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タマゴガーデン だーく 19/12/28(土) 23:55
だーく 19/12/28(土) 23:57
だーく 19/12/28(土) 23:58
だーく 19/12/28(土) 23:59
だーく 19/12/28(土) 23:59
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タマゴガーデン
 だーく  - 19/12/28(土) 23:55 -
  
ガーデンには、タマゴと、チャオと、カオスと、ジャムがある。
引用なし
パスワード
<Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko...@110-130-148-177.rev.home.ne.jp>

 だーく  - 19/12/28(土) 23:57 -
  
 ベベスは激怒した。キレベベスだ。
 タマゴが何も答えてくれなかったからだ。タマゴが何も答えてくれなかったのだから、ベベスがキレベベスになるのもしょうがなかった。
 ガーデンができたときから、ベベスはガーデンにいた。ベベスはガーデンに一人でただ佇んでいた。ガーデンの支配者だった。
 タマゴはベベスが転生したときに生まれた。繭の中からベベスと出てきた。
 ベベスはタマゴのことが好きだった。丸々としたフォルム、完成度の高い不規則な模様、気温によって温かくなったり冷たくなったりする生命感、突然生まれてきそうなほどの鼓動。ベベスはそれらが全部ベベスのためのもののように感じていた。
 ベベスは転生してちょっと進化していた。腕をフンっすると力こぶができるようになっていた。ベベスはタマゴにフンっしていた。
 ベベスはフンっをひとしきりしたら、キレベベスになった。この時ベベスは、この退屈を打破することを誓ったのだった。


 ベベスがまた転生した。繭の中からはまたタマゴと、ちょっと進化したベベスが出てきた。今度はフンっするとケツから火が出るようにもなっていた。
 今度のタマゴは孵った。白いやつが生まれた。ベベスは白いやつにジジスと名付けた。
 ジジスはベベスのことが好きだった。いつも世話をしてくれるし、自分のことに興味を持ってくれる。ジジスはベベスにその愛を伝えたいと思うようになっていた。
 ジジスはタマゴのことも好きだった。ベベスがタマゴのことが好きということを体いっぱいに表現するものだから、気づいたらジジスもタマゴのことが好きになっていた。ベベスが好きなものを好きになれて、ジジスは嬉しかった。
 ベベスもジジスのことが好きだった。よくタマゴも交えて一緒に遊んだ。タマゴをひたすら撫でたり、ポコポコ叩いたり、池に入ったりした。ブームはタマゴを間に、ボールを手で打ち合うことだった。ルールなんてものもなかった。
 ある日、いつものようにベベスとジジスがボールを打ち合っていると、ベベスが打った球がタマゴに当たった。タマゴはコロコロ転がって、池に落ちた。ジジスはタマゴのことが心配で悲しんでいたが、ベベスは池に落ちたタマゴを見て爆笑していた。
 ジジスは激怒した。キレジジスだ。
 キレジジスはベベスを激しく咎めた。ポヨをムカマークにして地面を踏み鳴らした。実際には芝生がパサパサと音を立てる程度だったが、その怒りはベベスにも伝わった。
 ベベスはキレジジスをなだめようと、池に飛び込んでタマゴを取ってきた。変わらず生命感を放っているタマゴをキレジジスに触らせて、問題がないことをアピールした。しかし、キレジジスはの怒りは収まらなかった。もうキレジジスですらもなんで自分が怒っているのか分かっていなかった。
 ベベスはめげずに、ほら見てみて〜と言わんばかりにケツから火を噴いて、場を和ませようとした。しかし、キレジジスは挑発されたように感じ、ベベスに対抗すべくケツを向けた。
 キレジジスはケツを向けたところで何もできないことに気づいたが、一度ケツを向けてしまったので引っ込みがつかず、なんでもいいのでケツから出てこいと踏ん張り続けた。
 するとキレジジスはケツから血を噴き出した。キレジ・キレジジスは、このあと一日中ベベスに看病してもらうこととなった。


 ベベスとジジスは同時期に転生した。ベベスもジジスも繭の中からタマゴと出てきた。タマゴはこれで三つになったが、ベベスと一緒に出てきたタマゴはすぐに孵ったので、結局二つだ。
 新しく生まれたやつは青かった。ベベスは青いやつにペペスと名付けた。
 ベベスとジジスはちょっと進化していた。ベベスはフンっすると角が生えるようになったし、ジジスはベベスをなでなでするのが上手になっていた。
 ペペスは優秀だった。ベベスとジジスが木の実の取り合いをしているのを見て、木の実が足りていないことにすぐに気づいた。ペペスは木の実から種を取り出し、数個だけ植えて、ガーデンに木を増やした。ベベスもそれを見て、種をガーデンに植えて木を増やし、それを見たジジスも種を植えた。
 ガーデンは三匹が満足するのに適正な数の実ができるようになった。
 ベベスとジジスはペペスに感謝した。お礼にジジスはベベスをなでなでし、ベベスはケツから噴いた火をペペスに浴びせた。
 ペペスには自分のタマゴがなかったので、ベベスのタマゴとジジスのタマゴに興味津々だった。いつまで経っても生まれないし、ベベスが撫でたり揺すったり抱きしめたり火を浴びせたりしても反応を見せない。ペペスはベベスに手伝ってもらって、色々なことを試した。
 ペペスの好奇心はそれだけに留まらず、ガーデンの滝の裏の洞窟にも向いていた。ガーデンの滝の裏の洞窟はすぐに行き止まりだったが、ペペスはそこに可能性を感じていた。


 三匹はやはり同時期に転生した。三匹とも繭の中からタマゴと出てきた。ベベスと出てきたタマゴはまたすぐに孵った。
 新しく生まれたやつは緑だった。ベベスは緑のやつにガチモリと名付けた。
 ジジスと一緒に出てきたタマゴも孵った。中から出てきたのはチャオではなく、一見繭にも見える水色の何かだった。ペペスが恐る恐る触ると、それはジャムだった。ペペスが手についたジャムを舐めると、クセのある味がした。
 ベベスとジジスも舐めたかったが、ペペスがジャムに興味津々だったので邪魔をしてはいけないと思い、やめておいた。ジジスは代わりにベベスを舐めた。
 ペペスと一緒に出てきたタマゴは孵らなかった。やはり、一回目の転生で生まれたタマゴは孵らないのだった。
 ペペスは自分のタマゴができて嬉しがった。
 ガチモリはベベスとジジスと一緒に遊ぶことが多かったが、ペペスがジャムやタマゴを観察したり木を植えたり洞窟に入っていったりするのを見て、羨望を抱いていた。
 ある日、滝の裏に向かっていったペペスを見て、こっそりとガチモリもついていった。ベベスとジジスもそれ見て面白がって、ガチモリと一緒にペペスの後をつけることにした。
 ガチモリは明らかにガーデンとは違う洞窟の中の光景にワクワクしていた。ガチモリがキョロキョロしながら洞窟を進むと、右手側に丁度よく腰掛けられそうなソファのような形をした大きな岩があった。ガチモリがその運命的な出会いに感動しているのを見て、ベベスはその岩にミライという名前を付けた。
 ペペスは洞窟の最深部に立ち、壁を見上げていた。もう外の光も届きづらく、三匹の目にはペペスの輪郭が薄らとしか確認できなかった。
 こんなところで何をするんだろう、とガチモリがペペスの後ろ姿を見ていると、突然その輪郭が明確に浮き上がり、ペペスは真っ黒なシルエットと化した。
 ペペスの前に、突然明るい文字列が浮かび上がったのだった。文字列はどんどん増えていく。ペペスの腕が動いているところを見ると、ペペスが打ち込んでいる文字列のようだった。三匹は文字の読み書きができないので、それがどういう内容のものなのかはわからなかった。
 ペペスの腕が止まったと思うと、文字列は霧散し、また真っ暗になった。急に暗くなったので、三匹は目が慣れず先ほどよりも深い暗闇の中にいた。その暗闇の中で、二匹は砂が擦れるような音を聞いた。
 しばらく経って、慣れてきた目に飛び込んできたのは、洞窟の壁を触れもせず分解していくペペスの後ろ姿だった。


 四匹が転生する頃には、洞窟の奥にレース場とカラテ場を発見していた。
 ペペスの仕事は早かった。転生して手に入れた能力、"分解"と"再構築"は非常に優れていた。サイズや種類に制限はあるが、物質を分解し、別の形に再構築できるものだった。
 洞窟の奥の壁をペペスが分解し、さらに再構築した大量の岩のツルハシで三匹が掘り進めると、レース場とカラテ場と開通したのだった。なぜそんなものがあるのか誰もわからなかったが、ガーデンのものなんてすべてそんなものだと思って納得した。
 ベベスとジジス、ガチモリはよくレースをした。レースではガチモリが一番速かった。レースで負けるのが面白くないベベスが、カラテでガチモリを殴り倒していた。ジジスはほとんど負けていたが、嬉しそうにベベスに抱きついていた。ペペスはそれを微笑みながら見ているのだった。
 例のごとく、タマゴが増えて、チャオが増えて、ジャムが増えた。今度のジャムは、ジジスとペペスが転生してできたタマゴから出てきたものだ。ベベスを除いて、二回目以降の転生で出てきたタマゴからはジャムが出てくるのだ。
 一個目のジャムは形が崩れてきていた。徐々にガーデンの土に吸われているようだった。ベベスとジジスはジャムが食べる前になくなってしまうのではないかと危惧していたが、三回目以降の転生でもジャムが生まれることがわかったし、チャオが増えれば増えるほどジャムも増えるということがわかったので、一個目のジャムにそれほど執着せずに済んだ。
 ガーデンの支配者ベベスは、折角こんなに楽しいレースやカラテができる環境があるのに、その環境を作るのに大きな貢献をしたペペスがレースやカラテを楽しんでいないのはなんだか不公平な気がしていた。
 ベベスはレースにペペスを誘った。ペペスは普通に参加した。ペペスは強かったが、ガチモリには及ばなかった。ベベスといい勝負をするくらいの強さだった。楽しんだ。良かった。
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 だーく  - 19/12/28(土) 23:58 -
  
 ガチモリは激怒した。ガチギレモリだ。
 ガチモリが大切にしていた、洞窟にある岩のミライをペペスが開拓の過程で分解してしまったのだ。ミライが分解されてしまったのだから、ガチモリがガチギレモリになるのもしょうがなかった。
 でも、ペペスがミライを分解してしまうのもしょうがなかった。ガチモリがミライを大切にしているなんて、知らなかったのだ。
 ガチギレモリもそのことを良く理解していた。しかも相手は崇拝するあのペペス様だ。だからガチギレモリの激怒の対象はペペスではなく、こうなってしまった現実に対してだった。
 ガチギレモリは自分がミライを大切にしていることを予めペペスに主張できていたら、とも思った。でも、何もかもが主張されなくてはうまくいかないだなんて、なんで神様はそんな大きな穴のある世界を作ってしまったのだろう。
 ガチギレモリはガーデンの芝生を叩いた。出てくる衝撃波が天まで届き、神様をぶん殴ってくれることを祈って芝生を叩き続けた。でも、芝生を叩いてもジジスの体がちょっと浮くだけで、神様には到底届きそうもなかった。
 そんなこんなをしている内に、ガチギレモリは拳を負傷し、寝込んでしまった。光があると眩しくて辛いので、洞窟の中で寝込んだ。ガチヒキコモリだ。
 ある日、ガチヒキコモリは夢を見た。夢はいつも見ているのだが、その日初めてガーデン以外の場所が舞台になった夢を見た。
 そこは、ガーデンとは違って果てがなく、すべてのものが目まぐるしく変化する世界だった。建物は伸びたり縮んだりして、乗り物が高速で動いていて、チャオがいっぱいいた。
 ガチヒキコモリは空からそれを見下ろしていた。多すぎる情報量に圧倒されながらも気絶に至らなかったのは、その世界の中に放り込まれるのではなく上から見下ろすだけで済んでいたからであった。
 ガチヒキコモリは建物の屋上にペペスを見つけた。ペペスは例の文字列を周囲に展開し、何かを打ち込んでいた。まるで、この世界の変化を操っているようであった。
 ガチヒキコモリの尊敬が念が体中を駆け回り、くすぐったさを覚えたところでガチヒキコモリは目を覚ました。ジジスがガチヒキコモリの頭を撫でていた。隣にベベスがいた。ベベスは木の実を一口サイズにちぎっていた。いつもベベスは木の実をちぎって、寝込んだガチヒキコモリの隣にいた。
 今日は何やら様子が違った。ベベスがニヤニヤしていた。ガチヒキコモリの違和感は、ベベスの顔だけではない。背中に何かある。
 起き上がったガチヒキコモリが自分が寝ていたところを確認すると、そこにはミライがあった。ペペスが再構築してくれていたのだった。
 ガチヒキコモリは、ゲンキモリモリになった。


 ガーデンのチャオが八匹を超えた頃、一個目のジャムが完全にガーデンの土へ染み込んだ。
 それまで何ともなかったガーデンの一角が白く染まった。
 それからしばらく、ペペスがその一角に入り浸った。ペペスはその一角の草が土に分解を試みたが、分解と構築の影響を受けなかった。物理的な接触も試みたが、草が枯れることも、土がえぐれることもなかった。ベベスがケツから火を噴いても、燃えなかった。
 そんなことをしている間に、次々とジャムがガーデンに染み込んでいった。色々な色にガーデンのいたるところが染まった。
 ガーデンが変化していくのを、彼らは喜んだ。日常に於ける大きな楽しみができたのだった。


 ガーデンはカオスだった。
 色は混ざり合い、元々何色であったのかもわからない状態だった。それだけチャオも増え、タマゴも増え、ジャムも増えた。レース会場はペペス以外のチャオの手によってもさらにアップデートされ、たくさんのチャオが一度にレースできるようになっていた。カラテは一部のチャオ達が極度に好む遊びと化していた。
 チャオ達は幸せだった。特にベベスは、たくさんのチャオ達と触れ合うことを何よりも幸せと感じていた。チャオ達もベベスのことが大好きで、ベベスがいるところには笑いが絶えなかった。そして、そんなベベスを見ているジジスも幸せなのだった。
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 だーく  - 19/12/28(土) 23:59 -
  
 ある日、チャオレースを終えた黒いチャオが洞窟から外に向かう途中で、疲れた体を休めようとミライに寄りかかった。ミライがガチモリのものであるということを知っているチャオは多かったが、最近はチャオが多くなりすぎてうまく情報が伝わっていないものもいた。黒いチャオはミライのことを知らなかったのだ。
 黒いチャオはちょっと休憩したらガーデンに戻ってベベス達と遊ぼうと思っていた。でも、あまりにもミライの寝心地が良く、黒いチャオはうっかり眠ってしまった。
 黒いチャオは夢を見た。ガーデンとは比べ物にならないスピードで変化していく、とてつもなく広い世界の夢だ。その世界にはたくさんのチャオがいて、様々な色や形をしていた。自分たちの知らないモノを身につけているものも数多くいた。何もかもが大きく動いている。黒いチャオはそう思った。
 黒いチャオは目を覚ました。夢自体は短かったように思うが、洞窟を出ると辺りは暗くなっていて、ガーデンは寝静まっていた。レースが終わったのが夕方くらいだったので、黒いチャオが思ったよりも時間は経っていた。
 黒いチャオはこの感動をすぐに誰かと共有したかった。でもみんな寝ていたので、黒いチャオは諦めて寝ることにした。ガーデンには滝の音しかなかった。いつもより大きく聞こえる滝の音が意識を支配して、黒いチャオはなかなか眠れなかった。


 ミライの上で眠ったときに見た夢が凄かった、が、ミライの上で眠ると凄い夢が見られる、へ変化し、ガーデンの中を広まっていくのにそう時間は掛からなかった。
 ガチモリのもとにチャオ達が殺到し、その誰もがミライを貸してほしいとガチモリに頼んだ。ガチモリは何もわからなかった。貸すことで自分が実際的なデメリットを被ることなんてないということも、自分が貸すことをどこか躊躇っているということも、ペペスが積極的に行なってきた他者へ影響を与えるという機会が今自分のもとにも訪れているということも。
 困っているガチモリを見て、ベベスが動いた。とりあえず、みんな眠るのは一日一回夜だけだから、ということでミライの貸出しを一日につき一匹に限定した。それとペペスに頼んで、ミライがいつもの場所から持ち出せないよう洞窟に固定した。順番はレースの順位で決めた。
 それから毎日、一匹ずつチャオがミライの上で眠ることとなった。一匹目の赤いチャオは、夢を見るのが楽しみ過ぎて興奮して眠れなかった。朝、洞窟を出た赤いチャオの元に他のチャオ達が殺到したが、赤いチャオは悔しそうに眠れなかったことを伝え、ガーデンで爆睡した。
 そんな事件もあったりしたが、基本的にみんなあの夢を見ることができた。中には興味を示さないものもいたが、チャオ達はあの夢に意識を奪われていた。
 しかし、わからないことが多すぎて語ることはできなかった。それが逆に、気持ちの昇華を妨げていた。チャオ達は文字通り夢心地で日々を過ごすこととなったのだった。
 ガチモリは居心地が悪かった。自分と運命的な出会いを果たしたものが、自分でないものと運命を共にし始めたときの無力感と言ったらなかった。ミライはあのとき分解されたままでいるべきだった、と思った。


 ペペスがカオスチャオになった。
 ペペスの分解と再構築の能力はもう上がりきらないところまできていた。レース場のコースを変えることもできたし、ガーデンの岩場をアスレチックにすることもできた。そんなペペスでも、ガーデンを染めたカオスを変えることはできない。いつか変えられる時が来るのではないかとみんなは思っていたが、ペペスはカオスチャオになった。
 その頃ベベスは、フンっすると頭が三つになるようになっていた。だからベベスは相変わらず人気だった。
 ベベスがミライに興味を全く示さなかったので、ジジスもミライに全く興味がなかった。ジジスはベベスに音速で頬ずりができるようになっていた。
 ガチモリはレースを頑張っていた。一位になったことはなかったけど、ガチモリはいつも上位だった。レースをしていないときは、ベベスとジジスのところにいた。
 他のチャオ達は、思い思いに駆けたり飛んだり泳いだり登ったりしていたが、心はミライの中にあった。
 そんなある日、ペペスがガーデンからいなくなった。


 ガーデンは動き続けていた。誰も誰かがいなくなるなんて思っていなかったけど、誰かがいなくならないとも思っていなかった。だからチャオ達は、いつも通りに生活をしていた。
 ベベスとジジスとガチモリは、悲しんだ。ペペスがいなくなったこともそうだが、自分達にとって大事なものがなくなっても誰も悲しまないことが悲しかった。理解よりも冷たい実感が三匹を刺していた。
 三匹はひたすらペペスを探したが、ペペスが初めて転生したときに生まれたタマゴが割れていたのを見つけただけだった。
 また、チャオがカオスチャオへ進化した。それを珍しがる暇もなく、同時期に転生をしたチャオ達が次々とカオスチャオへと進化した。そして漏れなく彼らはいなくなり、気付いた頃にはタマゴが割れていた。ガーデンの日常に、確かな変化が訪れていた。
 ガチモリはレースで一位になっていた。自分よりも速いチャオがいなくなったからだった。彼らがいなくなったことによって、ミライが自分のもとに戻ってくることも多くなった。でもガチモリは走ることをやめることはできなかったし、ミライの上で眠ることもできなかった。
 ジジスはベベスをなでなでし続けていた。でも、ベベスはちょっとずつ元気がなくなっていた。だから、ジジスもちょっとずつ元気がなくなっていた。
 いっぱいだったガーデンは、チャオ達が動きやすいくらいには空いた。ガーデンを染めるカオスだけがやたらと充実していた。
 

 ベベスが死んだ。
 次々とチャオがひっそりいなくなっていく中、べベスははっきりと死んだ。灰色の繭に包まれて死んだ。
 ジジスは愛する相手がいなくなって、声をあげて泣いた。ガーデンのチャオ達は悲しいということがどういうことなのか知らなかった。チャオ達は、泣いているジジスを見て悲しみを知った。自分達はベベスを失ったのだ。
 ガチモリは激怒した。ベベスを失ったことはもちろん悲しい。でも、ペペスがいなくなったときに、なんで誰も悲しまなかったのだ。あんなにも自分達の日常を豊かにしてくれたペペスに、なんで誰も感謝しなかったのだ。
 でも、ガチモリにそんなことを言える相手はいなかった。ガチモリはペペスの後ろをくっついているとき以外は、ベベスとジジスのところにいた。そのジジスもベベスが死んで悲しんでいる最中だというのに、ペペスのときはなんでみんな、なんて言ってしまったら、ジジスにとって自分もそのみんなのように見えてしまうだろうと思った。
 ガーデンでは急激にカオスチャオになるチャオが増えた。そして、彼らは全員いなくなった。
 ガチモリが見たいものなんてガーデンにはなくなっていた。ガチモリはミライの上でひたすら眠った。眠くなくても眠った。
 ペペスが世界を操っていた。夢の中でも、ペペスはカオスチャオだった。ガチモリはペペスに帰ってきて欲しかった。ガーデンを変えて欲しかった。でも、カオスチャオはガーデンにいられないということを、ガチモリは理解し始めていた。
 つまり、それは、どういうことかというと、ガーデンを変えられるのは、自分達だけだということだった。
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 だーく  - 19/12/28(土) 23:59 -
  
 ガチモリはジャムを食べた。
 チャオ達がカオスチャオになっていくのは、ガーデンがカオスに染まっているからだと考えたのだった。チャオ達が減り、ベベスもいない今、ジャムの増加は落ち着いている。ジャムを食べきってしまえば、ガーデンがジャムを飲み込むことはない。
 ガチモリが食べたのは自身のジャムだった。鼻の奥に広がるようなクセのある味と、その割にあっさりとした喉越しと清涼感。そして、その後に訪れる喪失感。この喪失感が、自分のものなのか、ジャムが持つ中毒性であるのか、ガチモリにはわからなかった。
 ガチモリがジャムを食べているのを見た他のチャオ達もジャムを食べ始めた。ジャムを食べることは、ガーデンでは禁忌であった。誰かが言い出したわけではなかったけど、ペペスがジャムを観察し始めた頃から触れてはいけないようであったし、ジャムがガーデンに染み込んでガーデンが変化するようになってからは、より神聖なもののように扱われた。ガチモリがその沈黙を打ち破ったことにより、他のチャオ達も欲求の赴くままにジャムに食らいついた。
 ガチモリは、なんだかよくわからないがジャムを一緒に食べるチャオ達が増えて、安心した。彼らはまだ生きている。
 思ったよりジャムは減らなかった。ジャムはチャオ達の体よりも大きく、何よりもすぐに満腹になる。
 だが、次に誰かが転生するまでに、食べきる。そして、ずっと食べ続ける。ガチモリは決意でみなぎった。


 うんこをすると、それはジャムだった。
 ガチモリはショックを受けた。いつも通り便意を感じたのでフンっをしただけだというのに、ケツから出てきたのはあのジャムだった。うんこの形をしたジャム、あるいはジャムの形をしたうんこであればまだ救いはあったのかもしれないが、思い切って齧りついたら、やはりジャムの形をしたジャムだった。
 これではガーデンからジャムが減らない。もうヒキコモルしかないとガチモリが思ったのも束の間、ジャムはガーデンに染み込んでいった。ガチモリは驚いた。タマゴから生まれたジャムより、遥かに早く染み込む。
 ジャムが染み込むと、ガーデンの一角は元のガーデンの色に戻った。ガーデンが新たな一面を見せたのだった。


 ガーデンのカオス化が止まり、あるべき姿へ戻る動きを見せていても、チャオのカオス化は止まらなかった。
 ガーデンに残っているのはもう十匹となったいたが、ケツからジャムをするのはガチモリとジジスだけであった。
 ガチモリは、カオスチャオにならないチャオの共通点を見つけていた。それは、ミライを使っていないということだった。例外は、ガチモリだけであった。
 ガチモリは、おそらくそれは正しいのだろうと思ったが、自分とジジスの共通点まではわからなかった。
 他のチャオ達は、幸せそうに遊んでいた。少なくともガチモリの目にはとてもガーデンを去るようには見えなかった。


 ジジスは激怒した。キレジジスだ。
 タマゴが何も答えてくれなかったからだ。タマゴが何も答えてくれなかったのだから、ジジスがキレジジスになるのもしょうがなかった。
 ガーデンができたときから、ベベスはガーデンにいた。ベベスはガーデンに一人でただ佇んでいた。ガーデンの支配者だった。
 でもベベスは死んで、タマゴだけが残された。
 ジジスはベベスが死んでから、ベベスの代わりにガーデンの支配者になろうとしていた。ガーデンの木々を管理したり、うんこを掃除したり、良いことをしたチャオをなでなでしてあげたり、悪いことをしたチャオを諭してあげたり、みんなが幸せになれるような活動をした。
 そしてベベスのタマゴをなでなでし続けていた。転生を重ね、進化し続けたベベスの本気のなでなでは、それはもう愛に溢れるものであった。相手がチャオであったらキュン死では済まない。
 ジジスはガーデンを支配した自分の力が、タマゴに作用してくれることを祈っていた。
 そんなジジスのなでなでにも、タマゴは何も答えないのだった。
 キレジジスは怒るのに疲れると、今度は泣いた。泣いたあとは眠る。そんな日々だった。
 そんなジジスが気付いた頃には、ガーデンは元の姿をかなり取り戻していた。
 ジジスはガチモリにペペスの姿を重ねた。あんなにペペスの後ろをちょろちょろしていたガチモリが、ペペスのように写るなんて不思議だった。
 でもそれは、ガチモリもいなくなってしまうのではないかという不安を掻き立てた。
 ガチモリがいなくなってしまったら、とジジスは周りを見た。そこにいるのは八匹のチャオ達だった。
 彼らはベベスと仲がよく、同時にベベスと一緒にいたジジスとも仲が良かった。
 そこにベベスがいないことは許せなかったが、残っているのが彼らで良かった、とジジスは思った。


 遂にジャムがなくなり、ガーデンが完全に元の姿を取り戻したとき、ベベスのタマゴからベベスが生まれた。
 その頃にはチャオはジジス、ガチモリの二匹だけとなっていた。
 ジジスとガチモリはベベスとの再会を喜んだ。特にジジスは、ベベスの体がツヤツヤになるぐらいなでなでした。
 でも、三匹とも、これが最後だということを理解していた。
 ガーデンの支配者であるベベスも、ガーデンのあるべき姿が変わったことを確認した。これでもう、ガーデンにタマゴは残らない。
 ガチモリにもうできることはない。ジジスは、ベベスと最後の時を迎えるだけだ。
 三匹のチャオ達は、向かい合ってその時を待った。
「みんな」
 聞いたことのない言語と、聞いたことのない声がガーデンに落ちた。四匹はガーデンを見渡した。ガーデンを囲っていた岩場の一部が扉のように開いていて、そこに誰かが立っていた。
 それは見たことがない生物の姿であったが、それが誰なのか三匹にはすぐにわかった。
 彼はペペスだ。
「良かった。変わりないみたいで」
 ペペスは三匹の頭を順番に撫でた。自然とポヨがハートマークになる。
「他のヤツらは顔出してないの? 薄情だなあ」
 するとおもむろにペペスはケツを出し、フンっした。ペペスのケツからはジャムが出てきて、ガーデンに染み込んでいった。
「たまには栄養を与えないと、ガーデンも生きていられないからね」
 じゃ、またね、と言って、ペペスは颯爽と帰っていった。
 ベベス達は、自分たちが大きな勘違いをしていたことを理解した。


 その夜、ベベスは桃色の繭に包まれ、タマゴになった。次に生まれるかどうかは誰にもわからなかった。
 ジジスはベベスのタマゴと一緒にいることを誓った。それはもうジジスにとって悲しいことではなかった。
 ガチモリは、ガーデンを出て行くことを決意した。もうガーデンでやり残したことはない。でも、することがないということは、何もしてはいけないということではないのだ。ペペスみたいに、颯爽とケツからジャムを発射しに来ても良いのだ。
 ガチモリは自分の体がカオスチャオになっていくのを実感した。そして、一回目の転生で出てくるタマゴが割れる瞬間を、この時初めて見たのだった。
 タマゴの中からはチャオキーが出てきた。これが、このガーデンと外を繋ぐのだ。ガチモリがチャオキーを持つと、ペペスが入ってきた時と同じく、岩場が扉のように開いた。
 ガチモリはガーデンを出て行くときに、一度振り返った。ジジスがベベスのタマゴに寄り添って、転生をしていた。ガチモリはペペスの言葉を真似て、ジャ、マタネ、といい、ケツからジャムを発射してガーデンを後にした。
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感想コーナー
 だーく  - 19/12/29(日) 0:00 -
  
生誕祭は間に合わなかったので自分の生誕祭に投稿しました。

フンっ
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感想です!!!!
 スマッシュ  - 19/12/29(日) 0:27 -
  
なんでこんなものを……??

チヤホヤされるために書く小説だったら絶対書かないような小説を見せられて、最初はそれはもう困惑しました。
言葉遊びはイキイキしているけれども!!

最初はわけのわからない、どうでもいいような変化だったのが、やがて起こる変化起こる変化が一つの方角を向くようになり、それがこのガーデンの終わりを予兆させるところは非常に面白く感じました。

自分でも言っていて意味不明なんですけど、たぶんこれはチャオラーのことを描いた小説なんだと思います。
だってカオスチャオが登場するし、カオスチャオになるとガーデンから出ていっちゃうし。
あと、カオス化していたガーデンが元に戻ろうとしていても、チャオのカオス化は止まらないところとか。

そしてペペスがケツからジャムを出してガーデンに染み込ませ、それが栄養だと言った時、私はこれは完全にチャオラーの小説だと認識したのです!!!
そう!!ペペスは土星さんのことなのだと!!!!!!


俺はなにを言っているんだ?
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Re(1):感想です!!!!
 だーく  - 19/12/29(日) 0:56 -
  
>なんでこんなものを……??

なんでこんなものを……??

>チヤホヤされるために書く小説だったら絶対書かないような小説を見せられて、最初はそれはもう困惑しました。

僕も困惑しながら書いていました。

>
>最初はわけのわからない、どうでもいいような変化だったのが、やがて起こる変化起こる変化が一つの方角を向くようになり、それがこのガーデンの終わりを予兆させるところは非常に面白く感じました。

わけのわからない、どうでもいいような変化をさせている段階では終わりが見えていなかったので、予兆を自分に向けて演出しながら書きました。
もう麻痺していてよくわからないんですけど、面白くなったなら良かったです。

>自分でも言っていて意味不明なんですけど、たぶんこれはチャオラーのことを描いた小説なんだと思います。
>だってカオスチャオが登場するし、カオスチャオになるとガーデンから出ていっちゃうし。
>あと、カオス化していたガーデンが元に戻ろうとしていても、チャオのカオス化は止まらないところとか。

多分そうです。

>そしてペペスがケツからジャムを出してガーデンに染み込ませ、それが栄養だと言った時、私はこれは完全にチャオラーの小説だと認識したのです!!!
>そう!!ペペスは土星さんのことなのだと!!!!!!

それはよくわからない。


感想ありがとうございました。
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