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まずは「ぼうけん」の感想から。
「あっ」という間に終わりましたね。
こういう言い方だとまるで、拍子抜けだ、みたいな反応ですけど。
これはとても上手い作品です。
一文目の爪研ぎから始まり、同族、有翼族と称される登場人物達。
人間でないことは大いに伝わってきたけど、「これはいったいなんだ?」と物語に集中させられました。
そしてプロットを最高速で駆け抜けて行き、最後に抜け殻となった彼らの姿でオチる。
一言で纏めるなら「あっ、なるほど」。
これもまたキャプチャの設定を上手に使った、オチ重視の素晴らしい作品です。
途中のプロットをないがしろにし過ぎじゃないか、という見方もできますが、このオチの持つパワーを前にすれば何の問題もありません。
この作品はこれで正しいと思います。
むしろ「んん?」と思って読み進めてしまうようなトリックになってると思いますし。
最小限の手数で「あっ」と言わせる、テクニックの光る作品でした。
続いて「勇者とぼく」の感想です。
はじめの無難な旅立ちから、既に不穏な気配が漂ってくるものなので、これはなんだろうなと気になってしまいました。
敵と称されるチャオのどこか腑に落ちない行動や、仲間達とのイベント。数々の展開に、とにかく不穏の影を感じました。
ソウリョ死亡イベントは、地味にここまでの作品で初の死亡した味方になるでしょうか(抜け殻のアレは別として)
プロット段階では特に誰かの生死について指定するものはありませんでしたが、主人公消沈イベントの説得力としては最適解だと思います。
(むしろここまで、味方に犠牲者が出ないことを当たり前と思って読んでいる自分に驚く)
そして最後のシーン、彼らはいよいよ真実に辿り着く。
正直、このお話の全てを読み解くことは私にはできませんでした。
ショウという語り手はあまりにも淡々とし過ぎていて、私にはついていけない人だったのかもしれません。
しかしそんな彼の個性が納得できないというわけではありません。
ショウの視点から語られる物語、そこから伝わってくる不穏な気配は、あるべき結末に収束したと思います。
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