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チャオ・ウォーカー -The princess of chao- スマッシュ 12/12/9(日) 3:14

08 チャオを助けたい スマッシュ 12/12/23(日) 0:01

08 チャオを助けたい
 スマッシュ  - 12/12/23(日) 0:01 -
  
 優はチャオウォーカーにひたすら乗っていた。
 真田徹の奇襲の後、落ち着きを取り戻してから、僕はどうすればいいんだろう、と優は雪奈に聞いた。すると彼女は、
「私にはよくわかりません。ですが、もし戦う道を選ぶのであれば、チャオウォーカーに乗ってください。末森君が何かを成したいと思った時、チャオウォーカーは力になるはずです」と言ったのだった。
 それを聞き、もっともだ、と優は思った。チャオウォーカーは扱いやすく、かつ強力な兵器なのだから。それに他にやりたいこともない。優はチャオウォーカーを少しでも上手く操縦できるようにとGUNの基地に通った。優は父から「やはり横流しをしているのはこの基地らしい」と聞いていた。そして末森孝太は「俺は関係ないからいいんだけどな」とも言った。普段と変わらず仕事をする姿を見るにそれは本当なのだろうと優は思った。そして「僕も関係ないからいいだろう」とチャオウォーカーに乗っているのであった。
「お疲れさん」
 チャオウォーカーから降りると、基地に来た時にはいなかったキキョウが近寄ってきた。優はしゃがんで、抱えていたチャオを下ろした。
「なあなあ、雪奈は?」
「なんか用事あるって」
「マジで。お前どこに行くか聞いてない?」
「聞いてないよ」
 キキョウはまた「マジか」と言って肩を落とした。
「お前庭瀬さんのこと好きなんだな」
「あの子は凄くいい子だからな」
 チャオらしからぬ上から目線の言い方であった。生意気なやつだ、と優は思った。キキョウの方が年上であることをつい忘れてしまうのであった。そうだ年上なのだ、と優は気が付き、
「お前ってさ、どんくらい生きてんの」と聞いた。
「わかんね。昔はそれほど頭よくなかったから記憶あやふやなんだよな。転生すると結構曖昧になるしな。でも俺が生きてた時にソニックがいたのは確かだぜ」とキキョウは答える。
「数百歳とか、下手したら数千歳じゃないか」
 とんでもなく年上。それどころか天然記念物相当だ。凄いやつと話してる、と優は思った。
「その頃のことは全然覚えてないけどな。はっきりとしてるのはここ最近の分だけだ」
「そりゃ残念だな」
「雪奈にも同じこと言われたよ。何もかも覚えていたらもっと自由になれたのにってな」
「お前十分自由に見えるけどな」
「それはこいつのおかげだな」
 キキョウは模造エメラルドを取り出して「俺カオスコントロール使えるんだよ。そういう調整も受けてんだ」と自慢した。
「これ没収されてたらずっと北国のつまんねえガーデンに篭ってるしかないんだ。たまんねえよな」
「北国?」
「ああ、北海道にGUNの基地が二つあるの知ってるか。一つはすっげえでっかいので、もう一つはちっぽけなとこなんだ。俺が改造されたり、あいつが生まれたりしたのがそのちっぽけな方でさ、そこにあるチャオガーデンで世話されてたんだけど、それがつまらんのよ。話し相手が少ししかいないんだ。他のチャオは全員虚ろだし、研究員なんて敵みたいなもんじゃんか。だから話せるやつは気に入っちゃうのよ」
 キキョウは優が操縦に使っていたチャオの頬をつまんだ。軽く引っ張っても抵抗しない。確かにこれでは退屈だろうと優は思った。優もこのようなチャオを飼いたいとは思えなかった。
「お前毎回北海道からこっちに飛んでくるの?」
「そういうこと。まあ一瞬だしな。それにあのクーデターの時だってチャオウォーカーは北海道のでっかい基地から東京まで飛んできてるんだぜ。俺が静岡まで来たってそこまで大した移動じゃないって」
 大した移動だろ、と優は言った。
「奇跡の力だからな。でも将来皆これで移動することになるかもしれないんだぜ。そうなったらどうなるんだろうな、色々と」
 距離が関係なくなる世界を優は想像してみた。どこへ行くにしてもカオスコントロールで瞬間移動する。それはまるで世界のあらゆる場所が地続きではなくなってしまったかのようだ。全てが孤立している。そんなイメージが優の中に生まれた。
「怖いな」
 そう言うとキキョウも「そうかもな」と頷いた。
「ところでさ、雪奈以外にも話せる相手がいるの。そんな口振りだったけど」
「ああ、いた」
「過去形」
「過去の話だからな。今はもうあっちにはいない。だからそいつに会いに行く時もこいつが必要なんだ」
 模造エメラルドをお手玉をするようにキキョウは投げる。
「色んな所に行ってるんだな」
「そうでもないさ」
 エメラルドが右手と左手を行ったり来たりしていた。

 末森雅人のプロトタイプウォーカーと真田徹のチャオウォーカーが静岡県の海岸沿いで戦闘を行っていた。
 反対勢力が補給を受けている場所を突き止めた徹がカオスコントロールを用いて単独で攻撃を仕掛けてきた。そこに居合わせた雅人が被害を出さないためにカオスコントロールで徹ごと移動した。そういう経緯でもって、人のいない場所にて二人きりで戦っているのであった。
「ここが貴様の死に場所となるのだ」
 叫びながら徹は突撃する。雅人が人のいない場所に飛んだのは好都合であった。邪魔が入ればそれだけ雅人を倒すのが困難となる。こいつは仲間が誰もいない所で死ぬ。そう思いながら両腕のナイフを振るう。
「面倒なやつ」
 互いの声は聞こえないのだが、雅人も呟いていた。徹はかつでの部下だがそれだけだ。印象に残るエピソードがあったわけではない。しかし部下であるというだけで、雅人は自分の過去と対峙しているような気分になるのであった。GUN。庭瀬真理子。ヒーロー。決別しようとしてできていない。自分はヒーローという立場に戻ってきてしまった。
 過去からの使者は執拗なまでに追いかけて刃を振るってくる。モニターに映り、射撃用のカメラが捉え、しかしすぐに画面の外へ隠れるそれに銃弾が届かない。永遠に続きそうな後退。しかしいつ何が背中にぶつかって動きが止まるかわからない。雅人は不利を意識し始めた。この状況を打破しなければならない。左へ右へ、あるいは上へ。動き回るチャオウォーカーを極力カメラに収めつつ策を考える。奇跡的にすぐ浮かんだ。今日は冴えている。雅人は自分の脳に感謝した。
 徹のチャオウォーカーは狙いを定められたと判断すると大抵右か左に動く。ジャンプはそれでも回避するのが難しくなった時にする。背中の推進器による移動よりも足を使った移動の方が勝るためであった。雅人は自分のするべき操作を思い描きながら策を悟られないよう直前と何ら変わらない動き、すなわち最速で相手をカメラで捉えることをする。徹のチャオウォーカーが左に動く。それを見た瞬間に左手で中央にあるボタン郡から車輪の展開と右膝の接地を指示する。そしてアクセルを踏む。プロトタイプウォーカーの右脚は進み、左足はふんばってその場に留まる。体が回転した。カメラはずっとチャオウォーカーを捉え続けることに成功した。撃ちまくる。銃弾は慌ててジャンプしたチャオウォーカーの両脚をもぎ取った。
 これで後は残りを的確に撃っていけばいい。そう思った途端に脚部を失ったチャオウォーカーが真っ直ぐ突っ込んでくる。機体を立ち上がらせながら狙うまでもない的を撃つ。バリアが破れ、両腕にもコックピットにも穴が開く。そうなってから捨て身の攻撃だと気付いた。避けられず、ぶつかる。プロトタイプウォーカーはバランスを崩して尻餅をついた。しかし倒れただけで被害はないようであった。助かった。雅人がそう思った直後、彼の頭は撃ち抜かれた。
「私の勝ちだ」
 そう宣言しながら徹はさらに雅人を撃つ。頭、心臓。どういう偶然か、コックピットに瞬間移動してきた時、ハッチを開くボタンを踏んだようだった。ついに世界が新しい究極生命体の時代を認めたのだ。そう思いながら徹は雅人をコックピットから投げ捨てる。そして自分も飛び降り、弾が切れるまで雅人を拳銃で撃ち続けた。一発や二発では死なないように感じたのだ。運よく致命傷を免れた。そんなことが究極生命体とうたわれた人間に起こり得ないとは言えない。生きていても身動きが取れぬように脚も撃つ。胸に向けて撃った一発が何かにはじかれた。服の中を探ってみると模造エメラルドが出てきた。おそらくはカオスコントロールの実験で使ったものだろう。
 徹はチャオウォーカーに戻る。コックピットの中にチャオはいなかったが、チャオウォーカーは動いた。背中の推進器で浮かぶ。左腕のナイフを折りたたんで、アサルトライフルを展開する。銃口を雅人の頭に触れさせ、撃つ。雅人の体から頭部がなくなった。念のためさらに体もずたずたにしておいてから徹は基地へ帰った。

「ずっと不思議だったんですけど、どうして隼人さんってこんなことしてていいことになってるんですか?ヒーロー候補だからといってもGUNの兵士なわけですから普通訓練とかあると思うんですけど」
 帰りの車の中で優は隼人に質問した。毎回車を運転してもらっているが、ヒーローの候補となった人間がそんなことに時間を使っていていいのだろうか、と疑問に思うのであった。
「ヒーロー候補がいれば、ヒーロー候補じゃない人間もいっぱいいるだろ」と答えたのは隼人ではなくキキョウだった。
「だからってヒーロー理論が本当に正しいのかまだわかってない。ただ本当っぽいってだけだからな。それなのにヒーローかもしれないってだけで贔屓してたら周りから嫉妬されるだろ。それでいじめられて事件が起きたら困るから、実験体扱いにして隔離してんだよ。優はまだ外部の人間って扱いだから免除されてるけど、結構過酷なテスト受けさせられてるんだぜ」
「お前詳しいな」
 説明すべきことは全てキキョウがしてしまったらしく、隼人はそう言った。
「何ヶ月か前まではなるべく雪奈の近くにいるようにしていたからな。保護者ってつもりだったから、色々調べたのさ」
「チャオが保護者ねえ」
「うっさいな」
 キキョウは優を叩く。チャオらしく全く痛みはなかった。
「お前は知らんだろうが、サイボーグ化の手術を受けてから雪奈の背が伸びなくなった」とキキョウは言った。「成長したらその都度パーツを新しく作らなきゃいけないからな。でもそのせいで雪奈はもう大人にはなれない」
「そうじゃないでしょ」と優は言った。
「何だと?」
 カオスチャオは表情に乏しいようだ。しかし声を聞けばキキョウの感情は十分にわかる。怒りが篭っていた。刺激してしまったようだと優は心のうちで苦笑いしつつも真顔のまま、
「庭瀬さんの心はちゃんと人間のものになってると僕は思う。だから心はちゃんと大人になるよ」と言った。
 キキョウは黙ってしまった。腕を組んで何かを考えているようであった。黙られると何を考えているのか全くわからないから困るんだよな、と優は思いながら空を見る。そこには情報がある。しかし優には読めない。確かにあるような気はするが読解はできない。それでいいという気がしていた。
「雪奈を頼む」
 小さな声でキキョウが言った。優が「は?」と聞き返すと今度は「雪奈を頼むって言ったんだ」と乱暴に言ってくる。優は大笑いして狭い車内で身を折って転げた。
「父親みてえな台詞」と叫ぶ。隼人もつられてくすくす笑っていた。
「てめえ」
 キキョウが怒鳴った。
「付き合ってるわけじゃないのに頼むとか言われて、しかもチャオに」
「友達だろうがこういう時期の人付き合いが心の成長には大事なんだ」
 チャオのくせにもっともらしいことを言う、と優はさらに笑った。するとキキョウが「ああ、もう」と暴れだした。やっとチャオらしくなったと優は思った。
「わかった、わかったよ。別にいじめたりしないって」
「本当だな」
 睨むような口調で確認してくる。
「本当だって。過保護だなあ」
「仕方ないだろ。小さい頃から見てるし、それに俺の名前な、今はキキョウってことになってるけど、ずっと昔、生まれた時につけられた名前はスノウって言うんだ。それで親近感があるんだ」
「変な理由」
「うるさい。昔のことで覚えてるの、そのくらいなんだよ」
 キキョウはそっぽを向く。ヒーローチャオだから白い部分が多い。飼い主はそうする予定でスノウという名前にしたのだろうか、と優は推測した。雪奈という名前も白い髪になるよう遺伝子をいじったからそれにしたのだろう。いや、雪奈という名前が白い髪からきていることはビデオを見た時からわかっていた。そう優は思った。いつの間にか忘れていただけだ。また忘れてしまおう、と優は決めた。名前の由来に大きな意味を見出しても仕方ない。あの子の名前が庭瀬雪奈である。友達だからその事実だけでいい。そう意地になることに決めていた。

「庭瀬さん、今日は基地行く?」
「ごめんなさい。今日は末森君も訓練できないんです」
「え、どういうこと、それ」
「私も中川さんも用事があるんです」
「どういう用事?俺はついていったら駄目なの」
「いいですけど、戦争ですよ。私たち、GUNの日本支部の頭を叩きに行きます。つまるところ反乱ですね」
 優は少し固まってしまった。「ああ、そうなんだ」と軽い返事しかできなかった。
「どうします?」
 雪奈の問いも軽い。どちらでもいい、ということなのだろうと優は受け取った。
「行く。行くよ」
「わかりました。では行きましょう」

 いつものように隼人の車で基地まで行き、そこからカオスコントロールで東京に飛んだ。レジスタンスが使っていた倉庫で、雪奈は白の女神と呼ばれていた。そこで横流しを主導していたのは雪奈だと優は知った。
「皆さん、武器の点検はできていますか?カオスコントロールに必要なエネルギーが溜まり次第突撃しますので、各自チェックしておいてくださいね」
 雪奈がそう呼びかけると大勢の了解の声が返ってきた。
「あの、すみません」
 一人が雪奈の前に来る。
「なんでしょう」
「先日チャオウォーカーの襲撃を受けた時に」
「ああ、雅人さんが行方不明になった件ですね。その後どうなりました?」
「まだ帰ってきてないんです。連絡も全然取れなくて」
「待っている時間はありませんね。心配しなくても大丈夫ですよ。皆さんの力を合わせて勝ちましょう」
「はい」
 男はそそくさを戻っていく。襲撃してきた男の言っていた通りだ、と優はそれを見ながら思った。民衆をひきつける存在として雪奈はふさわしい。その通りになっている。GUNの味方ではないようだが。
「どうしてこんなことをしようと思ったのか、聞いてもいい?」
 隙を見て雪奈に質問をする。雪奈は頷いた。
「私、自分が本当にチャオのことが好きなのか、自信がありません。だけど私はチャオを助けたいって思っています。その気持ちは本当だから、だからやろうって思ったんです」
 それに操り人形は嫌ですし、と言って雪奈は微笑んだ。
引用なし
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