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CHAOS PLOT 「CHAOS―チャオス―」 スマッシュ 09/12/23(水) 0:19

CHAOS PLOT 「CANNON'S CORE」 スマッシュ 10/7/17(土) 13:35

CHAOS PLOT 「CANNON'S CORE」
 スマッシュ  - 10/7/17(土) 13:35 -
  
敵を倒していく。
中に入られないように。
美咲があそこから脱出したのだ。
一体どのような手段でかは知らないが。
結構早かったのだと思う。
まだ冬だ。
春になっていない。
寒い中俺は戦っていた。
しかし、中に入られないように戦うのは難しい。
何より時間がかかる。
全て倒す前に水色のカオスドライブが尽きてしまうのではないかと思う。
だからといって積極的に攻撃しにいけば、その隙にぞろぞろと内部に侵入されるわけで。
水色のカオスドライブは大量に持たされているが、不安は不安だ。
オルガがうらやましい。
そして敵以外に気になることがある。
さっき、ARKの下の方から轟音がした。
あれは何の音だったのだろうか。
大事になっていなければいいが。
そんな心配をしながら敵を倒す。
数は多いものの、慣れれば単純作業に近い。
美咲は一体どこにいるのだろうか。
時々辺りを見渡すが、それらしい姿は確認できない。
近くにいることに変わりはないだろう。
「おい、橋本!」
入り口に先田さんがいた。
どうしてこんな所に。
「敵はどうでもいいからこっちに来い!」
何を言っているんだ?
それは一体どういう意味なのだろう。
ともかくとりあえずは従い、入り口付近まで戻る。
「どういうことですか」
「早くしないとARKが宇宙に行っちまうぞ」
「はい?」
「そうなると俺が非常に困る。だから来い。中枢へ行くぞ。オルガはたぶんそっちに向かってる」
「オルガが?」
それは気になった。
しかし背後の敵も気になるわけで。
「敵は……」
「思う存分中に入れる」
「は?」
何を考えているんだこの人は。
「それはちょっとまずいのでは」
「乱闘にした方が都合がいい。それに、どうにかできるのか?」
「……できません」
「なら諦めるしかないだろ」
釈然としないが、仕方ない。
あれらを侵入させないようにしながら、中枢、動力源となっている神殿まで行けるわけがない。
せめてあれらより先に着くよう走るのみだ。
水色のカオスドライブを節約するために途中からは人間の体で走る。
「……?」
不思議なことに、背後からチャオスが追ってくる様子はなかった。
そのままリフトに乗る。
息を整えながら、チャオスが現れないか見ていた。
彼らの方が人間より素早い。
だというのにやって来る様子は無かった。
「美咲が何かしてるんだろうさ」
おそらく正しいであろう指摘には緊張感を感じられなかった。
実際、いくら警戒したところで意味は無い。
リフトは足場だけの存在である。
籠のような物であれば相手の侵入に抵抗できるのだろうが、そういうことはできない。
で、こちらとしては飛び降りて逃げるわけにもいかない。
俺はともかく先田さんはそうだ。
どうしてこんな危険な造りにしたのだろうと憤りを感じるが、おそらく基もこうだったに違いない。
だからといって、こんな場所まで再現しなくてもよさそうなものだが。
「さて、どうしようもないことだし、種明かしでもして気を紛らわすかね」
「種明かし……何のですか?」
「色々とある。っていうか、たくさんある。例えば、お前がケイオスになった理由とか」
「やっぱり理由が」
「ああ。勘付いてたか」
「水色のカオスエメラルドをわざわざ持ち出した点が怪しいと思ってました」
大事な大事なカオスエメラルド。
それをわざわざ外部へ持っていく理由に、俺が関係している可能性は否定できなかった。
「まあ、順番に話していこう。ARKが不死身を目指すことになった理由は2つ。美咲とオルガの存在だ。美咲と言っても当時はまだ美咲の体を使っていたわけじゃないがな。ともかく、最初の7匹のうち1匹はあいつだった。この時はまだ俺たちにとって不死身のチャオスは脅威であるだけだった。そこに生まれたのがオルガだ。人間と違って不死身になり得るチャオやチャオスが人間に近づいた。それがきっかけで、チャオスを利用して人間を不死身にする方法を思いついたやつが現れた」
「それが、所長……ですか」
「そういうことだ。ではどうやってチャオスの不死身を人間に作用させるか。その方法が長い間考えられた。結果、提案されたのがケイオスだ。これならば人間として生まれた者も不死身にすることができると推測された上、実験中はチャオスに対抗する手段という表向きな姿を持つ。とはいえ世間の目につかないようにしてきたからこれは保険のようなものでしかないが。そして記念すべきケイオス第一号として選ばれたのが……」
「俺、ですか」
「違う。優希だ」
「え?それじゃあ……」
どうしてその代わりに俺が初めのケイオスになったのだろうか。
「不死身人間を肯定する側はそう考えていた。しかしそれだとまずいのが俺のようなそれに否定的な考えの人間だ」
「否定……そもそもどうして先田さんは不死身の人間に対して否定的なんですか?」
「不死身自体は別にいい。だが問題はその道を進むあまりチャオスを倒す気を無くしたってことだ。チャオスは不死身を実現するための鍵。だから人類にとって脅威だろうが消えてもらうわけにはいかない。むしろ、利用できるだけ利用するべきだという考えがARKには生まれた。その一部が現在ARK内で飼われているチャオスだ。厳選された才能や能力のあるチャオスがあれらだ」
確かにチャオスがたくさんいた。
それを管理しているのが山崎さんだ。
「ん?一部?」
気になる言い方だ。
「そう。一部だ」
「他にもARKが管理しているチャオスがいるってことですか」
「いや、管理はしていない。野放しにしているだけだ」
「野放しって、それは……!」
「頭のいいやつがこういう風に考えたわけだ。戦力として所持するに足りないチャオスでも、外でうろつかせておけば小動物を回収したりあるいはカオスエメラルドを見つけたりするのではないだろうか、と」
「じゃあ……」
「今まで戦ってきたチャオスの大部分は、ARKが捨てたチャオスあるいはその子孫ということになるな」
それだけじゃない。
今まで人間を殺してきたチャオスの一部、あるいはほとんどはここから生み出され排出されたものだったのだ。
そこまでしてでも一刻も早く不死身の人間に近づこうとしていたことが伺える。
「そういうわけだから、不死身の人間を作るのはいいが、それより先にチャオスをどうにかするべきだという考えも出てくる。そこで考え出されたのが、優希がケイオスになる前にこちら側のケイオスを用意する計画だ。そうすれば、向こうの独壇場ではなくなる。また、オルガがどういう考えを持っているかわからなかったがやりたいことがあるようだったから、こちらの味方ではないにしても後藤たちの敵になり得る様子だったのは大きかった。つまり、こちらとしてやるべきことは優希以外のケイオスの用意とオルガが死なないようサポートすることだった。で、ここからがお前にとって重要な部分だ。さて、誰をケイオスにしたらいいのか。そこが問題点だった。簡単にチャオスにやられるようなやつじゃあ困る。だからチャオスとの戦闘に関する知識が豊富なやつがいいと思われた。そしたら山崎がチャオスを連れて戦っているやつがいると言うじゃないか。さらに都合がよかったのは、お前が大した考えを持っていなそうなやつだったことだ」
「すごくバカにされてますか俺」
「そういう意味はあまりない」
あるにはあるのかよ。
「とにかく、普段から死にたくないとか考えているやつ……まあ優希はそういう傾向があるが、そういう人間では自分の意思で不死身の流れに乗ることだろう。だが、そうでなければただその場の流れに身を任すのみだ。つまり誘導しやすい。これ以上ない有用な駒になるわけだな、お前は」
「だからわざわざ……」
「そういうことだ。色々とそれらしい理由をつけて実行にこぎつけた。つまりお前がケイオスになったのは俺のせいと言っても差し支えないわけだな」
「そんなこと言っちゃっていいんですか?普通なら所長がどれだけ極悪非道かだけ語ればいいと思うんですが」
「問題ないだろ。お前を騙してたのは後藤の方だって同じだ。向こうが不死身うんぬんをばらしたなら、こっちもネタをばらすだけだ。それに、こうしたところでお前の行動にそれほど変化は無いだろ」
「そうですね」
「なら俺のこの行為はお前に知識を与えただけでしかないだろう」
「……ありがとうございます」
「礼はいい。俺たちのためにお前をサポートしているとでも思っておけ」
「じゃあ、そうしておきますよ」

結局、チャオスは姿を見せぬままリフトは停止した。
動力源へ向かう。
その途中でチャオスが待ち伏せをしていた。
数は少なくない。
今まで遭遇した大群ほど多いわけではないのだが、それぞれから途方もない威圧感を感じた。
「まさか」
「ARKで飼っているやつらだろうな」
厳選されたチャオス。
精鋭である。
つまり今までのチャオスよりも確実に強いということだ。
思えば、ケイオスになってからこれまで強いチャオスには美咲以外遭遇していない。
この前の狂人のようなチャオスはカオスエメラルドの力に頼りきっていた。
美咲だって不死身という点が無ければ、オルガや優希さんに劣る。
もしかしたら俺よりも弱かったのかもしれない。
眼前にいるチャオスたち。
個々では俺でも勝てるだろうが、集団で挑まれてどうにかなるものだろうか。
山崎さんが教育していたということもある。
コンビネーションが抜群であったりしたらどうしようもないぞ。
「……」
向こうから仕掛けてはこない。
時間稼ぎということか。
戦わなければ足止めになるし、戦えばそれだけ水色のカオスドライブを消費することになる。
面倒な相手だ。
「カオスドライブはいくつ持ってる」
「水色のはあと3つです。白は最初から持ってません」
「ここで使うのは……」
惜しいと言おうとしたのだろう。
しかしその言葉は出なかった。
俺たちの脇を小さな影が通り過ぎたからだ。
眼前のチャオスの隊列に突っ込んで、初めてそれがチャオスだということがわかった。
まるで小さな車かバイクが突撃してきたかのようだった。
部隊に負傷者を出しただけでそのチャオスの命は果てたが、敵も俺たちもそいつが来た方向から現れたものを見ないわけにはいかなかった。
戦闘に人間の姿かたちをしている者が悠然と歩き、その後ろを無数のチャオスがうごめいていた。
その人間らしき者が着ている赤い服装はこれから戦場で消滅する命を予感させた。
「お久しぶり」
「美咲……」
確かに美咲だった。
人間の体も旧施設に残されてきたから、他のチャオスがキャプチャしたということはない。
間違いなく、あのピアノと名乗ったチャオスだ。
見た瞬間から嫌な空気を感じていたが、そう確信するといよいよ体が現実を拒絶したがった。
どうもこの不死身の生き物を相手にするのは苦手だ。
いくら痛めつけても死なず、こちらが思う存分なぶられる。
そんな光景をたやすく思い浮かべさせられるからだろう。
そして、後ろにいるチャオスの数は100を超えていそうだ。
これらをまとめて率いてきたのか。
きっと遭遇するであろうと思っていたチャオスが姿を見せなかったのは彼女と行動を共にしていたからか。
美咲の視線は俺の前方へ向けられた。
そこには誰であろうとも通すつもりのない軍勢がある。
「そこにいるのはすごく強いチャオスの諸君だね」
「あ、ああ」
思えばこいつらは美咲になついていた。
それは同じチャオスだからだろうか。
しかし彼らに向ける美咲の目は友好的なそれではなかった。
「でもゴミだよ」
緊張感が増す。
彼女がどうやら味方ではないらしいとわかったのだろう。
「チャオの時代でも、人間に飼い慣らされることはなかったのに。今では人間の命令通りに動くだけ」
人間の言葉にしたって相手には伝わらない。
それでも彼女は口を止めなかった。
彼女の中にある怒りは言葉として出て、それが戦闘の空気を引きずり出しているのだった。
「チャオスでもチャオでもない。失せろ」
まるでどういう言葉を投げかけられたか理解したかのように両方のチャオスの群れが一斉に動いた。
数秒のうちに入り乱れどれがどちらのチャオスだかわからないような状況と化した。
その中を美咲は人間の体を捨て、チャオスとなり戦場を飛び越えた。
神殿へ向かうのだ。
俺も行かなくては。
「それじゃ頑張れよ」
「はい」
俺は駆けた。
チャオスのいないポイントからポイントへ飛び移っていく。
変身できる時間は惜しい。
瞬時に判断して移動していく。
止まってはいけない。
止まった瞬間、取り返しのつかないことになるのだ。
俺はそのまま突き進み戦場を抜け、神殿のある動力室へ入った。
引用なし
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