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自分の冒険 〜自分ならこう書く〜 冬木野 12/4/26(木) 11:03

神様の祈り 第五話 神と影 ダーク 13/11/9(土) 1:07

神様の祈り 第五話 神と影
 ダーク  - 13/11/9(土) 1:07 -
  
 昔々、この地上にはカオスという名の神様がいました。
 神様は世界に自らと同じ種族である“チャオ”を生み出しました。チャオは豊かな自然の中に住み、性別を持たず生殖活動もほとんどせず、また能力によって姿形を変える生物でした。大まかに、走ることが得意な子、泳ぐことが得意な子、力持ちな子、空を飛ぶことが得意な子、バランスのいい子と分けられ、大体の形が決まります。体長はどのチャオも約四十センチほどで、二頭身の体はぷよぷよとしています。体の色も様々で、性格もまたみなそれぞれでした。神様だけは他のチャオと少し違いました。水色で半透明の体に緑色の目、ゲルのような体を持ち体の形も自由に変えられました。体長も一メートル五十センチほどあります。
 神様は寿命を持ちませんでしたが、チャオは寿命を迎えると転生をして、またタマゴに戻るのでした。タマゴに戻らずそのまま消滅してしまうチャオもいましたが、それは稀なケースでした。木の実を食べて、食べ終わったあとの種をまた植え、邪魔になった木はなぎ倒して、あとは好きなことをする。彼らはそんな生活をしていました。
 神様はチャオたちに敬われていました。何でもチャオに教えることができますし、時には何かを手伝うこともしました。何よりも神様は祈られる対象でもありました。チャオはあまり神様に近づきすぎることをしませんでした。チャオにとって神様は一つ上の次元にいる存在であり、その次元は侵してはいけないものだということをチャオたちは感覚的に理解していました。でも神様はそう思っていませんでした。神様というのは役割としてあるだけで、チャオと同じ次元のものだと思っていました。
 神様は寂しく思いました。確かに見守るというのも役割の一つではありましたが、どうしても神様は納得がいきませんでした。そして、神様は動きました。新しく自分の近くにいてくれるチャオを生み出そう、そう思います。神の力はチャオを生み出したときにほとんど失われていました。ですから、神様は自らを二つに分裂させ、その間にタマゴを産みました。神の力を使って生んだチャオではなく、神様が生物として産んだタマゴです。タマゴはすべてで七つ。そして間もなくタマゴからチャオが生まれました。これが、神の子たちの誕生でした。
 神の子たちはそれぞれ、シャウド、ルル、マッスレ、ソニップ、ナイチュ、エイリオ、ナイリオと名付けられました。神の子たちは他のチャオとは違い、神様と同じように言語が扱えました。神の子たちは神様のそばで、仲良く暮らしました。また、他のチャオたちに頼られるリーダーのような存在にもなりました。
 神の子たちは優れた能力を持っていました。シャウドは何でもできましたが、特に走ることが得意でした。さらにとても頭もよく、万能であったので神の子たちのリーダーでもありました。ソニップも何でもできて、やはり走るのが得意でした。ルルは走ることと泳ぐことは得意で、力持ちでもありました。マッスレはとにかく力持ちでありました。ナイリオは何でもできましたし、力持ちでもありました。エイリオはとにかく泳ぐのが得意でした。こんな子たちの中、ナイチュだけはどれも得意ではありませんでした。彼の背中には大きく立派な羽がついていましたが、それが逆に彼を追い詰めていました。こんな羽があるのに、何故飛べないのだろう、と。
 神様もナイチュのことを気の毒に思い、彼が空を飛べるように、と祈りました。
 ナイチュは毎日飛ぶ練習をしました。晴れの日も、雨の日も、雪の日も、時には夜遅くまで練習を続けました。最初は跳ねたり爪先立ちするだけの、あまり見栄えの良くない練習風景でした。そんなナイチュも少しずつ羽の使い方を理解していき、少しずつ飛べるようになり、気がつけば一番飛ぶのが上手になっていました。彼は飛ぶ素質があったからこそ、その羽を持っていたのでした。ナイチュもそれを理解し、羽を誇りに思うようになっていました。自慢の羽を広げ、空から地上にいる神の子たちに手を振る。神の子たちも手を振り返す。そんな光景が、神様の目には美しく思えました。こんな日が続けばいい、神様もそう思っていました。
 ですが神様はある異変に気づいてしまいました。チャオは寿命を迎えると繭に包まれます。繭が桃色であると転生、灰色であると消滅します。ですが、その日神様が見たのは、桃色の繭に包まれたのにも関わらずチャオが消滅するという光景でした。その周りのチャオはその光景を不思議そうに見つめていました。神様は事の重大さを一瞬で理解しました。そして、神様は神の子たちを集めました。
「みんな、聞いてほしい。今日、桃色の繭に包まれたのにも関わらず消滅してしまったチャオがいる。私は嫌な予感がする。このまま、転生できるはずのチャオたちがどんどんいなくなってしまうのではないかと考えてしまう。どうにかしてそれは避けなければいけない。力を貸してほしい」
 神の子たちは顔を見合わせます。神の子たちはまだ危機を感じ取っていませんでした。神様の言うことも心配のしすぎなんじゃないかと思いました。
「それはたまたまなんじゃないのか? 本当だったら灰色の繭を作るところを、なんかの間違えで桃色の繭を作っちまったんじゃないのか?」とマッスレが言います。マッスレに懐いているナイリオもうなづきます。
「それに、もし転生できるはずのチャオが転生できなくなったとしても、俺たちには何もできない。今回のは偶然だと割り切って、今まで通り暮らした方が俺たちにとってもいい」とソニップ。
 シャウドは何か考えているようですが、他の神の子たちは二人の言葉にうなづきます。神様も予感があるだけで、確かな説明ができません。そのまま話はうやむやになり、神の子たちは散り散りになりました。シャウドだけが神様のところへ残ります。
「カオス、お前の力ではどうしようもないのか」
「私の力ではどうにもできない。だが、手がかりくらいならわかるかもしれない。協力してくれるか?」
「わかった。もし何かあれば僕に言ってくれ」
「すまない」
 こうして、シャウドだけが神様に協力することになったのでした。
 シャウドは最初に、転生後にもう四年から六年経っているチャオを探しました。四年から六年と言うのは、チャオの寿命です。シャウドも実際に桃色の繭に包まれたチャオが消滅することを確認しようと思ったのです。その光景はすぐに確認できました。そして、シャウドが確認できる頃には、神様は他のチャオたちにも同じ現象が起きていることを把握していました。シャウドはもう一度神様のところへ行きます。
「偶然ではないな。延命処置にしかならないがハートの実を使おうか?」
 ハートの実と言うのは、チャオに繁殖を促す実です。これを食べたチャオはほぼ確実に繁殖期が訪れ、パートナーさえ見つかればタマゴを産みます。また、パートナーもハートの実を食べれば成功は確実です。
「いや、ハートの実がなるよりもチャオがいなくなる方が圧倒的に速い。やめておこう。それより、いなくなるチャオが増えるに連れて、未来が少しずつ見えてきた」
「本当か?」
「チャオは違う生物への進化を遂げようとしている。チャオよりも遥かに高知能な生物だ」
「何だと。消滅ではなく進化だというのか」
「そう。ここからは推測だが、チャオは実体を失っただけで存在しているのではないか。そして、本来ならば消化されていたエネルギーを、来るべき進化のために溜め込んでいるのではないか。私はそんな気がしてならない」
「もしそうであれば、僕たちにそれを止めることはできない」
 神様は何も答えることができませんでした。ですが、シャウドは続けます。
「だが、転生についてもっと知ることができれば、転生を促すくらいのことはできるかもしれない。カオス、どうだろう」
「転生、か。転生は“生きたいと思うこと”で起きる現象だ。今いるチャオたちに、生きたいと思わせることはできるだろうか」
「やるしかないだろう」
 シャウドは神の子たちを集めて、事情を話しました。状況が悪化していることもあり、神の子たちも今度は協力しました。育てるのに手間のかかる木を多く植えて、上質で美味い木の実もたくさん作りました。池を頻繁に清掃しました。チャオの世話をし続けました。その間にもたくさんのチャオがいなくなりました。神の子たちは神様の遺伝のせいか他のチャオよりも遥かに寿命が長いらしく、一度も寿命を迎えていません。ですから、神の子たちが生きている間に生まれて、そのまま一生を見届けられたチャオもいました。それでも諦めず、神様と神の子たちは活動を続けました。
 そんな中、ナイチュの様子がおかしくなり始めました。溜息を頻繁についたり、そわそわとしだしたりと、落ち着きがありませんでした。それに気づいたのはエイリオでした。
「ナイチュ、最近落ち込んでるでしょ」
「え、なんで?」
「変だよ」
 ナイチュはしばらく黙って「そっか」と呟いた。エイリオは次の言葉を待ちました。ナイチュは整理するように、ゆっくりと話し始めました。
「僕は最初、空が飛べなかったよね。あのとき、僕は何で生きてるのかわからなかった。何もできないなんて、生きる価値がないように感じた。僕は羽があったから結果的に飛べた。でも、今生きているチャオたちに僕で言う羽のような生きる価値なんてどうしたら与えられるんだろう。現に、チャオたちはどんどんいなくなってる。今度こそ、僕たちは真の意味で何もできないんだ」
 エイリオは神の子たちの中でもナイチュと親しい間柄でした。当然、ナイチュが空を飛べなくて落ち込んでいたときのこともよく知っています。エイリオは優しくナイチュの言葉を受け止め、ナイチュもまたそれを感じ取っているのでした。そして、今度はエイリオが話し始めました。
「ナイチュ、私はね、チャオたちが生きることに満足してくれればいいと思ってる。だから私は、チャオたちを愛してあげてる。生きるのも悪くないと思える、すがることのできる愛をあげようとしてる。それでいいと、私は思う」
 ナイチュはエイリオの言葉を噛み締めるようにじっとしていました。しばらくしてナイチュは「うん」とうなづきました。それを見たエイリオも笑顔を見せて、離れていきました。
 それからナイチュは以前にも増してチャオたちと接するようになりました。ナイチュが元気になって、他の神の子たちも影響を受けてチャオたちとよく接するようになりました。その中でも特に影響を受けていたのはナイリオでした。ナイリオはナイチュに向かって言います。
「エイリオ、ナイチュを見てずっと心配してたんだよ。だから、二人とも元気なくて私も心配だった。でも、二人とも元気になって良かったよ」
 ナイリオはマッスレによく懐いていましたが、ナイチュとエイリオのことも好きでした。ナイリオは二人のことをずっと見ていたのです。ですから、ナイリオは他の神の子たちよりも熱心にチャオたちの世話をしました。
 ですが、状況は悪化していき、もはや数えるほどしかチャオがいなくなってしまいました。そんな時、神様がシャウドを呼び出しました。
「シャウド、よく聞いてほしい。もうチャオたちを残す手立てはない。何かできることがあるとするのなら、それは現在ではなく未来にある」
「ああ」
「お前に、チャオの未来を託したい」
「ああ」
「チャオが次の生物に進化した頃に目を覚ますようにお前を封印する」
「ああ」
「私はもうこれで最後の力を使い切る。私が神である世界は終わった。シャウド、頼んだ」
「後のことは任せろ。カオス、疲れただろう。もう休め」
「すまない」
 その時、二人のもとに駆け寄るチャオがいました。それはルルでした。
「シャウドとお別れなんて嫌だ! 神様、私も一緒に封印して!」
 ルルは涙を流しながら叫びます。
「ルル、もう私の力ではシャウドを封印するのが限界なんだ。わかってくれ」
 ルルは何も言い返せませんでした。自分が何もできないことはわかっているのです。そんなルルを見て、シャウドが声をかけます。
「ルル、また次の世界で会おう。だから、僕のことを覚えていてくれ」
 ルルは目をぎゅっとつむりながら首を縦に振って、二人から離れました。
 神様とシャウドも悲しそうな目で、ルルを見ます。
「さよなら、神様。さよなら、シャウド」
 ルルはそう言って、二人が消えていくのを見守りました。
 その後、神の子たちは神様とシャウドが消えたことに気づきましたが、結局は何もできませんでした。ルルも他の神の子たちを絶望させないように、黙っていました。そのままチャオたちは桃色の繭に包まれて全員いなくなりました。神の子たちはやれることはやったと励まし合いました。少なくとも桃色の繭に包まれたということは、愛を与えられたのだと信じました。そして、神の子たちも自分たちの寿命を感じ、桃色の繭に包まれて消えていくのでした。


 僕の感情は、何かを叫んでいた。
 ルルは話し終わったあと、ずっと黙っていた。僕に整理する時間を与えてくれているようだった。もうルルは敵には見えなかった。具体的にその光景やチャオたちのことを思い出すことはできないが、漠然とした感情だけは残っていた。エイリオたちとは人間として生まれる前から出会ったいた。そして僕は空を飛んでいた。その言葉には説得力があった。でもその叫びは、人間としての僕が簡単には受け入れなかった。そんなことが起こるなんて信じられないし、僕には人間としてきた記憶の方が強く残っている。それに、この話を聞いたところで、僕はどうしたらいいのかわからない。
「どうして、僕にこんな話をしたの?」
「どうして、か。どうしてだろう」
 僕は黙って、ルルの返事を待った。その間、僕は庭をまた眺めた。やっぱりあまり綺麗ではない庭だった。
「庭、あんまり綺麗じゃないよね」とルルが言った。僕はうなづいた。
「何か期待してたんだよ、多分」とルルは呟いた。
「……そっか」
「あとは、ナイチュが元気なさそうだったから」
「え?」
「ナイチュ、悩みやすいタイプだから。ソニップとかマッスレとかに圧倒されちゃってるのかなと思って」
 恥ずかしくなった。ルルにまで心のうちを見透かされていたのだ。
「悩まなくてもいいよ。ナイチュは神の子だから、それだけで十分必要な人」
 この瞬間、僕は強い衝撃を感じた。ソニップとマッスレに励まされたときよりも、僕の心は遥かに強く納得してしまった。今まで感じていた無力感は、もう忘れられた。でも、ルルの話はまだ信じ切れていない。僕はいったい何を信じればいいのだろう。
 シャウドと言う名前をもう一度思い浮かべた。そうだ、シャウドは結局どうなってしまったのだろう。
「シャウドはどうなったの?」
「それはもうすぐわかる。明日、いやもう日付は今日か。うん、今日中にわかるよ」
 ルルはそう言うとゆっくり立ち上がった。マントを羽織って、もう一度の顔を見て「またね」と言い、旅館の裏の方へと消えていった。急に時間が流れ始めたようだった。
 僕もソニップとマッスレを起こさないように部屋に戻り、布団に入った。今度は、すぐに眠ることができた。
引用なし
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