●週刊チャオ サークル掲示板
  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃チャットへ ┃編集部HPへ  
1714 / 1840 ツリー ←次へ | 前へ→

CHAOS PLOT 「CHAOS―チャオス―」 スマッシュ 09/12/23(水) 0:19

CHAOS PLOT 「PHILOSOPHY」 スマッシュ 10/7/17(土) 13:33

CHAOS PLOT 「PHILOSOPHY」
 スマッシュ  - 10/7/17(土) 13:33 -
  
カオスエメラルドで何が起こるのか。
寝転がりながら考える。
天井に浮かぶ穏やかな空模様は想像の中に浸るのに適していた。
模倣することが大切だ、という感じのことを彼女は言っていた。
この施設はスペースコロニー・アークを再現した物らしい。
不死身の人間を究極生命体と見立てているそうだ。
オルガのやろうとしていることも似たようなことだ。
チャオが白いカオスエメラルドの力でチャオスになりました。
だから、その逆をすれば元通り。
思えば、チャオがカオスに突然変異した原因ももしかしたらチャオスと同じなのかもしれないという話をしたことがあった。
これもチャオからチャオスへの変化はチャオからカオスへの変化と似たようなことをしたから起きたのだと解釈できる。
現在、ARKはカオスエメラルドを5個所持している。
一体どういうわけだかわからないが、都合よくとんとん拍子で増えていく。
7個全て集まる日もすぐなのではないかと思う。
そして、不死身の人間が生まれるのだろうか。
もしかしたら生まれるのが究極生命体なるとんでもない生物かもしれない。
下手したらカオスを生み出して、しかも7つのカオスエメラルドによって力を得て、暴走して、何もかも破壊されるかもしれない。
大変な事態になった時、どうにかしてくれるのは誰か。
スペースコロニー・アークの頃やカオスの時ならソニックというのがいた。
その音速で走れるらしい青いハリネズミもまた7つのカオスエメラルドを用いて対抗したとか。
そういう前例があるのだから、今回もそういう英雄がいれば大丈夫だ。
では現在、そうやって救ってくれる英雄は誰になるのか。
……不在である。
まずい状況になったらそれがただ広がるのみだ。
不死身の人間を生み出す。
本当にこのためにやっているとすれば、悪い話じゃない。
オルガがやろうとしていることだって良いことだ。
世界は救われることだろう。
俺がやるべきなのは何なのだろうと思う。
優希さんは死にたくないから不死身になろうとしている。
特に考えがあるわけではない俺が何をするべきなんだ?
「……ん?」
オルガ。
彼女はチャオスをチャオに戻そうとしている。
だが、どうしてそうしたいのかは聞いていない。
チャオに戻すということはチャオスの存在の否定だ。
俺も含め、人間からすればチャオスの存在はいくら否定したっていいものだ。
オルガはそうではない。
彼女にはチャオスの血が流れているし、そうであるから当然チャオスの親がいた。
そもそもチャオスが生まれたからこそ、オルガのような人間とチャオのハーフという特殊な生物が生まれたのだ。
そしてその存在はチャオスがチャオに戻ることでどうなってしまうのだろうか。
人間になるのか、チャオになるのか。
そのままあり続けるのか、消えるのか。
どうなるかわからない。
あるいは、彼女が望むままになるのかもしれない。
どうであれ、彼女には彼女だからこそ抱えている心の闇がある。
俺はそれを気にせずにはいられないのだった。

考え続けて、結構な時間が経ったと思う。
チャオガーデンに誰かがやって来たことで俺の意識は現実に引き戻された。
珍しくチャオガーデンの外へ行っていたオルガが戻ってきたのだった。
俺は驚いた。
ニュートラルヒコウタイプのチャオを彷彿とさせていたツインテールの髪は縛られることなく下へと流れていた。
服装もいつもの無味乾燥な物ではなく、着飾りの精神を特にコートから醸し出していた。
普段のオルガと比較して総合的に人間らしい外見をしていた。
「……どうか」
「素晴らしいな。女の子だ」
髪型のせいで変身時とあまり印象が変わらず、普段の時もどことなく人間ではなくチャオス寄りの雰囲気を発していた彼女だ。
それがこうも人間らしさを発揮していることに感動した。
服はどうやら以前美咲が買ってきた物のようだ。
彼女に感謝。
「暑い」
「コートは中で着る物じゃないからな」
「……そうだったのか」
無表情に愕然とした。
人間っぽくない印象が増した。
コートを脱ぐ。
「んー、別にこれ着なくても外平気だと思うんだけど」
さらに人間らしからぬ言葉を吐く。
今は冬なのだぞ。
オルガがぽつんと呟いた。
「もっと早くから、橋本に頼っていればよかったのかも」
「……それはどういう?」
「チャオスは人間の敵だから、そのチャオスと人間の間に生まれた私はきっとすごく気味の悪いものだと思う。表面には出ないけれど、裏では恐怖されたり利用しようと企まれたりしてるんだ。人間であればそうはならなかった。チャオならそうはならなかった。もっと普通に誰かと過ごせたはずだと私は思ってる。私は、自分を肯定できない」
他の誰かとは違う。
その意識は非常に辛いものだ。
他者から攻撃を受ける理由となり、自分を肯定できる材料の不足となり得る。
「チャオスであろうとしたのは……開き直りか」
「そうだね。それにチャオスの方がわかりやすいし気味悪くないから」
「……」
「でもね、橋本なら受け入れてくれる。私にはそれがわかる。……冷たい理屈になってしまうのかもしれないけれど」
「聞こうか」
「キャプチャ能力にはその人やチャオスの本質が関係するから。チャオスのキャプチャ能力は他者を倒すために発展したものだから、他の誰かを押しのけようと思うほどたくさんの能力を強力に扱うことができる」
確かに、チャオスのキャプチャ能力は戦闘で有利になるためのものしかない。
そのために発展したというオルガの意見はもっともだ。
そしてより強くなろうと、より相手を倒そうと思ったやつがたくさんの能力を備えるようなことがあってもそこまでおかしいことじゃない。
そこで気付いた。
「まさか」
「うん。『融合』だけは違うんだ」
「その、『融合』には、どういう意味があるんだ?」
「相手を受け入れること。許容。だからキャプチャした物は自分と完全に一体化する。自在に扱える」
「そうか……そういうことか」
許容する能力が俺の性格から来ているものだとすれば。
俺は常人では受け入れがたいことでも受け入れることができるのだろう。
過去を振り返る。
自己分析をする。
夏から始まった変化。
今では冬だが、半年にも満たない期間しか経っていないということでもある。
その間にあった色々なこと。
常識から外れたものはこれでもかと言うくらいにあったはずだ。
俺はそれらを拒絶せずに飲み込んで、このおかしな環境に今日まで適応してこれた。
そういう素質があったからこそ、俺はこの能力を持った。
俺だけではない。
オルガや、最初に『融合』を得たチャオスだってそうなのだ。
そのチャオスは何を受け入れたのだろうか。
カオスエメラルドによって自身をチャオから化け物へ変化させようとする人間の心か?
チャオの心の中に自分のために生きる意志と同時に7分の1は他者を受け入れる気持ちがあったせいでこんなことになった……なんてのは出来すぎた話だが、もしそうだったらなんとも悲しい話だ。
ともかく、そのチャオスになったチャオはオルガの母親なのだ。
「あ……もしかして……」
オルガの顔を凝視する。
真相が見えてしまった気がした。
そもそも彼女は小動物以外をすんなりとキャプチャする能力なんて無い。
彼女が親を虐殺することなどできないのだ。
それなのに彼女は両親をキャプチャすることができた。
「お前の親は……」
「うん」
「そうか」
彼女の表情と、その頷きだけで理解できた。
彼女からの言葉は必要ない。
あるいは、彼女が言葉にして語らせていいような話ではない。
そうやって彼女の心から霧散させてはならないほどに尊いものだ。
彼女の母親は、おそらく父親もだが、受け入れたのだ。
彼女が自分たちをキャプチャしなければ生きていけないのだからキャプチャされようと。
そしてその決意を受け入れたのは他でもないオルガだ。
キャプチャされる側がそれを望むのであれば、おそらくオルガの能力でもすぐに人間をキャプチャできるはずだ。
オルガの両親は拒絶してオルガを見殺しにすることだってできた。
自己愛を超えた家族愛。
オルガはそんな幸福を受け止め、今後与えられるはずの一切の愛情から隔絶されたのだった。
生まれ育った場所での交流にも楽しいこともあったはずだ。
幸福だろう。
その裏に渦巻く陰謀などを気にせずにいられれば、だが。
そこに来たのが俺だ。
オルガや彼女の親と同じ素質を持った俺だ。
都合いいことに俺は何も持っていなかった。
オルガとの付き合いは彼女が経験した人との交流の中でもっとも純粋に近いものだったのだろう。
彼女が普段遊んでいるチャオたちのそれに近かったのだ。
「橋本はそうやって受け入れてくれる。理解してくれる。だから、逆に怖い。自分がやっていることが冷たいことのような気がして」
きっとそうなのだろう。
真実を話し、自分があたかも可愛そうな人間であるように思わせれば、俺は彼女を肯定する人間になり得る。
しかしそれは動物の習性を利用した遊びをしているようなものだ。
そうやって肯定されても、それが正しい許容のあり方だとは思えなかったのだろう。
それを回避するために彼女は言わずにいたのだ。
自分の目的を持てと言っていたのだ。
それでも俺はオルガに近づき、こうなった。
「大丈夫だ」
見捨てることは可能なのだ。
美咲に対してそうしたように、あるいはこれから優希さんに対してそうするであろうように。
「お前を許容するかどうか、最終的に選ぶのは俺だ。お前が選ぶことじゃない。俺が選ぶんだ」
彼女を肯定することは俺には難しい。
他の人間であればもっとありふれた言葉で認められるのだろうに。
でもそのような人間は現れなかった。
そして俺はオルガを肯定したいと思ったのだ。
オルガを許容すること。
俺がそれをするためには彼女に思い知らしてやらねばならないのだ。
俺とお前は別の存在である、と。
普通だったら、二人は一緒だとか一心同体とかを求めるものだ。
だけど俺たちに必要なのはそれじゃない。
他人であること。
“私”と“あなた”は違う。
今の俺がオルガを受け入れるためには、今のオルガが俺を受け入れるためには必要なのだ。
目の前にいる相手が尊い者だと思えるように。
「……ありがとう」
「それに、俺からこんな言葉を引き出すくらいに耐えたんだ。十分だ」
「うん……ありがとう」
いくら近づいても、二人のままなのだ。
それが普通。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; en-US) AppleWebKit/533.4 (KHTML, like...@p038.net219126005.tokai.or.jp>

  新規投稿 ┃ツリー表示 ┃一覧表示 ┃トピック表示 ┃検索 ┃設定 ┃チャットへ ┃編集部HPへ  
1714 / 1840 ツリー ←次へ | 前へ→
ページ:  ┃  記事番号:   
56295
(SS)C-BOARD v3.8 is Free