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元号代わりましたね。
折角なんで感想でも書いていきます。
主に、優花ちゃんに着目して書いていこうかと思います。
彼女が欲しかったものは明示されてはいませんが、結局、自分が心を許せる人であったり場所が欲しかったのかもしれませんね。
それは例えば、恋人だったり家族だったりするのかもしれませんが、彼女自身は、はっきりとそこは定義していないように思います。
むしろ、分からない?
実の両親にしても、お母さん、お父さんとは呼ばないんですよね。血がつながっているし、悪い人でないと分かっているけれど、どこか、他人というか……人との距離を掴み損ねている、そういう経験に乏しいともいえるのかもしれません。
ライトカオスチャオは、そんな彼女の元に運命的にやって来ました。
彼女が願ったからなのか、それとも彼(?)が願ったからかは分かりませんが、優花ちゃんにとって、その存在は、自分の人生において何かしら意義があるものだと考えたのは、想像に難くありません。
前述した通り、彼女は自分のありのままを受け入れてくれる場所を求めていると僕は考えています。とすれば、彼(?)の存在は、彼女にとってそんな想いを具現化したものなのかもしれません。
もっと言えば、今ある生活、牧場での暮らしがイコール自分にとっての理想だからこそ、ライトカオスチャオは自分のところにやって来たと考えたのではないでしょうか?
さて、一旦優花ちゃんから、話題を逸らして、他の登場人物について考察すると、皆が皆、色んなことを考えて、人生における選択をしていることが分かります。
義父と母親のテンさんは、事情を考えて事実婚を決めました。一木は進学を目的に牧場を出て自活することを考えています。実の父親である蜻蛉は、今ある家族と過ごすことを選択しました。佐々木君は就職して働くことにしました。
環境を変え、考え方を変え、付き合う人を変え、それぞれがそれぞれの人生に邁進していく中で、彼らの育てていたチャオに、ライトカオスチャオはもたらされたのでしょうか。
答えはノーです。
彼らの元にライトカオスチャオが来ることはありませんでした。
じゃあ、来なかったから、彼らの人生に不利益が有ったかと言えば、きっと無かったことでしょう。
彼らは彼ら自身で人生を選択しています。
その中で、彼らにとっても、安心して心を許せる相手や場所が欲しいと願う瞬間も有るでしょう。ですが、それはチャオに縋らずとも、彼ら自身で手に入れることでしょう。むしろ、だからこそ、彼らは人生を積極的に選択し続けているとも言えます。
一木が莉音に告白して、彼女と過ごすことを選んだように。
その一方で、優花ちゃんは人生の選択を一木達に比べて、ハッキリとしていないような気がします。
今ある環境が自分にとって最善だからと思っている節もあるのでしょうが、それ以上に、人生の選択を自分で出来ない、そもそもやり方が分からない、と言った風にも見えました。
だからこそ、ライトカオスチャオが居なくても『決断』できた佐々木君の姿に眩しさすら覚えてしまう――先ほど、何となく『チャオに縋る』と思わず書いてしまいましたが、まさに優花ちゃんはライトカオスチャオという存在に縋ったのかもしれません。
自分が口にできない願い、行動に移せない想いを、彼女はライトカオスチャオという存在を頼って、発信しようとしたのかもしれません。
……ここで、僕の勝手な考察をするのですが、もしかすると、彼女の元にライトカオスチャオが来たのは、必然では無く、単なる偶然だったのかもしれません。
そう思ったのは、彼(?)の存在が、物語において何も為していないからです。
この物語を書く上で(チャピルさんには大変失礼かもしれませんが)ライトカオスチャオの存在意義はあったでしょうか?
彼がいたことで彼女を待ち受ける現実は変わったでしょうか?
考えれば考えるほど、彼(?)には何もない気がします。
僕がここまで考えるのは、結局ライトカオスチャオという存在が中心であるはずなのに、物語において、彼はどうも主軸から外れている――人と人との物語の隅にたまに顔を覗かせてくるような、そんな存在でしかないように映ったからです。
逆に、居なかった方が、優花ちゃんには良かったのでは、とすら僕は思いました。
牧場での暮らし、彼女の理想的な人間関係は、一木が街を去ることで瓦解しつつありました。熊本を襲った地震が有ろうがなかろうが、いずれ、優花ちゃんも、自分の中で今の暮らしに区切りをつけて、自分で選択する人生を歩むべきでした。
もし、チャピルさんがライトカオスチャオにならなければ、僕個人としては、優花ちゃんはもう少し、踏ん切りをつけ易かったのではないかと思います。
ライトカオスチャオに私も結局育てることは出来なかった。
残念なことではあります。ですが、同時に、そのおかげで、彼女を取り巻く人たちの現実への向き合い方に、同じ目線で合わせることも出来たのかもしれません。
でも、チャピルさんはライトカオスチャオになってしまいました。
彼女の想いは、悪い方向で、牧場での暮らしに縛り付けられていったのではないでしょうか。
そして、そんな想いをあざ笑うかのように、否応なしに現実は襲い掛かってきます。
自身は牧場と義父を壊し、母を殺し、そして、自分の理想を完膚なきまでに破壊しました。そんな中で、ライトカオスチャオだけは、変わらない姿のまま、自分の胸で光を放ち続けているわけです。
人生が変わるような出来事と、変わらない理想像となったライトカオスチャオの存在のギャップは、優花ちゃんの心を徹底的に痛めつけたのではないでしょうか。
もちろん、悪いのは彼(?)ではありません。
現実が理不尽過ぎました。
そして、そんな理不尽な現実に揉まれる中で、自分自身で立ち上がれない、決断をしなかった、できなかった彼女自身の問題でもありました。
いずれにせよ、被災した優花ちゃんが不幸であることに変わりはなかったでしょう。
ただ、ライトカオスチャオという存在がかつての理想的な空間を思い起こさせて、彼女を苦しめたのは間違いないでしょう。
先ほど、彼女の元にライトカオスチャオが来たのは、必然では無く、単なる偶然だったのかもしれません、と僕が言ったのは、メタ的視点で、彼(?)が不要だからという話だけではありません。
彼女の元に、必然として彼(?)が来たというのであれば、それはあまりにむごい話だ、と僕が考えたからでもあります。
さて、最後に、優花ちゃんは慣れ親しんだ牧場、家を去ります。
一見、バッドエンドのようにも思えますが、僕はこれが最適解だと思いました。ライトカオスチャオという存在に囚われず、最後は自分で決断できた。
その決断の切っ掛けはライトカオスチャオという存在が、自分自身の意思だから、と彼女の内面は語っていますが、それは僕の視点では間違いだと思います。
その決断は、彼女自身のものでしかありません。
良い意味で、僕は最後に彼女と彼(?)の縁が切れたのではないかと思っています。
自分が心を許せる人であったり場所は、他人やチャオに求めるのではなく、自分の力で手に入れるもの。
自分の道は、自分で切り開くものだ!
これこそ、今回の物語の主軸であり、ライトカオスチャオが決して持ちえない、与えてくれることも無い、人間的な意思であると、僕は感じました。
主軸となる感想はここまでです。
以下、傍系の感想をあるがままに書いていきます。
まず、会話がかっぺ過ぎて面白かったです。僕も田舎出身なんで、都会で大学生活をしているときは、よく言われましたよ。
田舎のイントネーションって、本当に独特ですからね。それが自分で気づいていないというのも、また面白かったりするのですが。
一木と莉音は何だか、昭和〜平成初期の恋愛ドラマとかでありそうな展開でしたね。ボーイミーツガールの典型というか。
それとは別に、最後、優花ちゃんのことを二人が二人、彼女のことを分かっている!という態度で臨んでいましたが、結果一木の考えていた通りでしたね。
主人公の優花自身からは見えていなかったのですが、彼女もまた、強い子には違い無かったのでしょうね。血は繋がっていなくても、長年住んでいれば分かることなのかもしれません。
そう思うと、尚更、優花ちゃんはライトカオスチャオという存在に足を引っ張られていたのではないのか、という僕の意見が正しく見えてくるんですよね……(笑)
チャオはウンコしない!
……ライトカオスチャオはウンコ、するんでしたっけ?
それとも、あの光はウンコに含まれるメタン的な何某を使ってエネルギーを得ているから、排せつ不要とか、でしょうか?
そうなると、幻想的なあの光が、一気に俗物めいてくるのでやめて欲しいところですが(笑)
先述した通り、テンさんと母を呼ぶ優花ちゃんは、彼女と何かしらの距離を感じていたとは思いますが、それにしても描写が淡泊だなあと思ったことは事実です。物語の裏では悲しんでいるのかもしれませんが、どうなのでしょう。
ま、亡くなって数週間は悲しむ暇がないほどに忙しいというのは事実ですが。
それとも、彼女の存在も、理想の空間の一部だったのかもしれませんね。そう言う意味では、優花ちゃんの苦しみの中に、彼女の死も含まれていたのかもしれません。
最後に、チャピルさん、いつも掲示板の運営お疲れ様です。
実に3か月遅れの感想になってしまいましたが、今も見てくれているのでしょうか。
正直、僕は自分で小説を書いて読んでもらうことは好きですが、人のを読むのは余り得意ではありません。コーディングの仕事で、コードを書くのは好きだけど、人のコードをリユースするのは苦手、みたいなコーダーいますよね。あんな感じ。
それでも、チャピルさんが力作だといっていた作品を読みたかったので、丁度風邪でダウンしている今日、有給がてら読み進めていました。
雰囲気厨の僕なので、読んでいてとても楽しかったです。
また、週チャオメンバーで会うことはあるのでしょうか。
多分、僕らの間にライトカオスチャオめいた存在は無いと思いますが、……いや、いないからこそ、会おうかという話になれば、案外すんなりとまた会える気がします。僕らの意思次第ですね。
という訳で、また機会がありましたら、会いましょう。
素晴らしい作品をありがとうございました!
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