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自分の冒険 〜自分ならこう書く〜 冬木野 12/4/26(木) 11:03

最終話 スマッシュ 12/4/30(月) 22:49

最終話
 スマッシュ  - 12/4/30(月) 22:49 -
  
 目的地に近付きつつある。今日中には着くだろう、となった時にマサヨシは言った。
「そういや、チャオの王がどんなチャオか知ってるか?」
「いや」
 否定する。大体察しはついていたけど。
「俺たちが集めた情報によると、結構な数の魔法が使えるみたいだ。とはいえ噂レベルで情報が確かかどうかはわからないんだがな」
 そう前置きしてマサヨシはチャオの王が使えるらしい魔法を挙げていった。大半は僕が奪われた魔法と一致していた。やっぱりな、と思う。
「流石チャオの王ってところだな。人間でもこれだけ強力な魔法を使えれば天才ってところだ」
「うん、そうだね」
 もし本当に僕の予想通りとするなら、質問をしなくてはならない。僕の隣にはアイがいる。僕に彼女と一緒になるきっかけを与えてくれたのはおそらく僕たちの友達だったあのチャオなのだから。
 それからしばらく歩いてチャオの森に着いた。チャオがたくさん住んでいると言われている森。中がどうなっているか、詳しく知っている人間はいない。十年前にチャオが凶暴化し始めた。それ以前からここに近付くのは危険とされていた。入ってしまえばどんなことが起こるかわからず、何かがあったとしても人が全く触れていない森の中へは救助に行くことはできない。
 その森の前で僕たちは立ち止まる。ここであの魔法を使うことを決めていた。
「たぶんあまり効果無いと思うけど」
 そう言ってから、魔法の準備をする。森を燃やし尽くす。住んでいるチャオ全てを巻き込んで。投下。
「嘘だろ」
 マサヨシが呆然として言った。閃光の後、変わり果てるはずだった森は直前と変わらない姿でいた。
「まあ、こういうこともできるんだよ」
 広範囲を攻撃する魔法があるのと同様に。それでも少しくらいなら燃やせると思ったのだが。
「行くか」
 タスクが前に出る。
「うん」
 彼を先頭にして、僕たちは森の中に入る。タスクの存在がやけに頼もしい。盾を構えて先頭を歩く彼の背中を見ていると、思い出す。「俺はお前に殺されてもいいと思っている」という彼の発言を。
「普通、人間が助けられる他人の数は限られる。お前だって、そうだ。チャオに襲われている町の人を助けようとしたら、彼女が死んでしまうかもしれない。だから人はその人を大切に思っている人から守られるべきだ。もっとも俺がそのことに気付いたのはこうして旅を始めてから結構な時間が経った後だったんだけどな」
 タスクがそんな自論を展開したのはアイが告白してきた次の日だった。立て続けに優しくされると、心配されるような顔をしていたのかもしれない、と思ってしまう。事実そうだったのだろう。
「俺の生まれた町はチャオに襲われた。もしかしたらその時俺がいれば、誰かを助けることができたかもしれない。だからお前のやってることは凄く正しい。俺はお前を守りたいと思う」
 彼もまた戦っている。だから僕は今日から守りたい人を守ることのできる世界にしたいと思う。そのために人に倒せないものを倒す。
 奥に進むまでもなかった。先程の攻撃で僕たちのことを感知したチャオの王はわざわざこちらに向かってきていた。
「久しぶりだね」
 もしかしたらアイに言っておくべきだったのかもしれない。先送りにしようと思ったら、教える間は残されていなかったみたいだ。
「ユウ?」
 アイがチャオの名前を言う。チャオの王は頷く。チャオの王は、僕たちの友達だ。そして今のユウはおそらく僕の一部分でもある。ユウは僕から色々なものを奪った。僕の勇者として選ばれる程の力がそのままユウがチャオの王になるための力になったのだ。だからいつかこういう図が生まれることは知っていた。ユウに勝てるのはおそらく僕だけ。
「戦いの前に少し話したいな。いいかな?」
「うん」
 アイが頷いて、ユウは近付いてくる。てくてく、とチャオの歩みで。表情からは緊張が抜けてにこにこしている。無邪気だ。その無邪気な頭にアイは僕の腰に差してあったナイフを刺した。迷いが無く、素早かった。彼女はユウがチャオの王だということを知っていたのだろうか。そしてこうすることを決意していたということなのか。アイもユウも馬鹿だ。避けられたはずなのに、ユウの額にはナイフが刺さっている。
「ごめん、ユウ。あなたを殺さないと、ユウキが泣いちゃう」
「謝る必要は無いよ、アイ。敵は容赦なく倒すべきだ」
 ナイフが刺さった顔では上手く表情が変えられないのかもしれない。それでもユウは笑みを作った。穏やかで、敵意は感じられない。もうすぐユウは抵抗することなく死ぬ。僕は「質問があるんだけど」と言った。どうしても聞きたいことがあった。わざと避けなかったのかそれとも油断していただけなのか。そのことも気になるけれど、それを聞ける程の時間は無いだろう。
「何かな?」
「なぜ君は僕が持っていた人間への敵意を奪ったんだ?」
 ユウが奪ったもの。僕の使える魔法の大半と、僕が抱いていた人間を嫌う気持ち。
 僕に期待するばかりで何もしない。いつか殺してやる。
 そう思っていた感情をごっそり奪っていった。あれがあれば僕はもっと簡単に残酷な判断ができただろう。そしてアイも一緒に殺してしまっていたに違いない。質問を投げかけられたユウは、にやり、と口の端を上げた。人間のような表情の変わり方だった。もはやチャオではない。
「君たちが悲しそうな顔をしていたからだ。お互いに、どう接すればいいかわからなかったんだろう?」
 言うこともまた、チャオの小さな体には似合わない。だからだろう。感謝の言葉はすんなりと出てきた。
「ありがとう」
「ありがとう」
 僕とアイが感謝の言葉を述べる。ユウはそれに一言も返さずに目を瞑り、死んだ。僕の不純物を抱えたまま繭に包まれて消える。僕はきっと人間になったのだと思う。
引用なし
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