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自分の冒険 〜自分ならこう書く〜 冬木野 12/4/26(木) 11:03

第二話 奇跡を守る人 スマッシュ 13/8/19(月) 22:30

第二話 奇跡を守る人
 スマッシュ  - 13/8/19(月) 22:30 -
  
 昔々、あるところに男の子とチャオがいました。
 そのチャオは皆の人気者でした。
 男の子もチャオのことが好きでした。
 そしてそのチャオは男の子のことが大好きで、男の子と一緒に遊んでいました。
 他の誰よりも、その男の子と一緒にいることが、そのチャオの幸せだったのでした。
 これは、混沌の石の物語の、その一つの場面。


 旅をするにも楽な時代になった。歩いて旅をする必要はない。
 混沌の石から力を持った剣が生み出されたように、人々を補佐するための物が生み出されてきた。
 その一つが建物を動かす混沌の歯車である。止まることのない動力源として、頑なに働き続けている。
 歯車を搭載した十階建ての塔が貿易に使われている。町と町を結ぶ道の間には店などが一切なく、食料品の補充もままならない。そのため旅人はこの貿易の塔を利用して町を渡っていくのである。
 ウォンドとクリスが向かうのは、混沌の石を奪った者が拠点にしているとされる町であった。その町では、混沌の剣に似た剣が出回っているようである。混沌の石を奪った者が剣を生み出して売りさばいている可能性があった。
「混沌の剣の量産って、まずいかもね」
 クリスがでたらめに素振りをしながら言う。素人が片手で剣を振り回しているに過ぎないのだが、剣の美しさに騙されてしまうのか、様になって見える。混沌の剣の力とは、持った者を素人であろうと達人のようにしてしまうものであった。そして剣は持ち主の腕前に関係なく、目の前にある者を見事に切断してみせた。そして剣を振るうクリスの動きも、軽やかでなおかつ重みがある。ウォンドも試しに剣を適当に振ってみると、体にも剣にも重さを感じず、十メートル先まで跳躍できてしまうのだが、足元をすくわれるような不安定なところはなく、剣も受け止めることが難しいような、ある種の一貫した説得力があった。
 クリスが混沌の剣が量産されることにまずいと言ったのは、こういった数々の恩恵が自分たちだけのものと思っていたためである。こちらだけが人間を超えた力を持っているのであれば気が楽だが、相手も同じ力を持っているかもしれないとわかると、途端に不安が大きくなった。

 塔が止まった。町に着いたのかと思ったが、その少し手前で停止していた。
 ウォンドとクリスは何が起きたのか知ろうと、塔から出た。町の前に二人の男が立っていた。二人は混沌の剣を握っていた。どうやらウォンドたちより前に英雄としての命を受けた者のようだった。
「何かあったんですか」
「今、この町の中で戦闘が起きています。相手は純白の混沌の剣を持っていて、無差別に人を切り殺しています」
 中で彼らの仲間が対処している、と聞くや否や、ウォンドは剣を抜いた。
「俺たちも行こう」
「うん」
 剣を持てば素早くなる。止めるような間さえなく、二人は町の中に入っていった。

 町の中は死体ばかりであった。建物という建物の扉はこじ開けられていて、中をうかがうと切り刻まれた人の死体があった。クリスは確かめるだけ無駄なような気がして、犯人を捜すことに専念したいと思ったが、ウォンドは生存者を探すことを最優先して、時間をかけた。
 そうして身を隠して生き延びた人はいないかと探しているうちに、戦闘の渦の方が二人に近付いてきた。混沌の剣を持った女性と真っ白な剣を持った女性が戦っていた。混沌の剣の女の方が劣勢のようであった。彼女が逃げ、白い剣の女が追う形であった。二人は風の速さで走っていた。ウォンドはその間に飛び込んで、戦闘に割り込んだ。横合いから不意に飛んできた斬撃を受け止めるのが精一杯で、白い剣の女は転倒した。混沌の剣の女も走るのをやめて、息を整える。長い金髪が美しい女性だった。背が低く、力がなさそうに見えた。
「お前がこの町の人たちを殺したのか」
 ウォンドが白い剣の女に言った。女の持つ剣は混沌の剣と全く同じ形をしていたが、刃から柄の宝石まで、全てが真っ白であった。
「そう、私たちが殺した」
「他に仲間がいるってことか」
「いる。いた。殺した」
「何だって?」
「そしてお前たちも殺す」
 女は全力で白い剣を振るった。それを受け止めるウォンドの混沌の剣を折りそうなくらい、叩きつけるといった感じの振り方だった。ウォンドは攻撃を受けてばかりだ。殺そうという、相手の深みまで突き刺すような攻撃を全くせず、
「どうして殺したんだ」と話をするのに必死であった。
「奇跡のために」
 女も律儀にウォンドの問いに答える。そして先ほどまで彼女と戦っていた金髪の女が再び彼女に切りかかる。女は受け流して、背中を蹴った。まるで余計な物を静かにどけるような、上品さのある動きであった。女はウォンドを睨んでいる。彼が彼女の敵だった。彼女の剣がウォンドを塗り潰そうとする。どの色にも混ざりそうにない白が襲いかかってくる。
「奇跡ってどういうことだ」
「奇跡というものは、こうしないと逃げていってしまうんだ。奇跡は奪われる。だから私は誰にも奪われないように、こうしているんだ」
 女が叫ぶ。しかしウォンドの剣は無数の色を持ったままであった。
「錯乱しているのか」
「私は正気だ」
 それまで剣を握っているだけで棒立ちしていたクリスが動いた。クリスにはウォンドが一方的に攻められているように見えて、このままでは彼は殺されてしまうと思ったのだった。女の背中を狙って剣を振る。女はそれを回転しながら剣で受け流した。金髪の女がクリスに続いて攻撃をしかける。スピードに任せて剣を突き刺そうとする。それもまた難なく避けられてしまう。その間にウォンドは女との距離を少し取っただけで、攻撃もしなかった。
「私の願いの邪魔をするな」
 女はウォンドと会話をするうちにかなり興奮してようで、自分に攻撃をしかけてきた二人に殺意を向けた。まずい、とウォンドは思った。二人は自分のように強くはないようだった。もっと詳しく話を聞いて情報を得たいと思っていたが、殺すために剣を振った。色の束となった光を剣は描く。やはりこの剣は、戦いさえも芸術のように仕立て上げてしまうようであった。剣が流れる。女の剣を強く打つと、彼女の手から剣が抜けた。そして剣が無防備になった体を突き抜けようとする。女はそれを避けようとしたが、間に合わず腕を割かれた。女は胸を押さえた。地面に転がった白い剣が砂のように割れた。女は死んでいた。

 町にいた人は全て死んでいた。路上には、白い剣を持った人間が何人も死んでいた。混沌の剣を持った死体も多く、生き残ったのは金髪の女だけだったようだ。女はセレナと名乗った。
「戦いって、こんなにきついものだったんですね。そんなこと全然考えてなかった」
 セレナは、自分は選ばれて混沌の剣を手にしたわけではない、と言った。偶然剣を拾って、この力を正義のために役立てようと思って旅を始めたのだということを二人に語った。
「ちょっと自信がなくなっちゃいました。でも、私、平和を取り戻すために何かしたいんです。あの、私を仲間にしてもらえませんか」
「うん、いいよ。これから強くなろう」とウォンドは笑いかけた。そしてすぐに真剣な顔に戻って、
「それにしても生存者が全然いないなんて、辛いな」と言った。歩いているうちに、死体から目を逸らすのが上手くなっていた。
 諦めながらも、念のために生存者を探していると、長い髪の男が立っていた。白い剣を二本持っていた。
「白い剣」
 ウォンドは警戒する。男は、
「私は敵じゃない」と言った。「むしろ味方ってところかな」
「でも白い剣を持っているやつが襲ってきた」
 セレナの反論に男は頷いた。
「私も襲われた。もしかしたらこの純白の剣は持ち主を狂わせるのかもしれないね。どうだろう、私も君たちと一緒に行動させてくれないか。そしてもし私がこの純白の剣に心を乱された時は、私を殺してくれないか」
「本当に敵じゃないのか」
「みたいだ。そういうことなら一緒に来てくれ。腕も立ちそうだし」
 男はクラウンと名乗った。
引用なし
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