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ステンドグラス だーく 17/7/11(火) 21:19

十九話 あたしも絶対パス だーく 18/6/6(水) 22:36

十九話 あたしも絶対パス
 だーく  - 18/6/6(水) 22:36 -
  
「私がトロンです」
「ああ、あなたが」
 紹介された住所のところに行くと、黒いかまくらのような建物があった。どうしてこの手の人はドームが好きなのだろう。入口の扉は上半分にガラス窓がついているが、少なくともそこを見る限りでは中に誰かがいるようには見えなかった。
 中に入るとそこはミヨさんの工場とは対照的に白を基調とした空間で、ミヨさんの工場よりかなり小さかった。内側の壁は平らな面で、ドーム状なのは外観だけだった。まるでペットショップに並ぶ犬のように、壁に積まれた肌色のケースの中にモルモット達が見えた。実験に使われるモルモットを見るのは初めてだ。見る人によってはその姿が悲しそうに見えるのかもしれないが、私にはモルモットが普通に飼われているのと何ら変わりないように見えた。中に入ってすぐ右側の空間に研究員と思われる白のヒーローオヨギ、ピンクのヒーローノーマル、グレーのニュートラルノーマルタイプのチャオがいて、白のヒーローオヨギに話しかけたところ、彼がトロンさんだった。
「突然押しかけてきて申し訳ございません。ガラスの町のミヨさんにの紹介で伺ったのですが、お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」とロースト。
「えー、どれくらいお時間必要でしょうか?」
「内容次第と言ったところですが、おそらく一時間程度かと思います」
「そうですか。それであれば構わないのですが、三十分ほどお待ち頂けます?」
「ありがとうございます」
 ピンクさんに案内され、多分休憩に使っているのであろう、隅のすりガラスの仕切りで一面だけ隠された空間に案内された。このガラスもミヨさんが作ったのだろうか。その仕切られた空間には、イス取りゲームのように四つのソファがそれぞれ外側を向くように置かれており、そこに座らされた。四つの椅子の真ん中には大きな植木鉢があって、私たちよりも少し背の高い木が植えられていた。バスターでは大体向かい合って座るので、四人で座ったときにお互いの顔が見えないのは不思議と緊張する。
「このカオスドライブ、実際のところどうなんだろうな」
 右隣のローストが防具の左肩の辺りのポケットを指して言う。そこにはさっきミヨさんのところで引き取ったカオスドライブが入っている。
「カオスドライブの効果に個体差があるなんて聞いたこともないが、見た目は強そうだよな」
「試しにバード使ってみる?」と私。
「さすがに二つ目はなあ」とバード。
 バードはヒコウタイプだけど、使ったカオスドライブは黄色だ。体や羽が丈夫で、空中で攻撃を受けてもずっと空中で対抗できる力がある。試しに私がバードと手合わせしたときはバードはずっと空中から銃を撃ってきた。それに対して私は地上からナイフや銃弾を投げて対抗し、その根比べで私が勝った。
「でも、もし俺がこれ使ってフェニーより飛ぶの速くなったら、そうなのかもね」
「さすがにやめておいた方がいいよ。もうバードもカオスドライブ使ってから長いでしょう?」と木の向こう側からテーラ。
「使わないよ。あんまり無駄に能力使ってないからまだそんなに体には来てないけど、わざわざ制限増やすようなことしたくないな」
「制限、って本当にその通りだよね。世間的には何でもできるようになる、くらいのイメージありそうだけど」とテーラはぶっきらぼうに言う。経験上、彼女はきっと不機嫌そうな顔をしている。「あたしも絶対パス」
「なんか外れてる気がするけど、フェニーはもしかしたらもう体が限界なのかもな」とロースト。
「そう? 突然すぎじゃない?」とテーラ。
 テーラの言う通り、カオスドライブの副作用は徐々に表れる。衰えていく、という表現が一番しっくりくる。老化に近いものを感じさせるくらいだ。実際、高い能力を発揮し続けていた体からカオスドライブの力が抜けていき、能力を発揮できなくなっていく。でも脳が掛けなければいけないブレーキも壊れているから、壊れかけた体にさらなる負荷を掛け続ける。そうしてカオスドライブの使用者は身を滅ぼしていく。
「うーん、そうとも思えるんだけど、フェニーは長距離をかなりの速さで飛ぶことが多かったから、想定以上に負荷が大きかったようにも思うんだよ」
 バスターのメンバーは既に数え切れないくらい入れ替わっていると聞いた。私はメンバーが入れ替わるときに立ち会ったことがないから、ローストとテーラがどんなイメージを共有して話しているのかわからない。
「そうなのかな、聞いたことはないけど」とテーラ。
「なくはないと思うけど、テーラの言うとおり前例は聞いたことがないね」とバード。
「そうなんだよな、そう。なくはない、くらいだ」とロースト。


「ああ、確かに最近異常です。具体的に言うと、一年と二日前からですね」
 トロンはそう言うと卓上カレンダーを見て、今年のその日を指した。そこには赤丸がつけてあった。
「私が最初にその事例にぶつかったときは、えー、簡単に言うとカオスエレメントを半分取り出したモルモットにどのような変化が起こるのか、という実験を行ったときでした。通常、モルモットからは青のエレメントを採取することができますが、その際に採取されたエレメントは黄色でした。私たちは驚いてね、当初の目的を放って他のモルモットからもエレメントを採取しました。結果は、バラバラです。青のエレメントを持つものもいましたが、他の色のエレメントとおおよそ同じ程度の割合でした。結構なサンプルを取りましたが、取れば取るほど平均化していきました。規則性なんてものはまったく見られず、正直何が原因なのか、今でもわかっていません。今となってはエレメントはそういうもの、程度の認識になってしまうくらい当たり前のこととなってしまいました。一昨日が丁度その日から一年でしたから、あまり期待はせずに実験をしましたが、案の定何もわからず。そして、今日に至っています」
「そうですか。教えて頂きありがとうございます」とロースト。「ただ、何者かの悪意が働いていないことがわかっただけでもバスターとしては安堵しました」
「悪意、ですか。エレメントの在り方に影響を及ぼす悪意というものがあるとすれば、それは神か悪魔のものかもしれませんね」
 ローストは驚いた表情を見せた。
「失礼でしたら申し訳ないのですが、生物学者の口から神とか悪魔とかそういった言葉が出てくるとは思いませんでした」
「いえいえ、私は信じていませんよ。エレメントの在り方に影響を及ぼす悪意なんてものはない、という意味です」
「なるほど。解釈が及びませんでした」
 外に出ようと扉の前に立つと、外で雨が降っていることに気が付いた。
「そういえば」とロースト。
「カオスドライブの副作用の症状が突然表れるケースって、あるのでしょうか」
「ありませんよ。神や悪魔がいなければ、ですが」
「なるほど。解釈が及びませんでした」
引用なし
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