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自分の冒険 〜自分ならこう書く〜 冬木野 12/4/26(木) 11:03

第三話 その脚が踏みしめた時間 スマッシュ 13/8/19(月) 22:31

第三話 その脚が踏みしめた時間
 スマッシュ  - 13/8/19(月) 22:31 -
  
 昔々、ある悪い貴族がいました。
 悪い貴族は人々からお金を騙し取り、多くの人を苦しめました。
 ある時、そんな悪い貴族をやっつけようと人々は立ち上がりました。
 貴族の娘は、願いを叶える不思議な石を持った王様のところへ行きました。
 このままでは父は殺されてしまいます。私の父はそれだけの恨みを買う行いをしてきました。しかしそれでも私にとってはあの人こそが父なのです。だから私はあの人の命を救いたいのです。
 王様は、貴族の娘の健気な姿に心を打たれ、不思議な石の力を使って真っ白な剣を作り、そしてこう言いました。
 君の願いが真っ直ぐ一つの色に輝き続けるのであれば、この純白の剣が君の想いに応えるだろう。
 貴族の娘は純白の剣を握り、父を倒そうとする人々と戦いました。
 純白の剣は彼女の真っ直ぐな心に応えて、彼女と彼女の父を見事に守ったのです。
 これがこの世界に伝わる、不思議な石と純白の剣の物語。

 混沌の石を盗んだ者はどこにいるのか。
 クラウンは、純白の剣を売りさばくつもりなら大きな町にいるだろう、と言った。
 その言葉の通りに、栄えている町へ行き情報を集めることにした。ついでに観光する雰囲気になり、買い物を楽しむことになった。
 ウォンドとセレナが服を見ている。男物の服である。セレナは一番彼が格好よくなる服を探しているようだった。それを女物の服の近くでクリスとクラウンが見ている。背がやけに高く、髪が長かったので、クラウンは不気味な女性に見えないこともなかった。
「服なんてどうでもいい、と思っているね」とクラウンが言った。
「別に、そうじゃないけど」
「叶わない恋と思っているのだろう」
 クリスは答えない。
「でも可能性はある。彼の恋人になる可能性は確かにある。だって君は女で、彼は男だ。男と女はつがいになれる。君の恋は叶う。それなのに、どうしてまだ叶わないなんて思っているのかな。諦め切れないくせに、どうしてあの女が彼にすり寄るのをじっと見ているだけなんだい」
「黙ってくれないか」
「それとも、私のものになるかい。私は君を大事にしてあげるよ。君が彼のことを想っているように」
 そう言ってクラウンはクリスの肩に触れた。クリスは身を離した。
「僕に触るな」
「奇跡は起こる。彼は君のことを見る。でもこのままだと彼はあの女のものになってしまうかもしれない」
 クリスはクラウンの顔を殴った。クラウンは大きくよろけたが、こらえた。
「お前なんかに何がわかる」
 そう言ったクリスの顔をクラウンは見下ろした。痛みさえ感じていないように平気な風に振る舞いながら、
「図星だって、あんたの拳が言ってるよ」と言った。
「ふざけるな」
 クリスはその場から逃げた。その様子をウォンドとセレナが見ていた。ウォンドがクラウンに近寄って、
「一体何したんだ」と聞いた。
「別に何もしちゃいないよ」
 そう言ってクラウンも一人で店を出て行った。ウォンドとセレナは買い物を続けるかどうか少し迷って、追いかけようとしたが、クラウンの姿も見当たらなくなっていた。

「困ったな」
「人に聞いた方がいいかも」とセレナが言った。
「そうだな。あの、すみません」
 適当な女性に声をかける。大人しそうな女性であった。車椅子に買った食べ物を乗せていた。
「知り合いとはぐれてしまって、探しているんですけど、剣を持った女の子と男を見ませんでしたか。男の方は背が高くて髪も長くて、目立つと思うんですけど」
「さあ、ごめんなさい。あの、私もいいですか」
「え、何でしょう」
「私も人を探していて。グランドって言って、優しい顔をしていて、実際に優しいんですけど」
「ううん、ごめんなさい、心当たりないです」
「そうですか。あの人、ついこないだまで脚が動かなくて。それなのに一ヶ月くらい前に、急に動くようになって、それで一人で出歩くようになってしまって、心配なんです」
「それは確かに心配だ。じゃあ、一緒に探しましょうよ」
「はい。お願いします」

 茶色い服の温厚そうな男がクリスを呼び止めた。
「もしかしてその剣、混沌の剣ですか?」
「ええ、まあ、そうですけど」
「そうですか」
 男の腰には純白の剣があった。
「なら、あなたはここで死ぬことになります」
 クリスは慌てて飛び退いて距離を取った。剣を抜く。それを見てから男はゆっくりと剣を構えた。
「あなたも正気を失っているのか」
「おそらく正気です。あなたには願いはないのですか?」
「願いって」
「誰かを敵に回しても得たいもののことです」
 男は言い終えると、素早く切りかかった。既に戦闘の雰囲気である。クリスは必死に距離を取ろうとする。男の攻撃の激しさを受け切る自信がなかった。反撃してこないのをいいことに、男は追うのをやめて、体勢を整える。そうして再び鋭い攻撃をしようというつもりであった。
「あなたにはあるのか。そういう、願いが」
「そう。そうさ。俺は、願った」
 再び殺意が飛んでくる。クリスは同等の殺意で襲いかかる術を知らない。そのために攻撃を受けるだけで精一杯になる。しかしながら傷つけられることなく、クリスは剣を構えていた。男は再び体勢を整える。今度は疲労のためだ。
「願いを叶えるためだからって、僕とあなたが戦わなくちゃいけない理由が、僕にはわからない」
「願いは叶ったよ。だけど願いというのは叶ったところで終わりじゃない。ずっと願いの続きを守らなきゃいけないんです。だから、あなたは敵だ」
 男がまた攻撃をしかける。
 騒動の噂を聞きつけて、ウォンドたちは二人が戦っている現場にやって来た。
「グランド」と女が言った。
 その声を聞いて、男の攻撃が止まる。
「アイビイ?」
 その隙を見て、白い斬撃が男の剣を弾いた。クラウンであった。
「大丈夫か」
「え、ああ、うん」
 弾かれた剣が刃の方から地面に当たり、その衝撃で折れた。するとグランドと呼ばれた男が急に倒れた。アイビイと呼ばれた女が彼の名を呼びながら駆け寄る。グランドは生きていた。しかし脚が動かなくなっているらしかった。
「ほらな。願いは叶ったところで終わりじゃないんだ」と男はクリスに向けて言った。

 グランドはアイビイの車椅子に乗せられていた。一ヶ月前の二人もこのようにしていた。
「脚が動かないっていうのは、不便なんだ」
「うん」
「でもそれは自分で歩けないからではないんだと、俺は思う」
「それって?」
「こうやって車椅子に座って見る景色は、皆の見る景色より低い景色なんだ。それが俺には、孤独の象徴に見える。俺だけ別の世界にいるような、そんな感じがするんだ」
 女は何も言わず、車椅子を押していた。
引用なし
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