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CHAOS PLOT 「CHAOS―チャオス―」 スマッシュ 09/12/23(水) 0:19

CHAOS PLOT 「CHAOS―ケイオス―」 スマッシュ 10/7/17(土) 13:36

CHAOS PLOT 「CHAOS―ケイオス―」
 スマッシュ  - 10/7/17(土) 13:36 -
  
動力室は広い。
奥には神殿とそれを囲む7つの柱があり、その柱の上にカオスエメラルドがある。
部屋の中心には曲線状の足場が円を描いている。
曲線は途中で途切れている場所があり、中央から溢れるオレンジ色の液体は外へと流れ出ている。
この曲線の足場で戦闘は行われていた。
しかし、その曲線の足場と中心から外へ流れるオレンジの水流の全てを利用していたわけではない。
戦闘の中心は神殿に近い場所だけで、神殿付近もまた戦いのフィールドとなっていた。
どうしてそうなったのかは、神殿を囲む柱の先端から推測ができた。
7つの柱。
その先端にあるカオスエメラルドは水色、緑、黄、紫、青、白の6つだけだった。
1つ数が足りない一方、これまでARKになかった青と白のカオスエメラルドが増えている。
では残りのカオスエメラルドがどこにあるのか。
その答えは戦っている3人のうち1人が持っていた。
オルガの右手に赤いカオスエメラルドが握られていた。
あそこから奪ったのだろう。
この場所での勝負、7つあるカオスエメラルドをより多く占有した者がより優勢になるだろう。
そのためカオスエメラルドを手にするために、そしてカオスエメラルドを自分以外に取らせないために自然と神殿付近で戦うこととなったのだ。
オルガは見事カオスエメラルドを手に入れた。
だが、それによって残りの2人から狙われることも確かであった。
事実オルガを狙うようにして2人がオルガを挟み撃ちしているような構図になっていた。
全速力で走って、最も近かったピアノに背後から掴みかかった。
そのまま背中に爪を通す。
痛みのために強ばった体を叩き、倒す。
そしてオルガの傍に行く。
「大丈夫か」
「まあ、一応……」
オルガは地面に片手をつけて、座っていた。
様々な場所に擦過傷などが見える。
ぱっと見る限り重度の傷は見当たらないが、傷の量は多い。
立って戦うには辛い状況。
だから座っている。
そう察することができる。
まあ一応。
その返事は彼女自身が自分の状況を語るにとても適切だったように思えた。
カオスエメラルドを取りにいくにはそれだけのリスクがあるということだ。
だがオルガがカオスエメラルドを手に入れ、その結果このように傷ついた。
そうなればわざわざカオスエメラルドを取りに危険に向かう必要はない。
オルガを倒してカオスエメラルドを手に入れればいい。
そうした時2人のうち、カオスエメラルドを手にしたどちらかが圧倒的に有利になる。
というような状況だったわけだ。
しかし俺がオルガに加わることで、俺たちの有利が確定と思われた。
立ち上がったピアノが地を蹴る。
仮に有利でも油断はできないのだ。
何度倒しても蘇るというのはリスクを考えなくていいということであり、いくらでもチャンスがあるということだ。
その全てを打ち砕かねばならない。
ピアノに黒い体が飛び掛った。
「……!」
「……っ!」
ピアノが横に高く飛び、襲い掛かってきた優希さんを睨みながら着地する。
攻撃に失敗した優希さんも軽く飛び退いて俺たちやピアノと距離を取る。
おそらく彼女から足りない小動物を奪おうとしたのだろう。
なるほど見えてきた。
優希さんはこの戦闘中に不死の体を手に入れようとしているのだ。
7つのカオスエメラルドはこの場に揃っている。
あとは小動物さえどうにかすれば不死身になれる。
ピアノから小動物を奪うチャンスはオルガや俺が生きている時の方が多い。
だからさっきのタイミングで仕掛けた。
同時にそれが銃を使わない理由になる。
不死身のピアノを撃っても殺せないし、オルガを撃てば小動物獲得のチャンスを減らす。
再びピアノが動く。
ためらいも考えもなくただ勢いを乗せて突っ込んでくる。
それに優希さんの視線が向けられた。
横にいたオルガが素早くカオスエメラルドを優希さんに向けた。
その腕の動きにはっとして視線をオルガに戻した優希さんがほぼ同時にその場から飛び、その次の瞬間にはその地点が爆発した。
俺はピアノの動きを止めようと殴りかかる。
が、ピアノはジャンプして俺を飛び越えた。
「しまっ……!」
そのまま着地際にオルガをぶん殴った。
オルガが地を転がっていく。
体がチャオスのものではなく、人間のものに戻る。
そうだ、彼女はダメージが重なるとチャオスの体を維持できなくなる。
どうしてだか人間体でいた方が安定するのだ。
「ぐ……」
しかし意地らしくカオスエメラルドはしっかり握ったままだった。
カオスエメラルドを奪おうとピアノが足を前に出した。
その瞬間乾いた音が鳴った。
「いっ!」
ピアノが倒れる。
足が吹っ飛んでいた。
優希さんの狙いすました射撃であった。
俺はオルガに駆け寄る。
「おい、大丈夫か、おい」
「ん……」
意識はあるが倒れたまま起き上がろうとしない。
「あー、かなり、痛い。でもまあ大丈夫かな」
「……本当にか?」
「うん。まあね」
「わかった。大人しくしてろ」
少なくとも彼女の言葉や様子からは命の危険を感じなかった。
大丈夫だと信じよう。
どちらにせよ、今彼女を治療することはできない。
俺はオルガを背に優希さんとピアノの方に向き直る。
「無い、なぜ……」
一方優希さんは愕然としていた。
ピアノから小動物のキャプチャをしたようであったが、表情はよくない。
ぶつぶつ何かを呟きながら、ピアノを見下ろしている。
ピアノは倒れたまま体の蘇生をしている。
小動物を奪われている最中にも攻撃をされていたのだろう。
体はぼろぼろだった。
しばらくして、優希さんが俺を見た。
間違いなくオルガではなく、俺を見ていることがこちらの目を射抜くような視線からわかった。
「そうか、君がドラゴンを」
ドラゴン。
珍しい3種類の小動物のうちの1種類だ。
他はユニコーン、フェニックスだ。
俺がその3種類のうちキャプチャしたのはドラゴンだけで、それはピアノが俺にプレゼントと称して渡したものだ。
優希さんがピアノから小動物を奪って揃うはずだった小動物のうちドラゴンだけが足りなかったらしいのはそれが原因か。
優希さんが俺目掛けて走る。
眼前に高速で迫る彼女にはとてつもない迫力を感じた。
優希さんは銃になっていない左手から小動物のパーツを放った。
低い弾道で迫る鋭いそれを避けるべく足がとっさに動いたが、オルガが後ろにいることを思い出し、足に力を入れて動きを制御する。
両腕を交差させ、受け止める。
上になっていた左腕に爪が刺さった。
「うぐっ」
痛みでひるんだところに優希さんの拳が見えた。
無意識で腕で防ぐ。
拳に押された爪がさらに腕に食い込む。
「あああアアッ!」
痛みで思考が止まる。
ただ、目の前にいる黒い敵をどうにかしなければならないということだけはわかっていて、がむしゃらに足を繰り出し、蹴り飛ばした。
吹っ飛んだ彼女がどういう風に着地したのかを見ないまま俺は必死に刺さった小動物パーツの腕を抜いた。
そしてオレンジの激流の中に捨てる。
「はっ、はっ、はっ……」
痛みでひどく呼吸が乱れている。
「ちょっと」
「大丈夫だ」
不安そうに声をかけようとしたオルガの言葉を塞ぐ。
「まだ、大丈夫だから」
本当に大丈夫かどうかは知らないが強がる。
心配をかけたくないとか、そういう考えではなかった。
そもそもそこまで考えられる余裕は痛みで消えている。
ただ強がらないともう戦えない気がした。
「あ……」
それが効果あったのか、少し冷静になった頭がもうすぐカオスドライブをキャプチャしてから5分ではないだろうかということを告げた。
本当に5分かはわからない。
それでも俺は時間が来る前に水色のカオスドライブをキャプチャした。
これが最後の5分間だ。
それまでに決着をつけなくてはならない。
優希さんに起き上がったピアノがしがみついていた。
しがみつき体重をかけのしかかろうとする様子は獣を思わせた。
それを振りほどくと優希さんは腹部に銃弾を撃ち込んだ。
鈍い悲鳴が上がる。
そして腹に穴が開いたピアノの体を投げ、オレンジの水流に飲み込ませた。
ピアノがすごいスピードで流されていくのが見えた。
しばらくは戻ってこないことだろう。
その様子を見ながら俺は痛みに耐えつつ荒くなった呼吸をどうにかしようとしていた。
それと、優希さんとどう戦えばいいのかを。
まずやるべきことは銃を破壊することだ。
当たる場所が悪ければ俺は死んでしまい、彼女は目的を果たせなくなるが、死なない場所に当てれば俺の抵抗する力を根こそぎ奪うことができる。
だからやられる前にまずやる。
俺はピアノを処理した優希さんがこちらに意識を向ける前に攻撃をしかけた。
直前まで迫ったところで優希さんがはっと振り向き、素早くこちらに体を向ける。
手を伸ばすが、後ろに飛び退いた優希さんには届かなかった。
銃口を向けられる。
下向きの銃身が足を狙っていることを示していた。
「くっ」
失敗した。
射線から逃れるために横に移動する。
銃身が俺の動きに合わせて移動する。
一瞬前まで俺がいた場所を狙っていたのが、数秒して動きながら俺をしっかり狙うようになった。
どこかのタイミングで裏切って射線から逃れ、前進する必要がある。
失敗すれば前進している間に撃たれる。
成功しても危険はある。
とにかく成功率を高めるために牽制をする。
途中で移動する向きを変え、時に一瞬止まる。
前進はしない。
こうやっていくうちに相手の動きが乱れることを祈る。
そうなった時が攻め時だ。
しかし、さっきオルガからカオスエメラルドを受け取ればよかった。
今後悔してもどうしようもない。
取りに行くなんて間抜けはできない。
そんな念に頭を痛くしている時、何かに反応して横を見た優希さんの目が見開かれた。
「くっ……!」
優希さんが体をのけぞらせて飛んできた物を避ける。
それはそのままの勢いでオレンジの液体に飛び込み、高い水しぶきを上げた。
優希さんは既に俺から離れて、何かが飛んできた方を睨んでいた。
俺もそちらを見る。
そこには足場に上がってきたピアノがいた。
遠くでよく見えないが、手や足はあるようだった。
ということはさっき飛ばしたのは小動物か。
ピアノはジャンプした。
高く、高く飛び上がる。
その挙動を目で追うと、自然と見上げる形になる。
ピアノはそこから俺たち目掛けて無数の小動物パーツを投下した。
それはまるで散弾のようであり、無数の矢が降ってきているのに等しい。
そんな状況をこのチャオスは作り出せるほどに小動物をキャプチャしていたのだ。
伊達に歳を取っていない。
落ちてくる前に俺はオルガの傍に戻る。
守れねばならない。
数を重視し弾幕を形成する目的で放たれた攻撃はその全てが命中することを期待されていない。
なので俺単体から見れば見当違いな方向に飛んでいく物の方が遥かに多い。
行動はしにくくなるが、オルガを守るためにどうにかしなければならない弾が無数に来るわけではないのだ。
「む」
こちらに飛んでくる弾を発見。
腕パーツをゴリラのパーツにする。
弾を空中で殴って軌道を変えた。
少し痛い。
「これでよし」
安堵。
しかしそれも束の間。
再び危なそうな軌道の弾が落ちてくる。
それも2つ。
片方をさっきと同様に処理する。
しかしもう1つはその間に大分降下していた。
追いかける。
どうにか追いつくが、殴り飛ばすような余裕は無かった。
「くっ」
左腕で受ける。
痛。
耐え、物体を払いのける。
その時飛んでいたはずだが急に体が落下した。
尻餅をつく。
「ぐっ」
自分の見ている物と自分の体から伝わる手足などの感覚が正しければ、俺は人間の体に戻っているようだった。
まだ3分くらいしか経っていないはずなのだが。
ダメージが原因か?
腕が痛い。
見ると血が流れている。
刺さった時の傷か。
他にも出血が無くとも痛みを感じる場所はあった。
もう変身することはできない。
戦えない。
そんな俺を見てか、優希さんとピアノが他者の介入を気にすることなく戦っている。
力を持たない俺たちは気にする必要がないのだ。
それは俺たちが安全であることでもある。
今は、だが。
優希さんがまたピアノを激流に飲み込ませたり、ピアノが優希さんを殺したりしたらどうなる。
その時も安全は保証されているのか?
必ずしもそうとは言えない。
オルガが素直にカオスエメラルドを渡せば、命は助かるだろう。
でもそうしたくない。
俺がここに来たのは彼女の願いを叶えるためなのだから。
できる限りオルガを守らないと。
俺がダメになる前にオルガが再び戦える位に回復するかはわからないが、それでも。
「進」
オルガに呼ばれる。
振り返ると、オルガは自分の左腕をこちらに差し出していた。
「キャプチャして」
何をキャプチャしろと言うのか。
無論、その左腕だ。
なぜ?
「水色のカオスドライブをキャプチャしてるから。それに、私はユニコーンとフェニックスをキャプチャしてるから、力になれると思う」
「ああ……」
理解した。
彼女は何度か水色のカオスドライブをキャプチャしていた。
誰がそうすることに決めたのかはわからない。
あるいは誰もがそうするべきだと思っていたのかもしれない。
ともかく彼女がケイオスであると俺に思わせるためにそれは行われたのだろう。
キャプチャすれば俺はまた戦える。
でも、それだけではない。
この左腕をキャプチャするということがどのような意味を持っているか。
今の俺には容易に理解できた。
これはオルガを食らうことに近い。
オルガが両親にしてやったことと同じようなことをするのだ。
自分の血肉を食わすこと。
相手の血肉を食すこと。
これらは稀に愛情表現として用いられる。
一心同体となるための行為。
彼女はそうやって両親を失い、孤独になった。
俺がすることがそれと同じではいけない。
彼女と俺はイコールで結ばれてはならないのだ。
「俺はお前を1人にはさせないからな」
「うん」
1つになるためではない。
生きるために孤独になった少女の隣に立って手を繋ぎ笑い合う未来を実現するべく生きるため。
2つになるために。
俺は彼女の左腕をキャプチャした。

そして、7つのカオスエメラルドが一斉にこれまでにない強さで輝き始めた。
引用なし
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