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【Galactic Romantica】 ホップスター 20/12/23(水) 0:06

第7.5章:人の理由とチャオの理由 ホップスター 21/2/20(土) 0:03

第7.5章:人の理由とチャオの理由
 ホップスター  - 21/2/20(土) 0:03 -
  
クロスバード・ブリッジ。
魔女艦隊に曳航され、フレミエールへ移動中である。
そのブリッジでは、艦長であるカンナが1人、システムチェックをしていた。他のクルー、それにアンヌは別室で作業中か、休憩中である。

【オリト】「…失礼します」
そこにオリトが入ってくる。
【カンナ】「お、来た来た。いらっしゃい」
【オリト】「で、用事というのは…?」
オリトが尋ねる。他でもない、カンナがオリトを「用がある」とブリッジに呼び出したのだ。

【カンナ】「…ちょっと、話が聞きたかったのよ。オリト君について」
【オリト】「俺について、ですか?」
オリトが首を傾げる。
【カンナ】「ええ。そういえばオリト君のことよく知らないな、って思ってね。どうせしばらく一緒に行動するんだしさ」
そう言いカンナは、仮想キーボードの操作を止め、椅子を回してオリトの方を向いた。


        【第7.5章 人の理由とチャオの理由】


【カンナ】「まずこれはだけは聞いておきたかったんだけど…オリト君は、どうしてここにいるのかしら?」
【オリト】「え?」
突然の質問に対して、オリトは戸惑い、こう答える。
【オリト】「それは、入学式の日に迷い込んで、気が付いたらクロスバードに…」
そこまで言ったところで、カンナが慌てて訂正する。『それ』は、カンナも既に大まかにではあるが聞いている。
【カンナ】「あーごめんめん、違う違う。どうして士官学校に入ろうって思ったのか、ってことよ」
【オリト】「あ、そういうことですね」

それを聞いたオリトは、こう答えた。
【オリト】「俺みたいなスラム育ちには、勉強ができても士官学校ぐらいしか選択肢がないですし…今の時代、いい学校はそれに見合ったいいお金を払わないと入れないんですよ」
【カンナ】「確かにね…」
カンナはそれを頷きながら聞いていた。

そこで、今度はオリトがこう返す。
【オリト】「艦長さんは、どうしてですか?」
【カンナ】「えっ!?」
予想していなかった『逆質問』に、思わず聞き返すカンナ。
【オリト】「あ、えっと…艦長さんのご実家は政治家一家ですよね?士官学校じゃなくて普通の学校でそういうことを勉強するっていう選択肢もあったんじゃないのかな、って…」
そうオリトが説明する。確かにカンナの父親は同盟では有力な国民議会議員であり、他の家族もほぼ全員が政治家であることで有名である。カンナも当然、将来はそういう道に進むのだろうと、少なくとも周囲は思っている。
【カンナ】「あー、それね」

カンナはそれを聞き、こうつぶやいた。
【カンナ】「そうね…確かにそうする選択肢もあったかも知れないわね…」

そして、少し考えて、こう説明した。
【カンナ】「小さい頃から、つまらない大人の都合で国ごと振り回されるのを散々見てきたから…ならいっそ、自分の手でこの戦争を終わらせてみたい、って思っちゃったのよ」
【オリト】「なるほど…」
【カンナ】「ま、つまりはただの反抗期ってやつかしらね。家族みたいに政治の力じゃなくて、自分は実力でみんなの役に立ちたいって。…結局、血は争えそうにないけどね」
そう言い、カンナは苦笑いした。


それからしばらく、カンナとオリトはブリッジから、何もない外の景色を眺めていた。超光速航行中なので、外は星空もなくただ漆黒が広がるのみである。

そして、ふとオリトが思い出したようにこうつぶやいた。
【オリト】「あ、そうだ。もう1つ、ここにいる理由があるんです」
【カンナ】「何かしら?」
【オリト】「これは半分後付けなんですけど…士官学校に入るって決まった時に、すごくスラムのみんなから祝福してもらえて。そんなみんなの希望になれたら、って思うんです」
【カンナ】「へぇ、素晴らしいじゃない!後付け結構よ!」
カンナがそう笑顔で返す。
【オリト】「いや、そんな大したものじゃ…」
【カンナ】「ううん、後付けでも何でも、そういう思いを持ってるのはいいことよ。結局自分のことしか考えてないあたしとは大違いよ」

カンナはそう言い、こう続けた。
【カンナ】「これからクロスバードがどうなるか分からないけど…将来もし何かあった時は遠慮なく頼ってくれていいわ。もちろん、あたしにできることには限りがあるし、そもそも誰かに頼られるほど人間出来てないけど…それでも、オリト君の助けになりたいから」
【オリト】「そ、そんな…ありがとうございます」
オリトは遠慮がちに一礼した。


【カンナ】「…あ、そうだ!もう1つ頼みたいことがあるんだけど…いいかしら?」
改めてカンナがそう尋ねる。
【オリト】「いいですけど…何でしょう?」
【カンナ】「ちょっと言いにくいんだけど…」
そこまで言って、カンナが少し口ごもるが、こう続けた。

【カンナ】「艦長室の掃除…頼めるかしら?」
【オリト】「艦長室…ですか?」
思わず聞き返すオリト。そう、クロスバードに迷い込んだ時に最初にカンナと話した、あの散らかった艦長室である。
【カンナ】「ええ…さすがにいい加減片付けようってずっと思ってたんだけど、こんな状況になっちゃったでしょ?…やるにやれなくなっちゃって…」
そう説明するカンナ。しかし、要するに面倒事の押しつけである。
【オリト】「わ、分かりました…」
オリトは安請け合いするんじゃなかった、と内心思いつつ、渋々承諾することにした。
引用なし
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