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設定や構成は普通ですが、この作品の注目すべき点はそこではなく、その中で強い表現ができた、という点にあると思います。
最期の段落の、ぼくの頭の中はぐちゃぐちゃで、といった表現よりも、チャオが持つ観察力を通し周囲を描くことで、強い感情を読者に想像させる、といった文章の強さが目立ったように感じました。例えば、お母さんがぴたりと静かになった、や、お父さんの目が泳いでいるのを、とか。これを見た何も知らない"ぼく"が何を感じたのか想像すると、その恐怖感や緊張感が伝わってきます。
この話の「おかしな」というのは、ろっどさんが言うような話自体のおかしさではなく、ぼくがおかしく感じているということが重要なのだと感じました。
冬きゅんが意図したのかどうかはわかりませんが、おかしいおかしいと言っている部分は本当におかしい現在に向かうポイントとしてあるのだと思いました。
この短い中にうまくまとめられていて、とても良いと思います。細かい部分を除けば余分なところは特にないんじゃないかな。
一番気になったのはエトセトラの部分ですね。純粋無垢なチャオの一人称だったのに、突然主人公が冬きゅんになって驚いた。
全体的には、きれいにまとまっていて読みやすかったです。でも、やっぱりそこは大きなポイントではなく、何かを伝えるときに何でも描きがちなところを「描かない描写」で表現できていたというのが、なんてことないテーマを強く強く表した素晴らしいポイントであり、小説のあり方(あるべき姿ではなく)の一つを示すことができた作品ではないかな、と思います。
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