に相対したのが一番記憶に新しいだろうか。あの時に話した敵陣のチャオは、ただただ自分の種族が食物連鎖の頂点であるとか抜かしていただけだ。あれが確かな幸せを信じた人だったというのは想像に難い。

 ――あなたが相手にした人々も今でこそ歪んでいるのだろうけど――

 それとも、歪みに歪んだ結果があれなのか。
「やれやれ」
 ここまで考えると、そろそろうんざりしてくる。敵対する相手のことを考え出すというのは良い事なのだろうが、良い結果を生み出すことは稀だ。
 同情というのは、つまるところそういう事だ。一種の偽善であり、自己満足。中途半端な答えを出すのは良くない。私には、今の裏組織達の目的なんてわからない。


 ――今必死に裏組織の科学者達がやってる事って、なんなんだろうね?

 ふと、私の頭の中にフロウルの言葉が割り込んできた。

 ――50年前にジェラルドさんが求めてた答えが、こんな形で見つかっちゃうんだもんね。

「……ジェラルド……ね」
 プロフェッサー・ジェラルド・ロボトニックのことだろう。
 特に詳しいわけではない。過去にこの地球を滅ぼそうとコロニー落としを図った、くらいにしか知らない。あれこそ同情し難い話だ。事情を知らな過ぎる、というのが大本の理由だが。
 彼も、本当に確かな幸せを信じた一人だったというのだろうか?


「……はあ」
 どっぷりと思考に浸かり終えて、ふともう一度アンジュさんの方を見た。やっぱり、静かに寝ている。
 私は今でも探偵のつもりだ。気になることがあるのなら、調べてしまえばいい。裏組織、ジェラルド、それらに確かな幸せが存在したのか。自らの手で突き止めればいい。
 私が探偵を続けるのかについては、それから考えても遅くないだろう。
「おやすみ」
 聞いてはいないだろうけど、そんな言葉を投げかけてから、私も眠りに沈んだ。

引用なし
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小説事務所 「Continue?」 冬木野 11/8/8(月) 5:57
キャラクタープロファイル 冬木野 11/8/8(月) 6:02
No.1 冬木野 11/8/8(月) 6:06
No.2 冬木野 11/8/8(月) 6:11
No.3 冬木野 11/8/8(月) 6:17
No.4 冬木野 11/8/8(月) 6:22
No.5 冬木野 11/8/8(月) 6:26
No.6 冬木野 11/8/8(月) 6:33
No.7 冬木野 11/8/8(月) 6:39
No.8 冬木野 11/8/8(月) 6:50
No.9 冬木野 11/8/8(月) 6:56
おまけ「探偵少女のステータス」 冬木野 11/8/8(月) 7:14
後書きは一作品につき一個って相場が決まってんのよ 冬木野 11/8/8(月) 7:47

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