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チャオ・ウォーカー -The princess of chao- スマッシュ 12/12/9(日) 3:14

09 世界の進む道 スマッシュ 12/12/23(日) 0:01

09 世界の進む道
 スマッシュ  - 12/12/23(日) 0:01 -
  
「いいんですか?今なら引き返せますよ」
 カオスコントロールの準備ができて、雪奈はそう優に問いかけた。誘う時は軽かったのに今更だ、と優は思った。
「行くよ」と返す。しかしそれだけでは言葉が足りないような気がした。「人類の発展が素晴らしいっていうのはわかるけど、僕はチャオと遊びたいし、庭瀬さんとも人間同士として仲良くしたい。僕は今の世界が嫌だよ。僕がそうしてもいいのなら、僕は世界の進む道を変えたい」
 こんな時でも僕というのが治らなかった。けれどどうでもいいようにも思えた。大事なのは今言ったことなのだから、と優は自分を肯定する。
「知ってました」と雪奈は言った。「CHAO-Sを通じて、嫌だって思ってるのが少しだけ伝わっていました。でも、嬉しいです。ちゃんと言葉で聞くことができて。一緒に戦ってくれると言ってくれて」
 雪奈は頭を下げた。髪は根元まで真っ白である。意図的にそうされた髪は珍しいもののままなのだろう。それが少しだけ可哀想だと優は思った。顔を上げた雪奈は、
「凄く大事な役目を引き受けてもらいたいんですが、いいですか」と言った。
「わかった。何をすればいい?」
「私の命を預けます。全力で守ってください」
 高校生にはなかなか衝撃的な発言であった。命を懸けないとな、と優は思った。冷静に考えれば命を預けられた以上自分の命がなくなれば彼女の命も危うくなるということなのだが、気分的には命を懸けないと釣り合わないと思ったのであった。
「任せて」
 優はできるだけ格好つけてそう言った。

「それでは作戦の最終確認をします」
 人々の視線が雪奈に集まる。雪奈の左右に優と隼人は並び、百いるかいないかの人々を見ていた。校長先生ってこんな感じで生徒を見ているのだろうか、と優は思った。悪い気分ではなかった。しかし雪奈のように指揮をするのはご免だとも思うのであった。
「皆さんはこちらの中川隼人さんの指揮に従って、チャオウォーカー以外の兵器を壊して回ってください。重要そうな人物を見つけて捕らえるのもお忘れなく」
 雪奈は隼人の方を見て「そこらへんはお願いしますね」と言う。隼人は親指を立てた。
「私と、こちらの彼、末森優君がチャオウォーカーを引き受けます。全部機能停止させるので皆さんは心置きなく暴れてくださいね」
 レジスタンスがざわつく。末森、と言うのが優にも聞こえた。
「あ、苗字同じですけど彼は雅人さんとは関係ありませんよ。でもがっかりしないでくださいね。血筋はなくても実力はありますから」
 雪奈がフォローを入れるとさきほどのざわめきよりも大きな音量で笑いが起きた。優は、血筋はなくてもは余計じゃないかな、と呟いた。笑いが収まるのを待ってから、
「それではいきましょう」と雪奈は言った。場の空気が一気に引き締まった。

「これに乗ってください」
 雪奈はチャオウォーカーのコックピットから優を呼んだ。チャオウォーカーは二機しかなかった。片方がサポートに回るのだろうかと考えながらコックピットに入る。雪奈は椅子に座るよう促す。彼女はその横に立つ。ほとんど空洞に近いために二人入ってもまだ余裕があった。しかしチャオがいなかった。
「あの、チャオがいないんだけど」
「私が端末になります」
 そう言って雪奈は優の右腕を掴んだ。試してみると、いつものようにチャオウォーカーの視点になることができた。
「私は他にやることがあるので、操縦はお任せします。相手を倒すことよりも撃墜されないことを優先してください」
「了解」
 そういう意図のカスタムなのだろう。チャオウォーカーの右腕には盾がありながら、バリアも搭載されていた。ないよりかはましな車輪もある。
「ではカオスコントロールします」
 雪奈はそう宣言する。末森雅人もカオスコントロールができたらしい。ビデオでそれがヒーローの条件としているとか言っていたよな、と優は思い出す。雪奈はそれに足る能力を持っている。付け加えられたから。

 優のチャオウォーカーは最後列を歩く。その前では隼人のチャオウォーカーを中心として、武装したレジスタンスが走っていた。
「チャオウォーカーが現れるまでは団体行動です。まだ歩くぐらいで大丈夫です。決して前に出すぎないように」
「わかった」
 通信をオンにして、
「皆さんはとにかく壊しまくってください。そうすればチャオウォーカーが飛んできます。夏の虫が飛んで入ってきたら私たちに任せて、中川さんのチャオウォーカーについていってください」と指示をする。
 GUNは無人機も充実している。自動で動く偵察機や戦闘用ロボットを壊していくうちに緊急事態を告げる放送が流れ始めた。
「そろそろ敵さんのカオスコントロールが来ると思います。しばらくここにいましょう」
 雪奈は広い格納庫を戦場として選んだ。そこで念入りにロボットを壊していると、彼女の言う通りにいくつものフラッシュが焚かれてチャオウォーカーが現れた。優が一歩前に出る。前進しようとしたのだが、それを「出すぎないでいいですよ」と雪奈が止める。隼人のチャオウォーカーがすぐに格納庫から逃げ、レジスタンスのメンバーはそれを追いかける。優の目の前には十機のチャオウォーカーがいる。
「これ勝てないと思うんだけど」
「まだもう二十機くらいいますよ。とにかく生き残ることを優先してください。その次に中川さんたちの方へ行かせないことを。倒す必要はありませんから」
「それだけでもきつい」
 敵のチャオウォーカーは優を囲もうと展開しながら撃ってくる。それをバリアと必死の回避でどうにかする。いつやられてもおかしくない、と優は思う。行動できる範囲が徐々に狭められていく。
「大丈夫ですよ、すぐに落ちます」
 回り込もうとしていた敵のチャオウォーカーのうち一機が転倒した。同じようにもう一機が突如動かなくなりそのまま転がっていく。優には何が起きたのかわからなかったが雪奈の仕業であるとはわかったので、転倒したチャオウォーカーを飛び越えて銃弾を回避する。その間にも銃弾が出なくなったと思ったら推進器も動かなくなって墜落する、というようなことが次々と起こる。なぜか一度動かなくなったチャオウォーカーは二度と動かないようであった。
 何が起きてるか聞きたいけど、とにかく今は生き残る。
 一秒でも長く生き残る。隼人に言われたことを意識して訓練してきた優は「あれは間違いではなかったんだ」と感動を覚えていた。時間が経てば経つほど相手は勝手に動かなくなっていく。攻撃をせずただ防御に専念していればいい。敵が多い点はきついがそれ以外は楽と言えた。優は相手の左腕の銃口が動くのを、扇風機が首を振っているみたいだ、と思いながら見ていた。扇風機はどんどん崩れていく。風が来なくなった。
「それじゃあ次行きましょう」
 雪奈は道案内を始める。
「ねえ、何したの」
「チャオウォーカーはCHAO-Sを利用してパイロットからの命令を受け取ります。私はCHAO-Sの管理人カオスユニットですからコックピットにいる端末にチャオウォーカーへの情報の送信を禁止することができます。そうすれば、チャオウォーカーを動かなくなります。もうハッチも開きませんよ」
「それは怖いなあ」
 全く動かない機械の中に閉じ込められたらトラウマものだろう、と優は思った。雪奈は解説を続ける。
「CHAO-Sは通信速度が遅いので、多くのチャオウォーカーを相手にする時は近付かないと効率が悪いのが欠点ですね。相手がどこにいるかわからないとさらに効率が落ちます」
「あのさ、僕って役に立ってるの?」
「私が操縦するとその分一機ごとにかかる時間が増えてしまうんです」
「なるほど。全力で生き延びます」
「お願いします」
 隼人たちの方へ向かったチャオウォーカーを探して優はチャオウォーカーがぎりぎり通ることのできる通路を走った。思うように身動きが取れない場所で敵と遭遇したら厄介だろう、と考えた矢先に優は敵を見つけてしまった。
「やべ」
 走っていればチャオウォーカーの足音はコックピットの中まで伝わる大きさになる。敵はしっかりとこちらを見て、銃を構えていた。慌てて盾でコックピットを守る。後ろに下がりながら撃ってきた相手はそのまま仰向けに倒れた。
「死んだかと思った」
「油断大敵です」
 通路の先には部屋がある。単独で行動しているとは考えにくい。そうとなると間違いなく残りがそこに潜んでいる。そう考えて優は一旦後退して身を隠すことにした。
「どうしよう」
「たぶんあそこに隠れてますよね」
「だと思う。突っ込む?」
「そんなことしたら死にます。時間はかかりますが、ここからやります。たまに顔を出して敵がいないか確認してください」
「わかった」
 顔を出して、引っ込める。それを何度か繰り返す。しかし敵の姿は見えない。一分経って、
「終わりました。さっきのを含めて五機いました。残りはそのまま進んだんでしょうね」と雪奈は言った。
 優は恐る恐る大部屋に入ってみる。その際通路で倒れていたチャオウォーカーを踏んでいかねばならず、トラウマになってくれるなと優は祈らずにはいられなかった。入ってすぐに左右を見ると四機のチャオウォーカーが捨てられた玩具のように倒れている。傷一つない。戦うからには自分も敵もぼろぼろになるだろうと思っていただけに今の状況が茶番のように思えてきた。
「奇跡って呆気ないんだな」
「段取り踏んでたら大変ですからね」
 優は盾を構えることを意識しながら再び走る。すぐに残りの五機に追いついて、それらを雪奈が倒す。
「これで残り十くらい?」
「そうですね」

 大きな格納庫にチャオウォーカーが一機で待ち構えていた。それだけでも二人には誰が乗っているのかわかったのだが、通信に割り込んでくる。
「待っていたぞ、スノードロップ」
「ご丁寧にどうも」と優が答える。
「ほう、パイロットはあの時の少年か。以前は話にならなかったが、今度はどうかな」
 無駄口を叩いている間に殺してやろうか、と優は思うのだが不意打ちをしたところで勝てる相手ではないとわかっていた。まだやつの域には達していない。それに刺激する必要はない。あいつが喋っている間に終わればいい。そう考えて優は、
「僕だってヒーロー候補だ」と言った。
 自信に溢れた若者を装う。いや、違うな。優は自分のイメージをより正確なものにする。このイメージはまさにそこにいるやつだ。勝気な男。最後に勝つのは自分だと信じて疑わない男。こんなやつにはなりたくないとは思うのだが、だからこそ演技をするのは容易であった。
「お前の方が不利だ。僕の実力が知りたければ乗り越えてみせろ」
「よかろう」
 相手は高揚しているようだが優は全くそうならない。優は冷静に時を待つ。一秒でも戦闘を遅らせるにはどういう言葉を発すればいいのか。
「ごめんなさい」
 小さな声で雪奈が言った。
「あの中、調整チャオがいなくて、変だなと思ったんですけど、いつの間にかあの人自身がカオスユニットになってます。止められません」
「なんだって」
 徹の笑い声が聞こえる。
「これが我が右腕となったリンドウの力だ」
「彼を移植したんですね?」
「その通り。人間の身では不可能でも、機械の身であれば可能なのだ」
「なんてやつだ」
 優が呟くと、ふっと鼻で笑う声が返ってくる。
「やつの言う、正義のため。その行き着く先はここ以外にあるまい。究極生命体の血肉以外にはな」
 優は雪奈を見る。雪奈は首を振った。
「セキュリティの突破ができません」
「わかる、わかるぞ。スノードロップ、貴様の意思が私の心を読もうとしているのがな。しかしカオスユニットのセキュリティだけは突破できまい」
 徹のチャオウォーカーがナイフを展開した。
「さあ少年よ、乗り越えてみせたぞ。貴様の力を見せてもらおうか」
 時間を稼ぐための挑発が何十倍ものプレッシャーになって戻ってくる。洒落になってない、と優は飛び退く。そのまま着地と同時に車輪を動かしてさらに下がりながらアサルトライフルによる射撃を行う。数発はバリアに阻まれ、バリアで防げない分は当然のように当たってくれない。そうなることはわかっていたがいざ現実になると、相手の面倒な攻撃が来ることを意識せねばならず、優は「畜生」と声に出していた。
「どうした、それでは勝てんぞ」
 徹のチャオウォーカーが飛び上がりながら左腕のナイフを折りたたむ。代わりに銃身が出てきた。そういう仕組みの装備があることを優は聞いていたが見るのは初めてだった。十徳ナイフのようにして様々な武器を扱えるようにしている、という表現で聞いたがまさにその通りだと優は思った。アサルトライフルの射撃を避けるべく、足の向きを変えることで滑る方向を変えようとした。しかし次の瞬間、銃弾が優の左腕を貫いていた。バリアを張っていたはずなのに。一秒に一発くらいのペースで撃ってくるのを避けながら優は考える。連射ができない代わりに高威力の弾を撃つ。モードを切り替えられるのか、それともアサルトライフルのやつとは別のそういう銃を展開したのか。どうであれそれによってバリアを貫通してきたのだ。その結論に達した頃には徹の左腕はまたナイフを展開していた。
「さあ向かってこい。本当の究極生命体が誰か、決定しようではないか」
 左腕のアサルトライフルがやられた以上、攻撃をするなら近付かなければならない。致命傷を与えるなら盾で強引に。それとも雪奈がいつかセキュリティを突破してくれると信じて逃げるか。優はどうにかして生き延びることを考えるのに集中していて、究極生命体なんてどうでもいい、などの感想を一切抱いていなかった。
 とにかく逃げる。こちらからは攻めない。攻撃をするのは相手が攻撃してきた時だけ。カウンターでいけ。優はそう自分に命じ、車輪を動かしてバックする。背中の推進器の分相手の方が速いらしい。威嚇ができない状態ではすぐに追いつかれてしまう。互いのバリアが衝突する。一瞬の睨み合い、そして徹はナイフを振るう。盾で受けながら後ろに下がる。少しだけ距離が開いたが相手も食いついてくる。再び互いのバリアは裂け、後退しながらどうにかして盾で刃を防ぐ。互いのバリアがぶつかる時が肝だ、と優は思った。そこで優位に立てれば勝ち目はある。しかし単純に回り込もうにもそれを許してはくれないだろうことも予測できた。
 相手が突っ込んでくる瞬間にバリアの展開をやめる。そしてバリアを盾で受けて消す。消えたらすかさず飛び込んでバリアを展開してひるませて盾をコックピットに突き立てる。その光景を優は描いた。徹のチャオウォーカーが真っ直ぐ突っ込んでくる。
「勝つ。勝ってみせる」
 呟く振りをして雪奈に向けて言う。実行。エネルギーをバリアに割いたまま解除する。盾で見えない壁を受け止める。バリアが破れてお互いの距離がさらに縮まったところで車輪を動かして前進しこちらのバリアを展開する。優はイメージした光景を寸分の狂いなく再現していった。バリアを展開した瞬間優は勝ちを意識した。そのせいか反応が遅れた。何か仕掛けてくると察した徹が左腕のナイフでバリアを破ったために向こうの体勢は崩れず、そのまま優のチャオウォーカーの心臓にナイフを突き刺そうとしているのが見えていても優は回避のことを考えられなかった。しかし頭はとっさに動いた。横に動き、コックピットだけには当たらないようにし、そして盾でコックピットを貫く。そのための動きを全て行おうとしていた。しかしチャオウォーカーの右腕は突き刺す動作の直前で停止して、直進していた機体はそのまま優の機体を巻き込んで転げた。盾が空を切る。
「スノードロップ、貴様」
「私じゃありません。私の親友の力です」
 雪奈はモニターにメッセージを表示させた。真ん中に大きく「助けにきたよん」と書かれている。そして下の方に署名。斉藤由美とキキョウの名前。斉藤由美の下には「今度何かおごれよ」と小さく書いてある。チャオウォーカーのモニターに表示されている斉藤由美という名前が自分の知っている斉藤由美と結びつくまでにしばらく時間のかかった優が、
「どういうこと?」と聞いた。
「CHAO-Sによるハッキングは防げても、心のハッキングは防げません。由美さんのおかげでセキュリティが突破できました」
「心のハッキングって、まさか本当に心を読めるの、彼女」
 雪奈は頷いた。
「ああ、騙された」
 優は叫んだ。驚きより何よりもその言葉が真っ先に浮かんだのであった。的中するわけだ。
「負け、だな。超移動もできん」
 そう呟いた徹はそのまま雪奈に問いかける。
「究極生命体には至れなかったというわけか。では誰がそれなのだ?貴様か、ヒメユリか、それともそこの少年か?」
「いえ。この場にヒーローなんて一人もいなかった。それが答えだと思います」
 徹は、そうか、と呟いたきり何も言わなくなった。
引用なし
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