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CHAOS PLOT 「CHAOS―チャオス―」 スマッシュ 09/12/23(水) 0:19

CHAOS PLOT 「CONFESS」 スマッシュ 10/3/31(水) 21:35

CHAOS PLOT 「CONFESS」
 スマッシュ  - 10/3/31(水) 21:35 -
  
オルガと一緒に戦ったのは2度目だ。
最初はX-AOSとの時。
あの時はどうしてカオスエメラルドにこだわるのか、という疑問を持った。
彼女と知り合ってからまだそんなに長いわけではない。
普段はチャオガーデンでのほほんとしているだけなわけだから、それでわかること以外の価値観については知る機会がほとんどない。
彼女がどういう戦いをしているのか見ていれば、俺にとって新しい発見があるのは当然と言える。
しかし今回はそれとは違う。
彼女が水色のカオスドライブを使わずに変身したことについて。
俺が見えない角度で持っていたという可能性もあるが、わざわざそうする理由が無いのであればそのパターンは考えにくい。
ARKに帰りチャオガーデンに着くなり寝そべっているオルガに対し、どうやってその話を切り出そうか。
その文句を考えているうちにオルガがこちらを向いてじっと見つめてきた。
俺もオルガの目を見る。
定期的に行われる瞬きからはその間隔から体はまだ睡眠を欲していないことがわかる。
見つめること数秒。
その時間が少し長く感じられたが、おもむろにオルガが起き上がって再び時間が動き出した。
上半身を起こしたオルガは依然俺を見つめたままだ。
「橋本、私は」
彼女は大事なことを伝える場合、こちらを見て喋る癖があるようだ。
あるいはそれ相応の空気を作り出そうとしているのか。
わざわざボールを遠くへ蹴ってチャオをどかしたことも以前あった。
「私はケイオスじゃない」
「……そうか」
「だから水色のカオスドライブなんていらないし、チャオスでいられる時間に制限も無い」
それを予想していたことは今更隠すことでもないだろう。
ピアノの件があった直後であるから当然その発想はあったのだ。
彼女の場合、切り替えができるのだから人間の体を放出したり何かで上書きする必要もない。
「つまりダークヒーローなわけだな」
「え?ん……、んー?」
そういう方向の発言は予想していなかったのか、驚いた後に返答に悩み出した。
それも当然。
高確率で悩むような発言をしたのだ。
1つは予期せぬ言葉に対して反応がしにくいこと。
もう1つはこの場合ダークヒーローとは言いにくいこと。
隙を生じぬ2段構えというわけなのだ。
「……ダークヒーローってちょっと違わない?」
「恐る恐る言ってはツッコミにならないな。減点」
「いやそういう番組じゃないからこれ」
オルガはそう言った後に壮大な溜め息をついた。
「真面目な話をしてたのに……」
雰囲気を壊されてご立腹の様子。
「つまりチャオス側ってことだろ?ちゃんと理解できてるぞ」
「まあ、そうなんだけどさ。もう少し動揺とかするかと思ってた」
「なんかいい加減慣れてきたもんで」
ここ最近はそういうのばっかりだったからな。
この数ヶ月で自分が人間じゃなくなっていたりチャオガーデンに住むことになったりカオスエメラルドをやたらと見たり知り合いが実は不死身だったことが判明したりしている。
特に最後のは命の危機に晒されるオプション付であった。
「それに、橋本だからっていうのも大きいか……」
ほう、とまた溜め息。
「かなり失礼なことを口走りつつ溜め息をつくな」
「大丈夫。誇っていいことだから」
「どこがだ」
かなり失礼なことを仰ってくださる。
年上に対する礼儀はしっかりするべきなのだ。
言ってもわからないやつには力ずくでわからせなくてはならない。
どちらが格下であるかをな。
俺が剛の拳(男性の方が大抵筋力は強い)によりオルガをねじ伏せる様を想像する。
途中でニュートラルヒコウの姿にオルガが変身した。
そう、やつはいつでも変身できる。
水色のカオスドライブがいらないから。
そのまま鮮血エンドへ。
だめだ、俺が死ぬ。
ここは、立場は平等ということで済まそう。
俺って寛大だね。
「それでも普通はそれなりに戸惑ったりするもんなんだけど」
「ケイオスじゃないってことにか?」
「うん」
頷く。
「そういうもんか?今までのオルガじゃない誰かになるわけじゃないんだろ」
「そりゃあね」
「それなら目的が変わるわけでもないんだな」
「うん」
オルガは俺の確認に対して順調に返答していく。
「つまり敵になることもない」
「そうだけど」
「なら問題ないだろ」
そして絶句した。
きっと変身していたらポヨがエクスクラメーションマークになったりしているのだろうと思わせる表情をしている。
そのまま数秒硬直した後に、笑みを漏らした。
「やっぱ、普通じゃないよ。橋本は」
そう言う顔はやけに嬉しそうだった。
何がそんなに嬉しいというのか。
「あれ、すると俺は一番最初のケイオスってことか?」
「そうなるね」
ケイオスが生まれたのは随分最近ってことか。
それまではオルガがチャオスと戦っていた上に、ARKの中には不死身のチャオスが美咲という人間の扱いでいたわけだ。
おまけにチャオスを言うこと聞くよう調教している。
人間が戦うのが一番いいとか言っていなかったか?
「なんか、ARKはおかしい気がするんだが。謎が多すぎる」
「すこしふしぎ」
「いや、めっちゃふしぎだ」
「ふーん」
オルガは服に手を突っ込んだ。
「そういう時は知っていそうな人間から聞くのがいいよ」
見せてきた携帯電話の画面は相手を呼び出そうとしているのを表示している。
名前が表示されるスペースには先田という2つの文字が並んでいた。

「呼ばれて飛び出たぞ」
「遅い」
気だるそうに現れた先田さんに超反応してオルガが文句を言う。
そのスピードはまるで早押しクイズでもやっているかのようだ。
実は先田さんと連絡がついたのはあれから2時間後のことであった。
それまで電話もメールも無反応な先田さんに対して彼女が積み上げたストレスはちょっとどころのものではない。
そのストレスを具体的に数値化するのであれば、八つ当たりの対象になったチャオ8匹分である。
ちなみにこのガーデンにチャオは8匹いる。
「仕方ないだろ。俺だって仕事でここにいる」
そうは言うもののなぜか俺のイメージでは仕事をしている印象が全く無い。
むしろ車で俺たちを移動することが仕事のような。
「仕事なんて抜けてくればいいじゃん。いてもいなくても大差ないじゃん」
なんてひどいことを言うんだ。
「一応言っておくが、大差あるぞ。特に今日のはあったぞ」
ああ、あるんだ。
先田さんに仕事があることにそれなりに驚いた。
「何をしていたんですか?」
「美咲をどうするかについて方針を決めていた」
「美咲……」
そういえばピアノという名前は俺とオルガにしか名乗っていなかったか。
「そうだ。そもそもなんで美咲はここにいたんです?」
契約とか言っていた。
その契約とは一体何なのだろうか。
「相手が不死身のチャオスだとわかっていたんですよね。その上で契約したとか言っていました」
「……美咲が、か?」
「はい」
そう答えると先田さんはふうと息をついた。
「本人が言ったなら隠す必要も無いか。どうせ俺が言わなくても本人に聞けば喋るんだろうしな」
などと言い訳のような言葉を呟いて、俺たちに話を始めた。
「美咲と契約した理由は他でもない。あいつが不死身だったからだ。当時、もちろん今でも不死身のチャオスを手元に置いておくことはARKにとって非常にプラスになることだった」
「もし他のカオスタイプのチャオスが現れても対抗できるから、ですか」
相手が死なない場合にこちらも死なない者を戦わせれば少なくとも負けることはない。
そのまま隔離できればいい。
そういう理由で俺もカオスタイプになれるよう小動物を集めることを指示された。
「それだけじゃない。危険な仕事をさせることも可能だ。例えばカオスエメラルドが関わるようなものとかな」
「あ」
オルガが声を上げる。
「もしかして、それって……」
「わからん。そうである可能性はあるが」
俺も遅れて気付く。
オルガと一緒にこのARKの最深部へ行った時、どこから手に入れたかわからないカオスエメラルドがあった。
それを取ってきたのがピアノだという可能性は先田さんの言っているように低いわけではない。
俺たちが手に入れた赤いカオスエメラルドのように、危険が伴うのであれば尚更だ。
不死身であるピアノ以外の誰がカオスエメラルドを手に生還できるというのか。
「それに、いるだけで大きなアピールになる」
「アピール?誰に?」
「そりゃもう色々な所に」
先田さんは大袈裟に両腕を広げ、色々さをアピールした。
どこにアピールするのだろうか。
似たようなことをしている勢力がいて、牽制になるとかか?
よくわからない。
「死なないからって実験と称してとか見世物としてとかでひどいことをしまくると後々恨まれて大変なことになったりしますよ」
「してねえよそんなこと」
「鉄球ぶつけてどれだけの力があるのか測定したりしてるとそのうち見えない手で殺されたりしますよ」
「どこの漫画だよ」
漫画と特定するあたりこの人は中々鋭い。
俺より長年生きているだけのことはある。
そういう方面に長い年数を使うのはもったいないと考える人間もいるわけだが。
1回きりの人生だから大切に。
そんな人生、こんな感じになってます。
「美咲自身にどういう理由があってこっちに来たのかはわからん。まあ間違いなくカオスエメラルドの力が目当てだったんだろう。おそらくは7つのカオスエメラルドの力が使えるような見返りがあったはずだ」
ピアノの考え。
7つのカオスエメラルドを使ってやりたいこと。
きっとそれは死ぬことなんだと俺は思った。
どうして死のうとしているのかはわからない。
不死身でいる者だからこそ感じる苦痛があるのだろう。
俺が殺してもらいたいと言っていた。
そのためにドラゴンをプレゼントした。
ドラゴンとカオスタイプを殺すことが関係あることには到底思えないが、俺にとっては大きなプラスとなる。
俺を強化することで自分を殺してもらう前に死なないようにしたと考えるのが妥当か。
それにしてもどうして彼女は自分を殺す者を選んでいるのか。
ただ死ぬだけじゃ満足できない、のだろうか。
「どうであれ過ぎたことだ。手元から離れた不死身なお嬢ちゃんをどうにかしないといけないわけよ」
「殺せるの?」
「無理だろうな」
俺もそう思う。
もしそんな手段があれば既にその手で死んでいるだろう。
死にたいと願っている死なないチャオスにとっては7つのカオスエメラルドだけが唯一の希望なのだ。
「しかし野放しにしておくわけにもいかない」
他のチャオスと違って、よく考えて動いているから人を襲う危険性があるかはわからない。
しかし、俺たちに対してはちょっかいを出してくる可能性が高い。
そういうことを先田さんは言った。
標的にされていなかったから俺は問題ないだろうが、オルガと優希さんは危険だ。
特に優希さんは本当に殺されてしまってもおかしくない。
「しかしどうして優希のやつは変なことするかね。おかげで大変だ」
「そりゃ殺そうとした相手が死なない方が珍しいよ」
オルガの言う通りだ。
俺だって実際に死なないところを見るまではそうだなんて思いもしなかった。
そういう存在がいるからといって、自分の身近に現れるなんて人間は想像できないのである。
「いや、後藤がそういうことは知らせてあると思ったんだが」
「所長が?」
「もしそういうことがあったら私たちだって知っているはずじゃないの?」
「いや、そうとも限らない」
「それってつまり、えこひいきみたいな?」
えこひいきというオルガの表現は多少幼稚な気がした。
けれどもそれが大して間違っていないことは先田さんの首肯とその後の言葉が証明していた。
「少なくともお前たちより優希の方が情報を握っている」
「うわ、ずるいなあ」
「あれもそれですか?」
適切な言葉がすぐに思いつかなかったので指示語ばかりで意味不明なことを言ってしまった。
翻訳すると、優希さんばかりチャオスの殲滅にあたるのも所長から優遇されているからですか、という感じになる。
少なくとも後半部分は、それ、という言葉のままでも差し支えないだろう。
指示語ばんざい。
そういうことを適当に補足しておいた。
「そうだな。それもそれだ」
「もしかして、あれもこれもですか」
「あれ、と、これ、が何を指すのか考えないまま喋ってるんじゃなかろうな」
「う」
「図星かよ」
指示語ばんざいならず。
無念。
「どうして優希なの?」
それは、どうしてあの子ばっかりちやほやされるの、などといった嫉妬の類の質問でなかった。
「優希であることにどういうメリットがあるの?」
「メリットがあるわけじゃない。リスクが無いんだ」
俺たちにあって優希さんに無いリスク。
「優希は絶対ARKに従う」
とっさにオルガが反応した。
「ARKの犬め」
「それは悪役が言うセリフだからな?」
「ダークヒーローって言ったの橋本じゃん」
「っていうかそれだとただのダークだから」
優希さんは絶対にARKに従う。
裏を返せば俺たちは裏切る可能性があると見られているということだ。
もしかしたら仮想上で悪役にされていてもおかしくはない。
つまりどっちにしろダークヒーローではないのである。
もはやヒーローであるかも微妙な線だ。
「正確には後藤の言うことに従う、だな。ごく一部を除けばARKの言うことに従っていると言っても正しいんだけどな」
「個人名が出てきた瞬間なんだか……」
「でりゃ」
オルガのチョップが俺の頭にめり込む。
岩や山を両斬できそうな勢いだった。
「何をする……」
「いや、なんとなく」
どうして優希さんが所長に従うのか。
その理由について、先田さんは深く話さなかった。

食事をオルガの方から誘ってきた。
珍しい。
いや、それどころかこんな展開は初めてだ。
彼女が脱木の実することは喜ばしいことでもあるし、俺は木の実を食わない派だ。
つまり誘いを断る理由など存在せず、ゆえにそういう選択肢が出る余地など無いというわけだ。
食堂。
「カレーコロッケカレーは禁止」
「え」
濁った声を上げた。
そこには驚愕とショックが混じっていた。
「な、なんで」
「別の食べ物も食べてみること」
「うう」
オルガはしぶしぶ従い、しばしば悩んでラーメンを選択した。
「じゃあ俺もラーメン」
「その選び方はなんかせこい」
「まあな」
嫌いな食べ物はあまり無い。
だからといって特別好きな食べ物も無い。
その時の気分で、これが食べたい、という意思が無ければそんな人間が何を食べるか決めることはちょっと難しい。
それを解決するために他人が選んだのと同じ物を選ぶのである。
カレーコロッケカレーは最近食べたので除外させてもらったが。
「正直、驚いた」
1度ラーメンを啜ってからそう彼女は言った。
「何が」
「私が、ケイオスじゃないって件」
彼女は自分の食べ物を見つめたまま話す。
俺はそんな彼女のことを見ていたが、向こうはこちらを見る気配はない。
食べても話しても彼女の目線はどんぶりに向いていた。
「話せば軽蔑されるかもしれないと考えなかったわけではなかったから」
ちょっとぎくしゃくした感じでオルガは話す。
少し恥ずかしいのだろう。
途中で先田さんを呼んで別の話をしていたから、どう切り出そうか迷ったわけだ。
それで食事に誘った、と。
「軽蔑、ねえ」
「人間だと思ってたのが人間じゃなかった。そんなことがわかったら普通はそれまで通りに付き合えないと思う。橋本みたく割り切った考えをできる人は少ない、きっと」
その通りだと思う。
人間には感情があるから。
俺だって完璧に割り切って考えられるわけじゃない。
彼女を軽蔑しなかったのは、彼女のことをそれなりに信頼しているからに違いない。
そうでなくても同じようにできた自信は全く無い。
「それどころか橋本は私の思っていた以上にすんなりと許容してくれて……、その、感謝してる」
「おう」
会話が途切れる。
箸が不自然に停止している。
オルガはぴたりと止まることで挙動不審になっていた。
「その、ありがとう」
そう言って、ちらりとこちらを見る。
一瞬目が合って、すぐにオルガは顔を伏せた。
それからは懸命にラーメンを食べる作業をしていた。
喋りそうもなかったので、俺もひたすらに食べることにした。
引用なし
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